堕天使のコカビエルは闘争を愛していた。三大勢力の最大規模の戦争には最前線に自分から志願する程に命知らず。コカビエルは実力もあり最前線で活躍した。戦争で死ぬなら本望とも思っていた。そんな実力はあるが命を惜しまないコカビエルが、捨て石と言われるある部隊に入る事となったのは必然か。
大戦で現れたただ一匹の怪物と呼ばれた悪魔に対しての対策部隊。
部隊の生存率は一割足らず。対策といっても足留め程度しか出来ない。それを知っても血気盛んなコカビエルは名高い怪物と戦えると喜び勇んで部隊に入った。
そして自身の愚かさと不幸を呪った。
ある悪魔に対してだけは堕天使は、戦争相手である天使とも協力して対処に当たった。少し違う場所では殺し会う者同士が肩を並べた。
そしてコカビエルは見た。
怪物を前にして何百の天使、堕天使の命が下級も上級も強さも数の差も関係なく消滅したのを
戦いが成立していない。
怪物との戦いは闘争でない。
まるで災害との遭遇
この時コカビエルは初めて戦場が恐ろしいと感じた。
怪物の対策に投入された数は数多居たが生き残りは僅か。僅かな生き残りの中にコカビエルはいた。この時の体験はコカビエルを良くも悪くも変えた。
戦争は結局は勝敗がつかず和平と言う決着を迎えた。コカビエルは和平に対しては不快な感情を持っていた。
大戦の意味
和平となるなら戦争を最初から起こさなければ良かった。ただ戦争によって三大勢力の数が極端に減った結果しか残らない。大戦を行った意味はと聞かれても誰も答えられないだろう。
大戦の終わりコカビエルはよく悪夢を見た。怪物に殺された堕天使や天使が自分達は何の為に死んだのか聞いてくる悪夢、コカビエルは悪夢に何も答えられない。
コカビエルが何も答えられないのはあの戦争に勝敗が着いてないからだ。そう考えるようになったのは何時の事だろう。
コカビエルは怪物の事を考えた。
あの怪物は戦争が終わった後に魔王や神を殺して封印された。コカビエルは反逆を企て封印されたと聞いていた。
反逆の理由をコカビエルは、あの怪物も大戦の結果に納得がいってなかったと考えた。
あの怪物が居るなら、和平などしなくてもどう考えても悪魔が勝っていたと判断でき、可笑しい事と思わなかった。三大勢力が総力を上げても勝てるかわからない二天龍を単独で倒したのだから
しかし調べて………怪物は反逆を企てたいなかった。騙し討ちでの封印の事を知った。
コカビエルは最大の敵の魔王やかつて崇めた神が、騙し討ちをして返り討ちで死んでいた事も知り、笑うしかない心境になった。
もしあの怪物の封印が無ければ悪魔側が勝利していた。天使や堕天使は敗けを認めるしかない。なら悪魔側があの怪物が勝者となればどうなる?今の世界はどうなっていた?
それは怪物次第だろう。
どんな世の中になっていたか。コカビエルは怪物、アリシアス・べリアルの事を詳しく調べた。強さだけでなく生い立ちも含めて。アリシアスの出生から調べ、どんな育ち方をし、どんな食べ物が好きか、交遊関係はどうか、小さな痕跡を含めて何かに憑かれた様に執拗に調べた。
コカビエルは調べていく内にアリシアス・べリアル、あの大戦の時に見た怪物を更に異常と思うと同時に……悪魔側が勝利しても問題がなかったきがした。
怪物の産まれた悪魔でも上位のベリアル家
怪物を産んだ両親は狂っていた。いや誰が知っても狂っていたと言うだろう。それこそアリシアス・べリアル、怪物の親に相応しい狂った悪魔だと…。
怪物の両親は悪魔の中でも有り得ない程に弱肉強食を体現していた。コカビエルは最初は笑い話にも成らない嘘だと考えたほどだ。
怪物の両親は産まれたばかりの自分の子供に対して、上級悪魔である自分達が殺しに掛かり死ねば弱者として打ち捨てていたのだ。
怪物以外で産まれたのはコカビエルが判ってるだけで10人、その中で生後一日を越えたのはゼロ。つまり怪物の兄弟姉妹は両親によって産まれた直後に全て殺されていた。
両親の異常な最初の試練を乗り越えて生き残ったのはアリシアスのみ。
幾ら才能がある赤子が産まれても、上級悪魔の両親に産まれたばかりで狙われて、生き残る事が可笑しいだろう。アリシアスはまるで狂った両親の元に生まれるべくして産まれた怪物だ。
狂った両親が怪物に課した試練もまた異常なモノ。
当時、怪物の世話係をした下級悪魔を捕らえて聞き出した事だ。
怪物が食事が欲しいと求めれば、下級悪魔の使用人にべリアル家が所有する森まで怪物を連れて行かせて、まだ立つことすら出来ない状態の赤ん坊1人に食事を探させた。
しかも森まで運んだ世話係の下級悪魔が、森は下級悪魔にとっては危険地帯、怪物が居る限り世話係として何度もこないといけない。だから怪物を確実に殺させようと森のボスとして君臨した龍種の元まで誘導したそうだ。
怪物は龍を討伐した。
有り得ないがこれはコカビエルが直接、下級悪魔本人を尋問して聞き出した事実。
下級悪魔は怪物を悪魔でない別の生き物と言った。コカビエルも同感だ。
まるで人間と悪魔を比べる様な違いで怪物を悪魔と別物と思えた。
だがこんな悪魔か怪しい怪物でも弱肉強食を信望した両親には、強ければ強いほどに愛しい子供でしかなかった。怪物の両親は更に異常な行動をした。それは何とか盗み出した怪物を育成した日記に記されていた
怪物が遊ぶ遊具に聖水や様々な毒を仕込み毒の耐性を付けさせた。遊具に触り使用人が何人も死んだと書かれていた。
怪物の食事として各地から様々な魔物を生きたまま連れてきて森に放ったと記されていた。冥界の怪物は勿論、龍、巨人、ケルベロス、ヒュドラ、北欧の神話の怪物、古今東西あらゆる化物をどんな手段でか判らないが、連れてきたと記載されていた。
嘘でない証拠もある、怪物の生家べリアル家の管理する森は、最上級悪魔でさえ入れば死ぬ森として現在封印されている。そんな森で食事を求めて生き残った怪物(アリシアス)は何だ?
コカビエルは自然に産まれた怪物を、更に異常な環境に置いて進化させた結果があの怪物(アリシアス)なのだと考えた。
だがその怪物について更に判った事は意外な結果だった。
怪物が戦場と食べる時を例外に命を奪った情報が無い。相手から仕掛けられない限り戦闘をすることもない。穏当な性格だった。
ただ戦闘に成れば殺しはしないが、大体において過剰に攻撃的になる。怪物を知る悪魔の一人が何時もの戦闘嫌いは演技で、残酷で執拗に攻撃的なのが本性だと思っていた様だが、コカビエルは違うと考えた。
怪物が過剰に攻撃的になるのは酷い目に遇いたくなければ戦いを挑むなと言う威嚇、戦闘力に反して戦闘意欲が欠如した為の行動と思えた。悪魔側の伝でもあり怪物をよく知っていた悪魔に聞くと同じ 意見だった。
コカビエルが集めた情報を総合すると怪物は、他の悪魔の様な名誉欲、破壊欲、戦闘欲、殺人欲、出世欲はない。戦うのは仕方ない場合だけ、怪物は殊更争いは求めていない。仮に戦闘なっても生き死にを掛けてないと殺される可能性は少ない。普段はどんな悪魔より危険は少ない。戦闘を挑まない限り善良、甘い性格。
コカビエルは最初はこんな自分で調べた結果を信じられなかった。だが考えてみるとあの大戦の時、もしあの怪物が甘い性格でも無ければ、封印云々の前に天使や堕天使が全滅させられていただろうと気付いた。部隊を殆ど殲滅されたコカビエルはあれでも手加減されていた事実にゾッとした。
それでもコカビエルは考えた、もしあの怪物が復活すれば大戦の結果が出る。悪夢に答える事ができる。そう考えたコカビエルは怪物の封印を解く事を望んだ。
封印場所の想定は幾つかあった。
しかし封印を解く手段がない
コカビエルは封印を壊せる魔法の研究に打ち込む様になった。しかし何千年経っても神の封印を破壊するモノは今一歩で出来なかった。そんなコカビエルに協力者が現れ遂に神の封印を破壊する魔法が完成した。
後は封印された場所、何度か封印は移動させられている。今の場所は何処だとコカビエルは調査するも見つからない。封印については天使や堕天使も悪魔側について隠蔽に協力するからだ。
そんな時に怪物の武器の模造品の神器、災厄の魔銃を持った少年が発見されたと報告を聞いた。
一部の悪魔と神器を研究しているグリゴリでしか知られてないが、怪物の武器を模した神器、災厄の魔銃はオリジナルに引き寄せられる性質を持つ。つまり災厄の魔銃を宿した少年が産まれた町に封印が有る可能性が高い。魔銃が現れた事を気にして悪魔が封印の場所を移す前に動かないといけない。
封印を置いた場所が人間界の駒王、それはコカビエルにとって意外な場所だった。コカビエルは冥界の何処かで厳重に封印されてると思っていた。しかし領地の管理者を知り間違いないだろうと思えた。
駒王の何処に封印場所があるか。そんな時に駒王近くで不正に活動するレイナーレ達に気付き、調度良いと封印場所について調査を命じた。
魔銃の持ち主と悪魔と問題を起こしたそうだが、レイナーレ達は何とか逃げ切り封印の調査結果を知らせてきた。
怪物の封印場所は駒王学園。
結果を持ち帰ってきたレイナーレに対しての報酬に、コカビエルはアザゼルを通して悪魔側と交渉し軽微な罰で赦させた。
コカビエルは駒王が怪物の封印場所を知った直ぐ後、更に何の因果か教会への復讐に取りつかれたバルパーの駒王での聖剣完成計画を知った。そのバルパーがコカビエルに協力を求めた。
コカビエルには運命に思えた。
バルパーに協力を了承、コカビエルは聖剣完成勢力を隠れ蓑に駒王に潜入し封印解除を目指した。
そして駒王に潜入後、コカビエルは封印解除の準備をしていると、バルパーはリアス達を駒王学園に呼び出し聖剣を完成させた。だが聖魔剣の完成に聖剣が敗れバルパーは神の死を予想した。
別にバレてもどうでもいい話だったがコカビエルは何となくバルパーを殺害。コカビエルにとっては既にどうでも良い神の死をアッサリ教えた。
そしてコカビエルにとっての最後の砦、封印の守護者達との戦い。だがコカビエルが拍子抜けするほどに簡単に勝てた。激戦を予想して血の滲む訓練で全盛期に近い力を取り戻していたコカビエルにとっては呆気に取られる程。そして自信満々に封印の解除が狙いだと話したが…リアス達はそもそも封印がある事すら知らなかった。
コカビエルはリアス達に興味もないので動けなくなると放置、封印の解除を実行。暇潰しにリアス達と話した。怪物、アリシアスの事も、神や魔王の死因も、流石に封印を解く理由に悪夢を見たなど情けない話は隠した。
そしてコカビエルの望み通り封印は解けアリシアス・べリアルは甦った。
コカビエルは幾千年も前の恐怖を思いだし体を震わせたが、怪物は普通に話している。やはり調べた通りアリシアスは凶悪ではない。コカビエルは意を決して声をかけた。
「アリシアス・ベリア…ごは!?」
コカビエルは地面に墜落した
「あ、ゴメンなさ…堕天使みたいだし問題ないか」
コカビエルは意識を失う前に怪物のそんな声を聞いて…やっぱり怪物は凶悪だったと思った。