Muv-Luv~あいゆえに~   作:XxwヒエンwxX

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カミサマは気軽に人前には出ないもんだよ。知らない?

死後の世界、なんてーのは閻魔大王の判決の長蛇が並んでいる中にぽつんと突っ込まれるもんだと思っていた。

 

 

 

その後判決を下されて、天国か、地獄の沙汰をもらう。今までそういうもんだと、俺は思っていた。

 

 

そう、思っていたんだよ。

 

 

 

 

「こかぁ、一体どこだってんだ?」

 

 

 

 

 

見る限りの闇、闇、闇。

 

 

 

まっ暗やみのド真ん中に立たされてる気分だ。

 

 

 

ここでいきなり閻魔大王がバーァン!と出てきて、『判決!地獄!』みたいなこと言いだされるんじゃねぇかな?いや、その前に鑑の前に立たされるんだったか?

 

 

 

「んなこたぁどーでもいいんだが・・・あそこに行けってか?」

 

 

前をジーッッと見てると、なんだか一点の光が見える。

 

 

俺はそれを目指して、暗闇を歩いて行く。

 

 

なんだか、伊邪那岐みたいな気分だな。自分の女の手を引いて地獄から上に上がり、途中苦難があるんだが、それらを乗り越えて、やっとゴールってとこで後ろを向いたらバケモノガー!みたいな奴。

 

 

「まっ、俺には女はいないんだけどねぇ・・・」

 

 

好きになった女はいたが、最後まで一緒にいようとは思わなかった。

それよりも忙しくて、彼女を作ってイチャイチャしようと考える事もなかったからだ。

 

 

歩いて数十分。ようやく光の下にたどり着いた。

 

 

「ほー、これを見ろと?」

 

 

誰かに言うわけじゃなかったが、どうやら俺の目の前に浮かんで流れている楕円形状の3つの映像が光を発しているみたいだ。

まるでこいつを見てくれ、と言わんばかりに。

 

 

 

「ま、閻魔が来るまでの暇つぶしとでも思ってみるか」

 

 

 

まず、一番左の映像から。

 

立ちながら見るのも腰が痛くなるんで、体育座りしてみることに。

映像は昔よく流行ったPCのノベルゲーと言われるモノのようだ。

 

まぁ俺の高校時代に流行ったんだが、ゲームがアニメ化して、それからゲームをやりだす新参が多かったんだわ。

まーそれよりも勉強に忙しくてやってる暇なんてなかったんだが。

 

 

「ほー、アンモナイトの化石を割っちまったのか。小学生ながら中々のイタズラだねぇ」

 

 

そもそもその化石、本物なのかが怪しいが。

化石って時点で財産としての価値は高いだろうし、それを持っていたとしても、そもそも学校に持ってくるかどうかも怪しい。

 

俺の感では偽物。まぁ、本物じゃないから先生も尻叩きで許したんだろ。

 

「そして時は流れ、高校生最後の年・・・ってか」

 

 

映像を見る限り、主人公っぽいのが化石(偽)を割っちまった女の子の胸を揉んで起きる。

まぁ、羨ましいとは思うんだがなぁ・・・幼馴染の胸を揉んで飛び起きて謝るんじゃなくて、そのまま揉み続けるとは・・・手馴れてやがるなぁ、この男。

 

「で、なぞの転校生登場ってか。・・・なんか髪型スゲーやつ多いな」

 

尖ってるし、首から鈴ぶら下げてるし、ほんと昔のアニメっぽいな。

・・・おろ?

 

「あれ、また化石割る所に戻ってんな」

 

赤い髪の小学生が化石を割って、主人公の白銀武ってのが庇って、先生に尻を叩かれる。

 

次見たらちょっと先に進んでるんじゃねーかなー?とか思って最後まで見てたんだが、同じところで巻き戻る。

 

 

これは何度か見る感じのやつか?とか思ってな。

とりあえず自分の中で1時間数えて見たんだが、それでも同じところで巻き戻る。

 

 

「・・・・・・次のやつ見るか」

 

 

場所を変えて真ん中の映像。

 

 

途中まで動画はいってたみたいで、俺が前に座ったらいきなり巻き戻った。

巻き戻ってる最中に見た絵での感じだが、どうやら荒れた日本が舞台になっている感じかぁ。

 

 

「主人公だけの家、朝になっても来ない幼馴染・・・開けたら別世界とかかねぇ?」

 

 

まぁ、その通りだったみたいで、ドアを開けたら荒れた日本の横浜。

そして学校に向かうと、そこは軍の基地に。

 

で、憲兵の二人に捕まったところでまた最初に。

 

今度はちょっと見してくれるんじゃねーか?と思って座ってみること2時間。特に変わらず。時間は無情に流れていく・・・・。

 

 

「・・・まーそんなこったろーと思ってたけどな。とりあえず、な」

 

 

諦めて最後の映像の前に向かう。

ちょうど最初っからになってたみたいなんだが、二つ目と冒頭が一緒だなこれ。

 

 

「いや、ちょっと違うか?」

 

 

よくセリフのところを読んでみると、少しだけ違う所がある。

で、扉を開けたら別世界がコンニチワーと。

 

なぁるほど、二週目ってわけか。

 

 

「まー今回は最後まで見なくてもいいだろ」

 

 

んで、二番目の奴と同じように。憲兵の二人に捕まった所で、今度はブラックアウトした。

 

 

「ん?なんだなんだぁ?」

 

 

いきなりの事だったんでな、最初はワクワクして待ってたんだがどーにも変化が起きない。

仕方ねーんでその場から動こうとしたら、目の前が少し明るくなった。

 

 

「あ?・・・【武ちゃん】?」

 

 

目の前の楕円形の何かには、武ちゃん。とさっきの主人公の名前が出てきた。

ほかの二つも見たが、どれも一緒。

 

 

「なんだこりゃ、俺に何をしろってんだ?」

 

 

少し大きめな声で言ったんだけどな、なーんの返答もなし。

どっかから赤い髪の小学生が出てくるもんだと思ってたんだが、それもナシ。

 

 

「悪いが俺にぁどーにもできねーぞー。俺は武ちゃんじゃねーからな」

 

 

そう、俺は白銀武じゃあない。俺は・・・・オレ、は・・・・

 

 

 

「お前・・・俺から盗りやがったな?」

 

 

 

年呆けなんてのがちょっと浮かんだが、死ぬ直前までボケたことなんぞなかった。

ならここに来るまでで忘れたか?そりゃないだろ。

 

 

 

「なに、俺に【シロガネタケル】になれと?俺にお前の幼馴染をやれってのか?俺に役者をしろと?」

 

 

 

俺じゃない誰かになるのは高校時代よくやっていた。まぁ入っていた部活がそれだからな、演劇部。今でも割といい思い出だ。

そんなことより、この空間をつかって俺を見ているヤツは、シロガネタケルが所望らしい。

 

 

 

「やっだよそんな。俺は俺だ。シロガネタケルなんて記号はイヤだね」

 

 

 

そう。気ままな旅人で、両親は安定志向の親父、音楽家の母さん。釣りが大好きな叔父さんと、遊びに行くとよく飯を食わせてくれた婆ちゃん。

 

 

俺の名前は思い出せなくても、それは確かに俺が生きた道だ。俺だけが通った道だ。

 

 

これは、誰にも否定させない、俺だけの人生だ。

 

 

「オイ【鑑純夏】、いつまでも隠れてねーで出てこいよ。見てんだろ?俺を」

 

 

 

そう言うとさ、大体映像のウラっかわに舞台のスポットライトみたいなのが照らされてよ、その光を浴びてる女がいたんだ。しかも裸で。

出て来いとは言ったけどまさか裸で出てくるとは思わなかったからよ、着ていた上着を脱いでそいつに着せたんだ。

 

 

 

『武ちゃん武ちゃん武ちゃん武ちゃん武ちゃん武ちゃん武ちゃんたけるちゃんたけるちゃんたけるちゃんタケルチャン・・・』

 

「おいおい・・・ここまでやられてんのかよ・・・」

 

 

 

旅をしていく中で、そういう壊れた目をした奴はいっぱい見た。

風俗嬢、貧困街の住民、紛争真っ只中の国。絶望のどん底にいるような、そんな顔。

若干ある匂いも漂わせているあたり、マワされたのが妥当だろう。

幸せいっぱいの人生から、一気にどん底へ・・・といった感じだ。救いもあったもんじゃない。

 

 

「そこまでなっても探してるのか、白銀を」

 

 

正直なところ、狂気といってもいいんじゃねーかと思えるレベルだ。

 

ただ一つの希望を、白銀をずっとこいつは探しているのかもしれない。

今でも、白銀武と契りを交わして。幸せな生活を過ごすことを魅入っているんだろう。

 

それは、とても悲しい。そいつだけが孤独に歩いた、人生だと感じてしまった。

だから、俺はつい言ってしまったんだ。

 

 

 

「・・・そんなに探してるんだったら。呼べよ、ちゃんと。そいつの名前を」

 

 

 

成ってやると。口には出さず、心の中で。

でも、そんなあまーい俺でも、引けないところがあった。

 

 

 

 

「でもよ、知ってるんだったら教えてくれ。俺の名前()を」

 

 

 

 

 

そう言うと、女は、確かに言ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに、俺の名前を言ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・オーケーいいだろ。なら呼べよ。これからの【オレ】の名前をさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は俺の名前を刻んだ。なら後は思い残すこたァないだろう。

俺は旅人、旅人【――――】みんなには伝わってないだろうが、俺には伝わっている。

さぁ、呼べよ。これからの俺の名前を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『タケル、ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう鑑純夏。まずはお隣りさんから初めて行こうじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが【白銀武】の始まりなのさ。

 

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