サクサクした強化ですが、番外ですからね(震え声
Episode.2 人鬼・2
『御無礼』
そう言って傀はネリーの海底牌を狙い撃ちし、緑一色を門前で和了って見せた。
半荘一回戦と二回戦目はお互いが見に回った為、点棒は動かなかったが、ネリーは若さ故の思い切りと持ち前のオカルトによって三回戦と四回戦を直撃を捨てた自摸和了を続けて傀を抑えていた。
しかし五戦目に入ると同時に流れが変わり、徐々にネリーの傀へ対する放銃が軽い物ながらも増えて行き、六戦目のオーラスに先ほどの緑一色の直撃を浴びた。
出費としては大きくは無い、それ以前に稼いだ分が少し減っただけの事、しかしネリーはこの和了で完全に戸惑ってしまった。
理由は単純、傀の打ち筋が彼女の魔法使いのそれと酷く似通っていたからだ。
一回戦目・二回戦目の様子見の見、それに寄って偶然では済まない程の共通点を発見した彼女は、困惑しながらも和了らせない自摸で傀を降そうとしていた。
三回戦目・四回戦目まではその和了方で問題無かったが、傀に与える情報を増やしてしまい、完全にネリーの麻雀を見抜かれてしまった。
そして運命の五回戦目・六回戦目、ネリーの速攻戦術を見抜いた傀によって、聴牌時に溢れ出す不要牌を全て狙い撃ちされる事になった。
(この人……やっぱり魔法使いさんと何か関係が? 無関係や模倣って言われても打ち筋が似過ぎてる、それに何よりもあの人よりも実力はずっと上だッ!!)
続く七回戦目、自分の全てを見抜かれた打ち手には珍しく、逃げの姿勢を捨てて敢えて激流の中へと飛び込む様に打ち合いに臨んで行った。
この時点でネリーは自分の勝ちが万に一つも無い事を悟り、代わりに傀を通して京太郎の麻雀を攻略する為の糸口を掴もうとしていた。
自分が負ける流れに居る時、普段彼女は降りを選択してジッと耐え忍ぶのだが、目の前の男や魔法使いには唯のカモにしかならない。
故に彼女は逃げられなかった、逃げれば泥沼に嵌り、攻めても激流の中。
(……だから、此処で守っちゃダメだ!! 一度でも負けの味を覚えたら、其れに納得してしまったら、ネリーは負け犬だ!!)
同じ負けだとしても、逃げた果ての敗北と勝つ為の敗北、その大きな差を彼女は理解していた。
––––––そして、勝負は八回戦を待たずして終了した。
ネリーの有り金は全て傀の魔術の前に溶け、次戦に挑むだけの金を用意出来なくなったのだ。
傀の退店と共に長い対局の疲れを吐き出すように深い溜息を吐いたネリー、大金と共に運周りを全て喰い取られた様な感覚だが、目指す魔法使い攻略の糸口だけは掴み取っていた。
(…………あの人は魔法使いさんの先生だ、直接言葉は交わさなかったけど、あの人の麻雀は卓上でそう語ってる)
(魔法使いさんの麻雀はあの人がベース、ネリーと似たスタイル……えへへ)
京太郎の攻略法を真面目に考えていたネリーだったが、自分のスタイルが京太郎と同じ物という事を彼の師匠に認められた様な物な為、徐々に嬉しさが込み上がり、暫くの間妄想に耽ってしまうのだった。
闘牌シーンは番外なのでカット&カット(白目
次回があれば竜戦になりますが、多分他の人が挟まるかと。