今回試合が完全な糞ゲー化してます、具体的にはアーケードゲームの兎、もしくは兎のパロのフリーゲーム鰻レベルの試合内容です(白目
八十七日目 深度の違い
面子が揃い、対局が始まった。
起家は下家でドラは四索、明石には悪いが朝からぶっ通しで勝ち続けている俺は今流れに乗っている、奴が何を思ってこの卓に座ってるのかは分からないけど、この大波に乗った俺は止められない。
その俺の思いを裏付ける様に配牌から既に一向聴、しかも第一ツモで索子の清一色聴牌、待ちは二-三-五-六-八-九索の六面待ち、四索が槓子で揃ってるので低目で三倍満、高目役満と言う一手、ダブリーを入れれば確実に役満になるので立直を入れる。
その瞬間明石は俺の手元や表情には目もくれずに自分の手牌を見つめ、自分のツモ番に手出しの字牌切りを選択、明らかにツモ牌を見ずに切ったので当たる自信のある牌を引いたのだろう。
あの時に殺し切れず、今まで生き残ったとはいえその負け運は健在なはず、即ツモで引かされた牌は危険と見ての降りか、そう考えた俺の第二ツモ。
盲牌せずとも触った瞬間に分かる、引いたのは白。
この瞬間、一発を引けなかった事で俺は理屈よりも先にこの手は和了れないと察し、立直は余計だったと歯噛みする。
理由は恐らく明石、奴の負け運が俺の和了牌を喰いとる形になったのだろう、必ず相手の和了牌を引く事になると言う事は他家のリーチ直後に引いた牌を握りつぶしてしまえば和了目を完全に潰すことが出来ると言う事でもある。
正直奴の不ヅキを甘く見ていた、まさか一発が引けないレベルで彼のツモに俺の和了牌が寄って行くなんて考えもしなかった。
なるほど、奴は今日俺とは間逆で絶不調真っ只中なんだろう、そして俺が好調過ぎたから奴の手には放銃すると言う運命に吸い寄せられて俺の和了牌が集まって行く。
生半可な待ちだと完全に和了牌を握り潰される、かと言って下手に多面待ちに構えると……。
『––––ツモ、清一色・自摸・断么・一盃口、4000・8000』
14巡目に明石は倍満ツモ、彼の手牌は俺の和了牌を大方使い切った形の清一色、恐らく残った九索辺りは王牌で嶺上開花用に埋まってるか他家の手の中だろう、実況席は静まり返ってるね絶対。
一手間違えれば致命傷の綱渡りを渡る明石、支払われた点棒を淡々と回収した後は何事も無かった様に賽の目を回す。
俺がこの男を攻略するには相性的に初手で仕留めるしか無い、先生方なら正攻法でも余裕で圧倒出来る程度の相手だけど、各分野が劣化コピー程度の俺じゃ多少時間が掛かる。
この男はある意味俺や強運持ちのオカルト雀士にとっては相性が最悪だ、何せ強運の所為で奴に向かって和了牌が集中する上、下手をしたらオカルト能力すら潰される可能性がある。
天江さんの様に自力で和了をもぎ取るタイプなら兎も角、他家に左右されるタイプの打ち手では確実に和了牌を握り潰される。
相手が強ければ強いほど敗色濃厚になる運周り、負ける事を前提にしてそれを回避する為の数少ない選択肢を選び続ける打ち方、真面目に脅威だ。
三家全てを聴牌させれば和了牌を溢れさせられるだろうが、待ち筋の関係具合では先にツモられる可能性が大、なら余計な事を考えず、流れを曲げずにシンプルに行く。
東二局 親は明石、ドラは東。
子の時ならば初手のツモを見て攻め方、彼の場合は逃げ方を考えるのだろうが今回は親のスタートとなる。
十四牌の中から選んで切り出さなくてはならないが、ツモが偏る彼の場合配牌がロン牌の火薬庫になるまでは比較的安心できるのだろう、何気無く客風の西を切った。
『ロン、人和ですね』
この大会は珍しく役満として人和を認めている、なので西単騎待ちで役も役牌のみと言うゴミ手でもたったそれだけで32000点を奪い取れる。
死者を自称していた明石は俺のロン宣言に目を見開くも、人和を受けたこと自体が何度かあるのか直ぐに点棒を支払った。
唖然とした表情の二人を急かして次局に移る、親は上家でドラは発。
親の第一打は一索、俺はその捨て牌を敢えて鳴かず、そのまま山へと手を伸ばして第一ツモで和了る。
『ツモりました、地和・清老頭。 W役満は無しの決めなので8000・16000ですね』
点数申告をしたにも関わらず支払ったのは明石だけ、それほど衝撃的な連続和了なのだろうが、支払う物はしっかりと支払って貰いたい。
社長の様な自分の強運に頼った打ち筋は出来ればやりたくは無かったが、今回の場合は流れや場を弄る事なくそのまま身を任せた方が効果的、あの人ほどの豪運は無いが場の流れと俺の運周りで十分補える。
東四局、俺の親だがドラ表を見るまでも無く配牌で和了っていた。
『天和です、16000オールで三家飛び終了ですね。 ––––御無礼』
和了牌を握り潰されるのなら、その前に和了ってしまえば良い、無茶苦茶な暴論だけどこの不ヅキ男が居るのなら話は別だ。
明石の不ヅキを俺の強運が加速させる様にその逆もあり得る、お互いに相性は悪かったけど奴は退く麻雀で俺は進む麻雀、その差が出たのだろう。
その上この試合は最終戦、今までの試合の分に加えて前日から調整し続けた運が此処で爆発するようにしていた事もあっての連続和了だ。
明石は深い溜息を吐き出した後、無言で立ち上がり出口へ向かう際、すれ違い様に呆れと自嘲が入り混じった顔で『人和・地和までは予想の範囲内だったんだけどな、立て続けに天和やってのけるのは予想外だったよ、無茶苦茶しやがって、やっぱり人外だわお前』と言って去って行った。
声の感じから憑き物が落ちた、と言うよりも俺を追うことを完全に辞めた感じに聞いて取れる、最後の皮肉はその事を悟らせない様にする為の物か。
そんな事を考えながら、俺は明石に続いて対局室を後にするのだった。
以下実況席。
実況アナウンサー「あの、解説お願いできます?」
はやりん「はやや〜、ちょ、ちょ〜っと無理かな〜」
以下観客席。
マホ「せ、先生すごいです!! かっこいいです!!」
室橋「………(余りの理不尽さに絶句」
イニシャルK「…………」←京太郎の対局内容を辛口採点
イニシャルR「…………」←京太郎の対局内容を辛口採点
イニシャルW「ふん、初めからそうしておけば良い物を」←京太郎無双を見に来たにも関わらず微妙に手こずったのでご不満気味
……大会後、地獄やで。