ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ!   作:タロウMK-Ⅱ

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 あらすじにも記載しておりますが、スパロボのプラモデルでガンプラバトルに参加する物語です。
 主人公達は一般人であり、世界や日本に名を轟かせるような者ではありません。ただガンプラバトルに夢中になっている少年達です。


アルトアイゼン使いのファイター

 第1話

 

 〈ガンプラは自由だ!!〉

 世界的ガンプラファイターとして有名な3代目メイジン・カワグチの台詞だ。

 俺はこの台詞に疑問を覚える。別にメイジン・カワグチに何らかの恨みがあるわけではないが、ガンプラ以外のプラモデルは自由ではないと言うのか?

 創作意欲そのものが自由の塊だ。表現の自由だ!

 ガンダムだけがプラモデルじゃない。俺達はそれを証明しなくてはならない。世界はもっと広い、知らないものが拡がっている。

 

 

 

 

 俺は古宮勇登(ふるみやゆうと)、私立飛龍高校の3年生だ。プラモデルという趣味があるが、プラモデル部にはあえて入部していない。

 プラモデル部と言っても9割がたガンプラの作製だ。鑑賞用のガンプラとバトル用のガンプラばかりで、戦艦や自動車の類は殆ど存在しない。僅かにミニ四駆が飾っている時もあったが。

 

「勇登、今日はプラモデル部との試合だぞ」

 小学生時代から親友である加倉拳(かそうけん)から声を掛けられた。スーパーロボットが大好きな少々暑苦しい奴である。しかも182センチメートルと高身長である(俺は167センチメートルと平均より僅かに低い)。

 

「覚えている、放課後の4時半からだな」

「新学期そうそうに面白いことになりそうだ。俺達の活躍ぶりに新入部員の奴等は唖然とさせてやる」

「面白いって、挑戦状を送ったのお前だろ。まぁ、プラモデル部にどんな新入部員がいるか知らんが目にもの見せてやろう」

 1週間前、俺達はプラモデル部に挑戦状を叩きつけた。高校生活も今年で最後だし、加倉はプラモデル部に一太刀入れたかったらしい。

 

 今週で4月も終わりだ。厄介ごとはゴールデンウィーク前に終わらせておきたい。なにしろゴールデンウィークはガンプラバトル大会に出場しなくてならない。近所のスーパーマーケットの主催だから規模は小さい。

 

「ところで加倉が使用するプラモデルは?」

「おう、ソウルゲインだ。玄武金剛弾は製作中だから通常装備だけどな」

 ソウルゲインは『スーパーロボット大戦シリーズ』に登場するスーパーロボットだ。青い装甲で覆われた筋肉質な姿をしており、格闘戦に特化している。

 

「勇登は相変わらずアルトアイゼンか?」

「駄目か。夜間使用のナハトの方がよかったか?」

「ナハトは赤から青にカラーリング変更しただけだろ。アルトアイゼン以外は使用しないのかって意味だ」

 少し考えてみる。普段ガンプラバトルに使っているのはアルトアイゼンばかりだ。それ以外となると・・・・・・。

 

「パイルバンカー付いてる機体他にいたっけ?」

「お前、単にパイルバンカーやりたいだけだろ」

 確かにその節はある。何しろ男のロマンだ!

 パイルバンカーとは杭を火薬等を用いて打ち出す架空の兵器だ。格好良く言えば、接近して敵を杭で打ち砕く一撃必殺。ただ、現実的に考えれば分かるが、この武器に実用性はない。わざわざ敵の懐に飛び込み杭を相手の体に密着させなければならないし、無理な角度で打つとパイルバンカーその物が破損してしまう。

 

 

 

 時刻は4時20分。少しばかり速いがプラモデル部の扉をノックする。

 

 返事が聞こえたため俺と加倉は部室へ踏み込む。

「ようこそプラモデル部へ、今日はどの様なご用件かな?」

 部長の馬坂哲世(うまさかてつよ)が軽快にお出迎えしてくれる。馬坂は高校で知り合った友達だ。俺達と違って普通にガンプラを楽しむ男のためプラモデル部に所属している。

 

「馬鹿げた挑戦状が来てるだろ、馬坂にはすまないが付き合ってくれ」

「古宮君も大変だね加倉君に付き合わされて」

「俺が強制しているみたいに言うなよ。こいつだって満更じゃなさそうだからな」

 加倉の言うとおり嫌な訳がない。だからといって好戦的なイメージを馬坂に与えたくはない。普段は物静かに暮らしているほうだ、自分を解放するのはバトル時に絞っている。

 

「バトルは1対1の試合を2回で変更ないね。初戦はうちの新入生と古宮君、2回戦は僕と加倉君でいいね」

 馬坂が今回の試合の流れを確認する。挑戦状に書いたことのままだ。

「もちろんだ、俺か古宮のどちらかが負けた段階でこのバトル、プラモデル部の勝利だ」

「おい、加倉そんなルールは聞いてないぞ。引き分けはないのか」

「引き分けになるぐらいなら俺達の負なんだよ」

 こいつめ、勝手にルールを足すとは。変更点があるなら教えろ!

 

「それじゃあバトルルームへ行こうか。白樹さんも行くよ」

 馬坂に呼ばれて一人の女子生徒が立ち上がった。プラモデル部に女子とは珍しい。髪は肩に触れるか触れないか程度のセミロング、制服もだらけておらず、清楚なイメージだ。身長はたぶん160センチメートルちょっとありそうだ。162~3といったところか。

 170ない男子は結構身長の事気にしてるぞ!

 

「始めまして。新入生の白樹茜《しらきあかね》です。よろしくお願いします」

 白樹さんは挨拶を忘れない礼儀正しい人のようだ。

「こちらこそ。3年の古宮勇登です。よろしく」

「とりあえず移動するよ。挨拶はバトルルームで改めてするから」

 馬坂の後を追うように移動する。ガンプラバトルの筐体があるのは体育館横の倉庫を改装した建物だ。

 

 

 

 

 体育館横の倉庫には建て付けの看板に『プラモデル部専用 バトルルーム』と書かれている。

「さっ、みんな中に入って」

 

 倉庫内の中央には中型のバトルシステムが鎮座している。バトルシステムの筐体は6角形になっており、それが4つ繋がっているため、ひし形のような形になる。

「みんな知ってるけどプラモデル部部長の馬坂哲世です。本日の試合よろしくお願いします。ルールは先ほど確認したとおり、お互いベストを尽くしましょう」

「任せろ、俺はいつでも全力投球だ!」

「加倉君が全力なのは言わずも知れたことです。僕はシステムを起動させますね」

 

 馬坂がシステムを起動させる間、加倉は白樹さんに自己紹介をしていた。

 ふと気が付いたが、白樹さんは髪を後ろで束ねていた。ガンプラバトルをする時は髪を縛るのか。

 

「白樹の使うガンプラは何だ?」

「はい、ウイングガンダムゼロです。テレビ使用ですから天使じゃないほうです」

 加倉はもう呼び捨てかフレンドリーな奴だな、って使用機体ばらしもいいの!?

 

「加倉、俺達は先輩だぞ。やわらく接しているつもりでも、1年生には脅迫に聞こえるかもしれない。だいたい対戦相手の使用機体を聞くとかありえん」

「そう堅苦しくなるなよ。相手がウイングゼロって分かっただけだろ」

 加倉もだが、すんなり教えてしまう白樹さんも一体何を考えているんだ。自分の手の内を敵に知らせてどうする。それとも大胆な改造を施しているため、元になったガンプラが何であろうと構わないのか?

 

「古宮先輩いいんですよ。実は私も部長から先輩の使用機体聞いちゃいましたから。ガンダム作品じゃ無いプラモで、アルトアイゼンって言うんですよね」

 あらま、知られてたの。隠しているつもりはないから別にいいか。

 

 

 

 そうこうしている内に、バトルシステムから光があふれ出した。この光の粒こそプラフスキー粒子である。

「準備出来たよ。では1回戦を始めようか」

【Please Set Your GPBase】

 英語でガイド音声が指示している。もちろんカタカナ喋りではない。

 

 俺と白樹さんはバトルシステムを挟んで立つ。お互い『GPベース』といわれる記憶媒体をシステムにセットする。

 アルトアイゼンをバトルシステムの上に置く。システムがプラモデルの内部構造まで読み取り性能を把握する。同時に、ファイターの周囲にプラフスキー粒子で作られた操縦桿とモニターが表示される。

 

 俺達とて昔はガンプラを作ってガンプラでバトルもしていた。しかし、中学に上がる辺りからスパロボに目覚め始めた。そこに中二病というやつも被ったのかもしれない。ガンプラじゃないプラモデルでバトルする自分に充実感が芽生え始めた。

 

 アルトアイゼン、愛称はアルト。この機体に注目したのはその無骨さからだ。日本語に直訳すると『古い鉄』、時代遅れのクズ鉄とのことだ。絶対的な火力を以て正面突破を可能とする、これだけ聞けば非常に強そうだが実際はそうでもない。特攻兵器のようなものだ。武装は接近戦用に偏っており、圧倒的な加速性と防御力で突進しろというコンセプトだ。

 俺はそんなアルトアイゼンを気に入っている。

 

 ガンダムの人気と時代の波に勝てるほど俺も加倉も強くない。それでも、好きなものに背を向けるわけにはいかない。

 俺達は自分の好きなプラモデルで戦い、そして勝たなければならない。名前も顔も知らないスパロボ好きの為にも、己のためにも。

 

 

 

【Battle start】

 

「出撃する!」

 アルトアイゼンがカタパルトからバトルフィールドに飛び出す。乱暴ともいえる加速とスピードこそが強みだ。

 

 昼間の市街地と言っても高層ビルが立ち並ぶだけの無人の街。

障害物が多いと自慢の速度も活かし辛いが、何より白樹さんの機体が装備しているはずのツインバスターライフルが怖い。2丁のバスターライフルを合体させた超高出力のビーム兵器だ、周辺の建物ごと吹き飛ばされてしまう恐れがある。

 

馬坂め、バトルシステムを起動する時に俺の不利な地形をあえて選択したな。

 

 アラームが鳴り響きモニターにも警報が表示される。敵にロックオンされたということだ。

「真上か! ぬっ・・・!」

 眩しい。敵は上空で太陽を背にしている。

 

 目がチカチカしているが今は逃げなくては。ビルを盾にするように移動する。

 

 白樹さんがツインバスターライフルを発射した。極太のビームがビル街を焼き尽くしながらこちらに迫る。

 スラスターを吹かし加速する。操縦桿から伝わる振動が激しくなる。

 

 建造物を盾にしたお陰で難を逃れたが、2度目は通用しないだろう。いくら重装甲な機体でもバスターライフル相手では意味がない。

 

「先輩が一撃必殺を得意とするように、私も強烈な一撃が好きなんです」

 白樹さんから通信がくる。何となく雰囲気が変わった感じがする。

 

「ツインバスターライフルもロマンが詰まってる武器だな。俺も嫌いじゃない」

「ツイン・・・、うふふ、甘いですね」

 え、何だ、その不適な笑は。甘いって?

 

 またしても警報。身を隠していたビルがビームで溶かされる。

 

 撃ってきた方向を確認すると、ウイングガンダムゼロが両手にライフルを持って浮遊している。

「私はまだ連結させていませんよ」

 そういうことか! 先ほどまでの攻撃はツインバスターライフルではなく、合体前のバスターライフルだったのか。

 

「凄いな、それだけの実力があったらもう部のエースなんじゃないか」

 ウイングゼロがライフルを放った。すぐさま横に跳躍してビームをかわす。返答の代わりにしては随分と荒いまねをしてくれる。

「無駄話をしている余裕あるんですか」

 立て続けに2発飛んでくる。容赦のない的確な射撃だ。

「君そんなキャラだったか!?」

 

 左腕に装備されている3連マシンキャノンを打ち返すが、弾がバラけて当たらない。

 

 まるで本物のゼロシステムを搭載しているかのようだ。バトルシステムは劇中に登場する非人道的な機能は再現されないようになってるため、白樹さんの自身の技能だ。

 

「どうした勇登! いつものお前らしくないぞ! 狩をする狼のような眼は何処にいった!」

 外野の加倉が応援してくれている。期待に応えたくても避けるので手一杯だ。

 

 白樹さんはアルトアイゼンとの戦い方を熟知しているようだ。こちらが後退すればその分前進して一定の距離を保つ。下手に前に出れば打ち落とされる。

 

 勝ちを焦り、前に出てきてくれればアルトの距離に持ち込めるのに。

「素晴らしい新入部員でしょ! 1年の中ではダントツだよ!」

「マシンキャノンで応戦しろ! でなきゃヒートホーンで切り払え!」

 そんなことが出来たらとっくにやっている!

 

「おい! フィールドの端まで追いやられているぞ!」

 ガンプラバトルはリングアウトも負けになる。ジリジリと追い詰められていることは分かっている。

 

「流石、馬坂が褒めるだけあるな。この機体の事も随分と研究したんじゃないか」

「・・・・・・」

 白樹さんから返答がない、冷酷な戦闘マシーンのようだ。加倉には悪いが本当に負けるかもしれない。

 

 負けるとしてもただでは終わらせない。窮鼠猫を噛む。

 

 緊張のあまり唇が乾き、頬が上ずる。次に相手がバスターライフルを撃ってきた時が勝負。

 さぁ、来い!

 

 ウイングゼロのライフルから強力なビームが放たれる。

 俺は一気に突撃する。最大加速だ。

 

 アルトアイゼンの両肩には炸裂鉄球弾が大量に含まれている。スクエア・クレイモアはその弾を対象目掛けて一斉発射する武器だ。

「クレイモア!」

 アルトの肩から全弾打ち出されていく。高速移動中の射撃なので照準は僅かにぶれているが射角も広いため避けるのは困難のはずだ。防御体勢に入ってくれれば攻め立てるチャンスが来る!

 

 え、嘘だろ!

 

 ウイングゼロが左手のバスターライフルを構えただと!

「受けて立ちましょう」

 白樹さんのウイングゼロはクレイモアを浴びてひびが入りながらもライフルを撃った。

「いい姿勢だ!」

 

 驚きと気合の混ざった掛け声が出る。

 

 直撃を避けることは出来たが、アルトの右足は付け根からごっそり持っていかれた。だが、それだけの価値はあった。これだけ接近できればリボルビング・ステークが使える。

 

 俺はウイングゼロの胸のど真ん中に右腕から伸びる鋼鉄の杭を差し込んだ。勢いがついているからウイングゼロを突き刺したまま前進する。

 リボルビング・ステークはリボルバー式のパイルバンカーであり、こいつの象徴だ。突き刺したステークを火薬でさらに打ち込む。

「どんな装甲だろうと、打ち貫くのみ!」

 

 1発打ち込むと表面の装甲が砕け散る。衝撃が強く使用している側にまで響いてくる。リボルバーが回転して2発目、3発目が炸裂する。

 勝負あり。ウイングゼロのボディが粉々に砕け散った。

 

【Battle Ended】

 

 システムが試合の終わりを知らせる。プラフスキー粒子の散布がなくなり、フィールドは消え去りプラモデルは動かなくなる。

 筐体の上には右足が太股からないアルトアイゼンとボディが砕けたウイングゼロが倒れている。

 

 辛うじて勝利することができた。これで加倉にバトンを繋げれる。

 

 

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