幻想2018   作:佐藤 悠兎

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※この作品には、東方二次、オリジナル成分、自動車専門用語、違法な公道レースなどの内容が含まれています、ダメな人はブラウザバックで

東京都との提携で近代化を遂げた幻想郷、その都心部から離れた山間部には、深夜になると走り屋達が集まると言われている。この物語は、青春をクルマと走りに捧げた青年達の歴史の一ページである


NSU 20Bスパイダ

2018年 幻想郷 山間部某所

 

毎晩走り屋達が集まって己の速さを競う違法なレースが行われている峠、その山の山頂の駐車場に一台の珍しいオープンカーが止まっている、このマシンのオーナが今回の物語の主人公だ。そのオープンカーはNSU・ヴァンケルスパイダ、1960年代にドイツのNSU社がロータリーエンジンの試作車として世に送り出したものだ。その珍しいクルマには珍しいエンジンが搭載されている。そのエンジンは20B-REW、1996年に生産終了したマツダ・ユーノスコスモに搭載されていたエンジンで、96年当時、純正280PSを発揮した名機である。このヴァンケルスパイダーに搭載されている20Bは600PSまでチューニングされており、低速はルーツ式スーパーチャージャーで補われている。このヴァンケルスパイダを駆るのは若干19歳の若き天才ダウンヒラー黒谷ヤマメである。彼は13の頃から親の仕事の手伝いでステアリングを握っており、14の時にはNSU・Ro80で荷物の配達をしていた。彼は小さい頃からロータリーエンジンに興味を持っており、高1の終わりには親の仕事を手伝いながらバイトをし、クルマを買う資金を集めていた、18で免許を取得後、多数の中古車ディーラーを回って現在のヴァンケルスパイダを手に入れた。購入時から点火系に異常があったため、父親から譲ってもらった20Bに換装して乗っている。ヴァンケルスパイダのカタログスペックはノーマルで500ccシングルロータで50PS/5500rpmとなっているが、ヤマメの購入したヴァンケルスパイダは前オーナの管理が悪かったせいか25PS/2250rpmと大幅なパワーダウンを引き起こしていた。現在は654x3ロータの20Bを600PS/8900rpmにチューンしたもので、小型かつRRのヴァンケルスパイダはリアヘヴィなモノになってしまった、しかし、ヤマメのドライビングテクニックはそのハンデを逆手にとっており、500ccのシングルロータを搭載してるのと変わらない旋回をしている。エンジン音はNSU純正のロータリーに聞こえる様に音まで調整されている。高回転域になるとビッグシングルタービンの唸る音が聴こえてくるのが特徴である

 

「....行くか」

ヤマメは目を覚ますと、キーを捻りエンジンを掛けた

NSUロータリ特有のエキゾーストノートを轟かせながら駐車場を出ようとした時だった

「....?パッシングされてる?」

ヤマメはクルマを止め、バックミラーを見た。一台の白いRX-7が後ろにピタリとついて来ていた

「成程、俺とやろうって事か、良いだろう、ついてこれるか?」

ヤマメはギアを1速に入れヴァンケルスパイダを発進させた

「...っ!?」

スーパーチャージャー駆動インジケータが点灯し、鬼のような加速をする

「な、なんだよアイツ....クソッ!!」

FDも同時に発進した

「やっぱ13B-REWは加速が若干鈍いな...(スーパーチャージャーの電磁クラッチ解除S/Wを押してエンジン同期を手動解除する)、さて、ここからはスーパーチャージャーに頼らずに行くとしよう、俺もそのFDの戦闘力、見てみたいからな」

ヤマメはFDをわざと前に出した

「さぁて、どんな運転をするのか後ろからじっくり見せてもらうよ」

ヤマメはオーディオのボリュームを上げた。オーディオからは大音量のダンスミュージックが流れている

FDは序盤から中盤の最初まで自分のペースを保っていたが、中盤でその姿勢を崩した

「...ケッ、その程度か」

ヤマメはスキを突いてFDを抜き、3速にいれてコーナを抜けた

ターボ混じりのNSUロータリーサウンドは小さな車体のリアから聞こえていた、まるでそのFDをあざ笑うかの様に

ヤマメは大きくて重い20Bをあたかも自分の手足の様に操っている。リアヘヴィなヤマメのヴァンケルスパイダはヤマメ以外のヒトが運転すると、その素がステアリングを介して伝わってくる、並の人間ではコントロール不能なそのマシンをヤマメは平然と乗りこなしている

中腹の避難所へ行くと、後からFDが追っかけてきた

FDから降りてきたのはヤマメより年上の男性だった

「君がそのクルマのオーナかい?」

FDのドライバはヤマメに驚いた様に言った

「そうだけど、それが何か?」

「いやぁ、君みたいな若い子が乗ってるなんて思ってもなかったよ」

「よく言われます、結構みんな驚くんですよ」

「なぁ、そのクルマには何か秘密があると思うんだけど、見ても良いかな」

「えぇ、是非」

FDのドライバは内装、外装、足回りを見て何かに気づいた

「足回り、もしかしてFD用使ってる?」

ヤマメは彼の言葉に多少驚いていた

「(って事は、このクルマ、やっぱりロータリーだ)。ねぇ、エンジン、見せてもらっても良いかな?」

ヤマメはリアに回り込みエンジンフードを開けた

「...!?20B!!このクルマに..20B!!」

ヤマメからすればいつものリアクションだ

「お、おい、20B積んでてあの旋回性能って、一体どうなってんだ?」

小さな車体のリアに2.0lの3ロータが綺麗に収まる様はとても異様な光景だ

ヴァンケルスパイダの軽量小型な車体にユーノスコスモの3ロータロータリーはとても不釣り合いだ

「...君とは近々またバトルしたいのだが」

「俺はいつでもいいですよ?」

ヤマメは笑いながらそう言った

「じゃあ、来週の土曜にいろは坂に来てくれ、じゃあな」

栃木ナンバーの白いFDは峠を下って見えなくなった

「また、改造しなきゃ」

ヤマメはそう呟くと峠を下って都市部の方面へ向かった




登場人物

黒谷ヤマメ(クロタニ) - 実家である黒谷運送の長男、19歳でNSUのクルマとロータリーエンジンが大好き。愛車は20B-REWに換装したヴァンケルスパイダ

滝崎 隆信(タキザキ タカノブ) - 都市部にある酒屋、滝崎商店の長男。親子揃って大のロータリー好きでもあり、白のFD3S(Ⅲ型)に乗っている
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