遊戯王 -旋風の疾走決闘者- 番外編   作:ケケマロ

1 / 2
廃墟都市(サテライト)の港。
一人の決闘警察隊(デュエル・チェイサー)は深淵を見つめていた。
何をするでも無く、ただその身を闇に融かそうとしていた。

3年前だ。
この暗闇よりも暗く、深く、黒い闇の中の出来事だった。



死神の烙印

『くく、ききき…』

 

「どうした?貴様の足掻きもここまでか?」

 

 

 

 

 

廃墟都市(サテライト)のみならず富裕都市(トップス)にまで手を出した猟奇殺人鬼。

決闘警察(デュエル・チェイサー)で若くしてトップの実力だった俺は、

その殺人鬼「エドマンド・バンディ」の為に結成された特殊部隊に配属された。

エドマンドの手によって殺された人間にはある共通点があった。

心臓が無くなっているのだ。

見るも無残な姿に初めて見た時には言葉を呑んだ。

 

初めて見た名も知らぬ、口を利かない廃墟都市(サテライト)の人間に話しかけた。

 

「誰かは知らないが、苦しかっただろう。辛かっただろう」

 

廃墟都市(サテライト)の人間に、それも死骸に話しかけたのだ。

近くにいた同僚達は呆れていた。嘲笑する者もいた。

今の俺なら当然侮蔑するだろう。

 

「安心してくれ。俺がお前の仇を取ってやるからな」

 

しかしこの時の俺はそう言ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

『流石だなぁ…「正義の死神」様よぉ…』

 

 

 

 

 

そう、正義だ。あの時にはそんな虚偽を信じていた。

正義を胸に、猟奇殺人鬼を追った。

 

その日は来た。忘れもしない雪の降り始めた日の事だ。

ちょうど徘徊していた場所の近くに殺人鬼は現れた。

いち早く現場に到着した時、既に二人の人間が俯せ巨漢に踏み潰されていた。

俺は頭に血が上るのを感じていた。

正義とは真逆のドス黒い感情が身体を支配していた。

殺人鬼は真紅の竜をけしかけた。こちらも反撃に出る。

 

「行け、「インフェルニティ・デス・ドラゴン」!」

 

漆黒の竜と真紅の竜が激突する。

その隙に殺人鬼は窓ガラスを破り、用意していたD・ホイールに飛び乗る。

 

「逃すか!」

 

竜の衝突を掻い潜り、携帯していた針を殺人鬼に撃ち込んだ。

 

『ちぃっ、麻酔か!?』

 

殺人鬼は針を引き抜き逃走した。

若き決闘警察(デュエル・チェイサー)はその行方を辿るためにD・ホイールを疾走らせる。

 

殺人鬼を追い詰めたのはそれから間もない事だった。

 

『まさかここまで追い詰められるとはなぁ』

 

「その針はマイクロチップを植え込む仕様になっている。もうすぐ仲間も来る。観念するんだな」

 

『成る程…腕を縛っておいて正解だったか…』

 

そう言うと血が止められぶら下がるだけだった左腕を持ち引っ張り始めた。

 

『ならばこうすれば…』

 

これ程までに狂っているとは少し想定外だった。

ミシミシと耳障りな悲鳴を上げる。

 

『もう追いつく事は無くなるわけだな?』

 

ブツンとトカゲの尾でも千切る様に腕を投げ捨てた。

 

「ほう…」

 

もう逃げる事は無いと思っていたが、俊敏な動きで塀を飛び越えてゆく。

血の跡を追うまでも無く若き決闘警察(デュエル・チェイサー)は殺人鬼を追う。

 

 

 

 

 

「「死神」ねぇ…俺としては気に入ってるが、貴様は随分と警察に詳しいようだな」

 

『「警察」というよりは「お前」に詳しいのさ…熱心に俺を追う者は少ないもんでね』

 

狂気を含んだ笑いと共にこちらを振り向いた。

 

「貴様に逃げ場は無い。ここで出血多量で死ぬか、捕まって処罰を受けるか決めな」

 

『逃げ場が無い?くくきゃ、笑えるぜぇ…』

 

頭でもおかしくなったのか?

そう思ったが野郎の表情は明らかな余裕があった。

ここで俺は異変に気付いた。

 

この場に響いているのは野郎の声と自身の声だけである事。

辺りが異常なまでに暗くなっている事。

しかし野郎の姿だけははっきりと見えていた。

 

『お前は辿り着いてしまったようだなぁ…「死」という永遠の闇に…』

 

野郎は音を立てて自身の両腕を回した。

 

何故だ。何故失くしたはずの「左腕」がある?

 

『答えは簡単だ。俺は不老長寿を手に入れたからさ。

俺が他者を殺すのはそういう「契約」を結んだからだ。

まぁ、俺自身楽しめているからフェアってもんだなぁ』

 

「貴様…!」

 

『おっと、言い忘れていた。こいつは「闇のゲーム」。

勝者は「元の世界」へと還り、敗者は「死ぬ」。「死のゲーム」だ』

 

殺人鬼は左腕に決闘盤(デュエル・ディスク)を構えた。

俺の右腕にも同じく決闘盤(デュエル・ディスク)があった。

 

ここで引けば、野郎に殺された(シティ)の者達が浮かばれない。

正義感が自身の考えを縛り付けた。

 

「いいだろう、「闇のゲーム」…受けて立つ!」

 

決闘(デュエル)だ!!』

 

 

 

 

 

通信機が鳴り、ふと我に返る。

 

「どうした、何があった」

 

「DC013、応援を求む」

 

DC013「DC013、了解」

 

そう近くない場所からの救援要請が来た。

何があったか知らないが、なかなかの実力者がいるようだ。

 

レーダーを見る限り多くの決闘警察(デュエル・チェイサー)が動員されているようだった。

どれほどの暴徒なのかと考えていると逆走する決闘警察(デュエル・チェイサー)のD・ホイールとすれ違う。

 

間違いない、今のが例の暴徒か。

 

D・ホイールをUターンさせ逆走するD・ホイールを追う。

そして「決闘(デュエル)」の強制執行を行う。

逃走車のスピードが強制的に下がった。

 

「へぇ、この次元にはこんなハイテクなのがあるんだ」

 

DC013「この「次元」…ねぇ…なんとも気になる言葉だな」

 

決闘(デュエル)で君に勝てば、コレも解除される。そうでしょ?」

 

長い髪で顔を見る事はできないがおそらく女であろう。

 

DC013「その通りだ」

 

「ならヤろうよ!楽しい楽しい、決闘(デュエル)の時間だぁ!」

 

DC013「先行は貰おう、俺のターン。

俺は「インフェルニティ・ナイト」を召喚、カードを2枚伏せターンエンド」

 

「私のターン!「パッチワーク・ファーニマル」を召喚!さらに魔法(マジック)カード「融合」を発動!」

 

フィールドに出現した可愛らしいクマのぬいぐるみに悪魔の鋏が突き刺さる。

  現れ出ちゃえ、すべてを切り裂く戦慄のケダモノ!デストーイ・シザー・ベアー!

 

可愛かったクマのぬいぐるみは悪魔の宿ったおぞましい姿へと変わった。

 

「イけぇ!「デストーイ・シザー・ベアー」で攻撃ィ!」

 

悪魔を宿すぬいぐるみは小さな騎士(ナイト)を掴む。

腹が大きく裂かれ、腹の中へと騎士(ナイト)を詰め込んだ。

 

DC013 LP4000→3200

 

「シザー・ベアーは破壊したモンスターを取り込み強化される!」

 

DC013「「インフェルニティ・ナイト」の効果。手札を全て捨てる事で復活する。」

 

ぬいぐるみの腹を割って騎士(ナイト)が蘇る。

 

「ちぇー、シラケるなぁ。ターン終了だよ」

 

DC013「俺のターン。騎士(ナイト)を生け贄に破壊者(デストロイヤー)を召喚する。

「インフェルニティ・デストロイヤー」でそのデカブツを攻撃。「ヘル・ブレイク」!」

 

騎士(ナイト)の代わりに出た破壊者(デストロイヤー)から放たれた衝撃が巨大なぬいぐるみを破壊する。

 

DC013「さらに破壊した衝撃が貴様自身に降りかかる」

 

長髪の女 LP4000→2300

 

「へぇー、やるねぇ。さっきの連中とは一味も二味も違うってことかなぁ?

まぁ手札が無い状態でよくやってる方じゃないかな」

 

DC013「御託はいい。貴様のターンだ」

 

「私のターン。「エッジインプ・ソウ」を召喚!手札のファーニマルを捨てて2枚ドローする!

おぉ!君、運が良いみたいだね!」

 

その時、少女はD・ホイールの上に立ち上がった。

 

「君達の「次元」では到達できない「領域」を見せてあげるよ!

レフトゾーンに「ファーニマル・フュージョニスト」を!

ライトゾーンに「ファーニマル・エンジェル」をセッティング!」

 

  揺れろ運命の振り子!天国と地獄を往き通え!

  出でよ!エッジインプ・コットン・イーター!

 

振り子の軌跡が巨大な悪魔を呼び寄せた。

 

DC013「見た事の無い召喚法だ」

 

攻撃力2400、高レベルモンスターのようだ。

 

「冷静過ぎぃ!もっと驚けよぉ!」

 

DC013「ふん、決闘(デュエル)にはいかなる時にも冷静であるべきだ」

 

「まぁそうやって強がってればいいさ!

「エッジインプ・コットン・イーター」は墓地の悪魔の玩具の数だけ相手に痛みを与える!」

 

巨大な悪魔から牙が放たれ、若き決闘警察(デュエル・チェイサー)を襲った。

 

DC013 LP3200→3100

 

「まだだよ!ライトゾーンの「ファーニマル・エンジェル」の効果!

墓地から「ファーニマル」モンスターを蘇生させる!甦れ「パッチワーク」!」

 

またもや可愛らしいぬいぐるみが場に現れる。

 

「そしてレフトゾーンの「ファーニマル・フュージョニスト」の効果!

自分の場から融合召喚を行う!「パッチワーク」と「エッジインプ・ソウ」を融合!」

 

  現れ出ちゃえ、すべてを切り裂く百獣の王!デストーイ・ホイールソウ・ライオ!

 

パッチワークはライオンへと姿を変え、悪魔の丸鋸を体に植えられる。

 

DC013「フィールドに出現した2体のモンスターは厳密にはモンスターではなく、

魔法(マジック)カードのように効果を発揮できる、というわけか」

 

「そういうことかな。でも気を付けなよ?「ホイールソウ・ライオ」の攻撃は2度にわたる!」

 

キュイーンと甲高い音を鳴らして破壊者(デストロイヤー)を襲う。

 

DC013「永続(トラップ)「煉獄の釜」」

 

突如現れた漆黒の釜が破壊者(デストロイヤー)をかくまう。

 

「ならば連続攻撃(ダブル・アタック)!」

 

さらなる悪夢が襲い掛かる。

 

DC013「ならば罠《トラップ》カード「煉獄の盾」発動。」

 

破壊者(デストロイヤー)は盾を持ち獅子の追撃を防ぐ。

しかし巨大な悪魔の追撃を受けてしまう。

 

DC013 LP3100→3000

 

「カードを1枚伏せてターンエンド、もう見逃しては貰えないよねぇ」

 

DC013「当然だ。貴様のカードは我ら治安維持局が解析させてもらうぞ。

俺のターン、俺は「インフェルニティ・リローダー」を召喚。

デッキから1枚引きそれがモンスターだった時、そのレベル分貴様に弾を撃ち込む。

それ以外の場合、俺がダメージを受ける」

 

装填手(リローダー)の導きで弾丸を取る。

 

DC013「俺が引いたカードはレベル7の「インフェルニティ・ジェネラル」」

 

長髪の女 LP2300→900

 

「くぅ、効いたぁ!今のは効いたねぇ!」

 

少女はなおも前を見ずに疾走り続ける。

 

DC013「遊びは終わりだ。「将軍(ジェネラル)」の効果。墓地の「騎士(ナイト)」と「甲虫(ビートル)」を特殊召喚。

礼として見せてやろう、決闘警察(デュエル・チェイサー)の切り札!」

 

  レベル3の騎士(ナイト)にレベル2の甲虫(ビートル)、レベル1の装填手(リローダー)をチューニング。

     御上の力を思い知れ、出会え!ゴヨウ・ガーディアン!

 

白塗りの歌舞伎のような姿のポリス・モンスターを呼び出した。

 

「それが君のエース?さっきも似たようなモンスターいたような気がするけどなぁ」

 

DC013「貴様なんぞに俺のエースを見せるものか。

「ゴヨウ・ガーディアン」で「ホイールソウ・ライオ」を攻撃。「ゴヨウ・ラリアット」!」

 

ポリス・モンスターは投げ縄を投げつけ丸鋸の獅子を捕らえた。

 

長髪の女 LP900→500

 

DC013「ポリス・モンスターは戦闘したモンスターを捕縛する。

捕縛した「ホイールソウ・ライオ」の効果で「コットン・イーター」を破壊すれば俺の勝ちだ」

 

「そうはさせるか!リバースカードオー…」

 

その時、少女が付けていた決闘盤(デュエル・ディスク)のベルが響いた。

 

「なんだよなんだよぉ!今いいとこなのにぃ!」

 

DC013「仲間の通信?逃すか!囲え!」

 

決闘警察(デュエル・チェイサー)の部隊が少女のD・ホイールを挟み込む。

 

「ごめんねぇ、止め刺してあげられなくてさぁ」

 

ただの強がりか、それとも

 

少女はトンッと跳ねると目の前へと降りた。

 

「それじゃあ、楽しかったよ。ちょっと恐いおまわりさん」

 

そして少女は目の前で消え去った。

デュエルログから少女の名を呼んだ。

 

「リズ。いずれまた会おう」

 

会えた時。それは貴様が死ぬ時になる。

 

俺は罪人を逃さない。

「無限煉獄の死神」の名に懸けて。




手始めに短編をば。

とりあえず良いも悪いも評価が無いと始まらないので批評募集タグ付けておきます。
心は豆腐なため優しいご指導ご鞭撻お願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。