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6話目 美少女の裸を……(上)
戦の終了を告げる花火が打ち上がり、勇者の活躍でビスコッティは勝利を勝ち取ることが出来た。
が……そんな喜ばしい事態なのに、勇者シンクと
理由は、この戦が終わり、一旦家に帰りたいと頼んだ二人に、エクレールとその兄が帰ることが不可能と突き付けられたことが原因だった。
「帰れない……帰れない……僕はここから帰れない……」
「シンク……見て……あの花火と一緒に打ち上げてもらえれば……帰れるんじゃない? ちょっとやってこいよシンク」
「そんなことしたら僕死んじゃうよ!」
「いい加減にしないか、アホ勇者と変態」
「変態って、俺が変態って言われるようなことしたか?!」
「自分の胸に聞いてみろ!」
「どれどれ?」
夜天は立ち上がり、エクレールのそばで膝立ちすると、そのまま頭をエクレールの胸に押し当てる。
当然エクレールの顔は一瞬で真っ赤に染まる。
「うむ、脈打っているな、それに程よい膨らみがまた癖になる」
「自分の胸だ! この変態が!」
繰り出される突きや蹴りをひょいひょいと笑いながら避け続ける夜天だったが、内心少し不安で、このあとどうするかを考えていた。
「シンク、いい加減に立ち直れ、ここで落ち込んでも埒があかねぇ」
「そうだ勇者! いい加減にしろ、先ほど《リコ》から連絡があった。勇者を元に帰す方法を探してみるとな! そしてお前は早く殴られろ!」
「リコってあのちっこい小動物みたいなやつか? あいつあんななのにそんなに頭がいいのか……人は見かけによらないってこういう時に言うんだな。それとそろそろ攻撃をするのを止めてくれ、ちょっとした思春期のイタズラだろ?」
「ああそうだ! 《リコッタ・エルマール》は、ビスコッティ国立研究学院の首席研究士、そして私の友人で、皆からは《リコ》と呼ばれているッ! イタズラでももう少し程度をだな!」
「へーッ! じゃあ、俺もこれからッ《リコ》って呼ぶことにッするわッ! それと、手を繋ぎ会うならッもう少し優しく握ってほしいなッ!」
夜天とエクレールは、互いに掴み合い、でこを擦り付けながら、一歩も譲らない勝負をしていた。
が、それもそう長く続かず、数分の間、掴みあっていたが最後は夜天の体力が尽き、溝に強烈な右ストレートを叩き込まれ、夜天は力尽きた。
殴って少しスッキリしたエクレールは、シンクに向き直ると、無理矢理立たせてから、その腕を引っ張り出した。
ちなみに夜天は、襟首を掴まれると、そのまま引きずられていた。
「どこに……いくんだよ……てか……どこにそんな力が……」
「チッまだ意識があったか、まあいい、これから城下町にお前たちを連れていこうと思ってな」
「城下町?」
「ああ、それより、お前意識があるなら自分で歩け!」
掴んでいた手をいきなり離したエクレール、当然、いきなり離された夜天は、反応も出来ず、顔面を地面に強打する。
「扱い酷くねぇか? いきなり離すことねぇだろ! お蔭で地面にファーストキスを取られただろ!」
「知るか! 自業自得だろ! さっさと着いてこい、置いていくぞ」
後ろを振り向くことなく、ズカズカと先に進むエクレールを見て、夜天は慌てて立ち上がると、エクレールの後をすぐに追った。
~城下町~
そこで、シンクと夜天、エクレールに何故かタツマキまでもがついてきていた。
今はシンクが落ち着くまで、空いていたベンチに腰を下ろしている。
そんなシンクが、何かを思い出したのか、急に顔をあげると自分のポケットのなかを漁り始めた。
「シンク? なにしてんだ」
「えっとねー、あったあった!」
ポケットから引き出された手には、携帯電話が握りしめられていた。
夜天には理解できたが、エクレールは、携帯電話を知らないらしく、首をかしげながら、シンクの持っている物を見つめている。
シンクは期待を胸に抱きながら、いざ、ケータイのフタを開いた。
「どう?」
「……ダメみたい。圏外だよ。」
「まあ、ここ異世界だし、勇者召喚のルールに、向こうの世界と連絡は出来ないって言ってたしな…」
夜天とシンクは、二人して長い溜め息を吐いた。
「全く、覚悟もないのに召喚に応じるからだ」
「覚悟!? 覚悟も何もこのわんこが!」
「俺はどちらかと言うと助かったほうかもな、あれがなかったら多分新聞の記事で、【中学生の男子生徒自殺? それとも他殺か!】って載ってたかもな」
「それは流石に……それでもこの犬が落とし穴を作って!」
「落とし穴? タツマキが?」
全員でタツマキの方を向いたが、タツマキは首を横に振り、あのとき見た魔方陣よりも遥かに小さな魔方陣を出した。
タツマキはその魔方陣の上に手を置いた。そのすぐそばに書いてある文字を読め、ということらしい。
「見たことねぇ文字だな、こっちの文字か?」
「エクレール、ちょっと読んでもらっていいかな?」
「任せろ。えっと何々? 『ようこそ、フロニャルド。おいでませビスコッティ』」
読んでいるところは普通だったが、タツマキはさらにその端っこに書かれている文字の近くに手を動かした。
「『注意、これは勇者召喚です。召喚されると帰れません。召喚を拒否する場合はこの紋を踏まないでください』って書いてある」
「「んなもんわかるかぁ!!」」
「私に言うな!」
「チッエクレールがもっとしっかりしてればこんな魔方陣踏まずに済んだのに」
「だから何故私のせいにされるんだ!」
「自分の胸に聞いてみろ、あっ別に俺の胸に飛び込んでもいいんだぞ?」
「誰がするか!」
クソッ飛んでくるものが違う、エクレールの放った右フックは夜天の横腹を的確に射ぬき、夜天は今日なん度目かの地面との対面となった。
これでわかった。エクレールは右利きか……。
「まあ、元の世界に返す方法は、学院組が調査中だ。じきに分かるさ」
「だといいけど…」
「取り敢えずは…その、なんだ。お前たちは、一人はアホでどうしようもない変態だが、賓客扱いだ。ここでの暮らしに不自由はさせん。一先ず、これを受け取っておけ」
シンクと夜天に袋を渡す。
渡されたときにかなりの重さがあり、シンクは、取り敢えず振ってみると、中からジャラジャラと音を響かせる。どうやら硬貨のようだ。
夜天も、頭に乗せられた袋を手に取ると、取り敢えず振っとく、中からは同じように音を響かせた。
「エクレ、これって?」
「戦での活躍した報酬金だ。ないとは思うが、受け取りを拒否すれば財務の担当者が青ざめる」
青ざめるか、それは断ったら案外面白いか……
「貴様は断ったりするなら斬り殺す」
「ワーオ、ウッレシイナー!」
あんな真顔で殺意なんかを出されれば、誰もが棒読みで嬉しがるだろう。
エクレール……何て恐ろしい子!
「兵士達も楽しみたいから参加するものも多いだろうが、報酬金は自分がどれだけ戦に貢献できたかの目安だ。少なくとも、参加費を取り返したい、というのも本音だろうがな」
「え、参加費!?」
「…このことも知らないのか。これはかなり初歩的なことから教えてやらんとな」
「俺らいきなり呼び出されてきたんだぞ? こっちの常識はからっきしだ。それと向こうじゃ中継で裸になったりしたら、放送事故で処理されるのが常識だ!」
「何故今その話をもってきた!」
見切った。お前は必ず右で攻撃する、それなら右にガードを集中すれば!
右腕と足を上げ完全ガードと思いきや、エクレールの動きが変わる。
右と思わしといてからの左ブローが、夜天の左腹に炸裂、またしても踞る夜天。
「右だと……思ったのに……左もいけたのかよ……」
「私を甘く見るな。勇者、そのバカはほっといていくぞ!」
「えっでも……」
「いくぞ!」
「シンクよ、あの子は遠回しにお前とデートがしたいといってるッ」
「違うわ!」
顔面パンチ、夜天は身の危険を素早く察知し、顔面パンチを避けることに成功。
「お前は殴るのが趣味なのか?! 俺のことボコスカと殴りやがって!」
「貴様が一々癪に触ることを言うからだろ!」
「あぁ! 少しは我慢もできないのか? 敵陣に突っ込むことしか考えられないお子ちゃまな頭なのかお前は?」
「な、貴様ぁ! 喧嘩を売っているのか!? この変態ヤロォ!」
「お前こそ喧嘩を売っているのか? ならその喧嘩買ってやるよ暴力女!」
「まあまあ二人とも!」
「「
夜天とエクレールが、大声で怒鳴りあっているのを耳にした国民立ちは、次々と足を止めていく。
そして、いつの間にか夜天とエクレールを中心に、円上の小さいフィールドが出来た。
「今謝れば許してやるぞ?」
「それはこっちのセリフだ!」
エクレールは背中から、2本の剣を引き抜くと、いつでも攻撃できるように構えた。
夜天も懐から数枚の札を取り出すと、いつでも投げられるように準備をした。
周りの野次馬立ちは、応援する者、賭け事をする者などが、二人を見守っていた。
「シンク、開始の合図よろしく」
「ねぇやめようよこんなこと……」
「早くしろ勇者、そいつを殺らないと気が済まない」
「エクレールまでも! もう仕方ないな~」
シンクは、先ほど受け取った硬貨の入った袋から一枚取り出すとそれを、親指で高く弾いた。
硬貨が落ちるまでの時間が長く感じる。
その場にいたものが、みな固唾を呑み込んで始まるのを待つ。
そして硬貨は地面にぶつかり、金属の特有な音が、シンッとした場に響いた瞬間に、二人の断末魔が、その金属音を掻き消した。
「「死ねぇぇぇ!!」」
次回予告となんなんだ?