「先生の目が普通に開いてる………」
おい、いっつも開いてるっつーうの、と心の中でツッコミを入れると、
「それとさっきの何か教えて欲しいですけど?」
グラーザーのに入れた一撃が気になるらしい。まあ、さっきまで攻めきれなかった相手を一瞬で倒されれば気になるだろうけど、最後の方は我武者羅に剣振り回してただけだぞ?
「あ〜、あれか?ハルトに教えた歩法と対人戦術の合わせ技」
ぎりぎりまで上体を残して攻撃を引き付けて、予め足を運んだ方に体を逃し、側面に回り込む。徒手格闘では基本的な動作に含まれる物だが、経験者と達人の差はこういう所に程顕著に現れる。身体能力で劣っていたとしても、それを補うに足る経験や技術を正しく磨いていれば、早々簡単に負けることはない。力の強い相手は陣取りの要領で躱し、素早さで負けているなら経験則と間合い、防御の硬い相手は観察と弱点の予測、これらは精神要因で、もう一つは生物学的要因、こっちは割とハルトに合っている。直感が役にたっているのだと思う。何せこっちは反応速度や瞬発力が高くないと中々うまく行かないし、身体能力だけで何とかなるものではない。………その辺りはどっちも実行するとなれば同じ事か、
「ハルトの勘は鋭いがそればかりに偏る戦い方は良くない。それとハルトは力や速度どちらかに特化した鍛え方をして無いからな」
ウィルは筋肉の密度が高いので筋力特化、ロイとキリエはあまり筋力が上がらないのとウィルよりしなやかさや柔軟性があるので素早さを磨いている。
でハルトは獣人の高い身体能力を表す様に、柔軟性やしなやかさもあり、筋力も申し分ない。正直どっちも目指せる。そのままで相手によって切り替える戦い方もあるが、器用貧乏になりがちだ。故にシンプルな強さが求められる。
「なら遠慮なく………行くぜ!」
剣を地面に突き刺して魔力流して加速を掛けていく。筋肉の付け方の話をさっきもしていたが、刀にも同じことが言える。剣は硬くすればその分頑丈になると言えるが、刀は硬ければ硬いほどいいものでは無い。刀は玉鋼からできているが、刃に使われる部分は硬く、それ故脆い、それを補う為にその刃になる部分を芯に峰の方から衝撃を逃がす柔らかい玉鋼で覆うように叩き上げていく。ただだからといって芯を硬くすればするほど良いというものではない。逃せる負荷も決まっているので許容を超えればどんな達人が使おうとあっさり折れるのだ。良い刀はその許容範囲にどう仕上げていくかにある、とも言える。洗練された刀は薄い刀身特有の鋭さとそれに反する驚異的な強度持つ。ただ、強度の側面は使い手に恵まれなければどんな業物でも一瞬でポッキリ折れる。
強度がある=硬度が高いではない。驚異的な強度を発揮するのは縦のみで、他はアッサリ折れる。………まあ刀身の薄い刀剣全般そうなんだが、
バアァァァン!
ハルトを中心に爆発が起こる。直感か否か、現状での最適解を導き出した。ただ、周りは何も知らんからごちゃごちゃうるさい。
「おい!あれ大丈夫なんか?!」
「ぐっ、………犬の少年」
「水!誰か水を!」
拡がっていた炎は不自然な動きをして中心に集まり始める。ハルトの姿が見え始める。当然無傷、ハルトには炎熱吸収がある。
ここで説明させて貰うとしよう。炎熱無効は火魔法や熱、炎で傷を負わなくなる物で、炎熱吸収は文字通り、自分に取り込んでいくのだが、
「ハルトは炎熱吸収を持ってる。吸収した炎や熱は自分の身体能力に上乗せすることも出来るし、体力の回復にも魔力に戻す事もできる。それと自分の周囲の熱や炎を意のままに操る力でもある」
炎を身に纏い、羽織のようにはためく炎は眩い光と熱を放ち、他者を寄せ付けない。
「炎陣羽織ノ装、」
あの技唯一の欠点は高熱を放つがゆえ、炎熱無効持ちで無い物とは前衛で連携が出来なくなる事だ。
「
思考を切り替え、更に二段階程ギアを上に上げ斬り掛かる。それを予想通り防いたハルト。驚異度上方修正、背後からの一撃を一次受け止め前にスピン、並行して受け流し、
「先生の背中は遠いな、まだまだ」
「そんな事はない」
刀は納めず、正面逆手に持って構える。
「剣道と居合には対極と言える側面がある。両手で刀を振る為に力は乗るが、両手で握るが故に軌道やプロセスに制限が付く。居合は刀と鞘を持つ事で速さを追求する。力で勝てずとも軌道の自由度と速さで柔軟に対応する。ハルト、力と速さの両方を鍛えて行くのは大変だ。この鍛え方を続けていけば格下なら手も足も出なくなるが、上や同格の相手には苦戦を強いられる………だからこそ、聞くぞ、誰よりも強くなる覚悟は?」
「………お願いします!!」
「………よし、こい。終わったらその技の諸注意や有用な運用方法を教える。弱点もな」
暫く打ち合ってわかったことは、羽織は速度を特化で振り分けているようだ。
「炎鎧煌備ノ装」
さっきまで羽織を形度っていた炎がハルトの体を覆い、赤熱した鎧を作り上げる。この状態だと速度はそこまで早くならないが、力は強くなり、直接的な防御力は無いが、これだけ光ると目立つが遠距離攻撃の狙いは付けにくくなる。聖光魔法耐性がなかったら、直視は難しいくらいには光ってる。
「魔狼炎纏ノ技」
今度は炎を武器に集中させ、一振りで辺り一帯を焦土に変える。一掃できる波状攻撃は魅力的だが、大振り、遅い、消耗が激しいと三拍子揃っている。使う局面を間違えれば一気に窮地に追い込まれかねない。
「あまりこれは良くなさそうだな」
一気に間合いを詰めて一撃、全方位攻撃検知、なるほど、
「誘い込み、か」
「違うよ、逃げられない前提だったのに………」
バツが悪そうに頭を掻くハルト、普通に全身燃えてる。完璧には防げないが脱出できない程でも無い。そもそも炎熱無効なので防ぐ必要もないが、ただ炎の形が結構デフォルメされてる。
「飢狼突撃ノ技」
ハルトはそのまま突撃してきた。躱す。ブラインドか、受けて滑りこませて、懐に入り、小さなモーションで投げる。
「いいなぁ、諸々含めて満点だ」
「一個もまともに入って無いだけど………」
「まともに入ったら大怪我だろうが、もっと上に行くためのヒントをいくつか教える。己を磨く、技を磨く、これはある程度達成されている。経験はまだもう少しだが、そこまで大きな差を生む程ではない。地形の利用、相手ごとの対処、これも冒険者になっていろんなのと戦ってれば達成される。まあ、苦手な事もあるだろうが、大事なのは瞬時に最適化できるかどうかだ。それが出来れば何が出来るか、それは見せてやる」
「見せるって何を?」
「先に説明するより見てから説明するほうが早いからだ。っと言っても一回は見せたが、前よりはよく見えるようになってる筈だ」
目安としてみせた奴だ。結構前だし忘れたか、対象の有無であれも変わる。
「……………………もしかして、あの、滅茶苦茶速い奴」
「まあ、俺の最高到達点かな、ただ、先に言っとくとよく見えるってのは動体視力の話じゃないぞ?全体が、技がよく見える。って意味だからな?取り敢えず剣を前に構えて動かさない事、全力で持つ事、分かったか?ウィル達は後でな」
「え?無理無理!」
「大丈夫だ、反応しろとは言ってない。剣に当てるから、剣を落とすなよ」
さて、腰を落とし、一息つくと、鯉口を切る。柄を握り、姿勢を前に傾け、更に身を屈める。鞘走りの音を聞きながら、血の巡りを感じながら、最も肉体が充実した瞬間に筋肉を軋ませ、引き絞られた弓から放たれる矢の如く、鋭く疾き一刀を放つ。
キイィィィィン!
響く金属の震える甲高い音、剣はハルトの手から消えている。
「どうだ?よく見えたか?他にも出来る事が増えるからあと何回か、パターンを変えて見せるからな?」
「……………………」
ハルトには全く見えていなかった。攻撃に万全で備えていたにも関わらず、だ。
「………そうだな、もう一回やろう。さっきとの違いを見極めて欲しい。速度はそのままでもこれは見える筈だ」
「っ!分かった!」
準備が出来てからもう一度振るう。ただ一つの違いのある一刀はハルトが両手で持った剣を吹き飛ばすには至らなかった。
「……………………速度緩めて無かった?」
「周りに聞けば分かるぞ?違いが無いのがな、………ただ体感速度が違うんだ」
「えっと……、」
「誰でもそうだが、集中ってのはずっとできるものじゃない。全力で集中出来るのは10分程度、せいぜい猿の二倍だ。それでも均一に意識を集中出来る訳じゃなくてな、波打つ様に集中の低い、高いがある。低い所を狙われると目の前の敵から不意打ちを受けた感じになる。逆に高いと簡単に捉えられる筈だ。」
首をひねって考え込んでいるが、こういう時は大体答えが出ないのがハルトだ。
「〜?つまりどうゆう事?」
「誰が戦い方を教えたと思ってるんだ?手に取る用にわかるぞ、………まあ、この辺は観察する力を磨けば大丈夫だ。ヒントは癖だな、本人も気付いていない癖、無意識は虚実と違ってはっきりしてる。当然隠そうとする者もいるから見落とすなよ。目で観える物が全てじゃないからな」
「え〜、………う〜ん?」
まあ、すっと呑み込めと言うのは難しいからな、
「目だけじゃなくて、耳も鼻も毛の一本に至るまで使ってけ、ってところかな?」
特に難しいのは実際にやってみる事だ。必要な要素が多い為、全ての極意、と言うと大げさだが、コツはしっかり覚えなければならない。そこから必要な要素だけをその都度取捨選択して最適化された攻撃を繰り出せる様になるまでどれほど時間が掛かるだろうか、集積した経験と鍛錬が物を言う。同じ領域にいる者にとってそれらはあくまで前提条件に過ぎないのだから、
「それと………気の読み合いには4人に教えた技術全ての体得が必要なんだよ。闘気は心技体を一つにする要素、限界を超える方法等、殺気は相手の隙を作ったり、虚実や牽制に使う。気迫は周囲を探ったり、牽制したり、弱い相手を気圧したりかな、最後に隠密、これは読まれるのを防止、誤認されせたり、まあ、全部使い方次第だから混ぜたり、独自のやり方で変えることもできる」
「何故、それぞれに別けたのですか?」
………割とこの四人でもある程度の所まで持っていくには時間掛かったのよ(それでもかなり早い方)。他までとなると一人ずつ手取り足取り教えるのは時間がかかるし、この際指導役に回す為にみっちり教える方針に途中から切り換えたんだ。
「………まあ、おさらいの意味もあるが、自分の覚えた物をより深く理解するには外からの視点や自分自身を見つめ直す事で更に良くなる筈だ。おかしな方に行きそうだったら、俺が言うけど、それぞれが先生になる経験もしておいた方がいいかなと………」
「先生………ですか?」
「先生………」
「希望者が入れば教えてもいいよ。シマシマやミネルヴァはあと一歩、って所だけど、キングは堅実に鍛錬を積んでないせいで腐りかけてるし、エミルは闘気は押さえたが、他には手を出さないしな、」
ついでに指導する相手も教えとく、キングはキリエにこってり(脂を)絞られる事になるだろう。エミルは闘気を魔法に応用しており、水球の維持もかなり上達している。まあ、魔法はイメージが大事なので、応用すれば効率的に魔法を使える様になるのだが、ここは後で説明しよう。火と水なのもあって互いにいい戦いになるだろうと思うが、エミルは逃げに徹する可能性があるのが難点、ハルト相手に逃げられる気はしないが、湖に行かれると引っ張り出さないといけなくなる。シマシマとウィルはまあ、ウィルが高い炎熱耐性持ちなので火傷を気にせず、組手の出来るいい相手になるだろう。ミネルヴァはロイにとっても刺激になるだろう。僅かな音を聞き取るエルフと風切りの音を出さない梟獣人のミネルヴァ、技術以外にも種族的に見ても対を成しているような感じだ。お互い刺激を与え合えば良くなっていくだろう。先生という教える立場だからこそ言えない事とかあるだろうし、共に研鑽している相手だからこそ話せることもあるだろう。ま、これは帰ってからか、
「起きろー、グラーザー」
「おはようございます!」
無駄にうるさい。
「……………うん、おはよう」
耳鳴りが治まってから、会話を切り出す事にした。
「まさか宿を変えるだけでこんな重労働になるとはな………」
芦原さんや藤白に収納偽装用の手荷物(軽い)を持ってもらい、クロエやクロシェットは隔離に入ってもらったが、人に、いやエルフに囲まれていた。原因はグラーザーとロイだ。ロイの方は顔を隠せるフードを被っていたが、どうにも注目を集めてしまった。グラーザーは元々有名人だし、初めは何故気付かれたのか分からなかったが、傍から会話を聴いていると原因はわかって来た。
「ねぇ、あなたハイエルフでしょ?!」
「鍛えて進化したの?それとも生まれ付き?」
「グラーザーさんのお弟子さん?なのかな?」
「私は………ムグゥ」
ここで目立つのは良くないんだよ、このくらいなら、難なくすり抜けられるが、芦原さんやグラーザー達を置いていく事になる。取り敢えずロイの口を喋る前に塞ぐ。
「いや、私も彼と同じ師を仰ぐ者だ。私は素晴らしい師に巡り会えた!」
……………………よし、撒こう。現地集合、
「あれ、先生は?」
「………嫌な予感が」
「主よ、何故おか、ぐぼぉ!」
「北川さあぁぁぁぁん!」
「逃げおったぞ!やばい!逃げられへん!」
「皆さん、すいません」
「はっはっはっ、皆元気だな」
背後で何か聞こえたが、知ったことか、時間は無駄に出来ないんだよ。
「師よ、只今戻りました。」
…………耳がイカれてるのか?こいつは、と思いながらも、こいつが一番乗りか、なんて考えていたら階段の方からこちらに向けて廊下を走る音がする。
「主よ!「先生!置いていかないでくださいよ!」」
「せめて一声掛けてくださいよ!」
ハルト、ウィル、キリエが同時に合流、後からトボトボという感じでボロボロのロイが部屋に顔を覗かせた。
「先生………」
「……………………まあ、入れ」
取り敢えずこうなった理由を突き止めないとな、移動の度にこうではロイが
理由は2つ、エルフは総じて整った容姿を持つ者が多い、と言うより全てがそうだ。例外になるのは老人くらいだが、それでも歳の重ね方次第と言うか、そもそも素材がいいのでそこまで崩れない。………何が言いたいかと言うと恋愛の基準に容姿はあまり影響しない。美形は見飽きてるのと、見慣れてるので容姿で選ぶと必然的にハードルが高過ぎ、相手が見つからないのだ。エルフ同士なら尚の事、なので内面や能力が最も大きな要素を占める。
………ちなみに美形のハードルは高いが、可愛い系のハードルはその分かなり低いとか、
………でもう一つは、種族的な事で特に女性にはナイーブな問題だ。まずエルフは魔法に優れるが身体が頑丈ではない。生まれ付き病弱な人なのでは、というレベルで筋肉や脂肪が無い。肌にハリのある老人みたいな感じで、ハイエルフになるとこれが人並みになる。実際、グラーザーも剣士と言えるガッチリとした身体付きをしているし、ロイも身体を絞って仕上げている。女性の場合、脂肪が問題なのだ。太った人のスリーサイズの数字の変化が少ない事をドラム缶に例える事があるが、
………エルフの場合、マッチ棒だろうな、
…………ぶっちゃけると、エルフではBカップでも巨乳の部類に入る。しかし、男性がハイエルフになればがっしりとした筋肉が付くように、女性も女性らしい身体付きになる。物凄く不謹慎なことを言うと、エルフのままだと性別が判別しづらい。極めて、服装以外ヒントが無い。声とかも高く差異がほとんどない。外から来た他種族(人含む)がナンパして声かけたが同性と言う事がよくあるとか………、そして外から来た者たちはエルフの女性よりは出る所は出ている。気にするなと言われて無視できるなら気にならない訳で、男なら必然的に視線も集まる訳で、他の種族からは整った容姿を羨まれてるのだが、結局、隣の芝生は青いと言う奴で、
ある者は劣等感を拭うため、またある者は渇望する。エルフの長い寿命から見るとハイエルフはそんなに遠い目標ではない。当然手を伸ばすものが多い。さりとて、あまりハイエルフがいないのは、
「長命種故の時間の感覚か、或いは………」
………いや、止めておこう。そろそろ目的の方に思考を戻そう。まずここに来たのは、ロイの為であるが、実際それ以外にも目的は沢山ある。はじめにゴミ問題、ここにいる勇者にとんでもないのが居る。戦闘能力皆無なパーソナルスキルだが、後始末が致命的だ。エルフの時間の感覚だと手遅れになる。その二、預かってる子供達の世話が限界近いので、教員なり、世話役なり人手が欲しい。………80人くらいで、数えるのを止めて名前を覚える方に専念していたが、一週間程前にアルから人の名前を覚えるコツを聞かれた時に発覚した。数えてみたら312人、後でパソコンの表と照らし合わせた数と同じで、ちょっとホッとしたが、現状の確認が急がれた、で俺の留守中はかなりギリギリだった。特にアナスタシアとレア、クロシェットを誰か一人連れて行くだけでも大変そうだった。………作り置きフル活躍前提である。
ただ人材採用は難しいもので、まず拠点が森の中で帰りはともかく、移動手段が徒歩以外無く、近くは物々交換主体の開拓村ばかり、アスメシアは結構遠い。車とか使えれば片道三時間程度だが、森という環境に慣れていて、なおかつ、高い教養や生活能力等が要求され、そして、最も大事な信用、次にこちらが提供出来る報酬、諸々の条件を踏まえて千里眼でリサーチを掛けて合致する者が何人かいたのがエルフのこの街である。それにエルフなら然程外に興味を持たない。問題点はその外に興味を持たないと言う所だが、………ここは報酬で解決する他無い。
「お茶は………えっと、いいかがでしょうか?」
「ありがとう、クロエ……………うん、良い香りだ」
クロエの淹れてくれた紅茶を愉しみ、リフレッシュした所で今後の動きに思考を切り替えていく。
「グラーザー、まず俺達はアスメシアの森で孤児院?………みたいな物をやっている。本職は冒険者で、たまに商人の真似事をしている。ただ最近孤児院の人手が足りなくてな、森での生活が苦でなく、有望な人材と言うとなかなか居ないだろう?だから、ここに
「どう、と言われても、な………無論、私は稽古を付けてもらえるならどこへでも付いていくつもりだが、他の心当たりなど早々………」
「それは俺のスキルで予め調べてある。候補は6人でお前も入ってる。全員こっちから会いに行くつもりだったんだがな………まさか町中でつかかってくるとは」
「はっはっはっ!いや、申し訳ないっ!」
「………何したんだよ、こいつ」
「………噂の絶えない人ですからね」
「まっ、取り敢えず」
「えっ、それで済ませるんですか」
「御心のままに」
だって、この話掘り下げても何にもないし、バッサリ行くよ?
「俺達は今日の晩に帰るけどそれまでに残り二人に会わなきゃならんのよ」
「他の三人は?」
返事の代わりに手帳の破れたページを見せる。初めての人はちょっと式が複雑化するので付箋サイズでは収まらないのだ。と言うのも前に、侵入者があった時から対策のレベルを上げたのだ。元は隔離を使って正しい道以外を森の外に出す(生徒を例外にしてある)という感じにしていたのだが、そもそもここに来た頃以外、この付箋一枚で自由に帰ってこられるようにしたので、正しい道と言う物がそもそも要らない。拠点から出る方は別にルートを気にする必要もない。で、外から来る方法を無くした(代行者に認証無しには入れなくした)のだが、転移の対策もしなくてはならない。でいろいろやったのだが、この場所を目で見て知っている者以外の転移を阻止とかで、………まあ、細かい所は省くが初めて入る者はその手の式を正しくパスしないと行けないのだ、
「じゃ、行ってくるわぁ」
「うむ、しかし、こう言っては何だかエルフは長く生きている者ほど知識や技術も高いが、早々欲しがる物など無くなって来ているはずでは?」
「長く生きてるからこそ飢えているものもある。って所かな。変化を嫌う者も多いエルフだが、退屈や刺激の無い生に飽きてる奴だっている俺が必要としている人材はそっち側だ」
「何を置いて行っとくれとんねん!断りの一つくらい入れんかぁい!」
芦原さんも到着したみたいだ。余談だが、藤白は最後までたどり着けず、彷徨っていたので、残り二人に会った後、ついでに拾った。