ガンプラじゃなくてもビルドファイターだ!   作:タロウMK-Ⅱ

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 ここから大会編スタートです。新しい機体も登場します。




古の鉄巨人

 シロガネスーパーで開かれる大会に備えてプラモデルを製作しだして4日が流れようとしていた。初日以外の日は3連休だったので作製が実に捗った。

 

 白樹さんが自分の部屋に居る状況にも慣れてきた。むしろ、加倉と白樹さんが居ない部屋は寂しい空間だと思うようになった。

 

「プラモデル製作は上手くいったようね。これで完成なの?」

 姉さんは無断で俺の部屋に侵入してくる。遠慮という概念を知らんのか。

 

「オプションパーツ以外は完成かな。まだ試運転すらしてないから少し不安が残っている」

「大会は明々後日だから、調整期間を含めるとカツカツね。間に合うの?」

「何としてでも完成させないといけない。折角ここまで改良したんだ」

 3機とも市販されているプラモデルとは別物と言って過言ではないぐらいの出来だ。

 

 スーパーで開かれる大会など地域町興しの行事みたいなものだが、公式な大会に出場できない俺達にはとても大きな意味がある。

 

 鳥沼さんからの事前連絡によると、中学生以上は大人の部に分けられ16組によるトーナメント戦をする。1チーム3人構成だから48人ものが参加するイベントとなる。

 

「初日は仕事で行けないけど、後半の準決勝からは最前列で応援してあげる」

「姉さんにチームスパロボの活躍を見届けてもらうためには初日を勝ち残らなければならないのか」

「優勝めざしているんだから準決勝ぐらいには進出しなさい。初戦敗退とかしたら承知しないから」

 姉さんから背中をバシッと叩かれる。激励のつもりなのだろう。

 

 こんな所で気負ってもしょうがない。まずは明日、動かしてみてからだ。

 

 

 

 大会は明後日と迫った。殆どの選手はもうガンプラの調整を終わらせたことだろう。

 

「馬坂、悪いんだがバトルシステムを貸してもらえないか。最終調整のために協力を頼む」

 俺と加倉は部長の馬坂に許可がなければバトルシステムを使わせてもらえない。

 

「構わないよ。これから大会に出る部員が練習するところだったから」

「部長に選ばれる男は寛大だぜ!」

 加倉も早くソウルゲインを動かしてみたいのだろう。右腕を玄武金剛弾に変更してあるため、どれだけの威力と反動か調べなければならない。

 

 白樹さんは普段通り冷静差を保っている。

 

「ただ、部員達の方が先に練習させてもらうから。チームスパロボはその後ね」

「まぁ、部外者だからな。それにお互いの使用機体がバレても困るし」

「暇だったら空いてる席使っても構わないから」

 

 馬坂の好意に甘えてプラモデル部の練習が終わるまでオプションパーツの完成を急がせる。手持ちから着脱式の武器まで備えあれば憂いなし。

 対戦相手の特徴が分からないためどれだけ使い物になるか不明だ。あくまでも予備武装である。

 

 

 

 プラモデル部の部員3名が戻って来た。ついにアルトアイゼン・リーゼを操縦することが出来る。

 

 体育館横のバトルルームまで移動して筐体囲むように俺と加倉、そして白樹さんが立つ。

「なぁ勇登、登録上このチームのリーダーは俺だが、実質はお前が引っ張って来たようなもんだ。これからは勇登がリーダーになった良いんじゃないか」

 俺がリーダーだって? まったく考えたことが無かった。

 

 今回は偶々良い方へ転がっただけだ。ここまで来れたのも加倉なら付き合ってくれるという安心感があったからだ。

 

「いや、遠慮しておく。加倉の補佐として活動する方が似合っている。人を引き付ける魅力がある加倉が続けるべきだ」

「言ってくれるじゃないか。これからもバカに付き合ってもらうからな」

「了解、リーダー」

「加倉リーダー、そろそろ始めませんか」

 おっと、白樹さんを待たせてしまっていた。髪を後ろで束ね出撃準備も出来ているようだ。

 

「待たせて悪かったな。チームスパロボ、行くぜ!」

 ソウルゲイン、ヴァイスリッター、アルトアイゼン・リーゼがバトルフィールドへ射出される。フィールドは巨大な円錐状のスペース・コロニーの内部だ。

 

「とりあえず、動きまくって問題がないか確認するぞ。武器はまだ使用するなよ」

 加倉の指示の下、俺と白樹さんは機体の挙動を確かめる。関節、スラスターどれも正常に機能している。

 

 しかし、原作を意識しすぎたか、武装と推進力強化の影響で機体バランスが悪い。アルトアイゼンの操縦に慣れていたとはいえ、リーゼはその比ではない。移動しているだけで神経を使う。

 

 調子は良好とは言えない。白樹さんはどうだろうか?

 

 視線をヴァイスリッターにやるとコロニー内を自由自在に舞っていた。その姿は空中を滑る様に、踊る様に観える。

 ウイングゼロの時とは挙動が異なる。どこか楽しそうに飛んでいる。

 白い騎士というより天使や精霊といった雰囲気だ。

 

「白樹に見とれてないで機体を動かせ」

「おっ、そうだった」

 加倉に注意されなかったら自分の目的を忘れるところだった。突進力がどれだけ進化したか試してみなければ。

 

 リーゼとは巨人を意味する単語だ。もう時代遅れのクズ鉄とは呼ばせない。アルトアイゼン・リーゼは『古の鉄巨人』だ。

 

 

 

 正直言って気持ち悪い。ガンプラバトルでここまで酔ったのは初めてだ。平衡感覚が狂っている。

 加倉に肩を貸してもらわなければまともに歩くことすら間々ならない。

 

「リーゼがあれほど凶暴だとは。ある意味成功だが、制御しきれない」

 肩が大きすぎるため転倒の危険性があり、武装の関係上右腕と左腕の重量に差があるためなおさらだ。スラスターも凄まじく少しの加速で敵の目の前ではなく、すでに衝突してしまうほどだ。忠実に原作再現した結果最悪のバランスになった。

 

「常人では扱えない設定を再現したら操作できなくなったと。笑い話にもなりませんよ」

 白樹さんが哀れな動物を見るような眼をしている。

 

「とりあえず、ソウルゲインとヴァイスリッターは大丈夫だったからこっちは安心しろ」

 そりゃ2機とも欠陥を抱えた機体構造してないからな。

 

 部室に戻ると殆どの部員が俺の顔色を見て心配してくれる。

「古宮君、ガンプラバトルで何をしたらそこまで顔青くなるの!?」

「リーゼに振り回された」

「リーゼ? アルトアイゼンのこと?」

 俺はうんうんと頷く。

 

 馬坂はスパロボに詳しく知らなさそうなので説明してやりたい。が、目眩中なので無理。

「こんなんでお前大会に出られるのか。改修しないと使いものにならないだろ」

「そうだな、知恵を搾り出してみる」

 

 機体調整を兼ねた練習で操縦しきれないという落ちが待っていたとは。何とかなるだろと甘く考えていた自分が情けない。

 大会は明後日だというのに間に合うのか俺!?

 

 

 

 家で相談する相手は決まって姉である。仕事から帰ってくるまで時間があるため、自分なりにアルトアイゼン・リーゼの対策を思考する。

 

 機体性能は十分にある。問題は操縦する俺の方だ。

 

 今から新しいプラモデルを製作する時間はない。そもそも鳥沼さんにアルトアイゼン・リーゼで出場すると宣言し、その代金まで払ってもらっている。

 つまり機体変更は出来ない。

 

 スラスターの数を減らしスピードダウンを図るか? 右腕をリボルビング・ステークに弱体化して左右の重量バランスを優先するか?

 ダメダメだ! リーゼはただバランスが悪いのではなくあの形と性能を奇跡的に維持している。どれか1つ抜けるだけで崩壊してしまう。

 

 それに弱体化させて勝てるわけない。

 

 結局、俺が上手く操縦するしかないのか。

 

「ただいまー」

 おっ、姉さんが帰宅したか。調度案に詰まったところだった。

「お帰り。相談があるんでけどいい」

「どうしたの? 大会用のプラモデルに何か問題でもあったの」

「まぁ、そういうことになる」

「えー、あんなに一生懸命作ったのにね」

 帰って来たばかりの姉さんを部屋に呼び入れる。

 

 早い話、操縦出来なくなったとは恥ずかしくて言い出せない。俺はそれなりに誤魔化して説明した。

「要するに、制御しきれないと」

「はい、そのとおりです」

 言い訳しきれる話題でもないので素直に認めるしかない。

 

 姉さんは溜息を付き、やれやれと首を振る。たぶん呆れられたのだろう。

「弟がここまでバカだったとは、お姉ちゃんショックだわ」

 普通そこまで言うか。

 

「仕方がないわ、この際機体に振り回されながら戦うのもありなんじゃない。元々アルトアイゼンなんて特攻機みたいなもんなんだから」

「つまり上手に操ろうとすること自体が間違いだと」

「極論はね。勇登が作ったプラモデルなんだから特性ぐらい把握しておきなさい」

 特性か、分かっているつもりになって知った被っていただろうか。

 

「信念込めて作った物は製作者の想いに応えてくれるものよ」

「俺の、俺達の信念か・・・」

 

 

 

 ついに、ついに来てしまった。シロガネスーパー主催のガンプラバトル大会。

 2階のゲームセンターはがらりと姿を変え大会用に調整されていた。観客用に座席まで用意している。

 

 優勝商品はシロガネスーパーでの3万円分の割引券。3人で割るとすれば1人当たり1万円の割引券が手に入る。商品目当てのチームとかも居るんじゃないか。

 

 大会に参加するファイターは総勢48名。観客はそれ以上。

 

 開会式が行われ、16チームによるトーナメント表が公開される。AグループとBグループで半分に分けられている。

 俺達チームスパロボはAグループの2番だ。1番のチームと対戦することになる。

 

「初っ端から俺達か、他のチームを観察してる余裕無いな」

「台風の目になれと言われているんだ。鳥沼さんが仕組んだのかもしれない」

 大会の司会と進行は鳥沼さんが担当している。話しかけれる余裕はなさそうだ。

 

「先輩方、あれ、テレビ局ではありませんか」

 俺と加倉は白樹さんが指差す方に振り向く。大型カメラを担いだ人にマイクや証明を持った人が居る。カメラの前で何か喋っているのはアナウンサーだろう。

 

「おい、もう中継始まってるんじゃないか」

 加倉に言うとおり中継なのか録画なのか分からないがカメラは既に回っている。

 

「ちょうど良いじゃないですか。チームスパロボの活躍がヤジマ商事や3代目メイジンの目に付くチャンスですよ」

 淡々と喋っているが白樹さんは凄く熱い闘志を燃やしているようだ。

 

 7つの筐体を並べたバトルシステムがAグループとBグループ用に2つ用意されている。

「頑張れー! チームスパロボ!」

 最前列で馬坂が応援してくれている。

 

 どうせ他の観客は面白おかしいネタチームだと勘違いしていることだろう。

 敵のチーム名は『ダブル』。3人1組なのにダブル? どの様な由来なのかわからん。

 

「それでは皆さん、これよりAグループとBグループ共に第1回戦を始めます。各チーム準備はよろしいでしょうか!?」

 店内に設置されているスピーカーからアナウンスが流れる。

 いよいよだ。チームスパロボ、華々しい初戦を飾ってやる。

 




 実質スーパーロボットはソウルゲイン1体しかいませんが、チームスパロボです。

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