モンスターハンター ~その左手が握るもの~ 作:コクワガタ@休止
ベルク「作者、更新遅れ過ぎだ。今回も後書きのお仕置き決定」
え、ちょっとまっt
ベルク「それでは本編スタート」
*今回から文章の間隔を若干詰めます。
此処はどこなのだろう。青々とした草に覆われたその場所は、奇妙に懐かしかった。周りには、自分以外に人はおろか生き物も見当たらない。
いや、正確には1匹――もしくは一人が、目の前の草むらに隠れている気配がする。なぜだかは判らないけど、ひどく怯えている――そう感じる。
少年のベルクは草むらをじっと見つめていた。
そこに潜んでいるのが誰だかは判らない。でも、何故だかとても気になる。
――そこにいるのはだれ?こわがらなくていいよ――
ベルクは左手を伸ばし、草むらを掻き分けた――
見えるのは、ランプの吊り下げられた幌の天井。そこに向かって包帯を巻いた左腕を伸ばしている自分に気がつき、ベルクの意識は完全に覚醒した。
(……何だ、今の)
彼は夢を見ることは少ない人間で、見たとしても起きたときにはもうほとんど内容を覚えていない。だが、今の夢は今までに無いほど鮮明に覚えている。
あの夢は自分の記憶なのだろうか?だとしたら一体、あの場所はどこなのだろう。草むらに潜んでいたのは誰だったのか。
(……いや、そんな筈はないか)
彼は四歳のときに高熱を出し、それ以前の記憶がない。それからも訳あってほとんど外出はしておらず、一人になったこともない。
(やっぱり、ただの夢だろうな)
ベルクはそう結論付けた。
もう一度寝ようと体を横たえたが、奇妙に目が冴えて眠れない。トレーラーから外の様子を窺うと、まだ日が昇っていないのか薄暗かった。大体日の出ぐらいには目が覚める習慣がついているが、どうやら今日はいつも以上に早起きしてしまったらしい。
「むにゃ……サシミウオがいっぱい……」
「ボクのしかばねをこえていけニャ……」
相方のハンターのリナ、オトモアイルーのホワイはまだ夢の中だ。二人(正確には一人と一匹)を起こさないよう、ベルクはそっとハンモックを降りる。
(さて、どうしようか……)
そう考えていたベルクの耳に、不意に物音が聞こえた。
「ギキィ……」
見ると、マルドローンが、カゴから出ようとしている所だった。
「ああ、起こしちゃってごめんな……。今出してやる」
蓋を開け、登ってくるようにと左腕を伸ばしかけ――
「ギキィッ!?」
まるで天敵にでも遭ったかのように、猟虫が籠の中に逃げてしまった。
「……」
出していた腕を引っ込め、その腕に皮手袋をはめると今度は逆の手で猟虫を呼ぶ。恐る恐るといった様子で登ってきたところに蜜の入った缶を出すと、安心したのか夢中になって蜜をなめ始めた。
「……お前は、正直だな」
そう呟いたベルクの口元は微笑んでいたが、表情はどこか寂しげだった。
* * * * *
モスポークと棍棒ネギのチャーハンに、溶き卵のスープとサシミウオの中華あんかけ、中華風サラダ。これが今日の「我らの団」の朝食だ。毎朝皆でそろって食べる朝食の席に、今日からは竜人商人のマサヒロが加わる。
「残したら、飯代を二倍取るニャルよ~」
このキャラバンの料理長、糸目のアイルーのニャンハイが、声を張り上げた。
「……結局、飯代は取るんだな」
ぼそっとベルクが呟く。
「当たり前ニャル。お客は商品にちゃんと対価を払うニャルよ」
「はいよ」
あまり興味なさそうに返したところで、団長の掛け声が入る。
「あー、みんなも知っている通り、昨日から新しく、商人のマサヒロが入った。そのお祝いも兼ねて、今日の飯代は俺のおごりだ!遠慮せず食べてくれ」
「おお~、団長さん太っ腹ですね」
「わしのためにわざわざすまなんだわな」
「それじゃあみんな、手を合わせて」
団長の掛け声で、みなが手を合わせる。
「「「頂きま~~す!!」」」
何気ない一日が始まる。
「……そうだ」
そのまま雑談を交えつつ、食べてから少したったころ。ベルクが、ふと思い出したように口を開いた。
「マサヒロさん、ひとつ聞きたいことがあるんだけど」
「何かいな?」
「あんた、何で旅をする気になったんだ?」
少しの間の後、マサヒロがベルクに返す。
「そういえば、話すのを忘れてたわな」
「何でもいいけど、昨日の話だけじゃ俺はまだ納得できてないから」
「そうかいな」
スープを飲み干して一息つき、マサヒロが続ける。
「あんたさんは、錬金術と言うものを知ってるかの?」
「一応。確か、金属を混ぜてどうこうするんだろ?」
「まあ大体あってるわな。わしは若いころからそれに憧れておってのお」
彼が言うには、最近、「シキ国のどこかに錬金術がいまだに伝わっている場所があるらしい」という情報を耳にしたのだという。自分の目で、それを見たい。彼はまるで子供のような心持ちで、そう考えるようになっていったのだそうだ。だが、ギルドの都合上、バルバレがシキ国に入ることはできない。
「それで、シキ国に行くあてを探していた、と」
「そうじゃ。あんたさんには長く感じられるかもしれんが、竜人とて寿命はある。せめて、足腰が立つうちに一度、見に行きたくての」
「ふうん。でも、何でここを選んだんだ?シキ国へ行くかどうかは俺も知らないし」
「それは――」
「なあ、マサヒロさん」
マサヒロがそこまで言いかけたところで、団長が声をかける。
「俺がこのキャラバンを作ったのは、ある“アイテム”の謎を解き明かすためなんだ」
新しく団員が入ってきたとき、必ず言われる台詞だ。この先の内容も、大体そらんじてしまっている。
一方マサヒロのほうを見ると、かなり聞き入っている様子だ。ベルクは様子を見守ることにした。
「そのアイテム、というのはなんだわな?」
その問いかけに、団長が帽子を脱ぐ。そして、
「こいつだ」
中からその“アイテム”を取り出した。
金色に輝く、手のひら大の「それ」は、何かの一部のようだった。形状だけ見ると鉱物のようにも見えるが、見た目の質感から生物由来のものにも見える。砂漠地帯の強い日差しを受けて、それは薄い虹色の光を放ち、神々しい輝きを纏っていた。
ふと気がつくと、リナたちも雑談をやめ、こちらのほうに注目している。
商人はそれをじっと見つめていたが、しばらくして、
「……聞いてた通り、すごいもんだわな」
と呟いた。
「『聞いてた通り』?」
ベルクが聞きとがめる。
「誰から聞いたんだ?」
「そこにいるニャンハイからだわな」
「……」
横目で彼女のほうを見ると、ニャハハと笑いながら頭を搔いている。
「商人さんとは昔から、なんというか、まあ飲み友達だったんニャル。ちょっと前にもいっしょに飲んでたんニャルけど、そのときに口が軽くなって、つい……」
団長が帽子に“アイテム”をしまいながら、苦い顔で言う。
「あのなあ……。あんまりその話は他のところでするな、って言ってたろ」
「ごめんニャル」
「それで、わしは若いころ錬金術に興味を持っていて……」
マサヒロが先ほどベルクに話した内容をかいつまんで説明する。その“アイテム”が錬金術に関係あるのではないか。そう思い、この団に入ろうと思い立ったのだそうだ。
だが、その事を正直に話せば、恐らく他の商人もそれに目を付け、事がややこしくなる可能性がある。それで、他の商売仲間には事情を伏せておいた――という事らしい。
「……それで、あんな説明になってたのか」
ベルクとしては、とりあえず事情がはっきりしたのでもうあまり興味もない。
「まあ、事情はわかった。別に今更どうこう言うつもりもないし、気にしなくていいさ」
と、団長もそんな様子なので、これ以上話に加わらない事にした。
「そういや、さっき見せたあれの事、マサヒロさんは何か知らないかい?」
「いや、知らないわな」
「そうか。さて、これで商人も揃った。もうそろそろ、ここを出発するか……」
その言葉に、リナが戸惑いの声をあげる。
「え、そうなんですか……?まだここの人からの依頼、全部出来てなくて……」
「まあ近い内に、としか考えてないし、1週間位は余裕を作るつもりだ。といっても、そろそろ準備をしといた方がいいぞ」
「はい!!」
その後、話はどんどん盛り上がっていった。
場所を変えて、ここはバルバレの集会所。狩猟チーム「イェーガーズ」は、酒場で朝食をとっている最中だった。
「うぅ、気持ち悪りぃ……」
「昨日一晩中呑んでるからだよ、馬鹿リーダー」
机に突っ伏しているチームのリーダー、フィニアスにチームの紅一点、ジェシカが呆れて言う。
「大体、昨日の報酬金の大半使って酒飲むんじゃないっての。ほんとだらしないね」
「まったくだ。性懲りもなくだらだらしやがって」
いかついスキンヘッドのハンター、ハウンドが同じく苦々しい顔で続ける。
「おいおい、もうちょっと労わってくれよ……。仮にもリーダーだぜ?う、うえ、吐きそう……」
ますます顔を青くするリーダー。チーム最年少のレイジが、水をコップに注ぐ。
「リーダー、水いります?」
「おう、サンキューサンキュー」
差し出されたコップを一気に飲み干すと、ふうと一息つくフィニアス。ようやく顔色がよくなってきた。
「レイジ、お前がいてくれてほんと助かるわ。お前も分かるだろ?毎日鬼嫁に殴られたり蹴られたり、酒がねぇとやってられないんだって――」
「いつあたしがあんたの嫁になった!」
すかさずジェシカの右手が、中央にある果物かごから取ったリンゴを投げる。リンゴはフィニアスの顔に命中した。
「ぐごろっ!」
「大体、鬼嫁ってなんだよ!」
「ほら、そうやって怒るとことかまさに鬼――」
「うるさいんだよ!!」
「ぼごろっ!」
今度は弟の皿から奪い取ったゆで卵。中身がしっかりしている分、生卵なんかよりも痛い。一歩分後ろへ下がった周囲のハンターが、「痛そー」だの「大人げな…」だのと騒ぐが、彼女の眼光で口を閉じる。
頬にぶつかり、上へと跳ね上がった卵を片手でキャッチするフィニアス。
「落ち着け落ち着けって、ほら、周りも引いちゃってるだろ」
「……分かった」
少しは溜飲が下がったのか、ジェシカもそれ以上はせずおとなしく席に座る。
「とりあえず、今度似たような事言ったらギルドナイトにセクハラで訴えてやる」
「そ、それだけは勘弁してくれよ。洒落になってないし……」
苦笑いしながら、その様子を見守るレイジとハウンド。
「はあ、リーダーもだらしねぇけど、姉ちゃんも姉ちゃんだよな。朝っぱらからこんなに怒らなくてもいいのに」
「全くだ。あんなに過敏に反応して、あれではまるで意識してるみたいに見――」
「……そこの二人、今なんつった?」
「「イ、イエナンデモナイデスー」」
もはやこのやり取りも慣れたものである。
レイジが少し空気を換えようと、別の話題を切り出す。
「そういやさ、こないだベルクってやつに会ったんだけどさ」
「……ベルク?」
フィニアスとハウンドが反応する。
「フィニアス、あの子達のこと知ってんのかい?」
「ああ。あいつとはな――――ウブゥッ!」
いきなりフィニアスの顔が真っ青になり、また机に突っ伏した。
「リーダー?!」
「リバースしてやがる、誰かバケツかタル、それと雑巾持ってこい!」
「あーもう、手間かかるリーダーだなぁホントに!」
「――相変わらずだなあ、あいつら」
そんな彼らの様子を、集会所の隅から見守る三つの人影がいた。
「あの人たち、先生のお知り合いなんですよね。本当に会わなくていいんですか?」
小さいほうの人影が、もう一人を見上げる。幼い顔立ちと身長、そして声の感じから考えると、おそらく十五歳前後だろうか。紫色の革で装飾された防具「ジャギィシリーズ」の、ガンナー用を着込んでいる。背中には、黄と緑のまだら模様の軽弩「ショットボウガン・緑」が背負われていた。
「今はいいって。サプライズにするにはちょっと早いだろ?」
唇の端を吊り上げながら、大柄な男が答える。こちらは「ランポスシリーズ」のやはりガンナー用防具で、兜を外した頭は剃り上げられている。二つ折りにして背負っている、狙撃銃に似た形の重弩の銘は「妃竜砲『遠撃』」。雌火竜リオレイアの甲殻を用いた、高性能の弩砲だ。
「旦那さんがそう言うなら、僕はそうするまでニャ」
最後に、一番小さい黒毛のアイルーが呟いた。全身を金属の鎧で固め、背負うものも鋼鉄の剣「アイアンネコソード」。小さいながらも、なかなか落ち着いた感じがある。
「にしても、まさかあいつまでここに来てるとはな。世間は狭いもんだ」
「その人ともお知り合いなんですか?」
「そう。かれこれ六年前になるな」
そう言って、出口のほうにすたすた歩いていく男。少女がその後を追う。
「先生、そろそろご飯食べましょうよ~。もう歩くの疲れてきちゃいました……」
「まぁそう言わないニャ、アーニャさん。この近くに旨い屋台があるらしいニャア、そこまではがんばるニャ」
「はい~。でもそろそろ限界ですよ……」
「そんな事言ってると、朝飯抜きにするぞ」
「それは勘弁して下さ~い!」
ははは、と笑いながら、男は集会所の出口へと向かう。
外へ出ると、強い日差しが目を指す。あわてて目を抑える弟子と自らのオトモを横目に、彼は呟いた。
「さて、お前にはいつ会えるだろうな?――ベルク」
多分分かってる方も多いと思いますが、最後にちょっと出した三人のハンターたちの内、男の方とアイルーはお馴染みのあのコンビです。再び登場させるのはもう少し先になりそうだな……。
ベルク「それでは今回のお仕置き」っガンランス
え、ちょっと何竜撃砲準備して
ベルク「発射」
ぎゃあああああああ!!??
リナ「じ、次回もお楽しみに~(作者さん、大丈夫かな……)」
ホワイ「自業自得ニャ」