ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ!   作:タロウMK-Ⅱ

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 今回はソウルゲインとオリジナルMSが登場します。


ガンプラ以外でバトルする者達

 俺と白樹さんは自分のプラモデルと飛び散ったパーツを回収する。

 

「ガンプラじゃないのにお強いんですね」

 白樹さんはバトル時と打って変わってお淑やかな雰囲気だ。後ろで縛っていた髪も解いている。

 

「白樹さんこそ。俺も驚いたよ、正直負けを覚悟した」

「どんなに苦戦しても勝利を掴んだのは先輩です。とても楽しいガンプラバトルでした」

「楽しめたのなら結構だが随分と性格かわるな。まぁ、バトルは真剣勝負だから珍しくはないが」

「あっ・・・、怖かったですか?」

 白樹さんが僅かに顔を背けてしまった。まずい、聞かれたくないこと訊いちゃったか。

 

「癖みたいなものです。集中すると機械みたいになってしまうんです」

「それなら勇登も同じだ。バトル中のこいつの眼は鋭くて狼みたいだ」

 加倉が話に横から割ってくる。バトル中の俺はよく獣に例えられる事が多い。使用機体の影響だが、相手の隙を見つけ出す姿勢と大胆な攻め方が肉食動物に近いのであろう。

 

「白樹さん、お疲れ様。古宮君をあんなにも追い込むとは思わなかったよ。あと一歩だったのに」

「部長が前もって情報提供してくれたから対策を練れる事が出来たんです」

 やっぱり対策を練っていたのか。それならこっちにも考えがある。

 

「加倉、試合前にちょっといいか?」

 俺は加倉を呼び止め耳打ちで作戦を伝える。馬坂のガンプラは予想がつくため、ある秘策がある。一筋縄ではいかないだろうがそこは加倉の腕の見せ所だ。

「ほおぅ、うん、お前の案に乗った。それじゃ試合に行ってくる」

 加倉も納得してくれた。上手くいけば馬坂を秒殺可能だ。

 

 

 

 加倉と馬坂のバトルシステムの前に立ち、GPベースを筐体にセットする。

 

 さて、今度のフィールドはどんな場所か。

 

「先ほど、ひそひそ話しをしていましたが、秘策でも教えていたのですか?」

「思い当たることがあるから伝えただけだ」

「先輩、部長が使うガンプラと特性を知っているんじゃないですか?」

 感がいいのか、観察力があるのか、白樹さんに隠し事は通用しないのか。こちらの手の内がばれている。

 

 ここから喋っていてもバトルしている2人の耳には届かないだろう。

「馬坂のガンプラはローゼン・ズールを元にしているはずだ。サイコ・ジャマーに包囲されるより速く接近して仕留めろ、って教えた」

 

 バトルフィールドは宇宙空間、ちょうど2機が飛び出したところだ。

 

 加倉の使用機体はソウルゲイン。本来はサイコ・ガンダムと同じ40メートル級の大型機だが、1/144サイズのガンプラに合わせた大きさに調整されている。

 一方、馬坂の機体は紫色のシナンジュだ。色に合わせてバックパックもローゼン・ズールの物に改造しているはずだ。

 

「どうしてそこまで分かるんですか?」

「5日前、俺は馬坂とバトルして負けている。その時サイコ・ジャマーを切り札にしていた」

 サイコ・ジャマーはローゼン・ズールの武器であり、機能は原作とガンプラバトルでは異なる。ガンプラバトルでは妨害電波を発することで相手の操縦を妨害することが出来る。

 

「馬坂ほどの完成度を持ってすれば、相手の操縦を短期間だが遮断することが出来る」

 サイコ・ジャマーに掴まれば加倉の敗北は間逃れない。

 

「先輩方は部長が本気にならなければならないほどの強敵ですね。部長のローゼン・シナンジュが動いているところを観たものは部員にもあまりいないそうです」

「奥の手を最後まで取って置く秘密主義者だからな」

 

 加倉のソウルゲインは、動き回るローゼン・シナンジュに食い下がって追尾する。ビームライフルで牽制されるがお構いなしだ。

 そうだ、もっと距離を詰めろ!

 

 ところがソウルゲインは敵を追いかけなくなってしまった。

「どうした! サイコ・ジャマーを展開されるぞ!」

 ソウルゲインは明後日の方来に青龍鱗《せいりゅうりん》というエネルギー波を両手から放つ。

 

「何をしているんでしょうか?」

 俺が訊きたいぐらいだ。1回だけじゃない、あらゆる方向にエネルギー波を放っている。

 

 何も無いと思われた空間が爆発する。ローゼン・シナンジュは健在しているため、別の物を破壊している。

 ローゼン・シナンジュが動きを止めてバックパックからサイコ・ジャマー発生装置を4機射出する。そこでピンッときた。

「馬坂の奴、逃げながら発生装置をばら撒いていたのか」

 

「策に気がつかれたから勝負に出たのですね。マズイです、加倉先輩相手に功を焦っては」

 白樹さんはソウルゲインの事も予習しているのだろうか? アルトアイゼンとは違うが、突進力と格闘戦に優れる機体だ。

 足を止めたのが仇となったな。ソウルゲインの拳が青白い気を纏い、ローゼン・シナンジュに急接近する。

 

 馬坂はシールドを構えさせるが今更である。ソウルゲインの怒涛の連続パンチには耐え切れず、シールドは左腕ごと破壊される。

「サイコ・ジャマーも間に合わないな」

 

 ソウルゲインの両肘に装備されている聳弧角《しょうこうかく》というブレードが伸びる。肘打ちの原理でローゼン・シナンジュの腰を両断する。

 上半身と下半身が切り裂かれ爆発する。

 

 ソウルゲインが高らかに拳を掲げている。加倉の勝利だ。

 

 

 

「どうだ俺達の勝ちだ!」

 加倉が声を上げて喜んでいる。気持ちは分かるがもう少し押さえられないものだろうか。

 

「古宮先輩も加倉先輩も、本当に強い方です。私も学ぶことが沢山あります」

「負けたばかりだというのに白樹さんは前向きだな」

 建前でないのであれば、直向で分析力のある白樹さんはどんどん頭角を現す人間であろう。プラモデル部は安泰かもしれない。

 

「ごめん、白樹さん、負けてしまった」

 申し訳なさそうに馬坂が話しかける。後輩に見っとも無いとこを見られてしまったという感じだ。

「私も負けてしまいましたから、おあいこです。ただ、勝ちを焦りすぎたのとサイコ・ジャマーに頼りすぎだと思います」

「おっしゃるとおりです。反省してます」

 馬坂が頭を下げて謝っているため、どっちが先輩なのか分からなくなる。もしかすると白樹さんの方が実力は上なのか。

 

「俺達の勝ちだから約束は守ってもらうぞ」

 約束? この勝負、俺の知らないルールがもう1つ隠れていたようだ。

 

 連絡不足がありすぎるんだよ加倉!

 

「ゴールデンウィークに開催されるシロガネスーパーでのガンプラバトル大会に参加してもらう。もちろん俺達のチームとしてだ」

 シロガネスーパー主催の大会は1チーム3人と定められている。今回の勝負は馬坂をチームに加えるためだったのか。

 俺と加倉と馬坂なら鉄板メンバーだが・・・。

 

「プラモデル部はシロガネスーパーの大会には出場しないのか?」

「部としては参加しないよ。個人的に出場する部員はいるけれど」

 部長が参加しないと言っているのだから問題はない。

 

「とりあえずは部室に戻ろうか。続きは戻ってから話そう」

 馬坂はバトルシステムの電源を落とす。そもそも、バトルシステムの電力費ってどのくらい掛かるのだろうか? 学校の電力だからまあいいか。

 

「古宮先輩のプラモデル後で拝見させてもらってもいいでしょうか?」

 白樹さんに訊ねられた。もしかするとアルトアイゼンに興味が湧いたのかもしれない。

「別にかまわないが」

 俺はすんなりと許可する。これもガンプラ以外のプラモデルの普及に役立つことだ。

 

 

 

 流石はプラモデル部だ。プラモデルの製作、修復に必要な道具が揃っている。ニッパー、デザインカッター、紙ヤスリ、接着剤、塗料、エアブラシ、その他もろもろ。種類も充実している。

 

「とりあえず、大会の件だけど、加倉君のメンバーとして参加してもいいよ」

 馬坂も特に断る理由がないのだろう。

 

「ただし、僕はガンプラで出場するよ」

 やはりそうくるか。馬坂はガンダム一筋の男だ、そう簡単に別のプラモデルでバトルに出場してくれない。そもそも、ガンプラバトルに他のプラモデルを使うのはリスクでしかなく、メリットがない。

 

「俺達はチーム『スパロボ』で参加すんだぞ。そこにガンダムがいたらおかしいだろ」

 加倉が説得に入る。これは長くなるぞ。

「俺と古宮は決してガンダム嫌いな人ではない。ただ、ガンプラバトルをプラモバトルというより大きなジャンルにするべく活動を続けているんだ。戦車、戦闘機、戦艦等新しい分野を創造するためにだな・・・・・・」

 こういう時の加倉は饒舌だ。下手に意見を言おうものなら「俺の話を最後まで聞けー!」と言い返される。

 

 俺にしてみれば他のロボット作品が世間的に認められればそれでいい。

 

「あの、アルトアイゼン拝見してもいいですか」

 あぁ、約束したばかりだ。俺は愛機であるアルトアイゼンを白樹さんに手渡す。

 

「バトルの後だから傷だらけだが」

「お構いなく、先輩の操縦技術によるものも大きいですが、何故ガンプラでもないのにあれほどの性能が発揮できるのか気になるんです」

 バトルシステムが開発されてからというものガンプラはバトルする物に路線を変えた。そのためガンプラはバトルに適したプラモデルと成り、他のプラモデルは弱いという認識が一般的に広まった。

 

 白樹さんはアルトを手に取り食い入る様に凝視している。間接を動かし稼動域と構造までも調べようとしている。まるで自分の作品を査定しているかのようだ。

 

「先輩、不躾なことをお聞きします」

 査定の結果が出たのか。

 

「バラしてみてもいいですか?」

「駄目に決まってるだろ!」

 予想外の質問だった。不意にとんでもないことしたがる子だな。

 

「では、修理しているところを覗いてもいいですか?」

「えっ! 修理って、家まで来るきか!」

 心臓を鷲づかみにされたかのような感覚が走る。なんと大胆な発言をするんだこいつは! 色々と深読みされるぞ! そういう発言が健全な男子を困惑させるという事を知らないのかこの女は!

 

「ここはプラモデル部ですよ。この場である程度修理できますよ」

 あっ、なるほど、部室でってことか。

 

「部長に確認してみます」

「止めて置いた方がいい。加倉も馬坂も熱くなっているから聞く耳を持っていないぞ」

 白樹さんとチラッと2人の方に目を配る。

「貴様はガンダム一筋過ぎるんだよ!」

「君はそう言って自分の考えを他人に押し付けているんですよ!」

 

 加倉と馬坂は完全に出来上がってる。好きなものだから熱く真剣になれる、お互い譲れないものをぶつけ合う。ただ、これでは会話に割って入るのは不可能だ。

 白樹さんも声を掛けるのをためらっている。

 

「俺が勝手に使った事にすればいい。馬坂には後で謝る」

「それは駄目です。私の我がままですから古宮先輩に責任転換はしたくありません」

 白樹さんの言い分は筋が通っている。かといって、加倉と馬坂はおおよそ30分は口論するだろう。

 

 少し困っていると一人の部員から話しかけられた。

「自分、副部長なんですけど古宮さん、この部の顔なじみですから別に使ってもと思いますよ。どうせ部長も気にしませんよ」

 他の2,3年の部員達もうなずいている。

 

「ではお言葉に甘えさせてもらおうか」

 部員達の心意気はありがたいが、もしかして部長舐められてないか?

「私の席を使ってください」

 俺は白樹さんの席でアルトアイゼンの修復に取り掛かることにした。

 

 

 

 一番の破損箇所は右足だ。付け根の部分からパーツが外れており太股の損傷は激しい。

 

「これはパテで欠如した箇所を埋めるべきじゃないか」「まず接着剤であらかた直すべきだろ」「プラ板から作り直すのもありじゃね」

 野次馬が集まってくる。プラ板から製作できる技術があったら全国大会にいけるぞ、そんなまね俺には出来ん。

 

 そもそも俺はずば抜けた製作技術を持ち合わしているわけではない。ガンプラではないプラモデルをある程度戦うことが出来るように改造したぐらいだ。

 

「そんなに注目するような技は持ちあせていないぞ。じろじろ観察しないでくれ」

 野次馬に呼びかける。

「そのプラモで、どうやったらそんなに強く成れるか知りたいんですよ」

 野次馬からの返答が来る。ガンプラでもないくせにアルトアイゼンがあれほど動ける理由が気になっているのか。

 

「実はな、内部構造はガンプラの関節を流用しているだけなんだ。自作しているわけじゃないからな」

「側だけをアルトアイゼンにしているということですか。本当にそれだけですか」

 白樹さんはまだ秘密があると睨んでいるようだが、俺の技はそこが限界だ。

 

「俺はテレビやネットに名前が挙がるような人物じゃない。精々ガンプラじゃないくせにバトルしているという変人程度だ」

「古宮さんもここらじゃ強いぐらいだもんな」「地区予選とか出場してないし」

 ようやく理解してくれたか、野次馬として集まっていた部員は去っていく。ついでに説明しとくが、地区予選はガンダムシリーズ以外参戦禁止だ。

 

 これでようやく修復に取り掛かることが出来る。ふーっ、と一息つく。

「唐突な申し出なのですが、私も先輩方のチームに加えていただけませんか」

 白樹さんがまたしても突拍子もない発言をしてくれる。

 

「えっと、急にどうした? 俺達はガンプラ以外で戦おうっていう奴等だぞ。いいのか」

「部長はガンプラに拘りがあるようですし、もしよければ私が代わりに参加します」

 いきなり過ぎて何て答えるべきか。まずは加倉に相談しなければ、俺1人では決めかねる。

 

「加倉先輩、部長、私も先輩達にチームに参加してもよろしいですか?」

 うおおぉ、自分から話を持ちかけるとは白樹さんやる気満々すぎる!

 

「おっ、俺達のプラモデルに惚れたか。歓迎するぜ、メンバーが増えるのは嬉しいからな」

 加倉の奴めまた1人で物事決めよって、少しは俺にも了承を取れ。まぁ、俺も歓迎するが。

「ただ分かっていると思うが、ガンプラ以外でバトルする事になる。覚悟はあるか」

「はい。今後ともよろしくお願いします」

 

 白樹さんの返事は力強い。貴重な戦力になる人材だろうが、どうして俺達に興味を抱いたのか分からない。

 確かにアルトアイゼンに興味を示していたが、ガンプラの骨格を流用しているとはっきり言ったのにまだ、裏を探ろうとしているのか?

 

「白樹さんが参加するなら僕はお払い箱かな」

「そう冷たいこと言うなよ、バトルには参加できないが馬坂も仲間だからな」

 加倉は馬坂も手放さない気だな。元々、加倉は誰かを突き放すような人格じゃない、むしろどっかこっかから人を拾ってくる奴だ。

 

「冗談だよ。大会には応援しに行くし、困ったことがあればいつでも相談してもらってかまわないよ」

 馬坂は以前から俺達に協力的だ、なんだかん言いながらも最後まで付き合ってくれる。そこに白樹さんも加わってくれた。これは心強いぞ。

 

「おい勇登、お前もこっちに来て喜べよ。白樹が仲間に加わったんだぞ、今日は赤飯だな」

「古宮先輩も今後ともよろしくお願いします」

 白樹さんがお辞儀している。律儀だな。

「改めてよろしく頼むよ」

 俺も軽く頭を下げる。

 

 さて、今度こそアルトアイゼンの修理に取り掛かろう。

 

「勇登、何自分の世界に入ろうとしてるんだよ。これから白樹にスパロボの説明を始めるぞ。修理は家に帰ってからでいいだろ」

 俺も一緒に解説するのか。それぐらいお前1人でも問題ないだろ。

 結局アルトアイゼンには1つも手を加えられないまま、別の教室に移動することにした。

 




 少し長くなりすぎました。申し訳ございません。
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