ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ! 作:タロウMK-Ⅱ
街を焼き尽くした場所で浮遊を続ける『四角い死神』ことサイコロガンダム。
俺は白樹さんから授かったオクスタン・ランチャーをアルトアイゼン・リーゼの右手に握らせ、スラスター出力を限界まで上げる。
「フルブースト!」
周辺のプラフスキー粒子を吸収しながらの高速移動。リーゼは高濃度の粒子に覆われている。簡単に止められると思うなよ。
サイコロガンダムの体が回転して6の目をこちらに向ける。
その武装は知っている、6連大型ミサイル攻撃だ。
6つの黒い目から大型ミサイルが発射される。
左腕の5連チェーンガンを撃ちまくり大型ミサイルを打ち落とす。大型のため1つひとつの爆発の規模は非常に強く、巻き込まれれば一溜まりもない。
だが俺は止まらない。
爆炎の中に自ら突っ込んでいく。アラートが鳴ろうと、警報が表示されようがお構いなしだ。
狙うは一つ、加倉が作ってくれた破損箇所。
爆発の炎から抜け出した途端、サイコロガンダムの額が輝いた。
左腕で迫りくるビームから身を守った。前方から打ち付けられるかのような衝撃が走るが、それでも前進し続ける。
「バカかこいつは!」
敵との距離が近いためスピーカーから相手の声が聞こえる。まぁ、こんなことする奴はそう居ないよな。
損害は左腕が焼き払われただけだ。
「これで!」
玄武金剛弾が抉り込んだマスク部分、そこにオクスタン・ランチャーを突き刺す。
「どうだ!!」
俺はEモードでトリガーを引いた。
オクスタン・ランチャーの銃口は玄武金剛弾の接合部に密着している。そこからビームが流れ込みソウルゲインの右腕は敵機の内部で爆発する。
サイコロガンダムの首の付け根、顔面から炎が噴出す。
この程度の爆風では怯まない。俺はサイコロガンダムの眉間にリボルビング・バンカーを突き立てる。
「貫けぇ!」
アルトアイゼンのとき同様この機体を象徴する武装。さぁ、何発まで耐えられる!
強力な炸薬によって杭が打ち込まれる。筒が回転して次弾が装填され再び打ち込む。
サイコロガンダムの顔面が崩れ落ちる。3重構造になっていたのか、どうりで頑丈な訳だ。まぁ、これで終わりだがな。
俺はさらに踏み込んで内部の中核パーツにもバンカーを刺し込む。
「やっ、やめろおぉぉぉお!」
悲鳴いを無視し、リボルビング・バンカーが唸りを上げる。まず1発! 続いて2発目! 3発目! 最後の4発目を打ち出した時、サイコロガンダムの頭部を粉砕した。
しかし、試合は終わらない。頭を失いただのサイコロに成り果ててもまだ生きている。
リボルビング・バンカーも弾切れ、左手が無いためリロードも不可能。まだクレイモアは未使用だが、肝心なのは何処を狙うかだ。
一瞬の迷いを突かれ、俺はサイコロに体当たりされ跳ね飛ばされた。
そしてサイコロの1の目が輝き始めた。拡散メガ粒子砲を撃てるだけのエネルギーが残存しているだと。
「勇登ぉぉぉ!」
何だ突然! 両腕を無くしたソウルゲインが俺とサイコロの間に割ってはいる。
「俺がやれるのはここまでだ」
「はっ!? お前は下がっていろ!」
加倉は下がるどころかサイコロに1の目に自ら突進して行った。
「おい! やめろぉぉぉぉ!!」
俺の制止を聞かずソウルゲインは右肩からタックルした。1の目から異様な放電が発生して光があふれ出した。
火柱が立ち上がり、ソウルゲインの反応が消える。爆風に飛ばされないように踏ん張りを利かせる。
加倉までもが散ってしまった。なのに敵は健在している。こいつは俺の大切な、掛け替えのない仲間を2人も・・・。
真っ黒な煙から姿を現した四角い塊。
「クレイモア! 全弾持っていけ!!」
リーゼの両肩が展開する。アヴァランチ・クレイモア、以前よりも弾数が増した炸裂鉄球弾を雪崩の如く吐き出す。
鉄球弾に削り取られるようにサイコロが穴だらけになり完全に崩壊していく。
【Battle Ended】
システムがやっと終わりを告げた。
「Aグループ勝者はチームスパロボです!!」
操縦桿やモニターが消え去り、眼前には7つの筐体を繋げたバトルシステムが広がっていた。
ああそうだ、俺はガンプラバトルをしていたのか。熱中しすぎて現実とバトルの区別がつかなくなっていた。
「やったな、決勝戦に進出だぜ!」
加倉が勢いよく俺の背中を叩く。
「あ、あぁ、そうだな・・・」
「疲れきったのか、全然嬉しそうじゃないぞ」
「疲れ、うん、そんなところだな」
頭の中がぼーとする。今は何も考えられない状態だ。
そういえば客席から歓声があまり聞こえてこない。代わりに変なざわめき声が聞こえてくる。
「サイコロガンダムが負けるなんて・・・」「スゲーぞスパロボ!」「こりゃ凄い番狂わせだ!」
ようく聴けば、俺達を称えてくれている人もいる。
チラッと横に立っている白樹さんを見る。真っ直ぐな瞳でバトルシステムの上に力無く倒れるヴァイスリッターを見つめていた。
ガンプラ修復コーナー兼休憩室に大会参加者以外は立ち入り禁止だ。そのため、修復をチームメイト以外の人物に手伝ってもらうことは出来ない。
決勝戦はBグループの準決勝と12歳以下部の決勝が終わってから2時間後だ。
俺達のプラモデルは既に決戦を終えた後かのようだ。とてもじゃないが準備万全で決勝戦は迎えられない。
それぞれのダメージを確認する。アルトアイゼン・リーゼは左腕を損失、6連大型ミサイルの爆炎の中を突っ切ったため細かい傷と歪みがある。ヴァイスリッターは左肩、左足が付け根から破壊されており、予備パーツで代用することすら難しい。ソウルゲインにいたっては全身バラバラ状態で1日あっても再生できない。
「うむ・・・、出来る限りでいいから修復を行おう」
リーゼの修理は共用範囲だが、ヴァイスリッターをどうするかだ。
「この大会は使用機体の変更も認められているから加倉は機体変更だな」
「ふっ、甘いぜ勇登。予備パーツに手を掛けず作りこんだヴァイサーガを使う時が来たんだよ」
いやいや予備パーツを作りこんでおけよ。大破すること前提だったのか。
ソウルゲインが武道家ならヴァイサーガは剣士といったところか。全身に青黒い鎧を身に付け赤いマントを羽織っている。鞘に収まった五大剣を腰にマウントせず、何故か左手で持つ。
「肝心なのは完成度だ。この大会で戦えるだけの性能はあるのか」
「おうよ! 何しろソウルゲインとの互換性も持たせてあるからな」
互換性って、ソウルゲインの何処かが破損した場合ヴァイサーガのパーツを移植するつもりだったのか。
「加倉先輩の発想は奇抜ですね」
「言ってくれるな、ありがとよ」
いや褒めてないだろ、白樹さん困惑しただけだろ。
すると加倉はヴァイサーガの装甲を剥がし始めた。
「何してんだ、分解する気か?」
「ふっ、言っただろ、互換性があるってよ」
加倉は不適にほくそ笑むとヴァイサーガのパーツを外し続け内部フレームが露出する。そこに、壊れたソウルゲインのパーツをはめ込む。
「なるほど、ヴァイサーガの骨格にソウルゲインのパーツを足しているのか」
「おうよ、2機の長所を併せ持つ機体に仕上げてやる」
それはもうツヴァイザーゲインだろ。まぁ、ここにあるパーツではツヴァイに改造することは無理だろう。
とりあえず、加倉は1人でも大丈夫そうだ。
「勇登先輩、まずは修復が簡単なアルトアイゼンから行いましょう。ヴァイスリッターは余った部品で補強する程度でもかまいません」
「確実に直せる方から修復するか、まぁ妥当だな」
俺と白樹さんは横に並んでアルトアイゼン・リーゼの修理に取り掛かる。
1週間前なら女子が横に居るだけで緊張したが今はもう慣れたものだ。こんな自分も変わるものだな。
俺もそろそろ『さん』付けを止めようかな。そうすればもっと近づけるだろうか。
「ああぁぁぁ! やっちまったぁ!!」
加倉が突然大声を上げた。俺と白樹さんはビクリッと跳ね上がった。
「どうした、何をミスした!」
「Bグループの準決勝を観忘れた! 誰が勝ち残ったかわからねえ!」
そういえば作業に集中していてライブモニターを点けていなかった。時間的にはもう12歳以下の部で決勝戦が始まるころだ。
「別にどのチームが勝ち残っても我々がやることは1つです。プラモデルを修復するそれだけです」
白樹さんはいたって冷静だ、焦る様子が微塵もない。
彼女の言うとおり決勝戦の相手がわかったところで、プラモデルが使い物にならなければ意味はない。最優先事項は修復だ。
馬坂の話では『ガンプラの咆哮』というチームが優勝候補らしい。正直サイコロガンダム以上の猛者がこの大会にいるのだろうか?
リーゼの修理はこんなところだろうか。左腕は付け替え、ヒビや歪みも修正できた。
加倉もパッと見ソウルゲインぽく纏めている。細かい箇所はヴァイサーガのパーツを応用しているが問題ないだろう。
決勝戦までの残り時間は約1時間。迅速にヴァイスリッターの応急処置をしなければバトルの参加すら危うい。
バックパックは丸ごと交換すればいい。筐体に立たせなければいけないため腕より足が優先か? でもどうやって修復するれば?
一から作り直している時間はない。どうすれば・・・。
「おっ、馬坂からメールだ。Bグループで勝ったのはガンプラの咆哮だとよ」
やはりそうか。フルアーマーガンダム、サザビー、ゴールドフレーム天ミナのチームだ。
「追記で書いてあることだが、『無理に直そうとせず左足はバトルシステムに置くためだけのものと割り切ったほうがいいかも。優佳さんより』っていうアドバイスがある」
この場に居ないのに俺達が直面している困難を察知してくれるとは。姉さんには敵わないな。
接着の乾燥時間を踏まえるともう時間はあまり無い。姉さんの案でいくしかない。
「機能はだいぶ低下するが、左足は立たせる事を目的として、左肩の付け根はプラ板で補強しよう。白樹さんもそれいいか」
「はい。動けさえすればオクスタン・ランチャーで先輩方の援護は出来ます」
やれることはやり切る。それで負けたら俺達はその程度のファイターだったということだ。
俺はいいとしても、加倉と白樹さんのプラモデルは万全の状態ではない。負ければ自分のことを責めるだろう。
「ヴァイスリッターがこんなになっても俺達に付き合ってくれる白樹のため絶対に優勝しなきゃいけないな」
「スパロボ普及のためじゃなかったのか」
ちょっと揚げ足を取ってみる。
「仲間の想いとスパロボの想い両方を背負ってるんだよ」
ぶれないな加倉は。揺るがないからこそ、こいつはリーダーに相応しいと俺は思う。
さぁ、目の前に立ちはだかる壁(ガンプラ)を打ち砕きに行くか!
ついに決勝戦です。