短編【完】   作:トラロック

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ぷれぷれぷれあです『Alice-Q版』

 

ユリ・アルファ

 

 今日も平和なナザリック地下大墳墓。

 平和なので書く事がありません。

 

「待ってください! それでは話しが進みませんよ」

 

 と、手を前に突き出して静止の姿勢を取るのは黒髪を夜会巻きにし、メイドを着ているのに両手にはトゲトゲの物騒な装飾を施されたガントレットを装備して、チョーカーを外すと自在に首がもげる、首があるのに首無し騎士(デュラハン)の『ユリ・アルファ』だった。

 

「……もげる……。別の表現は無かったのでしょうか……」

 

 いいじゃないですか。

 クソなげー小説を読まされるよりは。

 

「ま、まあ、1000行以上の小説はウェブでは苦痛以外の何者でもありませんよね」

 

 一人称が作者ではお茶を濁しそうなので退散します。

 

「ああっ……」

 

 ユリは一人残されてがっかりしました。

 確かにここ最近のナザリックは外敵の襲来も無く、平和ではあるけれど。中身はとても忙しい。

 『至高の四十一人』がかつて使用していた部屋の掃除のチェック。

 使われる事が少ないトイレのチェック。

 墳墓内に散らばる●●●の片付け。

 

「●●●? また伏字ネタでしょうか?」

 

 うんこ。

 

「う、うんこ……。どストレートに書かれると……。人間の排泄物というのは分かります。ということは人間が床にうんこを落としていったのでしょうか?」

 

 声優さんが泣いています。こんな単語を言わされるアニメが増えていて困っていると。

 ●●なんとかさんはお●●●●をストレートに言うアニメを。

 

「声優ネタですか? あんまり実名を書くと怒られますよ」

 

 ●●カツの主人公の声優さんが好きですね。

 

「知りません。……少なくとも『オーバーロード』のアニメには出ていないですよね」

 

 ユリはやれやれと両腕を広げて肩をすくめる仕草をしました。

 身振り手振りを文章に起こすのは意外と大変です。なので直立不動のまま移動してください。

 

「それではただのハリボテではありませんか」

 

 書かなくていいので楽なのです。

 はぁ、とため息をつくユリ。

 平和なナザリックで目に見えない愚か者の相手をする事になってアンデッドなのに疲労を感じそうでした。

 少なくとも精神的に疲れを擬似的に感じた気がします。ユリではなく、私が。

 

「作者は退散したはずですよね?」

 

 ふふふ、奴は四天王の中でも最弱。

 もとい、誰かが状況を書くのは当たり前。

 

「……まあ、好きになさい」

 

 今日もユリは床に落ちているうんこを踏んでいく。あと何気に伏字のひとつが開放されてしまった。

 それはもう親の(かたき)のごとく。オリ主に家族を殺されたのでしょう。

 飛び散るうんこの欠片。

 びっちびちです。

 

「……床にうんこを落としたのはあなた(Alice-Q)ですね」

 

 それから一時間の説教を食らいつつ、床掃除を口でする羽目になりました。

 それはもう一面光り輝くほど綺麗になりましたとさ、めでたしめでたし。

 

「……結局、今回はうんこの話しで終わりですか?」

 

 はい。特にネタが無かったので。

 アンデッドで異形種のユリにとってうんこを口走る事に抵抗は無かった。そもそも人間的な常識は持ち合わせていないので。羞恥心も人間とは違います。

 

「……ボクの創造主であられるやまいこ様に顔向けできない内容ではありませんか……。は~あ」

 

 後々になって分かったが、うんこをぶちまけたのは作者(Alice-Q)ではありませんでした。

 メンタルが弱いので、つい謝罪してしまいました。

 謝るところが違う、という幻聴が聞こえてきましたが後の祭りでした。

 

 

クレマンティーヌ「おんやー、また新しい……。んんっ……。アンデッドだと思ったら巨大なうんこじゃないですかー」

ユリ「おすそ分けです」

クレマンティーヌ「い、いや、要らないです……。あと、食べないですよ? や、やめて……。手に持たないで」

ユリ「ぷれぷれぷれあ……(デス)っ!」

 

ルプスレギナ・ベータ

 

 実はγ編を間違えて先に書いてしまいました。関係者各位に切腹してお詫び申し上げます。

 さて、血と内臓が床にぶちまけられたところで気を取り直しましょう。

 

「あっはっはー。メンタルの弱い作者(Alice-Q)さん。ちーっす」

 

 ちーっす。いや、今は第三者的な進行役です。

 

「はいはい。●●ネタはやらないんすね? 同族食いネタも無し?」

 

 はい、無しの方向です。

 

「了解したっす。えーと、平和なナザリックにおいて私達の仕事は見回りくらいっすよ」

 

 でしょうね。

 戦闘が無い戦闘メイドの存在価値は平和な世界には必要ないですからね。

 それでも無駄飯食らいの戦闘メイド『ルプスレギナ・ベータ』は今日も元気にご飯を食べていた。

 意外と人間は食べないんですよ、この赤毛の狼娘は。

 

「食べるっすよ。味が悪いと吐き捨てるだけで」

 

 自慢の髪の毛は炎の如く。結んだ二本の三つ編みは戦闘時になると(ほど)ける。

 褐色肌の身体に黄色く輝く獣の瞳。

 

「帽子を取ると犬耳が見えるっす。この髪の毛は人間形態の耳隠しの役割があるっす。実際に私の耳を見たことある人は居ないはずっすよ」

 

 と、帽子を外すルプスレギナ。しかし、残念だ。文字で絵として見えない。

 

「それは残念っすね。挿絵の人にいずれ見せてもらうといいっす。……忘れていなければ……」

 

 文字としてはルプスレギナの頭上に獣の耳がピクピクと動いているのだが、読者は心が汚れているので見ることは出来なかった。

 綺麗な人には心の眼で見えているはずです。かなり立派で想像しているよりも大きめの耳が。

 

「●●●・●●●●ってアニメのレオン●●●●って人のより……。あっちは猫科か……。ミル●●●●か……」

 

 自慢の耳を見せられなくて申し訳ないとルプスレギナは心にもない事を呟いた。

 

「申し訳ないのは本当のことっすよ。原作者(●山●●●)の生活が潤うのは()()()()()()()()()()()()だけっすから」

 

 誤字だらけの本に金を出すけったいな犠牲者(読者)が哀れです。

 重版する時はちゃんと直せ。まだいくつか治っていない部分があるぞ。パナソレイのフルネーム(九巻のP159)とか。

 セリフの誤字はまだ許せるが地の分は出来る限り、間違いがあっては困る。

 

「そうだそうだー。原稿をチェックする人もちゃんと働けー」

 

 かくいう作者(Alice-Q)もかなりチェックしているけれど、投稿した後でいくつか見つかると疲れを感じる。それでも全体の数パーセントだが、見つかると一気に疲労を感じる。

 画面に反映されて始めて見つけられることもある。

 

「かなりの長文で誤字が少ないのはなかなか大変っすよ。……低評価なのに」

 

 ルプスレギナは軽い身のこなしで空中に飛び上がり、一回転する。

 着地した時に下着がずり落ちた。

 

「耳は獣でも尻尾はちゃんと見えない状態っす」

 

 尻を突き出して脱糞したらファンが増えそうなほど見事な褐色の尻だ。

 つまり床に落ちていたうんこはお前(ルプスレギナ)の仕業だな。

 

「そんな事はしないっすよ。匂いをかげば無実だとわかるはずっす」

 

 文字媒体では匂いが読者に伝わらない。だが、自然と臭そうな気がしてきた。

 

「そんな美女に下品な事を言わせるとは……。変態タグを付けた方がいいっすね、永久に。いくら私でも神聖なナザリックは汚さないっす」

 

 怒る時は怒るルプスレギナ。

 人間の女性の顔が崩れ、口が裂けて行き、本性の人狼(ワーウルフ)が現れ始める。

 異形種が本体なので食事をする時、口からものがこぼれやすくなる。

 勘の鋭い人なら看破されるのでルプスレギナは人前であまり食事しない。

 四つんばいになる赤き狼。

 長い尻尾を振り回し、獲物を狙う大きな瞳。

 それはまさしく美しき獣だ。

 

 

クレマンティーヌ「〈疾風走破〉」

ルプスレギナ「甘い! それは残像っす」

クレマンティーヌ「ぎゃふん!」

ルプスレギナ「ふえふえがぶじゅれぁ……です。……うっぷ」

 

ナーベラル・ガンマ

 

 うんこネタを引きずるのは勘弁という猛抗議が殺到したのでやめようかと思います。でも、簡単に読者に迎合するようでは創作など出来よう筈がない。

 ●●●●ネタをナーベラルで出来ると思って楽しみにしてたのに。

 

「絶対に嫌です」

 

 ふっくらしたスカート状のメイド服型鎧をまとう戦闘メイドの『ナーベラル・ガンマ』は全身全霊で拒否してきた。

 

「あと●●ネタも拒否させていただきます。ついでに脱糞ネタも駄目ですね」

 

 つまらない。

 

「大きなお世話です」

 

 トイレにはまったナーベラル。首が抜けなくなってさー大変。

 アインズが出てきて、こんにちは。

 一緒に汚水を飲みましょう。

 

「変な歌を作るな!」

 

 手に持つ(しゃく)で攻撃してきますが、相手は進行役。全く当たりません。

 それが第三位階の魔法であっても。

 

()()下品な小説を書く気ですか、この下等生物(ボウフラ)は」

 

 ナーベラルは呆れてため息をつきました。

 脱力した事で顔が本性の二重の影(ドッペルゲンガー)になりました。

 普段は黒髪のポニーテールですが、本来は異形種です。

 目と口が穴のようになっているので、まるでボーリングの玉です。

 その穴にコルク栓を突っ込めるか気になります。

 

「視覚と味覚がある。呼吸も出来る。ただ、表情の変化は人間形態の方が都合がいいのは確かね」

 

 鏡を見るナーベラル・ガンマ。醜い人間の面に戻して眺める。これを下等生物(ナンベイオオチャバネゴキブリ)たちは美しいと賞賛する。

 とはいえ、こんな顔でも至高の造物主に作られたので軽々しく批判する事は不敬だろう、と思って口には出さなかった。

 二重の影(ドッペルゲンガー)の顔を気持ち悪いと思わない強靭な心は見事です。

 

「……こちらが私の素顔なのだけれど……。随分と失礼ね」

 

 とはいえ、素顔のまま生活が出来ないし、化粧ができないのはメスとしてどうなのだろうか。年頃の女性ナーベラル・ガンマも乙女であった。

 美的感覚が人間と違うので、どういうものが美しいのだろうか。久しく忘れていた。いや、考える余裕が今まで無かっただけだ。

 髪の毛は無い。あれは肉体変化の産物だ。

 指も本数が人間と違う。種族が違うから別に問題は無い。

 身体の方は人間と大差がないような気がする。

 二重の影(ドッペルゲンガー)が胸を大きくする意味があるのだろうか。

 ソリュシャンは粘体(スライム)だから、そもそも巨乳とか関係が無い。

 手足すら要らないのではないかと思う。

 人間社会は不可解だ。そうナーベラルは思った。

 

「アインズ様。異形種たる我々は人間と同じ感覚を身につける必要が本当にあるのでしょうか?」

 

 全身骸骨の死の支配者(オーバーロード)『アインズ・ウール・ゴウン』は女性の悩みを聞かされて返答に困っていた。あと、出番が少ないけれどアインズが主人公だから『オリ主』タグは要らないな。本当の『ぷれぷれぷれあです』ではプレアデス達は二話目から出てきたし。たぶん問題は無いだろう。

 冴えない主人公属性が突破した立派な童貞のアインズに正しい解は出せない。二重の影(ドッペルゲンガー)の社会構造を考えた事が無いので。

 ユグドラシルというゲームではエネミーは倒してドロップ品と経験値を得るだけの存在だ。生活様式まで気にした事は無い。だからといってNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)たるナーベラル達の意見を無視するのは支配者として無責任すぎるのではないかと思う。あと、真面目に書けますよ。全部、下ネタばかりではありませんから。

 

「……多少の息抜きは必要か……。おほん、ナーベラルの好きにしろ、と今は言えん。お前達、それぞれの種族の事も考えなくてはならないだろう。とはいえ、だ。人間社会のことしか知らない私が二重の影(ドッペルゲンガー)のことを急に聞かれても困る」

「申し訳ありません。シモベの分際で差し出がましい事を……」

「待て待て。咎めているわけではない。……だが……、ナーベラルよ」

「はい?」

「人間のような化粧して綺麗になる、という考えはお前には無いのか? 見た目は年頃の娘なのだから」

 

 人間ではない、という事は分かっていても活動する時の姿は人間そのものだ。

 

「身奇麗にする以外の事は……。肌に余計な粉などを付けてしまいますと外敵の目印にされてしまう恐れがございます」

「……うん、そうだね」

 

 匂いとかで居場所を把握されたりするかもしれないね、と胸の内で言うアインズ。

 戦闘において化粧は邪魔だ。せいぜい迷彩柄を施すか、儀式のための化粧ということくらいしか浮かばない。

 

「物は試しだ。何事も挑戦しなければな」

 

 言い分は理解出来るが、実際に色々と試すことは大事だろう。

 今は特に重要な用件は無いのだから、いくつか命令してみた。

 数時間後には世にもおぞましいモンスターが誕生するのだが、残念。お時間になりました。

 

 

クレマンティーヌ「魔法詠唱者(マジック・キャスター)なんて……」

ナーベラル「超位魔法『黒き豊穣への貢(イア・シュブニグラス)』……」

クレマンティーヌ「……すっ、すいやせんしたー!

ナーベラル「ぷれぷれぷれあです。……何度見ても素晴らしい動画だわ。特に下等生物(ミカヅキモ)共を蹂躙する様子は」

 

シズ・デルタ

 

 エンディングで歌うシズはまさにお経のようでした。

 感情のこもっていない声が『ウィッチ・●●●●・ワー●●』のヒロインと同じとは思えません。

 

「……すごい失礼。……歌詞、がんばって覚えた。……キーリッツ、キーリッツ」

 

 自動人形(オートマトン)の戦闘メイド『シズ・デルタ』は物陰から無表情で言った。

 最近の彼女のマイブームだとか。

 

「……シズ・デルタ。……居る。……というのとか」

 

 誰かに声をかけてほしそうな雰囲気があるけれど通りを歩く一般メイド達は新しい遊びの邪魔をしてはいけないと思ったのか、気にしつつ黙って見守っていた。

 ナザリックのギミックやパスワードを管理する上で外出がままならないシズ。

 物静かな彼女は可愛いものが大好きで第六階層に生息する針山の槍(スピアニードル)という二メートルくらいの大きさの兎型モンスターがお気に入り。

 意外と独占欲があり、支配者の命令でも可愛いものを優先しがちだとか。

 

「……命令と可愛いもの。……どちらを選ぶかは難問。……アインズ様に怒られるの、……嫌、だけど」

 

 物陰からシズは意見を出してくる。

 ただ、他のメイド達からは誰と喋っているのだろうと不思議がられていた。

 シズの目の前には誰も居ないので。

 

「……心眼、……ごっこ」

「なるほど~」

 

 小粋なギャグもシズは使いこなせる優秀な自動人形(オートマトン)だ。

 

「……時には相手の心の代弁も……。……あ、下ネタの大便ではないので勘違いしたら……、……射殺」

 

 無表情で殺意を振り撒こうとするが誰にも伝わらない。

 物陰から呟く声は近くに居る人にしか聞こえないかもしれない。

 現場に居続けるのは不味いと思ったのか、色々な物陰に移動するシズ。

 気配を消して進む姿はストーカーのようだ。

 

「……確かに、ストーキング。……に、見えなくも、無い。……ならば」

 

 と、足音を出さずに素早く移動し始める。だが、実際の『ぷれぷれぷれあです』では動くたびにピコピコ効果音が強制的に鳴ってしまう。今作も多少の風斬り音は出ていた。

 時にはメイドの背後に。時には物陰に。

 

 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。

 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。

 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。

 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。

 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。

 残像を残すかの如き早業。

 

「……秘技。……シズの仔山羊」

 

 そのモンスターのレベルは残念ながら90以下だった。

 

「……追加ユニットがあれば機動●●●ン●●の装備も可能……。……あっ、版権の問題で装備不可……、……残念。……憎き著作権」

 

 著作権に悪気(わるぎ)はありません。

 守ろう著作権。だが、この作者(Alice-Q)はちゃんと守れているのか、実は分からなくて不安がっています。

 

「……守られていなければ自宅に電話が来ると思うから、……大丈夫」

 

 それは怖いですね。

 

「……または裁判所から何らかの通知が……」

 

 または『●ー●●●』の運営に人知れず消されていくのでしょう。

 無理して著作権を侵害したいとは思わないけれど、少し不安なのは事実だ。

 ビ●●●ーやマイン●・●●●●ーというモンスターは使ってませんよ。

 

 

クレマンティーヌ「あー?」

シズ「……黙れ、メス豚」

クレマンティーヌ「………」

シズ「……ぷれぷれ……ぷれあ……、です? ……です。……この(クレなんとか)の死骸の処理をお願い」

 

ソリュシャン・イプシロン

 

 魔乳を引っ下げてやってきました粘体(スライム)娘。

 人間形態を自在に変化させられるから今の体型を無理して維持するのは意味があるのだろうか。

 

ぼぼぶばばびぶぶぶべぼぼびばばば(そんなことを言われても困りますわ)

 

 食事中に聞いたのが不味かったようだ。

 体積の増えた捕食型粘体(スライム)の戦闘メイド『ソリュシャン・イプシロン』は意外と太りやすい体質だった。

 特に見た目が。

 部位などの小さい部分ならそれほど体型は変化しないが、人間を丸ごと飲み込むと相撲取りのような状態になってしまう。

 消化すると元に戻る。

 

ぼぼびびばばぶぶべ(そうなんですけどね)

 

 粘体(スライム)だが、食事中は常に口をモゴモゴ動かす。そもそも歯など無いに等しいのに。

 

「ゲェー……。……失礼しました。いえ、失礼な。人間の姿の時は一通りの器官を再現して食事します」

 

 と、言いながら人間の口と同じものを身体のあちこちに再現する。

 体積だけは好き勝手に増やせない。

 粘体(スライム)なので噛み砕くより消化液で溶かすのが基本だ。

 人間を丸ごと消化するので、当然『うんこ』ごとだ。

 

「私達の種族は人間の排泄物だろうと綺麗に消化して栄養分にしますわ。もちろん、カスは固めて排出します。……このように」

 

 と、言った後でソリュシャンは下着を履いた状態なのにブリュという音と共に尻から()()を排出した。その床にぶちまけられた()()とは、かつて人間であったものの残りカス。それは正しく()()()と言われても不思議ではないものだ。

 粘液で守られた尻。いや、純白の下着には茶色や緑色の染みや汚れなどが一つもこびりついていないし、破れも無い。トイレットペーパーが不要の便利な身体だ。

 つまり、お前(ソリュシャン)が犯人だな。

 

「あらあら、バレてしまいましたか」

 

 ほほほと笑っているソリュシャンの元に無言で近づくユリとルプスレギナ。

 

「えっ? あれ?」

 

 ガシっと両脇をつかまれて運ばれていくソリュシャン。

 この日、彼女はそのまま戻ってこなかった。

 

 

 それから復活したソリュシャンは床掃除に励んでいた。

 粘体(スライム)にとって辺りは全てトイレと同義。

 人間のような常識はもとより備わっていない。

 便器に座れば吸い込まれて下水に流れてしまうほど。

 

「それは最初だけですわ。私も失敗から学ぶ知能くらいあります」

 

 仲間が●●●●趣味があるのでは、と危惧したが元々粘体(スライム)は掃除係として使われる事があるから別段、ソリュシャンだけの性癖ではない。

 

「そうです。私は執事助手よりもトイレの便器を綺麗にできます。ご要望とあればアインズ様の身体の隅々まで綺麗にする自信がありますわ」

 

 自信満々に胸を張って言うソリュシャン。だが、その胸は変幻自在。

 

「今日もしっかりと掃除に励んでいるようだな、ソリュシャン」

 

 ナザリック地下大墳墓の支配者アインズがソリュシャンを労いにやってきた。

 

「ありがたき幸せに存じます」

「……まあ、今回は罰であるが……、排泄場所は(わきま)えろ。ちゃんとトイレがあるのだからな」

「その節は申し訳ありませんでした」

「あー、時にソリュシャン」

「はい」

「お前は……、排泄物が好き、という事は無いよな?」

「私は捕食型粘体(スライム)ですので栄養があるものは消化液で吸収いたします。……そうですね、栄養のあるうんこであれば……」

「うんこは言わなくていい」

 

 人間ではないから口走る事に抵抗は無いソリュシャン。

 

「失礼いたしました。基本的に何でも構いません。一番は無垢なる人間、でしょうか。生物の怨嗟を聞きながら捕食するのが大好きです」

 

 支配者の前なので表情は崩さない。だが、顔は今にも餌を求める欲求で崩れそうだった。

 見た目は細身の身体だが、人間を数体ほど取り込む事が出来る。

 生物を取り込みすぎると美貌が崩れてしまうのが難点だが。

 

 

クレマンティーヌ「〈不落要塞〉」

ソリュシャン「あら? そんなことをしても意味が無いわよ」

クレマンティーヌ「ごぼぼぼっ!

ソリュシャン「ぶべふべぶべばぶぶ。……ゲェーッ。……うふふ、失礼」

 

エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ

 

 今日もおやつを求めてナザリック地下大墳墓、第二階層にある『黒棺(ブラック・カプセル)』から大量の戦利品を持ち帰る。

 戦闘メイド『エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ』という蜘蛛人(アラクノイド)

 

「今日もたくさんのゴキさんを捕まえられましたわぁ」

 

 ゴキブリ(コックローチ)というモンスターは何種類か居て、種類問わずにエントマは食べていく。

 雑食性で人間も捕食する。

 見た目は人間の娘のようだが身体の大部分は召喚した蟲達だ。

 仮面蟲を外せば複眼のある蜘蛛そのものの素顔を見る事が出来る。

 声は口唇蟲が担当している。

 蜘蛛なので脚は腕を含めて八本ある。

 残りの脚は普段は背中に隠している。

 精神系魔法詠唱者(マジック・キャスター)で符術による攻撃を得意とする。

 

「そろそろ新しい味が欲しくなりますねぇ」

 

 と、第五階層守護者『コキュートス』に言って見た。

 蟲王(ヴァーミン・ロード)たるコキュートスは自分のシモベを提供する気は無いが、雑食性のエントマには頭を痛めている。

 氷から削りだしたような青白く硬質な身体を持つコキュートスも捕食の対象にされているのではないかと危惧していた。

 

「ダカラトイッテ、シモベハ渡セナイゾ」

「分かっておりますぅ」

 

 と言っているが信じられない。

 エントマは小さな身体とは裏腹に意外と食欲旺盛だから。

 

 

 餌を求めて向かった先はカルネ村という小さな農村だった。

 人間が住んでいるけれど、目当ては彼らが作る食事だ。

 

「今年の麦は豊作でした。エントマさん、カルネ村の自慢のパンをどうぞ」

「頂きますぅ」

 

 アインズ・ウール・ゴウンの支援を受けてから村は活気を取り戻し、農地を広げられるまでになった。

 麦のほかにも色々と育てていて、食肉用の家畜の飼育小屋もある。

 丸かじりが多かったが調理された料理もエントマは気に入った。

 もちろん、第九階層の食堂に比べれば数段劣るけれど、ここにしかない料理は格別だった。

 今はまだ遠出が出来ないので新しい食材を求めて別の都市にも行きたかった。

 行けない代わりに村の村長であるエンリという女性が色々と手に入れてエントマに提供していた。

 

「エ・ランテルの食堂で……」

「●●・ランテル?」

「●●? エ。エ・ランテル、です」

「あらあら、確か●●・ランテルだと聞いた覚えが……」

「……似ていますが、違うと思います。言い間違いではありませんか?」

「ごめんなさい。……でも、はっきりと●●・ランテルと……。あれぇ? ●●●ーレア・バ●●●という友達が居るとか」

「ば、バ●●●!? それは間違いなく悪口ですよ。そんな姓は聞いた事がありません」

 

 エントマは首を傾げた。

 『ランテル』は同じだが、聞き違いだろうとエンリは思った。

 エンリが知っているのは城塞都市エ・ランテルであって、●●・ランテルはこの世界のどこにもありはしない。

 

「良い香辛料と調理法を覚えたので再現してみました」

 

 湯気が立ち上る焼肉定食。それはエ・ランテルでも人気の料理で値段も手ごろ。

 香辛料は村でも栽培しているもので結構な収入源となっている。

 エンリたちの努力の結晶はエントマの蟲の味覚にも通じたようで黙々と食べ始める。

 雑食と言っても好みがあり、美味しくないものは不味いと言える。

 

「……合格、点を上げられるほど、ですねぇ」

「ありがとうございます」

 

 料理に関する職業(クラス)レベルの高いエンリはエントマを満足させるレベルに達していたようだ。

 不平不満を言わずに気が付けば提供された料理は舐めたように綺麗に平らげられていた。

 食事をする時は最初こそ付けていた仮面蟲を外して後半は素顔で堪能するほど。

 それはエンリの腕は確かに本物である証拠だった。

 最後の最後で仮面蟲も食材として食べるところだったが、それはエンリによって防がれた。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 

 戦闘メイドとしてではなく、一人の客人として礼を述べた。

 満足したのでしばらく眷族も人間も食べなくていいのかもしれない。

 今日一日ぐらいは、と。

 

 

クレマンティーヌ「か、完璧に死んじゃうぅ!

エントマ「出血多量でぇ」

クレマンティーヌ「……あふぅ……」

エントマ「ガリ、ガリっ、ガリガリっ。……ふぅ。意外と美味しかったですわぁ。……金属が邪魔だったけれどぉ」

 

オオゲツヒメ・イータ

 

 第八階層の桜花領域を守る領域守護者『オオゲツヒメ・イータ』はNPCのレベルが100である。戦闘メイド『プレイアデス』のリーダーにしてユリ達の一番下の妹だった。

 主な仕事は各階層の転移の管理。そして、この『荒野』に住まう決戦モンスター達の飼育と世界級(ワールド)アイテムとギルド武器の管理。

 色々だった。

 巫女(メディウム)職業(クラス)だから巫女服を着ているわけではなく、種族に関係しているだけだ。

 名前の通り日本神話の女神級モンスター。だが、その情報を知らない者から見れば普通の人間にしか見えないだろう。

 自らの身体からモンスター達の食事を生み出す事が出来る。

 

「姫様、毎日お一人で食事を作られて大変ではありませんか?」

 

 と、狐のお(めん)を頭に乗せている小柄な少女たちに尋ねられた。この子達も当然、モンスターだ。

 

「第九階層の食堂を使わせてもらえば労力の負担を減らせるのではないでしょうか?」

「この階層だけで出来る事を(おこな)うのも立派なお仕事ですよ」

 

 物静かな口調でオオゲツヒメは言った。

 階層守護者は天使系のモンスター『ヴィクティム』といい、普段は安全地帯の生命樹(セフィロト)で休んでいる。

 体長は小さく見た目は胎児に似ていて桃色。羽の代わりに木の枝のようなものが背中から生えている。

 ナザリック地下大墳墓が誇る最大戦力が集まっているのだから巻き込まれるおそれがある。

 

あい()()そしょく()たまご()たいしゃ()ろくしょう()

 

 (くつろ)ぎに来たヴィクティムが呟く。

 

「はい。今日もナザリック地下大墳墓は穏やかな一日を迎えられそうです」

 

 そう言いながらも仕事は多い。

 (おびただ)しいモンスター達の食事を用意するのは毎日の日課。

 一部は活動を停止しているとはいえ油断の出来ないものも多い。

 その中で最強と名高いのが守護者統括『アルベド』の妹『ルベド』だ。

 赤い髪の毛に身体はエメラルドグリーン。宝石のような輝きを持つ硬質的な外見とは裏腹に少女の面影を残すモンスターだ。

 近づかなければ安全だが、敵味方関わらず襲い掛かる性質がある。

 自己再生力と攻撃力の高いルベドはレベルは低いもののこの階層の最強格の一人だ。

 たまに起きては食事をねだる事がある。黙っていればルベドはとても大人しい。

 

「………」

 

 シモベ達と共に食事の用意をする風景をルベドは黙って眺める。

 荒野が広がる階層なので目新しいものが殆ど無い。

 飽きたら寝る。ただそれだけの日がな一日をルベドは過ごす。

 ルベドは見た目は女性だが金剛石動像(アダマンタイトゴーレム)でユグドラシルでは無敵と言われるモンスターだ。

 絶対に倒せないわけではなく、倒しにくく、HPが0になっても死なない。倒し方が分からなければ絶対に勝てない、という意味で無敵と呼ばれている。

 姉のニグレドからは『スピネル』と呼ばれて忌み嫌われている。その理由としては生物ではなく、動像(ゴーレム)だから家族と呼びたくない、のかもしれない。

 

「……ごはん」

ハクジ()アイ()クワゾメ()()あおむらさき()くり()あおみどり()こくたん()しんしゃ()ひと()()()あおむらさき()たいしゃ()

「……うん」

 

 ルベドはオオゲツヒメの目の前まで来て喋り、ヴィクティムには軽く手を挙げて返事を返す。

 統括の妹という事で敬称は付けているが立場はヴィクティムの方が上である。だが、実力が違いすぎるので逆らえない雰囲気があるし、ヴィクティム自身も立場については言及する気はないようだった。

 食事が出来るのは製作者のタブラ・スマラグディナの計らいだとオオゲツヒメ達は思っている。

 至高の存在の考えはシモベたちには高尚過ぎて理解できない、というのもある。

 戦闘になれば膨大な力を消費する。当然、補給も多くなる。その彼女の食事は金貨で呼び出せる餌用の動像(ゴーレム)で、それを与えている。

 

 ルベドは鉱石を食べる。

 

 戦闘以外は寝ているだけなので食事は起きた時、一日一回というか一体で充分だ。

 ルベドから呼びかけられれば基本的に襲われることは無い。もちろん、敵対行動を示さないという条件は守らなければならない。いくらレベル100のオオゲツヒメでも戦闘に特化していないので勝ち目は殆ど無い。

 

「……今日もお腹はあまり空かないな……。……寝起き分くらいか……」

「無理だと思ったら残してくださっても結構ですので。ルベド様、今日も平和ですね」

「……退屈……。不謹慎だけど……、タブラ様達が作った場所、守る役目は忘れていない」

 

 鉱石で出来ている身体の筈なのに柔軟な変化を見せるルベド。

 動像(ゴーレム)を齧る音は半径数十メートルに渡って響く。その音を不快と思わないで済むのは消音のマジックアイテムを貸与されているからなのと、音に対して耐性を持つモンスターがたくさん居るからだ。

 一部は不協和音と感じて襲ってくることもあるけれど、ルベドが全てを撃退する。

 大抵は低レベルのモンスターで高レベルモンスターはほぼ音に耐性がある。

 当然、オオゲツヒメは平気だ。

 ヴィクティムはレベルは低いけれど音は平気なようだ。耳がどこにあるのか見た目では分からないが。

 狐のお(めん)を持つシモベ達も特に反応は示さなかった。

 荒々しい食事だが雰囲気では穏やかなひと時を過ごしているように見える事だろう。

 

 

クレマンティーヌ「このクレマンティーヌ様がっ!」

オオゲツヒメ「お食事はいかが?」

クレマンティーヌ「て、テメー! 尻からなんてものを!

オオゲツヒメ「おほほほ。何のことかしら? ……失礼しました。ぷれぷれぷれ()あです、でございます」

 

オーレオール・オメガ

 

 第八階層の桜花領域を守る領域守護者『オーレオール・オメガ』はNPCのレベルが100である。戦闘メイド『プレイアデス』のリーダーにしてユリ達の一番下の妹だった。

 主な仕事は各階層の転移の管理。そして、この『荒野』に住まう決戦モンスター達の飼育と世界級(ワールド)アイテムとギルド武器の管理。

 と、ここまでは前回と一緒だ。

 では、ひとつ前に居る『オオゲツヒメ・イータ』とは何者なのだろうか。

 

「ということで来ていただきましょうか」

「は~い。こんにちは。今まで末妹だと思われていたオオゲツヒメでございます。日本神話の化け物。いえ、たぶん異形種のものにございます」

 

 着物姿の和風美人というのは末妹としては基本の衣装だ。当然、オーレオールも同じ格好である。

 

「おいこら、偽物。もうお前はお払い箱だから全部置換(ちかん)されることになったわ」

「あらあら、今まで物語を支えてきた私に対してぞんざいですわね、ぽっと出の新キャラの分際で。……っていうか、オーレオールって名前、何なの? みんな頑張れって意味? 原作者のネーミングセンスが疑われますわね」

「おほほほ。●●●●●先生という豚……いえ、ご立派な方のネーミングは悪い方ではなくてよ。ちょっとダサめの方が印象に残るとスパ●●の方もおっしゃっていますし」

 

 オオゲツヒメは『オーレ(がんばれ)オール(みんな)』だと思っているが『オーレオール(光輝)』という線もある。一癖加えるネーミングであれば納得は出来るが前者はスペイン語と英語の併記だから結局、名前としてはおかしいことになる。

 いかんせん、名前が出た当時、手元にある()()()()ではオーレオールは出てこなかったので安易な結果になってしまった。

 ウィキで調べ損なっていたのは(いな)めない。

 『光冠』とも呼ばれているらしい。だが、それをそのまま使っている保証はない。

 そもそも末妹が『人間種』であるならば『ウカノミタマ』のように異形種でなければ『アマテラス』は存在し得ないことになる。その辺りが混乱する原因だろう。

 和服で輝きを意味する名前には違和感があるけれど、生命樹(セフィロト)王冠(マルクト)を司るものとしてならばありうるかもしれない。

 いわゆる『光背(ハイロゥ)』という意味で。

 人間の姿で名前にちなんだものと言えば『アマテラス』くらいしか浮かばない。

 オオトシというモンスターが居るのであればオオゲツヒメが居ても不思議ではないのだが、原作者は神性持ちを人間種だと扱っているのだろうか。それとも職業(クラス)構成で解決しているなら問題なし、と扱っているのか。

 神人(しんじん)はユグドラシルには居ないのではなかったか。それとも都合のいい解釈がなされているのか。

 

「そうかしら? イータでもエータでもなくオメガ……。頭がおかしいとしか言えませんわ。ちゃんと順番を守ってくださらないと。予想していた多くの二次作家達が辟易しますわ」

 

 設定上はオオゲツヒメとオーレオールは同じ姿ではあるが細かい設定が公開されれば前者の方は新キャラとして焼き直されるだろう。

 名前と姿が想像できない者であれば()()()()は廃れていく。

 

 

 現在位置が左上の小さな大陸部分だと仮定すれば世界はまだまだ広い事になる。

 確かに中世ヨーロッパ風の異世界ならば下方には広大な砂漠が広がっているだろうし、東側は広大な寒冷地や亜人の国家がおそらく六つでは済まないほど存在するはずだ。

 遥か東方には和風の国があり、超大国も存在することになってしまう。

 

「世界の謎は空を高く飛べば案外、早く解明するものです」

「それをしないのは地上の物語を優先しているからでしょう」

「あら、まだ居たの? 読者はあまり活躍しないキャラに愛着を覚えません。さっさと消えてくれませんか?」

「いいえ、まだ和風のモンスターとしての出番が期待されていますので。ウカノミタマとか」

 

 名前が出た末妹オーレオールは眉根を寄せる。

 あー、この女殺したい。という雰囲気をかもし出す。

 原作者に設定されたキャラクターこそが優遇されるべき存在であって赤の他人が考えた末妹などゴミだ。

 それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 おそらく支持も集まるだろう。

 オーレオールこそが正しい存在であると。

 他の二次創作に出た末妹達も粛清の嵐に見舞われているに違いない。

 ざまあみろ。

 

「……オーちゃん。そんなに性格が捻じ曲がったキャラでしたか?」

 

 長姉のユリ・アルファが心配そうな顔で声をかけてきた。

 

「あら、お姉様。真の主役は後から現れるものですよ。それより、そこのゴミ(オオゲツヒメ)を駆除すべきだと思いませんか?」

「オーちゃんが公式で出た以上は処分対象でしょうけれど……。今まで仮とはいえ末妹の設定を支えてくれたのです。これで本当に彼女の名前が正式設定と同じであれば誰も文句は無かったでしょうね」

「結果が出た以上はゴミ確定です。多くの熱心なファンもそう言いますよ。こいつは殺すべきゴミクズだと」

「……オーちゃん、そんな口の利き方だとファンどころか……。いいえ、この話しを書いている愚か者(Alice-Q)が低評価を受けるだけで別に心は痛みませんね、そういえば」

 

 口元に手を当てつつユリは何かに納得する。

 遅筆の原作者(●●●●●)がもったいぶった結果だし、多くの二次創作が混乱するのも原作者の責任だ。

 ファンが脳内で作り上げた多くの末妹達はこれから大粛清に遭うだろうが、それ自体はユリの心を一辺たりとも痛めることにはならないだろう。

 多少なりとも『オーバーロード』という作品を世に知らしめる事に役立てば本望だと思って消えてもらえばいいだけだ。

 本物こそが常に正しい。

 それはおそらく、今後とも変わることが無いだろう。

 

「改めて私こそが本物です。なので偽物は全て死んでくださいませ」

 

 ニコリと微笑む末妹に対し、今まで席に座っていたオオゲツヒメはモンスターとしての設定を与えられ、再登場の機会を窺うことになる。

 そんな日が来る事を願いつつ、今まで末妹であった存在は静かに姿を消していった。

 

 

クレマンティーヌ「……またいつかチャンスが来るって」

オオゲツヒメ「大きなお世話なんだよ! 悠●●声だからっていい気になってんじゃねーぞ! あと、オーレオールって名前、変なの~! このブタ野郎!

クレマンティーヌ「けいこくします。……おんなをおこらせるとこわいのです」

オーレオール「後で殺す! ぷれぷれぷれいあですっ!

 

『終幕』

 

 


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