前話含めて4話くらいを予定してます。
自室に戻り一夜を明かすと、太陽はまだ日の出から間もなく、綺麗な朝焼けが窓から見えた。
教科書、ノートの類を空間のルーンに仕舞い込み、朝食を取ることにする。
焼きたてのパンの芳しい香りと、厨房から漂う、スパイシーな香りに誘われてダイニングに向かうと、これから1年を共にするドラグナー候補生の姿が見えた。
「あっ、あいつだ、噂の転入生!」
知らぬ間に噂になっているみたいだ。
「姫様と握手したという羨ましすぎる経験をしたラッキー野郎!」
「よし、決めた、午後の戦闘訓練でボコボコにするわ、俺。」
「協力するぜ、俺も妬ましいと思ったw」
散々な言われようだ。
しかもボコボコにすると出た。
ならば、反抗する気も起きない程に叩きのめそうか。
ただ、なるべく波風立てないで済ませたいが。
とりあえず、彼らの噂話は聞き流した。
ただし、彼らが口を滑らせた、武器や、戦術のプランはしっかりと頭に刻み込んで。
彼らが朝食を食べている間に僕は朝食を済ませ、一足早く校舎に入り、準備を整えた。
早めに出たおかげで、予習をしっかりして1、2時間目の授業に備えることが出来た。
ホームルームが始まると、案の定、質問責めにあった。
これはどこの世界でも共通事項だろう。
差し障りのない回答をして、(ただし、好きな人の質問には、名前は伏せるが、とても身分の高い人でまず叶わない片思いだと答えた。氷の国のソフィ王女あたりと誤解してくれたなら助かる。)
1時間目が始まり、竜の生態をしっかりノートに書き留め、戦術や陣形の利点と欠点を上げる質問には、予習して理論武装をした甲斐あって、
及第点の回答にまでは漕ぎ付けた。
前の世界でいう、ランチェスターの法則や、戦闘ドクトリンをしっかり学ばなければならないな、と痛感した。
2時間目の一般教養はもう、こちらの独壇場だ。
前世では、偏差値60後半の高校でこの世界に来るまでの2年間、学年トップ10から落ちたことはなかった。
不安要素だったライディングは、姫様に手紙を書いた経験が活きたのか、思いの外簡単にマスター出来た。
数学の方は、基礎クラスの四則演算を、ものの4、5分で解き終え、先生から寝ている暇があるならと渡された、
(先生曰く超難問揃いだから終わらなくても構わないと言われた)
三次方程式、漸化式、微分積分などがびっしり書かれた問題プリントをスラスラと解き進める姿に、先生からの評価も少し上がったみたいだ。
終業のチャイム(拡声のルーンを使っているらしい)が鳴り、昼休み。
カフェテリアでファース島風のハンバーガーを食べ、(ジューシーなハンバーグ、とろりととろける濃厚なチーズ、瑞々しい新鮮なトマト、シャキシャキと快音を奏でるレタス、隠れた名脇役のピクルス、フルーツベースの甘さの中に緻密に計算された配合のスパイスによる辛味が絡み合うソース、それらを包みこむふわふわのバンズ、その全てが渾然一体となって僕を襲い、1つで済ませるつもりが、おかわりして2個分のゴールドを使ってしまった。)
そして、昼休み明けの戦闘訓練。
トラブルはその時に起こった。
任意に相手を選び模擬戦を行う時間。
朝の噂話の連中が僕を取り囲む。
「「「オヒメサマ直々に期待されてるその実力、しかと見せてもらうゼェ!」」」
そう言うが早いか、左から斧、槍、剣を構えた3人が一斉に攻撃を仕掛ける。
一番出の早い剣の一撃を双剣で弾き、斧の攻撃を3歩分のバックステップでかわして槍の攻撃もまとめて回避、走り込んで突撃を仕掛けてきた槍使いを蹴り飛ばして、続けて攻撃して来た剣使いと衝突させる。
そのまま、最後に残った斧使いを双剣のラッシュ攻撃で翻弄して喉元に双剣の切っ先を突きつける。
1対多の戦闘なんて5年の修行の間に何千回も経験している。
スキエンティアの魔法学園に通っていた頃も、暇を見つけては魔物狩りをしていた。双剣修行の時もそうだ。この5年の修行という経験は僕の戦闘能力を前世の何十倍というレベルで向上させていた。
僕に完膚なきまでにフルボッコにされた彼らは、以後1ヶ月の間、僕のことを師匠と呼び慕うようになった。
が、正直鬱陶しさを感じ、師匠と呼ばないことと、今後ちょっかいを出さないようにお願いをし、代わりに、寮で宿題をやる時と、座学の時間にちょこちょこアドバイスを送って、彼らの成績を上げる一助となることで和解をした。
この学校、成績が優秀であれば1年で卒業出来るが、平凡な成績の者は2年次へ、2年次で一定の成績を残せば卒業、不出来な成績の者は留年、留年が2年続くと退学という、独特なシステムになっている。
そんな養成学校での日々は過ぎていき、あっという間に夏休み。
山のような宿題を両手に抱えた3人組(名前は、斧使いはアルク、槍使いはラース、剣使いはウォードというらしい。入学した年に3人揃って留年をしてしまい、それがきっかけで仲良くなったとか。)と、空間のルーンに宿題をまとめて突っ込んだ僕は他愛ない雑談をしながら寮への道を歩いていく。
後で教師から聞いた話だが、3人組がまとめて僕に戦いを挑んだ日、姫様とゲオルグさんが視察に訪れていたらしい。
その事は彼らには内緒にしておく。
僕がフルボッコにする様子を姫様やゲオルグさんに見られていたと知ればひどく落ち込むことが容易に想像がつくからだ。
かなり長くなってしまった…。
1学期が終わり、次回は2学期、そして、オラージュにも変化が…?
次回をお楽しみに!