ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ!   作:タロウMK-Ⅱ

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 準々決勝戦です。
 今回の対戦チームは『必ず1チームぐらいこういう奴ら居るだろうな』と思いながら書きました。




勝利への拘り

 Aグループ、Bグループの予選が終わると、準々決勝戦前に12歳以下の子供達によるトーナメントが開かれる。

 

 その間、俺達チームスパロボは観客席の馬坂から直で見ていた大会の感想を聞かせてもらう。

「準々決勝進出おめでとう。部員達のチームは初戦敗退だったよ」

「そういやぁプラモデル部もAグループだったな。どこと対戦したんだよ」

「『我に死角無シ』っていうサイコロガンダムのチームだよ。いや~、歯が立たなかったね」

 俺もライブモニターで観戦していたがサイコロガンダムは別格な気がする。っていうかあの敗れたチームプラモデル部だったのか。渋いモビルスーツを好む連中だな。

 

 それはさて置きサイコロガンダムは鬼門だ。勝てたとしても決勝戦まで機体を修復、温存しておくことが出来るだろうか?

 

「勇登先輩、険しい表情ですが気分でも悪いのですか?」

 以前のバス内でも白樹さんに体調を心配された。不健康体質にでも思われているのか?

 

「いや、サイコロガンダムの対策を考えていた」

「気が早すぎますよ。まずは2回戦目のことを考えなくてはなりません」

 そうだ今は次のバトルに集中しなければ。

 

 トーナメント表で対戦チームの名前を確認する。

 『流星軍』、流星群と軍隊を掛け合わせたネームか。流星を名乗るぐらいだからスピード自慢の組み合わせと予想できる。

 

「それじゃあ次の対戦チームの流星軍についてだけど」

 馬坂はメモ帳を取り出し読み上げてくれた。

「トールギスⅢ、エアマスターバースト、Sガンダムブースター・ユニット装着型による機動性と速度重視の構成だったよ。どの機体も敵を倒せる決定打を持っている。1回戦で行った戦術は3機が一斉に前に出てスピードで敵を翻弄し、隙を見せた者から攻撃して撃墜といったものだった」

 他にも隠し玉が存在するはずだ。1回戦で手の内を出し切るわけない。

 

「3機の中で司令塔になってる奴はどいつか分かるか。高速で動き回ってるのに統制が取れてるってことは、判断力のある頭がいるはずだ」

 加倉にしては的確な意見だ。

 

「リーダーはトールギスⅢの人みたいだよ。たぶん司令塔も兼ねているんじゃないかな」

「トールギスの可能性が高いな。うーん・・・そうだな・・・」

 何やら加倉には策があるようだ。一体どんなひらめきなのか。

 不安な点はフィールドだ。ガンプラバトルのフィールドはシステムが適当に選ぶため機体特性を生かせないこともざらである。戦場に合わせた作戦が必要となる。

 

「勇登、少々アルトアイゼンに梃入れするぞ」

「はっ? ソウルゲインじゃなくてアルトアイゼン・リーゼの方?」

 

 加倉の考えがさっぱり読めないが、自信ありそうなので乗っかってやろう。

 

 

 

 加倉の案でアルトアイゼン・リーゼの全身に追加武装を施し、着脱式の大型ブースターを装備させた。これ以上の武装と加速性能は自殺行為なのだが。

「絶対的な火力による正面突破に磨きを掛けたんだが・・・、どうだ?」

 

 どうだと聞かれてもこれは完全に俺任せということか!? 余っていたオプションパーツを積めるだけ積んだだけだろ!

 

 ただでさえ重たい両肩にハイパーバズーカを追加して、両腕に大型ガトリングガンを抱えさせ、脹脛にはミサイルランチャーと来たもんだ。ついでにウイングにはスプリットミサイルまである。

 

「やっておいて難だが、この案却下していいか。大型ブースターはソウルゲインにでもつけておけ」

「何言ってやがる! 短期決戦で攻め込んでトールギスを落とす作戦だぞ!」

 作戦というか無茶振りにしか聞こえない。

 

 だが、これ以外にもっと良い策があるかと訊かれれば答えられない。

「いくらなんで勇登先輩の負担が大きすぎます。この形態はサイコロガンダム戦に取っておくべきです」

 白樹さんは今回は反対ということか。確かに大型機に効果的な武装かもしれない。

 

「逆に敵の立場で考えてみてください。アルトアイゼンの突撃力には必ず警戒します。ヴァイスリッターは中距離から長距離の射撃機、ソウルゲインはクアンタを引き付けていたため接近戦が得意かもしれないと予想できます」

 俺達が高機動用の機体ならどうするか。まず接近戦が得意な奴には近づかないのは鉄則だ。突進力に優れるリーゼから撃墜するか、射撃戦に優れるヴァイスリッターのどちらかだ。

 

「私ならヴァイスリッターから落とし射撃戦で優位に立ちます。アルトアイゼンの機動は単調なため振り切りやすいので危険性は低いと思います。問題はソウルゲインです。玄武金剛弾以外にどの様な機能があるか不明なのです」

 ソウルゲインについて先ほどの試合から分かるのは、接近戦に優れていることと右腕が強力なロケットパンチであることぐらいか。

 

「敵の不意をつける確率が高いのは俺ってことか」

 う~む、そう簡単に不意打ち出来る気もしない。流星軍、想像以上の鬼門だ。だが準決勝まで残らなければ姉さんに合わせる顔がない。

 

 

 

 子供の部が終わり、トーナメントが再開された。

 

 アルトアイゼン・リーゼの余計な装備はウイングのビーム撹乱幕以外は撤去した。

 

 バトルシステムの前に選手が立ち並ぶ。流星軍のメンバーは俺達より少し年上の大学生といったところだろうか。

 

「それではこれより準々決勝戦を開始いたします!」

【Battel Start】

「チームスパロボ! 行くぜ!」

 加倉の号令と共にカタパルトから出撃する。

 

 今回のバトルフィールドは月面基地か。重力が弱く宇宙空間に近い感覚だ。

「勇登、前に出すぎるなよ。皆で練った作戦通りいくぞ」

「分かっている」

 孤立すれば、そいつから集中砲火され撃墜される。味方の背中を守るように戦わなければならない。

 

 モニターに敵機が映し出されている。ズームしなくても姿が拡大されるほどの速度でこちらに向かっている。

 敵チームが先に攻撃を仕掛けてくる。6発ほどのビームを撃ってくるが狙いは甘い。

 

「ビーム撹乱幕を使用する。いいな」

「おう! タイミングは任せた!」

「了解です」

 加倉、白樹さんから使用許可が下された。後は敵の出方に合わせるのみ。

 

 トールギスⅢがこちらの上を取る様に上昇する。それと同時にエアマスターとSガンダムが散開する。

 

 これはトールギスⅢに注意を集めさせ、その間に2機が相手の後方に回り込む作戦か?囲まれる前に撹乱幕を使わなくては。

 リーゼの両ウイングからスプリットミサイル型のビーム撹乱幕を発射する。

 

「飛び込むぞ!」

 俺達は薄い霧のような撹乱幕の中に飛び込む。

 

 案の定後方に回り込んでいた2機がビームを撃ってくるが無効化できる。が、リーダー機であるトールギスⅢはメガキャノンの銃口を展開させ最大出力で狙ってきた。これは流石に受け流せないだろう。

 

「Bモードで迎撃します」

 オクスタン・ランチャーはビームと実弾両方を使い分けることが出来る便利な武器だ。白樹さんの正確無比な弾道は、エネルギーチャージ中で動きの止まっていたトールギスⅢのメガキャノンを捉えている。

 弾丸がメガキャノンに命中すると、トールギスⅢは誘爆を恐れメガキャノンを投げ捨てた。

 

「後7秒で幕が消えるぞ」

 ビーム撹乱幕の濃度が下がっていくので2人に伝える。

 

 トールギスⅢがビームサーベルをシールドから抜き取り、真っ直ぐ突っ込んで来た。アラームが鳴る、狙いは俺か。

 確かに速い、だが、俺のリーゼ程ではない。

「かかって来い!」

 

 俺はトールギスⅢに向けて踏み込んだ。正面衝突で負けるはずがない。

 

 リボルビング・バンカーを突き出したが、そこに敵の姿はなかった。ギリギリの頃でリーゼの横をすり抜けて行った。

 

「バカッ! 孤立すんなって言っただろ!」

 はめられた! 俺を狙っている振りをして誘き出したのか!

 つい先程注意されたばかりだというのに。

 

 時間的にもビーム撹乱幕は切れている。Sガンダムとエアマスターからの攻撃も激しくはずだ。

 俺は急いでトールギスⅢを追いかける。

 

 加倉もトールギスⅢを止めにかかるが、急速な旋回性能の前に振り切られてしまう。

「狙いは私のようです」

 

 ヴァイスリッターの左腕部に装備されている3連ビームキャノンで迎え撃つが、シールドで防御して足止めにすらなっていない。

 

 ビームサーベルを振り上げて切りかかるトールギスⅢ。相手が逃げると見込んでの大振りな構えだ。しかし、白樹さんは逃げる動作など微塵も見せなかった。寧ろオクスタン・ランチャーを槍の様に突き出した。

 

 オクスタン・ランチャーの銃口がトールギスⅢの胸部に突き当たる。ゼロ距離で強力なビームが胸板を貫く。

「あれは・・・」

 そうだ、白樹さんと初めてバトルした時も、彼女は突進してくるアルトアイゼンにバスターライフルを構えた。逃げたり守りに入る姿勢をとらなかった。完全に自分が攻め込んだと確信した相手へのカウンター攻撃である。

 

 トールギスⅢが爆発して反応がロストする。

 

「油断するな! 機動性は俺達が負けてるんだからな!」

 加倉の言うとおりだ。まだ勝負は付いていない。

 

 

 

 3対2で数では優位だが、Sガンダムもエアマスターも素早すぎて捕らえきれない。特にSガンダムの長距離射撃がうっとおしい。

 

 ちょっと近づいて撃ってきたかと思えばすぐに後退。自分達が安全な距離からしか攻撃してこない。まるで戦意を感じさせないバトルだ。格闘技なら審判から指導がはいるような戦法だ。

 そんな状況がかれこれ3分以上こんな状況が続いている。

 

「リーダーが居なくなっても敵は冷静だな。攻め込ませる隙を与えない」

「俺の読みが外れたって言いたいのか?」

「別に責めている訳じゃない。こうも周りを飛び回れるとイライラするんだよ」

 確かにソウルゲインを意識しているという読みは外れたが、そんなことは気にもしていない。

 そんなことより敵の作戦が不快だ。相手を挑発して痺れを切らしたところを狙い撃ちする。理に適っている行動かもしれないが、どうにも納得いかない。

 

【残り1分を切りました】

 くそッ、制限時間があるのか。

 

 まぁ、このままタイムアップになっても1機撃墜しているため俺らが判定勝ちだ。

 だけど、タイムアップによる勝利など素直に喜べる訳ないだろ。

 

 流星軍、お前らもファイターなら玉砕覚悟で勝負を挑んで来いよ!

 

 俺はブースト機能を作動させた。アルトアイゼン・リーゼが周囲のプラフスキー粒子を吸収しだす。

「やめろ勇登。奴等の挑発行為に乗っかんな」

 ソウルゲインに後ろから押さえ込まれる。

 

「だけどここまま時間切れだなんて許せるか」

「違う! あと1分『も』あるんだ。1分『しか』じゃない、『も』だ」

 イラだつ心を無理矢理なだめ、ブースト機能を停止させる。

 

 するとエアマスターだけが変形しファイターモードで接近してきた。ファイターモードは全面に火力を集中した形態でもある。

 Sガンダムは相変わらず長距離射撃ばかりだ、援護する気すらないのかあいつは。

 

「俺が上を取る! お前は下だ!」

 加倉が指示するよりも早く俺達の体は動いた。ソウルゲインとリーゼによって上下から挟み撃ちにする。

 

 ほぼ同時にソウルゲインの白虎咬《びゃっここう》とリボリビング・バンカーが炸裂する。エアマスターは一瞬でスクラップと化す。

 さぁ、次はお前の番だ! 俺と加倉はSガンダムの方を睨みつける。

 

 結局、Sガンダムは逃げ惑うばかりで制限時間が来てしまった。

 

 

 

 試合には勝てた。これでチームスパロボは明日の準決勝に進出できる。

 だが、喜ばしい勝利ではない。逃げ回り、それでいてタイムアップなど敵に弄ばれた感じがして腹立たしい。こんな奴とは初めてバトルした。

 

「勇登、いい加減機嫌なおせよ。ほら、サイコロガンダムの試合が始まるぞ」

「どうせサイコロガンダムが勝つだろ」

 俺達はガンプラ修復コーナー兼休憩室で、他のチームの試合を観戦している。

 

「勇登先輩はタイムアップの事を引きずり過ぎです。私には勝ちを焦っているように思えました」

 勝ちを焦った、その節は当てはまる。流星軍の行動は相手を挑発するかのようなものだった。こんな奴等に負けたくないと怒りが込み上げたのは確かだ。

 

「俺が取り乱したのは認める。その・・・、加倉はよく耐えられたな」

 加倉は熱い男だ、本来は俺がストッパーのはずなのに立場が逆転してしまった。

 

「あー、何つうか、あれだな。冷めたってやつだな。試合放棄みたいで熱が冷めちまった」

 熱いを通り越して冷めた・・・か。

 

 俺が熱くなりすぎていただけかな。仲間のため、姉さんのため、鳥沼さんとの約束、ガンプラ以外の普及、背負うが沢山ありすぎる。

 




 読みは外れるし、タイムアップだわで不完全燃焼の回でした。

 次回はサイコロガンダムとの対決です。

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