第四クトゥルフ神話『名前に癖のある探索者達の観光バス』 作:カロライナ
Episode4-1 安否確認。
夢を見た翌日の明朝。それも、朝になると通勤ラッシュで賑わう大通りに太陽の光すら差し込んでいない頃。シャッターが完全に閉まり切っている青大探偵事務所前で、一人の人物が時間をソワソワ入口の前で忙しない子犬のようにウロウロ徘徊していた。
「家守。・・・あなたも来たの。」
ウロウロしていると突然背後から声をかけられ 家守はその体をビクリと反応させ聞き覚えのある声をに向けて振り返った。そこには、首筋に汗を光らせた足高の姿があった。その表情は、たまたま幼馴染みと再会し、嬉しそうな顔ではなく何か緊迫、切迫したような表情であった。
家守
目星85→62【成功】
「もしかして、足高もあの夢を見たのか?」
「あの夢が、なんの夢かわからないけど。その夢が何者かに頭を押されつけられる夢ならその夢で間違いないわよ。」
「っ!」
家守は自分の見た現実体験したかのような不気味な夢を思い返し、己の割れた腹筋を摩りながら、無事を確認しつつ 足高のミサンガを見る。そこに昨日の昼間に見たミサンガはなかった。家守の問いに足高は目を左に逸らし、少し視線を外して、オブラートに包んだ言い方で自分が見た夢の話を伝えた。家守はその話を聞くと少し瞳孔が開き動揺する。
「それで、家守も青大の探偵事務所にやってきたということは、もしかしなくとも青大の無事の安否を確認しに来たの?」
「お、おう・・・発狂者や入水自殺者多数ってニュースで流れてたしよ・・・。も・・・ということは、足高もか?」
「口は悪くて、余計な一言だらけで、腹立つあだ名を命名し、すぐに人を小馬鹿にする嫌な奴だけどね。あれでも幼馴染みだから。あと、一昨日借りた手拭いを選択し終わったから返しに来たのよ。」
動揺している家守に足高は近づくと、家守の正面に立ってシャッターの下りた青大探偵事務所に向けて目配せする。家守はまた一度背後を振り返り、更に一度足高に向き直ったあと昨日、3人並んで見たニュースについて言及し、青大の安否を不安がり、足高も同じことを考えたのかと気になったのかと尋ねた。足高はその問いに頷き返すと嘘のような事実の文句を垂れながらも、青大の無事を確認しに来たことを家守に伝える。そして、それだけでは動機が不十分だと思ったのかショルダーバッグからやや白い、純白とは言えない程度に白い手拭いを取り出し家守に見せつけた。
「そっか・・・。」
2人は明朝声を殺しながらも、近くにある花壇の塀に座り込むと青大探偵事務所前でシャッターを叩いても問題ない時間になるのを待っていた。しばらく話していた時のことだった。突然、シャッターではななく シャッターの隣に付けられた玄関が静かに開いた。
開けられた音に2人は反応し、開いた扉を見る。そこには扉の隙間から瞳を細め、花壇から聞こえる話し声の主を確認するために出てきた。
写真術
青大75→85【失敗】
とりあえず、青大はフラッシュの威力を最大にして、仲良く花壇に座り話し合っている2人の姿を写真撮影した。フラッシュの威力が強すぎてその写真は真っ白に染まってしまっていたが、青大はそれなりに面白い写真を撮ることができて十分に満足していた。
「・・・ちょっ‼」
「騒ぐなら、事務所の中で。・・・・・ここじゃ近所迷惑だ。」
強烈なフラッシュを焚かれ、驚いた足高は声を抑えるのを止め、素の声で青大に詰め寄ろうとする。それを青大はニヤニヤと口元を歪ませると、扉を大きく開き2人に入るように促した。足高は朝から不満足そうな表情を浮かべたが、青大の近所に迷惑はかけられないと大人しく部屋に入る。
聞き耳
青大85→3【クリティカル】
そして、家守も事務所の中に入ると周囲を見渡し、誰かに付けられているような足音や気配がないことを確認する。とくに誰かに付けられていたり、不審な視線を感じることはなかった。それどころか一番鳥であるカラスの鳴き声が3度ほど響き、朝焼けが大通りを包み込む。確認後に青大も探偵事務所内に戻り扉を閉めた。
「まったく、事務所前が騒がしいからベッドから起きてみればこれだよ。大声『やもりん』と不機嫌『やくもん』の登場だ。」
「人を『くまもん』みたいに呼ばないで貰えるかしら・・・?」
「オレの声デカかったか・・・? 声を抑えたつもりだったんだけど・・・・ごめん。青大。」
「あぁ、かなりお前等の声聞こえてたぜ。明朝はみんな寝ちまって静かだからな。小声でも案外聞こえちまうもんなんだ。だから、次からは気をつけろよ。」
青大は2人を事務所中央へ無理やり押し込むように促すと、ため息をつきながら新たな可愛らしくも足高だけは貶したようなあだ名で2人を呼んだ。呼ばれた家守は申し訳なさそうな表情をすると素直に青大に謝った。一方、足高は急に写真を取られたことに関して憤りを感じていたが、更に不名誉なあだ名を付けられ、更に機嫌を悪くし鋭い視線で青大を睨んでいた。
「さてと。幼馴染みが2人揃ったところで依頼のお話をお伺いしましょうか。・・・・という冗談は置いてといて、まぁ 取り敢えず座れよ。ほら立ち話もなんだ。中央のソファーに客人は座ってろ。」
足高の睨みに対し、青大はとくに気にする様子もなく立ったままの2人へ座るように促す。2人は昨日3人で談笑するときに使ったテレビ前の柔らかいソファーに座ると、腰を落ち着かせた。
青大は給湯室に向かい、コーヒー牛乳とオレンジジュースを来客用大型コップに注ぐ。そして、コーヒー牛乳を足高へ、オレンジジュースを家守にストローも揃えて差し出した。
「ほら、これでも飲んでろ。」
「・・・・・・ありがと。」
「・・・どうして、オレはオレンジジュースしか出してもらえないんだ?」
「「後で(お)腹を下すから。」」
差し出された生暖かいコーヒー牛乳を足高は一言不本意そうに礼を伝えると優雅にゆっくりと口に運ぶ。クリーミーな味わいが足高の喉を包みこんだ。
そして、頭上にクエッションマークを付けて質問する家守に対し青大と家守は声を合わせて伝える。一瞬2人の目が丸くなるものの、すぐに気にするのをやめ、足高はコーヒー牛乳を飲み、青大は再び給湯室に戻ってきた。
給湯室で、下の戸棚から8枚切りの食パンを取り出しそれを対角線上に真っ二つにすることで、三角形のパンを作り始めた。2切れ1組で一つとし、冷蔵庫から適当なジャムやマーガリン、マヨネーズ卵を引っ張り出すと盆の上に揃えて2人の元まで戻ってきた。
「こんな時間に来たってことは、朝食食ってねェだろ。ほら簡単なものだけど、自分で好きな具材を乗せてサンドウィッチでも作りやがれ。」
乱雑に正面テーブル上に3人の朝食を乗せたお盆を置く。家守は真っ先にパンを1組引っ掴むと、目の前に出てきたマヨネーズ卵を塗りたくり、卵サンドを口に頬張った。
足高は何かを警戒しているのか、目を細め 親切な青大を疑うような素振りを見せる。
「料金なんて請求しねェよ。別に昔みたいにカツカツでもねェしな。ほら、足高もせっかく大好物のブルーベリージャムを持ってきたんだから、食べなきゃ損だぞ。」
青大は足高の視線に気づき、呆れたようなため息を一つ吐くとヤレヤレといった様子で パンを1組手に取ると マーガリンを塗り食べ始めた。まだ疑うような視線を送りながらも、足高もパンを1組手にとりブルーベリーを塗ったのち口に運んだ。
こうして、特に会話が交わされることもなく幼馴染み全員が揃った朝食会の時間が過ぎ去っていく。
そして、太陽がそれなりに日差しを街に降り注いだ頃、それに合わせて大通りも騒がしくなる。3人は一人3枚のサンドウィッチを完食すると、一息ついた。
「で、お前等がこんな時間に不安げ様子で俺の事務所にくるってことは、昨晩の夢が原因か?」
青大の言葉に足高、家守は同時に青大の顔を見る。その2人の様子を見た青大はヘラヘラしながら、来た理由を初めから察していたかのように鼻で笑った。
「お前等、昨日見たニュースのように俺も発狂しているか入水自殺したかと思ったんだろ? へっ、ご生憎様。この通り俺はへっちゃらだ。 逆に、お前等こそ大丈夫か? 特に家守。事務所の入り口でかなり真剣に悩んでただろ。」
「・・・・・・・大丈夫だ。一つ尋ねたいんだけどよ・・・将、御守りネックレスはどうした?」
家守の問いかけに、青大は何処か諦めたような吐息を吐きながら、首に掛けているネックレスを取り出す。そのネックレスの御守りは完全に爆ぜて壊れてしまっていた。
「この通りだよ。多分、俺の身代わりになってくれたんだろうな。もう、割れちまってゴミと化しているけど まぁ、昨日の今日だし、足高も家守もあと最低でも2日はつけとけ。夢の中でも本気で腹が爆ぜるのは嫌だろ?」
「・・・えぇ。そのつもり。」
「・・・ぉぅ。」
2人の答えに満足したかのようにほほ笑むと、青大は首をもたげ左手で自分のうなじを2、3度叩き、テレビのリモコンを反対側の手で取ると電源を付ける。テレビは普段と何等変わりない朝の天気予報や電車の運行情報を流していた。そして、そのテレビが点灯したことでやや暗い表情の足高と家守が顔を上げる。青大はソファーから一旦立ち上がり、カーテン代わりにしているブラインドの紐を弄り太陽の光を室内に差し込ませた。
【後書き】
Episode1-1にするかEpisode4-1にするか迷ったのですが、
第四クトゥルフ神話ということもありましたので4-1に決定しました。
いやー。クトゥルフ卓って本当に楽しいです。
おかげで小説のネタが溜まること。溜まること。
最後の骨まで美味しいクトゥルフ神話TRPGです。
もちろん何作か書いていますので、順次公開していこうかと思っております。
死んでもネタになりますし、生きていてもネタになります。
1人の探索者で2度美味しくなります。