ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ!   作:タロウMK-Ⅱ

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 今回はバトルなしの息抜き回です。




行き詰った時には

 学校は基本的に部外者の侵入を良しとしない。そのため、俺は電話越しに馬坂に相談を持ちかける。

 明日、部外者である姉さんを特別講師として部活に呼べないかと交渉してみる。

 

 結果的に明日顧問の先生に訊いてみなければ分からないということだった。

 馬坂との電話を終えた直後、部屋の扉がドンドンと叩かれた。

 

 俺が返答する前に扉が開かれ姉さんが踏み込んでくる。親しき仲にも礼儀あり、と言うことわざを知らんのか。

「何の御用?」

 礼儀知らずの姉に単刀直入で質問した。

 

「勇登の現状確認。まず1つ、プラモデルの完成していない後輩はどんな人?」

「プラモデル部から勧誘した1年生の白樹茜さん」

「待って、茜さんって事は女の子!?」

 そりゃ驚くよな。こんな野郎どもの所に女子が来るとは想像もつかなかっただろ。始めての後輩が女子だぞ、信じられないだろ。

 

「お姉ちゃん嬉しい、勇登に女友達ができて。白樹ちゃんのこと大切にしなさい」

「ただのチームメイトだ! 勘違いするんじゃない!」

 勝手な想像は白樹さんにとっても迷惑になる。

 

「あんたの方こそ何考えているのよ、友達って言ったでしょ。白樹ちゃんに惚れたの」

 出会ってたった2日だが悪い印象はない。

 

 確かに白樹さん関連であれこれと悩んでいたが、別に惚れているのとは違うと思う。

 

「それで使用機体はガンプラじゃないんでしょ」

「急に話が戻るな。機体はヴァイスリッターだ。俺と加倉が前衛だから彼女には後衛をやってもらう」

「チームバランスは考えてあるのね。あんた達だから突撃部隊かと思っていたわ」

 姉さんは小馬鹿にした感じで笑った。

 

 正直なところ俺と加倉、それに馬坂もガンプラバトルで姉さんには敵わない。自分達にとっては一種の目標でもある。

 

「勇登まだ、アルトアイゼン使ってるんだね」

 俺は机の上に置いてあるアルトアイゼンを手に取った。壊れていた右足の修理は完了している。明日はこいつを使う予定だ。

 

「漫画版の様にガトリングやミサイルによる重装備は施さないの? 内蔵武器に絞らなくてもいいんじゃない」

「そこを付かれると痛いな。でもここで武器に甘えると何となく後ろめたい」

 外付け武器を使わないことが、勝率を下げているのは自分でも気付いている。

 

「勝ち方に拘る姿勢もいいけど、まず、自分が勝利するための道を作りなさい」

 白樹さんにも同じこと突きつけられたばかりだ。弱者がいくら信念を叫ぼうと聞き入ってくれる人など何所にも居ない。

 

 地区予選には出場できなくても結果を残さなければならない。

 結果を残すためにはバトルで勝利することが前提となる。

 

「難しい顔すんじゃない、先人の知恵があるでしょ。勇登はまだ自分の技を身に付けられる器じゃないわ。大勢の人の技術を取り入れなさい、独自性を求めるのはまだ先よ」

 俺は拘っていた訳じゃなく凝り固まっていただけだったのかな。

 

「分かった。明日、思いつくことを色々と試してみる」

 

 

 

 プラモデル部の顧問から許可書を貰うため、普段よりも早く登校して馬坂のことを待つ。馬坂に全てを任せるのは忍びない。

 

 玄関前であらゆる生徒が登校してくる姿を見つめながら馬坂の姿を探す。

「おっ、いたいた」

 

 馬坂を発見し軽く手を振る。こっちに気が付くとむこうから来てくれた。

「こんな所で何をしているの?」

「許可書を貰うための説得力を上げる雑誌を持ってきた」

 俺は鞄から1冊の模型雑誌を取り出す。これには姉さんが投稿したプラモデルが掲載されている。先生に姉さんの実力を認めさせる材料になる。

 

 馬坂と共に職員室に直行する。

「先生、唐突な申し出なのですが、本日プラモデル部に外部から講師を呼び入れたいと思っています。こちらの雑誌でもこの様に取り上げれた経歴があります」

 馬坂は例の模型雑誌を顧問の先生に渡す。

 

「ほうほう、実力はありそうだ。どうやって知り合ったのかな」

「ここに居る古宮君のお姉さんです」

「古宮君の姉か。少々待ちなさい」

 先生は許可書にサインを書いてくれた。頭でっかちな顧問じゃなくて助かる。

 

 これで放課後姉さんを学校に呼ぶことができる。

「では古宮優佳さんがお越しになったらまず職員室に連れて来なさい」

「はい、ありがとうございます」

 2人で職員室を後にし、教室に向かう。

 

「ありがとう、姉さんには俺から連絡しておく」

「了解、学校に着いたら僕に教えて」

 

 姉さんが高校に来てくれれば白樹さんを連れまわす必要がなくなる。肩の重荷が少しは取れた気がする。

 

 それにしても、白樹さんのこと気にかけすぎかもしれない。事あるごとに彼女のことを考えている。

 

 

 

 昼休みになると姉さんに高校側から許可が下りたとメールで報せる。

 

 メールの返信はすぐに来る、3時50分頃到着予定とのことだ。

 俺は馬坂に時間を報告する。これで一安心できだ。

 

「なあ勇登、深刻な相談なんだが聞いてくれるか」

 加倉の表情は暗い。ゲームセンターに放置したことを咎めてくる様子もない。

 

「昨日の敗因と打開策のことか」

「あのガンタンクの強さは凄かった、そう簡単に抜けるものじゃない」

 世の中にはどの様な製作方法をすればそこまで性能を上げられるのか分からない事だらけだ。粒子変容でビームを容易く切り裂くという未知の技術を有する人達も世界には大勢存在する。

 

「強化プランとしてソウルゲインの右腕を玄武金剛弾に変更することにした。だが問題はここで発生した」

「皆まで言うな、左腕も換装するかどうかだろ」

 加倉の思考はすぐに読めた。原作を再現しようとするため独自改造やアレンジなどを拒む性格だ。

 

「流石は勇登だ、伊達に付き合いが長いわけじゃないな」

「そりゃな。で、原作を大事にする身としては左腕が元のままにしたいと」

 

 劇中でソウルゲインは右腕だけ強化されたが左腕は既存のままである。単純に戦闘力を求めれば両腕とも強化した方が効率的だ。

 

「俺はどうすればいい、強さや合理性に流されてしまっていいのか!?」

「それぐらい自分で決めろよ」

 口では冷たくしながらも突き放すのも可哀想だ。

 

 ふっ、と思い立ったことを口にしてみることにした。

「玄武金剛弾は強力すぎるため、両腕には装備できない設定とかどうだ」

 

「おっ! それなら説得力があるぜ。次はどうやったら緑色のクリアパーツが赤く発光するかだな」

 それは無理だろ。そもそも原作でも何故、赤く発行するようになったか明確な説明がない。

 

「PGのユニコーンガンダムみたいに全身にLEDでも仕込むとか。クリアグリーンパーツの下で赤い光が点灯することになるが」

 PGとはパーフェクトグレードの略であだ。1/60スケールであり最高クラスのガンプラでもある。PGユニコーンガンダムには全身にLEDを仕込み発光させるギミックが施されている。

 

 自分でもイマイチな提案だと分かっている。あれはPGのスケールだからこそ負荷無くこなせる仕組みだ。

 

「飾って置くぶんには問題ないが、バトル用となるとLEDが壊れないか心配になるな」

「そうだ、今日プラモデル部に姉さんが講師として招かれるから相談してみれば」

 姉さんの件を加倉に伝え忘れていた。いやはや伝達力がないなんて人のこと言えないな。

 

「優佳さん仕事から帰って来たのか、もっと早く教えてくれよ。ソウルゲイン持ってきてよかったぜ」

 プラモデルをいつどんな時でも携帯しているとはファイターらしい。が、校則違反である(俺も当てはまる)。

 

 

 

 

 放課後、俺と加倉はプラモデル部にお邪魔していた。部員とも馴染んでいるため2人して違和感がない。

 

 展示されている作品はガンプラばかり。もうガンプラ部に名称変更した方がいいんじゃないかな。

 

 部室に飾ってある改造ガンプラはどれも個性がある。似たようなコンセプトでも微妙に違いが出る。その微妙な違いこそ個人の表れだ。

 

 姉さんに指摘されたとおり俺は他人の作品を眺めて、そのガンプラの特徴を観察していく。

 独自の発想で重装備にする機体もあれば、逆に軽装にしているものもある。

 

 ただ、改造すればいいってものじゃない。俺や加倉の様に原作使用に拘る奴もいる。見た目を変えなくても内部を作りこむ場合もある。

 俺とは趣味が合わないプラモデルも幾つかあるが十人十色だ。考えや発想が違うからこそ面白い。

 

 3代目メイジンの言うとおり『ガンプラは自由だ!』、もっと言うならプラモデルは自由だ!

 

 

 

 3時45分頃、馬坂と2人で正門まで姉さんを迎えにいく。

 遠くの方から女性が歩いてくるのが見える。姉さんだ。

 

「久しぶり、馬坂君。突拍子もない申し出に付き合ってくれてありがとね」

「こちらこそお久しぶりです。社会人だというのに貴重な時間を割いていただきありがとうございます」

 馬坂はペコペコと頭を下げて挨拶をしている。こちらまで丁寧な対応をしなければならい気になる。

 

 まずは言い付けどおり職員室に連れて行き顧問に挨拶をさせる。それから顧問と共に部室へ向かう。

 

「えー、急な話ですが本日は外部からの講師をお呼びしています。模型誌にも何度か取り上げられたことのある古宮優佳さんです。皆さん失礼が無いように頼みます」

 顧問の先生が挨拶をし、姉さんが部室に入ってくる。

 

「こんにちは、古宮優佳です。突然の出来事で皆さん驚いていると思いますが、本日はよろしくお願いします」

 部員達もお辞儀をして挨拶をする。

 再び顧問の先生が話を開始し、それが終わると部長である馬坂にバトンが回される。

 

 先生に見張られていると部に属していない俺と加倉が活動し辛い。適当な説明が済めばそそくさと出て行って欲しい。

 

「それでは皆さん、悔いの無いように古宮さんか教わってください」

 祈りが通じたのか先生は部室を後にしてくれた。

 

 しかし、姉さんは立場上『講師』である。俺達ばかりに構ってもらうことはできない。

「まず始めにプラモデルの基本的な作り方から振り返っていきましょうか。知ったつもりでいながらも、見落としている箇所があるかもしれませんよ」

 姉さんからプラモデルのことを学ぶのは懐かしい、中学生以来だろうか。原点に立ち戻るのも悪くない。俺は部員に混ざり姉さんの講義を聴く事にした。

 

「素組みは基本中の基本よ。本体が確りしていなければ塗装や改造も上手くいかないわ」

 姉さんはまだランナーが袋詰めされたままのBB戦士ダブルオークアンタのプラモデルを取り出した。実際に製作しながら解説してくれる。

 

 説明書の読み方から、パーツの切り取り方、当たり前のようなことを説明しているが、それが家の姉である。姉さん曰く『プラモデルとは大器晩成よ』である。

 土台や基礎から固めていく真面目さと、忍耐力が欠かせない。

 

「次は仮組みだけど、これは塗装、接着剤前に絶対やっておくべき事と思っているの。面倒臭がって怠ってはいけないの」

 全く持ってそのとおりだ。パーツが歪んでないか、填め忘れはないか確認するべきだ(経験者は語る)。

 

 パーツ量の少ないBB戦士はみるみる内に完成していく。

 

 姉さんの説明を聴いていると初心に戻れた気がする。

 

 




 ソウルゲインの玄武金剛弾や赤い発光について諸説あるため、私もよくわかっておりません。


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