ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ!   作:タロウMK-Ⅱ

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 ヴァイスリッターの登場はしばしお待ちください。




今を越えていくために

 姉さんは人に物事を伝えるのが上手いのかもしれない。自己流ではなく基礎基本から積み上げていく性格のため癖がない。自分の考え、やり方を相手に強制することはせず、ただアドバイスするか実演してくれる。

 

 自分の技術を惜しみなく伝える姉の生き様に清々しさを覚える。

 

「以上で一旦終了します。皆さん自分の工作スペースに戻ってください」

 姉さんの講義は終了してしまった。もっと細かい技を見せてもらいたかった。

 

「皆真剣に私の話を聞いてくれていたわね」

「お疲れさん、また姉さんに教わりたくなる講義だったよ」

「ところで勇登、白樹ちゃんってその子?」

 姉さんが俺の右側に手をやったので振り返る。

「うおっ、近っ!」

 

 いつの間にか白樹さんが俺の斜め右後ろにすっと立っていた。相変わらず清楚な身だしなみで綺麗な人だな。

 

「始めまして、加倉先輩、勇登先輩のチームに加わった白樹茜と申します。今後ともよろしくお願いします」

 丁寧な挨拶だけど、何で古宮から勇登に呼び方変えてるのぉぉぉ!

 

「ちょっ、白樹さん俺の呼び方おかしいだろ! 古宮先輩でいいから! 姉のことは古宮さんもしくは古宮先生で通じるから!」

「す、すみません。名前の方が分かりやすいかと思いまして」

 白樹さんなりの心遣いだったのかもしれないが、周囲に勘違いされそうだからやめてもらいたい。

 

 周りの視線をとても意識してしまう。体温も無駄に上昇してしまい、額や襟首に汗が滲んでしまう。

「こちらこそ。弟のことよろしくね。呼び方は勇登のままでいいから」

 いや、名前で呼ばれるのは非常にマズイ!

 

「はい。では勇登先輩、ヴァイスリッターの製作ですが・・・」

「白樹さん真に受けなくていいから! 勘違いされるから!」

「何言ってるの勇登、日本は年功序列の国よ。名前で呼ばれて内心喜んでいるくせに」

 年上の権力強すぎるだろ。この暴君め。

 

 ポン、と背中を加倉に叩かれた。そういえば加倉もずっと部室に居たんだったな。顧問の先生も見分けられないのか、黙認なのだろうか。

「勇登、諦めろ。それが社会だ」

 だからどうして加倉は時々お利口さんになるのだ。普段は反発するキャラだろお前。

 

「ふる、じゃなくて勇登先輩、協力お願いできますか」

 白樹さん面白半分の笑みすら浮かべていない。これは真顔のイタズラなのか。

「ほらいくぞ、勇登先輩」

 加倉にまでも弄られる末路。もう好きに呼んでくれ。

 

 

 

 プラモデルを製作するのだ気持ちを引き締めなくては。弛んだ気分は製作に悪影響を及ぼす。ましてや他人の作品ならなおさらだ。

 

「とりあえず、仮組みは済ませておきました。ガンプラと違い塗装済みパーツがあるのに驚きました」

 箱から取り出されたヴァイスリッターはゲート跡処理も施されていた。後は塗装だけだと言われても違和感がない。

 

「パーツの質感もガンプラと違い硬い感じでした。可動範囲も広くないのでバトルに使用するには改良が必要です」

「俺達はその劣勢を乗り越えなくてはならないんだ。まずはガンプラの関節パーツを流用して可動範囲の拡大と接着の強化を施そう」

 俺と加倉、それに白樹さんで各々が用意したパーツを机の上に広げる。

 

 ヴァイスリッターは仮組みのためパーツ同士を外しやすい。分解している内に1つの疑問が生じた。

 

 今の俺達の改造レベルでは地区予選の出場手には歯が立たない。彼らに勝つためにはもっと凄い改造が必要となる。攻撃力、装甲、運動性、どれをとっても足りていない。

 未熟な俺が手伝ったところで大したプラモデルにはならない。このまま製作したら負けるプラモデルになってしまう。

 

 敗北。俺だけが負けるんじゃない、白樹さんもだ。

 

 わざわざ負けると分かっている物を与える奴が何処にいる?

 

 なら試してみるしかない。漠然としたイメージではなく明確に不足しているものを理解しなければ。

 

「どうした勇登? 手、止まってるぞ」

「足りないものが多すぎて何を優先すべきことがわからん」

「馬坂、バトルシステムを使いたいのと、練習相手になってくれる人はいないか」

「お前何言いだすんだよ! ヴァイスリッターどうすんだ!?」

「今のままでは駄目だ! 何所をどう改良するか明確にしなくては」

 自分自身に何が起こっているのか分からない。ただ、心底から俺を行動させる活力が湧いてくる。

 

 

 

 姉さんも3代目メイジンも出し惜しみをしない。常に全力投球だ。

 

 誰かに思いを伝えるためには、折れない信念と自分を魅せることが必要になる。生半可な気持ちで成し遂げられることじゃない。

 もっと強く、もっと魅力のあるアルトアイゼンとヴァイスリッターを。

 

「唐突に燃え上がってきたようだけど準備はいいかい?」

「悪いな馬坂、バトルシステムを使わせてもらって」

 馬坂には甘えてばかりだ。本来ならゲームセンターや模型店に行けと断られるのが関の山だ。

 

「プラモデル部の部員も巻き込んでしまってすまない」

 バトルシステムを挟んで俺は練習に付き合ってくれるプラモデル部員に一礼する。

「かまわないっすよ、先輩面白い人ですから」

 面白い人か。よかろう今回も楽しませてやる。

 

 互いに使用プラモデルを筐体にセットする。

 アルトアイゼンの左手にビームライフルを持たせ、ビームサーベルは腰にマウントさせておく。

 

【Battle start】

 カタパルトから出撃する。バトルフィールドは宇宙空間、それも廃墟と化した円錐型のスペースコロニー周辺。

 

 コロニーの外壁が残骸として漂っている。上手く使えば盾となるが、移動の邪魔にもなる。

 

 残骸で身を隠すようにしながら敵を探す。するとセンサーが何かを捕らえた。

 モニターを拡大してみる。はっきりとは敵の容姿を確認できてはないないが、コロニーの外壁に隠れようとしている。だが両足が隠し切れていない。

 

「デカくないか?」

 隠れるのが苦手なのではなく、敵が巨体なだけだ。

 

 こちらに気付いたのか敵は周囲のデブリを跳ね除けて姿を現した。

「パーフェクトジオング!」

 

 劇中では80パーセントの完成度で登場したが足の付いた完成版だ。

「それだけじゃないっすよ! 高機動仕様っす!」

 ジオングが口と両手の指からメガ粒子砲を放ちながら接近してくる。背中には大型バックパックが装備されている、パーフェクトジオングと高機動型ジオングの合わせ技ということか。

 

 俺はビームライフルで応戦する。ジオングの火力には遠く及ばないが、中距離武器がマシンキャノンだけだったので戦いやすく思える。

 やはり、中距離戦を補えるように改善すべきだ。

 

 高機動仕様だとしてもスペースデブリの中では自慢のスピードが活かせない。お互いの長所が殺されたフィールドだ。

 

 ジオングの左腕が切り離され弧を描くように迫ってくる。有線式サイコミュだ、完全に切り離されたのではなく有線でコントロールしている。

 正面からジオング本体の攻撃だけでなく、切り離された左腕からもビームが5本飛んで来る。

 

 即座にリボルビング・ステークを使用できるように右手には武器を持たせなかったが、已む無くビームライフルを右手に持ち替える。ビームライフルと3連マシンキャノンを連射して迎撃する。

 

 適当に撃ったビームがジオングの左膝を射抜き、膝から小規模な爆発が起こる。

 

 お返しとばかりに撃ち返した攻撃がアルトの右肩、頭部を掠める。

「小回りが利かない!」

 下手に肩をやられるとクレイモアが暴発しかねない。それに直撃ではなかったとはいえ頭部ツインカメラの機能が低下した、恐らく右目が壊れている。

 

 ジオング本体と左腕を同時に相手できるほどの運動性がない。回避に専念したくても、デブリにぶつかり行動が制限される。

 

 そもそも、射撃戦している段階でアルトらしくない。

 

 ジオングとの距離は想像より近い。下手に逃げ隠れするよりも攻めに転じるべきか。

 

 ビームライフルを投げ捨てスラスターを吹かし加速させる。障害物となる外壁の間を縫うような機動をとる。

 巨体のジオングにとって回避行動は大掛かりなものとなる。周囲に漂う外壁の残骸をどう処理する。

 

 アラームが鳴り響く。有線式サイコミュで繋がった左腕が後方から追いかけてくる。

 本体と左腕とで挟み撃ち作戦か。

「追い詰めっ、あッ!」

 

 相手の通信から変な悲鳴が聞こえた。

 後方から迫っていた左腕が追いかけてこなくなった。デブリに衝突したか有線が切断されたのだろう。

 

 チャンスだ! 

 

 これはアルトに有利な間合いだ。回避が間に合う距離ではない。

「もらったぞ!」

 

 逃げるどころかジオングはこちらに覆い被さるような行動をとった。俺はリボルビング・ステークを敵機の胸板に突きたてた。

 

「押さえ込むっすよ!」

 ジオングの右腕でアルトの頭部を鷲掴みにされるが、この程度問題ない。

 俺はトリガーを引いてステークを打ち出さす。リボルバー式に火薬が装填され何度も杭を撃ち出し胸部を粉砕する。

 

 しかし、ジオングはボディが壊れる間際に頭だけを分離させ難を逃れた。

 

 頭上か。上を向こうとしたが頭をガッチリ握られているため動かせない。 

 額の角を発熱させヒートホーンで右手を切り払う。

 

 だが一足遅かった、一筋の閃光がアルトアイゼンの右肘を射抜いた。ジオングヘッドからの攻撃だ。肘の爆発は本体に誘爆する程ではなかったが、右腕が捥がれてしまった。

 

 俺は即座に両肩のクレイモアで反撃する。

 

 ジオングヘッドは脱出用機能、機動性も低いため狙われればすぐさまハチの巣どころか跡形も無く粉砕する。

【Battle Ended】

 勝ちはしたが、満足のいく試合にはならなかった。

 

 

 

「2人ともお疲れ様。まさか古宮君がビームライフルを装備させるとは、でも途中で投げ捨てちゃったね」

 バトルを見守っていた馬坂が感想を述べる。

 

「試してみたけどダメだった。俺には合わない」

 変に射撃戦が可能になるとライフルに頼ろうとしてしまう。途中で捨てたのは正解だったと思う。

 

「いや~、古宮さんの突撃力と一本通すスタイルは破格すっね」

「その一本通すを具体的に説明できるか?」

 曖昧な表現ではなく具体例が欲しい。俺は一度喰らい付いたらしぶとく引き離さないことだと考察したが、本人は別の意図かもしれない。

 

「う~ん、どんなに破損しても獲物を確実に仕留めることですかね」

「ありがとう、参考になった」

 やはり俺の求めるアルトアイゼンは、ライフルで撃ち合いをするのではない、剣でチャンバラするわけでもない。爆発的な加速性と圧倒的な攻撃力だ。

 

 漠然としていたイメージが徐々に形になってくる。でも、まだ完全には見えてこない。

 

 重装甲を売りにしているアルトアイゼンは運動性より防御力を優先すべきだが、ヴァイスリッターは逆だ。

 

「馬坂、確かめたい事があるからもう一戦付き合ってくれないか」

「僕は構わないけど、古宮君の機体はどうするの?」

「本格的なバトルをするんじゃないからこのままでいい」

 俺と馬坂はバトルシステムにプラモデルを読み込ませる。

 

【Battle start】

 別にバトルするわけじゃないけど、この音声は仕方がない。

 

 バトルフィールドは森林地帯。アルトアイゼンは右腕が無く被弾箇所の修理も行っていないため、モニター警告が表示される。

「何が君を焚きつけたんだい。お姉さんかい」

 

 馬坂と通信が繋がる。使用機体は紫色のシナンジュだ。背中はローゼン・ズールから元のバックバックに戻されている。

「応援してくれる仲間が増えたからかな」

 

 ただの趣味で始めたことが大きくなりすぎたのかもしれない。家族に応援されるのも、友達と共に戦うのも変わらないはずなのに今年はやる気が格段に違う。

 例年との違い、それは白樹茜という後輩が出来たことだ。その場だけの観客ではなく、俺達の仲間に成ってくれた。

 

 知り合いでもないのに始めて俺達に共感してくれる人ができた。

 昔のように弱いままではいられない。

 




 主人公、暴走中!!

 やっぱりアルトアイゼンにビームライフルは似合いませんね。

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