須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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投稿位置を間違えたので再投稿(白目

内容は変わってません。


百一頁目

百一日目 天運

 

 

8000万の差し勝負、それは俺が卓に座った所為で済し崩し的に始まった。

 

アカギの後ろに座っている刑事と借金男は額が額なだけに腰が浮ついているらしく、額に汗が浮かんでいるのが目に見える。

 

刑事の連れて来た立会い人は俺の事を知っているらしく、『この勝負、分からなくなったぞ……』と戦慄している。

 

一方の川田組も俺が座った事で弛緩した勝ちを確信した雰囲気を出している、こいつらの目にはまだ俺の方が強い様に見えるらしい。

 

ともあれ、それは俺とアカギには関係の無い話、外野がどれだけ騒ごうと卓上には入って来ない。

 

 

手積みの麻雀、しかも起家スタートで完全伏せ牌じゃない洗牌方法の勝負なので開幕から俺は少し挨拶をする事にした。

 

幺九牌を積み込み、賽の目を操っていアカギの配牌に国士無双十三面待ちを送り込む、すり替えを応用して他家の山にも仕込んだので完璧だ。

 

その証拠に牌を取る度に揃って行く幺九牌にアカギは顔を顰めて行く、後ろで見ていた刑事達も思わず顔を上げて此方を見る。

 

その視線が集まる中俺は第一打に東を切る、勿論アカギのロン牌で彼が牌を倒せばそれで終わる。

 

しかしアカギはコレを無視、そして奴の第一ツモに仕込んだ発もツモ切り、役満(プレゼント)を拒否って自力でアガる事を選んだらしい。

 

普通ならば舐められていると感じ、牌を倒したくなるだろうに、奴はきっちりと挨拶として受け取った、やはり凡人じゃない。

 

この時の俺は多分かつてないほど悪い笑顔をしていたと思う、同性のしかも同年代の才気溢れる雀士、腹の底から湧き上がる勝負熱に酔いしれていたはずだ。

 

十四巡目、アカギが幺九牌を全て払うと同時にリーチを掛ける、河の幺九牌は当たり前の事だけど全て手出し、待ち牌は中張牌である事くらいしか分からない。

 

この時俺の手は既に三暗刻を聴牌していた、アカギに合わせて配牌全てを手出しして手作りしたので三暗刻のみだったが。

 

彼のリーチに対しても俺の方が先に和了る自信はあった、だがこの時の俺は勝負熱に魘されていたからか大事な事をすっぽかしていた。

 

それは“見”、子供の頃から先生一号に嫌と言うほど魅せられ、叩き込まれて来た流れを見ると言う基礎、基本。

 

それを忘れていた俺はアカギが切った五索を大明槓してしまう、そして嶺上牌も連槓できる牌だったのでそのまま暗槓、三枚目も同じ様に連槓出来た為そのまま続けて暗槓、槓ドラ表示牌は三枚とも四索。

 

刑事達が顔面蒼白になり、背後の川田組が歓声を上げる中、俺が四枚目の嶺上牌に手を伸ばし王牌に触れる刹那、指先から背中に掛けて電流が走る。

 

俺の待ちは二・五筒の両面、普段ならツモって当然のこの牌がこの瞬間ではツモれないと感じてしまった。

 

案の定引いた牌は西、嶺上開花に為らなかったと言う事はつまりこの手は和了れないと言う事、赤木しげるの運が死ぬ事を拒んだのだ。

 

そう悟った俺は西を切り、ベタオリして流局まで局を進めて行った。

 

流局後に見えたアカギの待ちは三・六筒、幸いにも三筒を抱えたまま流局出来たものの、興味本位で覗いた裏ドラは全てアカギに乗っていた。

 

その瞬間俺はこの場で雌雄を付けるのが惜しくなった、お互いにまだまだ若い、此処で勝とうと負けようと、将来がどうなるか分からないのだ、勝負をするならお互い頭打ちになった頃に、だ。

 

そう考えた俺は『南郷さん、黒崎さん、この勝負俺に買わせて下さい、言い値で買い取ります』と口にしていた。

 

中途半端な事は分かっている、川田組も面子の問題があるのは分かっている、しかし此処で他人の金と人生を賭けた勝負をしてもアカギの真価は発揮出来ない。

 

博打は自分の金で打つ物だ、だからこその保留、俺はそう説明して外馬を黙らせた後、最後にアカギに向かって『今日の勝負は俺の負けでいい、次はお互い自分を賭けられる場所で対局しよう』と言い残し、言い値で勝負を買い取るとそのまま佐々川を後にした。

 




死ぬ程屈辱的ですが京太郎は負けを認めて勝負を保留にしました、決着は将来になるでしょう。

尚京太郎は先生達による地獄の合宿が待ち構えている模様(白目

特に基本を忘れた事で傀にはブチ殺されます(震え声

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