ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ!   作:タロウMK-Ⅱ

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 アルトアイゼンは扱い辛い機体だと説明されますが、キョウスケが乗りこなしているため、他の人が操縦するとどうなるかイメージが掴みづらいです。


未熟者と強者

 ガンプラバトル後のプラモデルはファイターですら気がつかない損傷を負っている恐れがある。敵の攻撃によるダメージだけではなく、荒い操縦をすれば節々に負荷が加わり損傷の原因となる。

 

 アルトアイゼンの様な被弾覚悟の突撃野郎は原作同様に整備士泣かせだ。見た目では見過ごしてしまうパーツの緩みや傷が付いているかもしれない。

 手に取って傷や関節の調子を確認する。

 

「無傷での勝利お見事です」

「運が良かっただけだ。こんな試合滅多にない」

 俺はそっけなく応えてしまった。リボルビング・ステークが不発に終わってしまい不完全燃焼だ。かといって、対艦刀を構えたストライクに突っ込むのはリスクが高すぎる。

 

「付かぬ事お伺いしますが、何故アルトアイゼンの内蔵武器だけで戦おうとするのですか? ビームライフルやビームサーベルを持たせるだけで汎用性と弱点を克服できますよ」

 白樹さんの指摘は的確だ。いや、アルトアイゼンを目にしたら誰もが気付く疑問か。

 

「武器を持たないのは原作再現かな。ガンプラバトルは勝てば良いってものじゃない、勝ち方も重要なんだ。手持ち武器に頼ったらそれはアルトの戦いじゃない」

「闘い方に拘るところは、3代目メイジンの様ですね。彼も魅せる闘い、盛り上げる闘いを意識しているそうです」

 俺も『ガンプラは自由だ!』発言を差し引けば大変尊敬している人物だ。必ず正々堂々と闘う姿勢には誰もが共感することだろう。

 

「ですが古宮先輩はメイジンの様な絶対強者ではありません。まずは確実に勝率を上げるべきです」

「白樹さんは現実主義だな。まぁ大切な事だと思うが」

「口だけですよ、私も先輩の志に感銘しています。羨ましくも思えます」

 こんな俺が羨ましい?

 

「以前私が使用していたのはガンダムエピオンです。好きだらこそ使いこなしたかった、好きだからこそ変な武装は持たせたくありませんでした」

 ガンダムエピオンか、馬坂から白樹さんの好きな機体を教えてもらったばかりだ。

 

 乗りかかった船だ、最後まで聞きたい。

「どうしてウイングゼロに乗り換えたんだ?」

「納得できる操縦が出来なかったからです。射撃戦が出来ない機体は私には不向きでした。それに引き替えウイングゼロはとても使いやすかったです」

 それで好きな機体で闘える人間が羨ましいということか。

 

 確かに射撃武器を一切装備していなエピオンは扱いづらいだろう。エピオンを使用する人は稀ではないが、その殆どが勝つために射撃武器を持たせる。俺や白樹さんには許せないタイプだ。

 

 ここまで話を引き出したんだ、先輩として何かアドバイスせねば。

「俺も格闘機が好きだからよく分かる。原作への強い拘りも突き通せば力になると思う。大会が終わったら皆で、エピオンを作ろう」

「そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ」

「こんな話を聞いたら加倉だってそう答える。それに後輩のために一肌脱ぐのは先輩の役割だ」

 

 

 

 バトルシステムがある場所に大勢の人が集っている。加倉と5連勝中の人がバトルを開始する時間帯だ。

 観客の人数がさっきのバトルよりも増えている。これも5連勝のガンタンクに引き付けられた人々なのだろう。

 

 先ほどからここにいた俺達は最前列でバトルを観賞できる。

 

「これだけの大衆に前で勝てれば俺達の株も高くなりそうだな」

 加倉は逸る気持ちを抑えられないといった感じだ。

 

「油断禁物だ。観客のテンションの上がりようから、かなりの実力者だと思う」

「地区予選にも出場しているって本人も言ってたからな」

 それ本物の強豪じゃないか!

 地区予選等の公式大会にはガンプラ以外は参戦できないため、どれ程の実力なのか想像もできない。恐らく今まで体験したことのない強さなのだろう。

 

 加倉がバトルシステムの前まで臨む。使用機体はソウルゲイン。

「おい、あれガンダム作品じゃないぞ」「ありゃソウルゲインだぜ」「ガンプラじゃないって事は猛者の可能性があるね」

 観客の視線は加倉のソウルゲインに集中しているようだ。

 

 プラフスキー粒子に余って精製されたバトルフィールドは夕焼けの荒野だ。障害物が少なく移動しやすい反面、ガンタンクにとっても見渡しがよく砲撃しやすい。

 

【Battle Start】

 戦闘開始の合図と共に両機がカタパルトから飛び立つ。

 

 まず驚いたのはガンタンクの加速性だ、キャタピラで荒野を疾走している。重心も安定しているため転倒の恐れがない。

 『RX-75 ガンタンク』はアニメ『機動戦士ガンダム』に登場したガンタンクだ。劇中では動きが鈍いイメージで定着していたが、加倉が闘っているガンタンクは姿形こそ同一だが、戦闘スタイルは全くの別物だ。

 

「前代未聞のガンタンクです。弱点である機動性の悪さとスピードを完全に克服していますね」

 白樹さんも驚きを隠せない。ガンタンクが敵をスピードで翻弄する奇妙な試合展開だ。

 

 しかし、動きが速すぎて照準は若干ブレているようだ。加倉の操るソウルゲインの周囲に砲弾は落ちるが直撃はしていない。

 

 ソウルゲインがスラスターを吹かして接近を試みる。

 対するガンタンクは腕の4連装ポップミサイルランチャーで弾幕を張りながら後退して距離を空ける。

 

「昨日の私達が行ったバトルに似た状況ですね。敵が接近戦寄りなら当然の戦法ですが」

「そうだな。距離の詰め方がカギになる」

 

 地区予選に出場している人はモデラーとしてもファイターとしてもレベルが違う。プラモデルの関節や接合部の可動域が広く、無茶な姿勢を苦なくこなしている。

 勝敗に関係なく様々な技を教えてくれる。

 

 前進したくてもソウルゲインはポップミサイルランチャーとキャノン砲による攻撃で足止めを食らってしまう。それでいながらガンタンクは後ろを確認しないままバックしている。攻撃の手を休めなず、横転の危機すらない。

 

 加倉は青龍鱗で反撃を試みるが砲撃戦を主軸にするガンタンクとは射程距離が離れすぎているため牽制射撃の効果すらない。

 

 正攻法で駄目なら次の手段は・・・、被弾覚悟の突撃か。

 

 ソウルゲインが攻撃に転じて前へ踏み込んでいく。加倉も俺と同じ事を考えていたか、少々の被弾を無視して突進する。

「思い切りましたか。格闘戦に長けた者らしいです」

 

 ソウルゲインの両腕がドリルの様に高速回転し、右腕、左腕と打ち出される。いわゆるロケットパンチ、玄武剛弾だ。

 

 先行していた右腕の玄武剛弾はガンタンクが迎撃用に撃ったポップミサイルのせいで威力が弱まり途中で墜落してしまった。しかし、左腕は右腕を盾にしたお陰で顕在だ。

 

 決まるか!

 

 左腕の玄武剛弾がガンタンクの目と鼻の先まで迫った時、下半身を切り離し上半身だけが中を舞った。

 

 玄武剛弾は空振りと終わる。何が起こったか理解が追いつかない。

 わあああぁぁぁ! と周囲から歓声が飛び交う。

 

 上半身だけのガンタンクが空中から一斉射撃をソウルゲインに撃ち込む。

 雨のように降り注ぐミサイルと砲弾を浴びて爆発するソウルゲイン。一方ガンタンクは下半身と再合体して元に戻る。

 

【Battle Ended】

 

 

 

 頭を冷やせば直ぐに分かることだが、ガンタンクにはコアブロックシステムが採用されている。上半身が分離してもなんら不思議なことはない。

 

 ガンタンク使いのおじさんは加倉に勝利して連勝を6に伸ばすとこちら側に挨拶をして帰ってしまった。

 

「流石でしたね。あれが地区を争う人の闘いなのですね」

「機体相性の悪さもあるが完敗としか言いようがない」

 俺はチラッと加倉の方に目を移す。

 

「ぐわぁぁぁ、負けちまった。やっちまったよぉ・・・」

 加倉は負けたことを何度も悔やんでいる。両手で頭を抱えて悶えるほどだ。

 

「加倉先輩落ち着いてください。ソウルゲインの損傷は深刻なものではありません。すぐに修理できる範囲です」

「白樹さん、そうじゃないんだ。加倉が悔いているのは修理とかじゃなく負けたこと事態なんだ」

「は、はい。負けがそれほど許せないのですか」

 見苦しくも思えるが、白樹さんに現実を教えるにはちょうど良かったかもしれない。

 

「ガンプラじゃなくても闘える事を証明するのが俺達の夢だ。でも負けてしまえば逆効果になる。加倉はスーパーロボットへの執着がとにかく強く、自分がスーパーロボット系を使わなければ衰退してしまうと本気で思っているぐらい自意識過剰なんだ」

 実際、俺も強制されない限りスーパーロボット系は使わない。

 

 壁に設置されている時計の目を移すと時刻は午後6時を回ろうとしていた。

 

「というわけだ。俺は姉が帰宅しているはずだから帰る。白樹さんはどうする?」

「ちょっと待ってください。加倉先輩は放置ですか」

「鳥沼さんに任せておこう。こいつ、一度落ち込むと2時間は上がってこないから」

 俺は鳥沼さんを探し出し、加倉の事を頼んだ。鳥沼さんは2つ返事で了承してくれた。

 

 その間、加倉はブツブツと独り言を呟いていたが聞き取ることが出来ないほどの小声であった。

 

 明日になったらいつも通り元気に登校してくるだろう。

 

 

 シロガネスーパー前のバス停で次のバスを待つ。時刻表どおりに運行していれば7分後だが、大体2~3分は遅れて到着する。

 白樹さんも途中まで同じ方向なので一緒にバス待ちである。

 

「加倉先輩の落ち込み様からして敗北は許されないことなのですね。私も気を引き締めなくてはいけません」

 加倉の取り乱しようは白樹さんにとってインパクトが強すぎたかもしれない。高校3年の男子が頭抱えてうな垂れていれば誰だってびっくりする。

 

「そんなに気負うことない、俺達は県を代表できるようなファイターでもビルダーでもない。負けるなんて珍しいことじゃないんだ」

「では敗れる度にあれほど落ち込むということですか」

「大衆の前だったからよほどショックだったんだろう。一般のバトルではそこまで取り乱したりしない」

 

 それにしても加倉を倒し6連勝したガンタンクは凄かった。キャタピラ走行だと信じられない速度と機動性を有していた。

 

 所詮俺達は遊びの範疇ということを思い知らされた。地区予選に出られても勝負にならないだろう。

 創意工夫でプラモデルを強化すればバトルでも優位に立つことが出来る。だが、俺と加倉はガンプラとある程度闘えるような改造しかできていない。実際はもっと改良できるが、それをやってしまうと原作のデザインとは違う形状になってしまう。

 

「先輩、明日の放課後ですがプラモデル部に来てくれませんか」

「ヴァイスリッターの作り方か。なら、バトルシステムも使えるように馬坂に頼んでおいてくれ」

「はい、部長にも伝えておきます」

 

 

 

 停留所でバスを降りて自宅まで歩く。

 

「ただいま。少し遅れてごめん」

 下駄箱に女物の靴が増えている。姉さんの靴だ。

 

 台所に顔を出すともう夕飯の支度は終わっていた。

「もう勇登ったら遅いんだから。早く着替えてきなさい。学校のことやガンプラバトルのことを聞かせてもらうからね」

 仕事の研修会で2週間近く家を空けていたため、姉さんと会話するのは久しぶりだ。

 

「こっちだってそれなりの報告があるから、お楽しみに」

「勇登にしては珍しいわね。これは期待できそう」

 姉さんはいつも俺をからかったり、おもちゃにして遊ぶ人だ。そんなことは慣れっこだが、俺は姉さんと並んで歩くのが苦手だ。原因は身長、姉は170センチある。俺よりも3センチほど高く女性にしては高身長な分類だ。

 

 自分の姉にこの様な疑問を抱くのもおかしいが、何でこの人恋人を作らないのだろう? スタイルも顔も悪くない。高身長だから男が寄り付かないのか、性格に難があるのか?

 恐らく後者だ。性格というより趣味に女性らしさがない。何しろ弟にプラモデルの製作方とロボットアニメを叩き込むような人だ。女子向けの作品には目もくれない。

 

 良くも悪くもこの様な姉だったからこそ今の俺が居るといっても過言じゃない。

 

 着替えを済ませてリビングに行くとやはり赤飯が用意されていた。母さん張り切りすぎだろ。

 

「そうだ勇登、明日は暇なの? 久しぶりにガンプラバトルやらない」

「ごめん、後輩のプラモデルが完成していないから手伝う予定がある」

「それなら私も呼んでよ。加倉君もいるんでしょ、協力するよ」

 加倉や馬坂も姉さんの事を知っているし何度も遊んだことがある。

 

 姉さんの助けは喉から手が出るほど欲しい。

 問題は場所だ、学校に部外者を入れるには許可書が必要だ。馬坂にプラモデル部の顧問から許可書をもらう手段しかない。突然のことなので許可が下りなかった場合は、シロガネスーパーのお世話になるしかない。

 

「俺も姉さんの協力は嬉しいけど、高校のプラモデル部と関わりがあるから決定は明日になる。それでよければ協力を頼みたい」

「いいわよ。結果が分かったら教えて」

 姉さんはガンプラも使うしスパロボのプラモデルでもバトルするため使用機体は幅広い。どこでやるにしても面白い事になりそうだ。

 

 




 主人公の姉、優佳登場です。

 ガンダムVSガンダムのガンタンクは強機体だったと記憶しています。
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