『拳聖』の家系【更新停止】 作:飯テロ
どうか、優しい目で見てね?
転生
「おめでとうございます!元気な男の子です!」
「おぎゃー⁉︎」
まず、ことの経緯を説明しよう。
とある夏の猛暑日。俺は昼食にカップラーメンをと思い、お湯を沸かそうとする。ところがどっこい、コンロになかなか火がついてくれない。だから俺は、あのコンロのスイッチ?ダイヤル?わかるでしょ、あのカチカチするやつ。とりあえず、そのカチカチするやつを火がつくまでカチカチした。カチカチカチカチカチカチカチカチ。何回も回した。そして、やっと火がついた!と思った瞬間に視界がブラックアウト。次に目が覚めたときには、目の前に変なじーさんがいたってわけよ。
——ごめん、ワシのミスで君死んじゃったから。ガス爆発だから。
じーさんの第一声がこれである。一言言いたい。
ファッ⁉︎いや、ちょ、おま、ミスって、ガス爆発って、ファッ⁉︎
——だよねー。ビックリするよねー。でも大丈夫!恒例行事の転生あるから!
……把握。つまり、目の前のじーさんは神様で、俺は神様のミスで死んだからごめんなさいの意味で転生させてもらえる訳ですね。はいはい、お決まりのパターンですね。特典とかいろいろ貰えちゃったりしちゃったりするパティーンだなぁ?でもその前に、転生ものの神様に俺は言ってみたいセリフが一つだけあった。それが、
「神様、ミスで人と死なせるなど、貴方……怠惰デスねぇ」
言っっったァァァ‼︎言ってやったぞ!ずっと言いたかったこのセリフ!ああ、脳が、震えるッ!
——あれ、それどっかで聞いたことのあるセリフ……あ、ペテルギウスだな!なるほどなるほど。さては君、リゼロの世界に行きたいんだな?
……へ?
——なんだよ、だったらそう言ってくれればいいのに!まったくもう、照れ屋なんだからッ☆
いや、ちょ、ま
——いてらー。
それを合図に俺の背後に巨大なブラックホール出現。あっという間に吸いこまれていく俺。そして思う。
特典ないのォォォォォォ⁉︎
「おめでとうございます!元気な男の子です!」
「おぎゃー⁉︎(特典は⁉︎)」←今ここ
やっべえよ。特典無しでリゼロの世界とか積みゲーだろ!そんな俺の心中など、知らない母親は、産まれてきたばかりの俺を抱きかかえる。そんな母親をさらに抱く父親。
「ああ、かわいい私の子。大きくなったら、貴方は『
……ん?『剣聖』?剣聖と仰いました?ま、まさか、これが憑依⁉︎ラインハルトに憑依⁉︎だがしかし、それはおかしいと思った。何がおかしいって?父親の髪色が、だ。ラインハルトの父親なら赤くなきゃいけないだろ?でも俺の父親——というか、父母揃って金髪なんだよ。
まあ、そのうちわかるだろうし、いいかな。
四年後。
月日が流れるのはまあ早い。あっという間だ。
さて、この四年間でいろいろわかった事を整理しようか。
まず、俺の家系は『剣聖』じゃなくて『拳聖』らしい。その名の通り、剣ではなく
つまり、俺の家は先祖代々ルグニカ王国の騎士で、その歴史は四百年以上らしい。騎士でありながら、拳というのはどうかと思うが、何も言わない方がいいだろう。
次に、『拳聖』の家系は、産まれながらにして特殊な能力を持っているらしい。
——曰く、初代『拳聖』の能力は一撃必殺。
相手の攻撃力、防御力、能力。ありとあらゆる要素すべてを無視して、拳が掠っただけで相手は死ぬ。その能力に弱点はなく、触れた相手の魂ごと破壊し、現在、過去、未来、全ての時間軸及び、事象からの抹消。蘇生不可の一撃必殺。彼の拳そのものが『死』という概念であり、『死』の概念を持たない存在にも『死』を与える。
初代チートすぎワロタwww
これにはパンドラも即死不可避ですわ。なんでも、初代『拳聖』は名言なども多く、数々の伝説を残したという。その名言の一部を紹介しよう。
『貴様に俺のティーガーを捻じ込んでやる』『ドイツの科学は世界一ィィィイイイイ‼︎』『その幻想をぶち殺す!』『今日も一日頑張るぞい!』『地球育ちのサイヤ人だァ!』『海賊王に俺はなる!』『すごく……一撃必殺です』
うん、こいつ転生者だな。間違いねえよ。つまりアレだろ?初代という異物がこの世界に紛れたことによって、本来は存在しない『拳聖』の家系が生まれた、と。
もう初代の話はいいだろ。頭痛くなるし。では、その他『拳聖』の能力を一部を教えよう。
——曰く、彼の攻撃は回避、及び防御不可の絶対必中。
彼が拳を振れば、相手はいくら回避しようとも、回避することは叶わない。彼が腕を振れば、相手はいくら硬い盾で防御しようとも、その盾をすり抜け、絶対に防御できない。
——曰く、彼女の眼には万物の『死』が視えている。
彼女の降る拳はただの拳と侮るべからず。彼女は『死』を視ている。その『死』は線と点となり、彼女がその線を断ち切れば、線の浮かび上がる部位に死をもたらし、点を突けば、その者は死を免れない。
——曰く、彼を前にして、先手を取ることはできない。彼を前にして、攻撃を当てるこことは叶わない。
彼の速度に限界はなく、相手が速ければ速いほど己の速度を上昇させ、誰よりも速く行動する絶対最速。故に、絶対先制、絶対回避。
……パワーバランスおかしくね?
何この家系。化け物だらけで怖いんだけど。てか、『死』が視えて
いるってもしかして『直視の魔眼』じゃね?絶対そうだよね⁉︎明らかに『直視の魔眼』だよね⁉︎
因みに、最後の絶対最速の能力持ちは現在の『拳聖』。すなわち、
「レオー。父さん出掛けてくるげと、母さんに手ェ出すなよ!」
俺の親父である、アンゼル・フォン・ベルリヒンゲンその人である。
てか、この親父四歳児に何言ってんの⁉︎自分の母親に手出すわけ無いだろ⁉︎
あ、レオっていうのが俺の名前。レオナルト・フォン・ベルリヒンゲン。で、呼び名がレオってわけよ。前世から思ってたんだけど、リゼロの世界の名前ってドイツ名が多いよね。てかドイツ。俺のレオナルト然り、親父のアンゼル然り、ラインハルト然り。その他もろもろ。かっこいいからいいんだけどね。
さてさて、話を戻そう。
初代の『拳聖』、ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンは四百年前——つまり、魔女達がギャーギャーワイワイやってた時期に名を馳せた人物。実は、中でも『強欲の魔女』エキドナと交友があり、そのつながりでメイザース家との交流もしばしば。ちょくちょく、ロズワールが俺の屋敷に来たり、こっちがロズワールの屋敷に出向いたり。『聖域』関連の話も聞こえてくる。あは、原作介入不可避ですわ。
もちろん、俺のご先祖様がエキドナと仲が良かったのは国には内緒らしい。
そして、『嫉妬の魔女』。俺のご先祖様は初代『剣聖』レイドや賢人と力を合わせて果敢に挑んだらしいが、魔女を倒すことはできなかった。相性が悪かったのだ。いくら一撃必殺と言っても、直接敵に触れなければ意味が無い。『嫉妬の魔女』が影で拳の直撃を防ぎきり、原作同様に封印という手を取るしかできなかった。
一時期は、ご先祖様を倒そうと、全身鎧でフル装備で挑んだ者達がいたらしいが、鎧など、ご先祖様は素で貫通したという。なんというパワーだ。能力を除いても、純粋な膂力がガーフィール以上はあると思われる。
まあ、とりあえず歴史は以上かな?
おっと、大事なことを忘れていた。『拳聖』の家系の能力についてだ。能力ってどうやって調べるの?はい、お答えしましょう。我が家には、赤い本が一冊だけある。なんでも、エキドナが所有していた『叡智の書』と繋がっており、『拳聖』の家系に子供が産まれるごとに、赤い本が産まれてきた子供の能力を教えてくれるという。初代がエキドナにお願いして作ってもらったんだって。子孫想いのいいご先祖様だ。
そんれで俺の能力は——そのうち教えるさ。
さらに十四年後。
既に俺も十八歳。近衛騎士団にも所属し、『拳聖』も受け継いだ。家督はまだ譲ってもらえてないけど。あと、ユリウスとかフェリスと友達なったお。てか、フェリスはガチでヤバイ。俺のナニカが揺さぶられる。ダメだ。ホモだけはダメだ。
そして、最近ヤバイと思い始めている。何がヤバイって?ふっ、
俺の原作知識薄れてきてるんですけど。
そりゃそうだよな。転生して十八年だぞ?原作知識なんて忘れちまう。覚えてるのは、交流のあるロズワール関連とスバルって名前ぐらい。アストレア家の原作知識も忘れつつある。実は十四年ほど前に、アストレア家の家内事情が狂い始め、疎遠になりつつある。というのも、白鯨討伐に向かった先代『剣聖』が帰ってこなくなったのが切っ掛けだ。
俺の親父は白鯨討伐に参加しなかった。否、できなかった。『剣聖』と『拳聖』が同時に王都から離れることは出来ないらしい。王族にもしもがあればとのことだ。
ヴィルヘルムじーさんには泣いて謝られて、ラインハルトには余り気にする必要はないと言われた。ラインハルトか……いい奴だったよ。
しかし、状況は変わった。
王族が血が途絶え、現在のルグニカは国力が圧倒的に衰えている。そこで挙がった王選のお話し。この辺はなんとか覚えている。うん……なんとか、ね。
そんなある日のこと、ロズワールが桃色の髪が特徴的なメイド、ラムを引き連れて我が家にこんにちは。
「やあ、久しぶりだーぁね。突然で悪いんだーぁけど、エミリア様の従者になーぁってもらうからねーぇ」
エミリアとは、ロズワールが見つけてきた王様候補者の一人で、銀髪のハーフエルフ。『亜人変態』のロズワールらしいといえばらしいが、銀髪のハーフエルフとは——展開急すぎじゃね?
「いや、従者って、俺は王都から離れることができなのですが?エミリア様はメイザース領にお住まいなのでしょう?」
「そーぉれは、王族が健在であればの話であって今じゃーぁない。エミリア様は王選の参加者、つまりは、未来の王様かもしーぃれない。エミリア様を守る事こそ、今の君の役目だーぁと思うけどねーぇ」
なるほど、一理ある。それに、ロズワールの事だから、幾つか手は打ってあると思う。ロズワールが動くという事は、ロズワールの持っている福音に何か記されたという証明に他ならない。福音絶対厳守マンのロズワールなら、既に国の承認は得ていると考えるのが妥当だな。
「——わかりました。その役目、このレオナルト・フォン・ベルリヒンゲンがお引き受けしましょう」
はあ、肩身が狭い。俺もロズワールの掌でゴロゴロ転がされるんだろうなぁ。
あれから三日後の朝。
メイザース領へと旅立つ日だ。
「大丈夫、レオ?着替え持った?下着持った?道中食べるお菓子も忘れないでね。あとは……」
「いや、大丈夫だから母さん。ちゃんと全部持ったって」
俺の母親は過保護だ。少し、問題があっただけで気絶する勢いで倒れる。実際には気絶しないけど。
「いい?ロズワール様の言う事はちゃんと聞くのよ?寂しくなったらいつでも帰って来ていいからね?というか、帰ってきなさい!絶対よ!」
「母さんは心配しすぎなんだよ。息子の門出だ。気持ちよく見送ってやろう。それが、親ってもんだ」
「……父さん」
全く、俺の親父も少しはいいこと言うじゃねえか。いつもなら、『髭ってもんはな、剣で剃るんだよ。いけてるだろぉ〜?』とか『男ってのはな、誰もが『剣聖』なんだよ。そう、俺の又が言ってるのさ』とか。
騎士にあるまじき発言が多い多い。まあ、先祖代々そういう空気読めない系だったらしいけど。
でも、そんな親父が今は俺を見送ってくれている。男の眼で。一人の父親として。お前なら出来る、と。
だから、俺はその期待に応えなきゃいけない。しっかりと王様候補を守らないとな。
「父さん、母さん……俺、行ってくるよ」
「ああ、息子よ、俺と同じ漢になって帰ってこい」
「レオ……寝る前は歯を磨くのよ」
まったく、最後まで過保護な母さんだ。でも、ありがたい。そんな母さんの息子で良かったよ。普段はふざけてるげと、優しい父さんの子でよかったよ。
「それじゃ……行ってきまスカンク!」
『……』
俺のつまらないギャグは沈黙をもたらしただけだった。
感想、質問、文句、いろいろ受け付けますぜ、グヘヘ。でもなるべく文句は……。豆腐メンタル?ガラスハート?いいえ、マシュマロソウルです。