須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

130 / 138

噂によるともうすぐ鷲巣麻雀も終わるらしいとか、一体何年までがもうすぐなんですかねぇ……(白目


百二頁目

百二日目 平山幸雄

 

消化不良のまま無理矢理保留にしたアカギとの勝負、自分の情け無さに苦い思いをしていた俺は近くのマンション麻雀に顔を出していた。

 

熱くなった結果基礎中の基礎を忘れる愚行を犯したのでそれを払拭する為の高レート、あわよくば先生一号と鉢合わせて一から鍛え直して貰おうとも考えていたのに生憎の空振りだった。

 

しかし代わりにと言ってはなんだけど平山が勝ち残っていた。

 

此処は比較的早い時間から開いているから学生も偶に見るけれど中学生は珍しい、そんな事を店主に言ったら『君だって同じ位の歳には常連だったでしょ……』と盛大に呆れられた。

 

中学時代はある意味不良だったからなぁ……。

 

 

肩を竦めた俺は丁度平山に負けてパンクした客の代わりに席に座る、今の俺は佐々川帰りのまんまだからまず正体がバレる事は無いんだけど、出で立ちがアレだからか筋物と勘違いされてる様な視線を感じる。

 

早速『……あんた、何処のモンだい?』と平山が口を開いて来たけど、俺は『フリーだよ、すーさんでもきょうさんとでも呼んでくれ』と返し、賽子を振る様に指で急かした。

 

––––そして、それから三時間程が経った。

 

『ロン、中・発・小三元・全帯・混一色・ドラ2の三倍満で平山さんのトビですね』

 

じっくりと流れを見て、哭きを入れ、自分の運に身を任せ続けた三時間、事前にこの調整を行っておけばアカギとの勝負はあんな結末にはならなかったと噛み締めるには十分な時間だった。

 

 

『馬鹿な!? まだ四巡目だぞ!! そんな、そんな紙のような薄い確率ッ!!』

 

嶺上開花の確率が0.28%だったか? 海底ですら1%以下だから確率論者の彼には俺の麻雀は意味不明に映ったのだろう、天江さんや咲と対局したら発狂しかねないな。

 

勝ち金全てを吐き出し、自分の確率論に大きな亀裂を入れられた平山は悔しそうに握り拳を作っている、悔しさがある内はまだ伸びるだろう。

 

『……平山さん、五万円不足ですよ』

 

高レートでの支払いに不足を出し、後日に再度徴収する先生一号の常套手段、俺は金に困っている訳じゃないが伸び代があるのだ、縁を作っておく事に越した事は無い。

 

 

平山は慌てて財布を確認するも完全に足りず、唇を血が滲むほど噛み締めながら貸しを要求してきた。

 

『勝負の貸し借りは一日限り、また明晩この場所で会いましょう』

 

そうお決まりの一言を告げ、俺は平山から巻き上げた金をそのまま場代として雀卓に置き、平山の『舐めやがってッ……!!』と言う呻き声を聞きながらそのまま帰宅した。

 





俺の対面、サングラスを付けたヤクザ崩れの男、名前はボカしてやがったが、ありゃ多分須賀だ。

あんな不可解な打ち方をするのは夢乃先輩ぐらいなもんだし、あの人の師匠が須賀だって言ってたから多分その筈だ。


敗北の屈辱、それに加えて完全に思考から何からを読みきられた挙句の狙い撃ち、少し強引に打って居れば勝てていたッ!!

あの男、それを見越した様な打ち方しやがって、俺の麻雀はその程度の物だってか? 俺の稼いだ金は、場代程度にしかならないってか?

………舐めやがって、明日までに五万どころか五百万作って迎え討ってやるッ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。