私の通う学校は海がよく見える。今日も太陽が海に反射して輝いている。ただ、そのいいムードをぶち壊しにしている奴がいる。それは、うしろに座っている奴だ。ガーガーといびきがうるさいったらありゃしない。そいつの隣の奴は早弁してやがる。この二人はいつも一緒にいる。授業をサボるのだっていつも一緒。トイレに行くのも一緒なんだから正直キモイ。だが、それにはこいつらなりの理由がある。
「おーい上条、うしろの奴起こしてやれ。少々手荒でも構わん。」
いつもこの調子だ。この先生は来年で定年をむかえる。ちなみに今は数学の授業中である。当然この先生の教科も数学なわけだが、意外となんでもできる。技術科や体操、英語もできるらしい。本人が言うには英語ペラペラらしい。
(おーい起きろー。先生が怒りだすぞー。)
(上条か。もう少し寝たいから誤魔化してくれ。)
この状況で誤魔化すのは至難の技だがやるしかない。だが、先生がこっちを見ている。どうするどうする?やってやろうじゃないか。
「箸元先生、私そこがなんで√5になるのかがわかんなーい」
「おおうそうかそうか、ここはなぁ…」
他のクラスメイトも飽きていたらしい。机に顔をうずめる奴、ノートに落書きする奴。暇なんだなあ箸元先生の授業は、とつくづく思ってしまう。
「…とこうなってここを計算するとでてくる。分かったかな?」
「はーい!」
小学生みたいに問いかけされたからそれで返してやった。しかも最高のスマイルで。まあこれぐらいはどの女子もやっている。好感度を上げるためだというのがほとんどだが。
(おーいそろそろ起きないとバレるよー)
(分かったよ。)
私が仕事をこなしたところで、キーンコーンカーンコーン とチャイムが鳴り響いた。
「よし、じゃあ授業はここまで。ちゃんと勉強しろよー。」
箸元先生が恒例の言葉を残して職員室へ帰っていった。
「おい了太郎君、毎度毎度いない。いびきかいて寝ないでよー」
「まあいいやん。いつものことやし。」
「そうそう、了太郎はこれでいいわ。」
「早弁太郎は黙っときー」
「だ、誰が早弁太郎や‼」
いつもこの調子だ。これが一日三回は繰り返される。ウンザリするだろ。でもそうなんだよ。少し哀しくなりそうだ。
「次の授業の準備もしなよー」
えっと次は、ゲッ!国語じゃないか。という声が聞こえてくる。ちなみに国語の先生は真面目な先生だ。生徒のことをよく考えてくれる。名前は明田沙智味先生だ。男子からは沙智婆などと呼ばれている。もちろん女子は可愛くさっちゃんと呼んでいる。ついでに言うと未婚である。
「まあまあいいじゃないか。たまに面白いし。」
そうこうしている内にチャイムが鳴った。
「あーあ今日も疲れたねー。」
「風華ちゃんはあいつらと席が近いから余計なんじゃないの?」
そうかもーなどと夕暮れ時の道を歩いていると一台の黒いワゴン車が止まっていた。そう、その車から降りてきたひとりのおじさんと会話をしなければこのまま日常が続いていたかもしれなかった。いや、いつかはそういう運命なのかもしれない。だがもう遅い。いかにも怪しい男という好奇心を煽られるシチュエーションにあってしまったのだから。
どうでしょう。次からは本編に入りたいと思います。