今回はアダマンタイトとミスリル、オリハルコンと青生生魂の組み合わせで手や顔なんかを作っていく、
「他に要望とかあるか?」
『姫の髪を明るい赤系の色にできませんか?そっちの方が姫には似合うと思うんです』
「……………赤か」
金属で赤は中々無い。実際見つからないし、見つかってない。戦闘も考慮する必要があるので強度はもちろんの事、魔力の要素が大きく関わる。いろんな本を読んでるのでどの本かは忘れたが、魔力は電気のような物で、よく通す物や抵抗が強い物とは他に適する物と適さない物がある。鉄の剣を例に上げると、魔力はあまり通さないが貯める性質は強く、魔力によって変質しやすい。よく使うアダマンタイトと比較するとこうだ、
アダマンタイト
伝導率(魔力を通す)100%
蓄積(魔力を貯める)4%
硬度(加工難易度と頑丈さ)めっちゃ硬い
意思憑依適正 93%
変質しない
鉄
伝導率26%
蓄積30%
硬度 加工しやすい
意思憑依適正 16%
変質する
まあ、真理ノ瞳がある俺ぐらいしか見えないと思うがこんなものか、意思憑依適正(機構精霊等を宿すオートマタを作る際の精神、魂の安定性、操作性を指す)と伝導率が低いと動きがぎこちなくなるらしい。また伝導率が低いと魔法の制御にも支障をきたす、こっちは剣での話だが魔力を纏わせる場合、アダマンタイトは発動速度が早く、安定して使いやすいが、魔力は凄い速度で抜けていくため、それ相応の魔力の持ち主出ないと、満足に戦う事もできない。鉄の剣の場合は魔力の消費は少なめだが、安定させるにはコツを掴む必要があるのと、最大出力がアダマンタイトに遠く及ばない。あと魔力のロスが大きいため、運用効率が悪く、魔力の割に威力が出ない。ただ変質があるので鉄からよく使う魔法属性に適した鉱石に変わる。ただその変質を踏まえても赤になる鉱石は無かったのだ。代行者よ、何か人形作りに適した材料で赤い物無いか?
《世界樹の柾目材はどうでしょうか?》
………………………、世界樹の……え?ちょっと待って、それ切っていいの?
《世界樹は10本あり、一本を除き等間隔で植えられ、龍脈、空気中の魔力の調整をしている樹です》
で、その内の一本を切られたと、等間隔とか何か作為的物を感じる。
《切られたのは三本です。文献によりますとベヒモスと言う魔物と認識されています》
……………おい、これヤバくないか、誰の意志かは知らないが、目論見外れまくりだぞ、世界樹を見てわかったが、この規模は個人にできるような事じゃない。それこそ人ならざる者の…………
「はぁ………」
脳裏にあの残念神の半泣きの顔が過ぎった。頭が痛いな、魔力が増えすぎた場合や世界樹の再生または植樹と社会への世界樹の役割の説明、俺が考える部分と、代行者が考える部分を分担して思案する。
「…………………何にしても材料を入手してからだな」
それと世界樹の特徴、性質なんかも移動中に教えてくれ、
《了解しました》
「悪いな、どうしても手が必要でな」
「いえ、ご主人様のお力になれたのなら、ワタクシ達には光栄な事ですわ」
「そうにゃ!お兄ちゃんは基本的に一人で何でもやり過ぎなのにゃ!もっと頼ってくれにゃいと、作ってもらった意味がないにゃ」
「………私もそう思う」
「そうですよ、移動で頼られなくなったら私、引き篭もってると思います」
「私、最近はご主人殿と外出した記憶がないですよ?」
「いや、買い物には出てきただろ」
今回はクロエ、レア、ルシアにお留守番をしてもらった。子供達は俺が外に出る時は芦原さんも追加でさらに幼い子の面倒を見てもらっている。
「まあ、掻き集めて足りて良かったよ」
世界樹の材料は高い、柾目材は尚更だ。だが、そんな高額をそのまま移動させると影響もある。その上、街がインフレを起こしているのでその解決も兼ねて行う。まず、回ってない金を回収(ギルドの依頼をこなす)、街の全体にある金や分布を確認して、上手く回るように適度に買い物、そのついでに世界樹の材料も買う。………面倒くさい。代行者に丸投げしたいのだが、こいつ人の行動を読むのが下手で、急激的に解決しようとすると、金額的に問題なくとも、後から破産するものが出る。それだと本末転倒だ、
「………材料も手に入ったしいいか」
ただ、いちいち会って話しないとその操作はできない。何せ精神誘導だしな、まあ、こういうのは得手不得手を把握して、適材適所が望ましい。
「じゃ、この街にもポイントを設置してくれ」
「承りました………お父様すみません。ポイントは設置できる数に制限があるみたいです」
「そうか」
《50箇所登録されています。設置してある物を解除すれば、新たに設置できます》
「………わかった、じゃあ、使ってない所のポイントを解除して新しいポイントを設置してくれ」
「承りました」
「しっかし、よく50も覚えてるな」
「それが、お父様の為にできる事ですから」
「お、おう」
………みんなの信頼が重い。まあ、やれる事をやるだけだな、帰ってくると芦原さんとクロエ、レア、ルシアが伸びてた。
「……体力ありすぎやろ」
「不覚……」
「「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」」
向日葵やアリスは留守場が多いので子守には慣れてるみたいだな、お、
「ウィル達も手伝ってくれてたのか?」
「はい先生」
「おう!どうやれば先生の課題を達成できるか考えてたんだけど、全然わかんないし、部屋でじっとしてるのは性に合わないから、いつもやってる事に先生の強さのヒントがあるかもしれないって思って」
「そっか、頑張ってる所悪いがあんまり無いぞ」
「あんまり、ですか?」
「そうなのですか?!斯様な私では主の………」
「はいはい、兄さんそれはやめてって言われてるでしょ」
まあ、ウィルに関しては諦めた。
「危ない事しないかとか、目を配っただろ、戦う時も敵が一人とも限らないし、周りに目を向ける必要がある。そういう時は倒せなくても生存重視だ。連携とか一人では躱しきれないのもあるし………その辺りはまた明日教えるよ」
「えっと、課題は?」
「あれはクリアできなくても良い。俺は強いだけ言われても具体的どのくらいとかわかんないだろ、武道を習う時も鍛えればこんな技が使えるとか分かった方がいいだろうし」
護身には事欠かないレベルだしな、中堅冒険者には負けるがそんじょそこらの駆け出し冒険者には負けない筈だ。だが
「………と言っても今見てる子の中で頭一つ抜けてるだけだ、どれだけ強くなりたいのか、それにもよるが俺に近い所までなら引っ張って行けるぞ」
油断や迷い、慢心はすぐ様死に繋がりかねない。その辺りはしっかり釘を刺す。さて明日は結構大変な気がするな、金は手元に結構あるし、教育に力を入れていくか、
「今日は授業に入る前に聞きたいことがある。ウィル、キリエ、ハルト、ロイ」
「「「「はい!」」」」
「お前達はまだ強くなりたいか?」
「「「「はい!」」」」
軍隊式で育てたつもり無いんだけどなぁー、
「今日は総当りの組手を予定しているが、四人は準備運動の後こっちに来てくれ、向日葵、アリス、ルシア………あとクロシェットで他の子たちを危険なことがあった時は止めてくれ、アナスタシアはそこで待機」
「「「「はい」」」にゃ」
「了解であります」
よし、何時もより入念にやるか、準備運動、
「さて、今回はどうして強くなりたいか、聞いていいか?まずハルトから」
「え?!俺からですか?」
ハルトは一番分かりやすい。強くなるという思いが他三人より強い。
「一つじゃなくていいぞ」
「えっと、…………俺は、初めは襲ってくる奴を倒せる力が欲しかった。でも、先生に戦い方や勉強を教えてもらって、落ち着いて考えてわかったんだ。俺は弱っていく仲間を見捨てなくてもいい力が欲しかったんだ。諦めたく、ないんだ」
「わかった。いい覚悟だ。お前はそれを忘れるなよ。ハルト、お前には才能もある。いつかは俺より強くなれるはずだ」
この年でここまで精神的に完成していれば、このままだと俺が抜かれるな。うかうかしてられないな。
「主よ、今こんな事を言っても、愚かだとお思いになると思いますが、私は貴方を守れる程の力が欲しいのです」
「志を笑うなんてことはしない、ただ、俺なんか護衛しなくていいぞ、あいつ等もいるしな」
「ですが……」
「兄さん、静かに、私は今の力じゃ足りない気がします。それに強過ぎて困ることなんてないと思いますし、戦えないより戦えた方がいいです。なのでお願いします」
「僕は、種族から見ても力は弱いです。先生に合う前は戦いなんて魔法だけでする物だと思っていました。武器を使うこと自体を野蛮だと、出来ないことから目を逸らしていました。でも、ここに来てからは………ここなら僕でも魔法以外でも強くなれると思うんです!ですから、お願いします!」
「こっからは更に厳しいぞ、それでもいいか?」
それぞれの想いを胸にお互いに目配せをして声を揃えた。
「「「「よろしくお願いします」」」」
「……………よし、今日から少し個別授業とそれを見て課題を出す。まずはロイからだ………それと予め言っておくが、ゴールは一緒だ、ただそれぞれの得意な所を伸ばすから、教えてる事が真逆でも心配しない事、アプローチが違うだけだ、お互い話してて不安になるなよ、わかったか?」
「はい!」
「ウィルとハルトは筋トレと持久走だ。このスケジュールで5セット、時間が許す限りだ」
「「はい!」」
「キリエは南の三番目の部屋で瞑想だ。あそこなら静かだ、ロイも明日は瞑想してくれ」
「「はい」」
「………さて、初めにお前が自分の事をどれくらい理解してるか、だな」
「先生、僕は何を……」
「初めにお前には課題の全容を話そうと思う。ロイの次はキリエ、ウィル、ハルトの順で指導していく。ゴールは格上との戦い方を身に着けてもらう。っで、格上の敵の中には直感的にヤバいと思う奴がいる。そういう奴は大概、気迫を使う」
「はい?」
「気迫ってのは3種類ある。一つ目は気迫、格下を気圧す、一番分かりやすい基礎系の奴だ。次が殺気、殺す、殺せるの意思の発現、強い弱いはあるが、虫を認識して潰す時だって出てるぞ、まあ、このレベルだと微かだから向けられた奴でも気付きにくいが、不意を付いてぶつければ一瞬だが敵を硬直させることもできる。三つ目が闘気、敵を気圧すのとは違って盾ともなるし、己の力を上げたりとかな、これはちょっと上級者向けだ、そんでだ、四人に見せたあの一太刀はそういう技術の応用だ」
「そ、それで、僕はどれを習うんですか?」
不安そうな面持ちで俺の話を聞いているロイが質問した。ただ、気が重いな、
「いや、ロイに教えるのはこのどれでもない。むしろ逆の技術だ、」
「え?」
「ロイ、お前は確かに種族的に体格に恵まれていない。魔法も魔力が切れれば使えなくなる。そんな時、仲間を除けば、お前を一番助けてくれる技術になるだろう。だが………」
「まだ、理解が足りてないところがある」
「え?………えーとあの」
「だからまずロイ、お前の考え方を変える事と、お前に合った戦い方を教える。前使ったレイピアは持ってるな?」
「は、はい………」
ロイがレイピアを構えたのに合わせて、俺は体に込められる限界の魔力を込める。
「お前が鍛えるべき力を見極めるんだ。それと………始める前に言っておくが、加減はするが直撃すると死ぬ可能性がある」
「………覚悟はしています」
「分っている。ルールを説明する。とにかく俺に一撃当てろ、レイピアでも拳でも蹴りでもいい。俺に有効と言える攻撃を当てる。弱すぎる攻撃はカウントしない。場所はこの森全域だ使える物は何を使ってもいい」
「はい、お願いします」
「まずはロイなりのやり方で来い」
静かにレイピアを構えると、風がロイの足元の草だけを不自然に揺らす。その直後一瞬で距離を詰めて一突き、それを余裕を持って躱す。
「魔法は何かしらに干渉するから、次何をするかが丸わかりだ」
瞬間的な速度ならハルトを超えるが、それは今の話だ。魔法のアシストは身体の限界以上の効果は得られない。その上、風の補助なんてたかが知れてるし、俺と同じように魔力を込めて戦うとしても、魔力は足りても、ロイの体の頑丈さでは、込められる魔力が少ない。わざと大きく拳を振りかぶる。少し気迫を出して、するとすかざす回避行動をとるロイ。
「ロイ、お前の観察力は高い。相手の気の検知が上手い、それとお前の体は打たれ弱いが、筋肉が少ない分、素早く踏み込んだり、引いたりできる」
ヒットアンドアウェイと魔法による遊撃はなかなか無視できないものになるだろう。そこにアレを教えれば………と言ってもまだ、圧倒的に経験が足りない。大振りな攻撃は当たらないが、モーションの小さい短打なら当てやすい、しかし、さっきも言った通り、ロイの体は丈夫じゃない。それとまだ認識が甘い部分があるので、当たらないようにして拳圧で吹き飛ばす。
「うわっ!」
……………予想より飛んだな、10メートルくらいか?
《正確には13メートル20ミリです》
はいはい、すかさずロイの顔の横を拳で打つ。まあ、これで理解できると思う。ロイはいかに体を鍛えようとこの強烈な拳圧の煽りに耐える術は無い。だから、当たらないための技術を鍛えなければならない。
「さて…………今から教える技術は習得は簡単だ。たが、極めるのは一生掛かるとも言えるものだ、研鑽を怠るなよ」
俺は体に込めた魔力を放出する。
「キリエは武器の反復練習。ただし、複数の武器と合気道と剣と詠春拳だ、これらを中心に教える」
「え?一気にですか?」
キリエの強みは他の子よりも技術を物にする能力が高い。俺も詠春拳なんて使ったこと無いが、芦原さんから本も貰って、一通り技は使ったので基礎に忠実に教える分には問題ない。
「まずは、詠春拳と合気道からだ」
「………二つなんですね?」
「合気道は少し教えてるし、大丈夫だ」
キリエの弱点は素手で弱い事だ。女の子だから仕方ない事だが、魔物相手にそれは通じない。むしろ、狙われる可能性が高い。乱戦中に武器を失った時、自分の身を守る術が無いのは非常に困る。それと、そこらへんの棒でも剣術の心得があれば勝てなくても、逃げる時間くらいは稼げるだろう。
「キリエには相手を倒せる、という自信を持てるようにしてくれ」
「は、はぁ」
「それと魔物との戦闘も数こなす事になる筈だ、その為にキリエにあげた棒に刻印を入れる、この指導の最中は代わりの棒を使う事、困った時は手近な物、石や皿、食器に硬貨………何でも使えばいい。ある程度できるようになって来たら実戦をやる」
「はい」
キリエには多様性と殺気を身につけてもらうつもりだ。それと、
「魔法についても勉強していく、水系統の魔法を第三位階まであげる」
「マ、マジですか……?」
「ああ、実際ロイは旋風魔法を使える。土魔法も、もう少しで植物魔法を習得する」
「あのヒョロヒョロ、どんだけ魔法凄いのよ………」
土魔法は礫魔法、衝撃魔法、そして植物魔法に分岐する。エルフは植物魔法に分岐しやすい。火魔法はさっぱりだが、時間があればロイなら水魔法にも手をつけるだろう。
「さて、始めようか」
「お願いします」
木の棒がぶつかり合う音がしばらく響いた。
「ウィル、お前には聖魔法の習得をして欲しい。適性はあるから問題ない」
「ではすぐさま…………」
「いや、ウィルには使える様になるのは問題無い、それよりどんな状況でも発動できるようにしておいてくれ、それともう一つ戦ってればわかると思うが、受けていい攻撃か、受けてはいけない攻撃かを見極める経験を詰むこと、相手が有利な時でも逃げ出したくなるような気迫を身につけてほしい」
魔物との戦闘もこなして貰う予定だ。理想としては継戦能力の高い前衛のヒーラーだ。完全にバーサーカールートだと言う事が気がかりだが、
「並行して打たれ強さも身につけてもらうからへばるなよ」
「全身全霊答えてみせます」
………そこまで本気でなくてもいいけど、まあ、ウィルは体格には恵まれているのだろう。かなりも筋力ついている、
「あと身体強化もな、魔力の限界量も増やす必要があるから一気に行くぞ」
「まあ、一日目なんて説明ばっかりだよ、お前には指導に入る前に決めてもらう事がある。」
「先生、俺難しい事は分かんないぞ」
「大丈夫だ、そこまで難しい事じゃない。お前自身の強いの方向性だ。筋肉ってのは重いんだ、付ければ威力は増すが速度は死ぬ。体重をしぼれば筋力と威力は落ちるが、体が軽くなる分速くなる、付け方を間違えるとキレが悪くなる。一撃の重みか、手数で戦うか、ハルトの素養ならどちらも選べる」
「先生………俺どっちの戦い方も使ってるのよく見たことあるんですけど」
「…………まぁ、なんだ、俺のはちょっと特殊なんだ。武術ってのは一つだけというルールはない。八極拳が分かりやすい例で短打で超至近距離の防御突破、又は無効化にコンセプトを置いてるが、当然至近距離まで行かないとリーチが足りない。武器を持ってる相手には接近できれば容易く倒せるだろうが、それまでが大変だ。で、昔の達人と言える人達は槍の名手が多かったらしい」
戦争でものを言うのは生存能力だ。槍はリーチが長い分、距離を取って戦うことができる他、牽制や横に避ける場所がない通路での戦い等ではかなり役に立つ。が、刃は先端にしか無い上に突きに特化したものだ。間合いの内側に入られた場合、殺傷力は皆無だ。お互い丸腰なら棒一本でも差になるが、完全武装してる人間に木の棒はまず効果がない。乱戦時は長物なので邪魔になる。それに槍は案外脆い。折れた時や乱戦時、武器が無い時、身を守る術さえ無い人間は生き残れない。継戦能力等の面で見れば、槍と八極拳はお互いの弱点を埋め合う、最適な組み合わせと言えるだろう。………まあ、素手なので状況次第だが、
「なんだ………生きてりゃ勝手に付いてくるものがあるんだ。それに武道は繋がってるんだよ、剣の使い手は剣だけが上手くなるわけじゃない。並行して伸びる能力もあるし、似た技を使う流派とか、色々自分の糧にしていったら、その内自分の中で形になるんだよ」
自由とは最も迷うものだ。大概得手不得手で行けない方向があるので、選択肢から選ぶのだが、何でもいいと言われても、何が選べるか分からないのでは選びようが無い。俺は居合から入って色々齧ってこんな感じだ。出来るならこんな戦い方は真似てほしくない。ただ、それ故に提案できる手札は多くある。
「幾つか候補を上げるからその中で気になるのがあったら言ってくれ」
カタカタカタカ………
暗闇の中に光る薄明かり、そこに向き合う人物、………うん、俺だな、キーボードを打ち、保護している子供たちの名簿を管理して、設計図や案を纏めていく。
「旦那様………体に障りますよ」
「………まだ、6徹だ」
「私達はー、眠りを必要としないですけど旦那様は………」
「それより武装のアイディア無いか?ネタ切れなんだよ」
「………旦那様が行き詰まるような物、私には荷が重いと重んですが〜」
見てもらわないと話にならないの肩越しに見せる。……………こういう時クロエだとがっつり胸が肩に乗る。そして無自覚なのだ。
「なにか〜?」
肩に置かれた手が妙に冷たく感じる。気のせいだ。
「……………アホなんですかー?と言うか誰に使わせるつもりなんですか〜」
「ネタだけでいいから、頼む」
「分かりましたー。でーも………ちゃんと休んでくださいねー」
冷たい手が襟から胸元に入ってくる。何してんの?
「イーヤ、ネムレナインダッタラ、イイ抱キ枕アリマスヨ〜」
何故片言、絶対何かやましいことがある。又はこれからしようとしているのか、
「………マスターから離れる」
「あ痛っだ!………お、お尻が」
さっきの声はアナスタシアか………助かった。ただ何をしたんだ、見えなかったけどなんか衝撃が伝わってきたぞ。
《前にウィルが芦原と藤白に行っていた事だと推測します》
……………………………まさかのカンチョウ?
まあ、アナスタシアじゃ頭叩こうにも手が届かない、にしても情け容赦の無い攻撃だな。あとそろそろ、尻ばっかり擦ってないでパンツを隠せ!レア!
「その汚い尻隠す。マスターの前」
ちょっ!言い方!誤解を招くわ、レアはバッとスカートを戻すと顔を赤くしながらこっちを見ている。
「………俺は明日の夜寝るから今日はこれのアイディアをくれ」
「わかった。明日は布団暖めとく」
頬を仄かに朱に染めるアナスタシア。
……………………アナスタシア、お前もか、
その日は案より明日どうやってアナスタシアを躱すか、頭を捻ることになった。