思い付いてしまった物は仕方ない(白目
オリキャラNGな人はスルー推奨、本編には影響無い話なので大丈夫。
時系列は大会前日くらいを想定してます。
??日目 変わる関係
大会前の夏の合宿、特訓スケジュールを全て消化して後は翌日に帰宅するだけと言う夜、天宮はある決意と共に照を呼び出して外出をして居た。
長野とは違う都会の街並み、夜でも星空が見えない程街灯りに溢れかえって居る中を二人でゆっくりと歩き、最近読んだ純文学やミステリー作品の話など、普段交わしている取り留めのない話を紡ぎながら都会の喧騒が聞こえない公園へと足を運ぶ。
其処で天宮は話を一旦打ち切り、照と向かい合う。
「––––ねえ、宮永さん。此処からは真面目な話になるんだけど……良いかな?」
「……うん」
天宮の些細な変化、普段の柔らかい優しい雰囲気の彼には似つかわしくない強い眼差し、中学一年の頃に出会ってから6年の付き合いになる照も初めて見る真剣な表情に彼女もまた真剣に彼と向き合った。
長い付き合い、私生活も良く共にしている彼が帰ってからでは無く何故このタイミングなのか? 照の頭にはその疑問が浮かんだが、その答えは天宮の口から飛び出した。
「––––個人戦、必ず僕が全国一になる」
あまり天宮と言う少年は強い言葉を使う人では無い、その事をよく理解して居る照は驚きはしたが、彼女の頭の中ではこの話は本題では無いと確信していた。
理由は長い付き合いの照だから分かる彼の癖。
天宮は何か重要な事を言う時、それが言い辛い物であればあるほど別の話題で遠回りしてから本題に入ると言う物。
だから照は本題を急かさず、天宮が本題に入るまでゆっくりと待つ事にして、静かに次の言葉を待った。
「須賀の麻雀は確かに人間離れした物さ、一年と言う短い期間だけど僕もあいつと対局した仲だからその事は重々知ってる」
「だけどそれは昔の話だ、今のあいつからは熱意が感じられない。 技術や読みは比べ物にならないくらい完成されてるけれど、あいつには麻雀に対する熱意が無い」
「––––だから僕が勝つ、機械的な強さしか無い今のあいつは全く怖く無い、対局者を勝ち急がせる魔性が無くなったあいつに負ける気は無い」
覇気の感じられるその宣言が終わり、普段の優しい雰囲気を纏い直した天宮はとうとう照の待って居た本題へ話を進める。
「前置きは此処までにして、ねぇ宮永さん僕が何でこんなに須賀へ敵愾心を持っているのか、疑問に思ってるでしょ?」
「……うん、天宮君は中学生の時はそんなに京ちゃん嫌いじゃなかったよね?」
「今も嫌いじゃ無いよ、大切な後輩だし友人だ」
––––けどね、と天宮は此処で一旦言葉打ち切り、一度目を瞑って深呼吸をしてこう続けた。
「––––僕は君の前では頼れる男で居たいんだ、私生活でも、麻雀でもね?」
それが、彼が京太郎に負けたく無い理由。
宮永照と言う少女の前では頼れる男で有りたい、彼女が真っ先に頼ってくれる男のままで居たい、例え麻雀であっても彼女の中の一番に居たいと言う感情、嫉妬。
しかしそれ以上に燃え上がる別の感情が彼の敵愾心を燃やしたのだ。
「僕は、僕は君の事が––––」
それは宮永照に対する恋心、好きな人の前で無様を晒したく無いと言うその思い、いつから好きになったのか分からないくらいに自然と恋心を抱いて居たのだ。
天宮はその思いのまま『君の事が好きだ』と言うつもりだったが、一旦そこで思い留まった。
その理由は出歯亀をしているチーム虎姫の他の面子に気が付いたとかでは無く、自分も人の事が言えないが、目の前の少女も相当な鈍感娘だと言う事を思い出したからだ。
そんな事はつゆ知らず、出歯亀組筆頭の100年生は『ほら!! 早く告白しなってば!!』と小声で急かしながら身を潜めてハラハラとして居た。
(あの……思っ切り覗きですよね? やっぱり……マズく無いですか、コレ?)
唯一常識的な事を言い、覗きをやめさせようとした亦野だったが、肝心の弘世が乗り気で覗いているので誰も聞いて居なかった。
(まぁまぁ、堅いことを言うな、あの鈍感無自覚カップルがくっつくんなら照の気力も跳ね上がるだろうしな)
その言葉に渋谷は微妙な表情で『……砂糖を吐く量が倍にならないといいんですが……』と呟き、複雑な顔で天宮達を眺めて居た。
出歯亀達が密かに覗いて居る事に気が付いていない天宮は、文学好きの彼女に相応しい告白の方法を思い付き、雲ひとつ無い夜空の満月を見上げてこう言った。
–––––ねぇ宮永さん。
––––––月が綺麗ですね。
その言葉の意味を文学少女である照には直ぐに理解し、両手で口を押さえて固まってしまった。
余りに予想外の告白、いきなりの事で驚いて居た彼女だったが、少し間を置きしっかりとその意味を噛みしめるにつれて、徐々に幸福感が心を満たして行き、返す言葉に詰まってしまった。
一方の出歯亀組、今の天宮の告白を理解出来たのは大星と渋谷の二人、亦野と弘世は『何でいきなり月?』と首を傾げていた。
そして、その二人を見た大星が意味を理解出来ない鈍感さに呆れて居た。
(もーっ、折角ロマンチックな告白なのに、それを理解出来ないとか二人とも学がないにも程があるよ!! 勉強だけじゃなくてこーゆーのも学んだら?)
(……悪かったな学が無くて)
不貞腐れた弘世と大星にバカにされた事にショックを受けている亦野を見ながら解説を始める、先生っぽく胸を張って。
(今のは英語の先生をしてた夏目漱石が『I love you』を『我君を愛す』って訳した生徒に『日本人はそんな事言わない。月が綺麗ですねとでも訳しておきなさい』って言った事から取ったの)
(……な、なるほど)
(学の無い二人に補足するならー、『我々日本人は『愛す』なんてはっきり言わないものだ。そんなストレートな言葉は恥ずかしい』って意味もあるから月に例えてるんだよ)
まさかの大星に完璧な解説された事で二人が意気消沈していると、返しの言葉を決めた照が返事を返す所だった。
–––––傾く前に出会えて良かった……。
そう言った後、照は天宮へ抱き着き、彼もまた照を強く抱き締める。
嬉しそうに抱き合う二人に感動する大星と渋谷、学が無いとレッテルを貼られた二人は返しの言葉の意味を申し訳なさそうに再び大星に聞こうとしたが、それを見越した様に『やれやれだねー』と呆れる大星先生が出来上がってしまった。
(今のは平安時代の女流歌人『赤染衛門』が詠んだ『やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな』って言う和歌が元になってるの、この歌じゃ相手の男は来なかったけど、あまみーは来てくれた。 ちょっと解釈広げて『待ちに待った言葉を掛けてくれた』って解釈で良いんだと思うよ)
そう言って大星は先生モードから戻り、『さあさあ出歯亀は此処までにして帰りましょー!!』と言って残りの面子を連れて宿泊所へと帰って行った。
照は天宮よりも先に自分の気持ちに気が付いては居た、しかし迷惑を掛けるだけの自分は彼に疎まれているのでは無いか?と言う思いが邪魔をしてその気持ちに踏み切れて居なかった。
しかし、照はこの告白で自分の気持ちを抑えられなくなった、彼が好きだと言う思いが溢れかえってしまいどうしようも無くなったのだ。
これ以上野暮な言葉は要らない、そんな思いから二人は互いの気持ちを確かめ合う様に静かに抱き合うのだった。
アホな淡さんですが、馬鹿では無かった系です(白目
白糸台側は色々なフラグ作るつもりでしたが、特大の死亡フラグだけにしました(震え声