百六日目 京太郎の
合同合宿の初日は竹井部長の簡単な挨拶と共に自由行動となった。
その理由は合宿所が県外だった為それなりに移動時間が掛かっているので、その疲れを抜く目的の物らしい。
確かに鶴賀の面々は余程荒い運転だったのかドライバーの部長以外みんな青い顔をしていたし、モモなんか既に横になってダウンしていた。
折角大手を振って麻雀が打てるのに、あの様子だとモモは打てそうに無いな、無理に卓に座らせてアレされても……な?
となると、風越と龍門渕の二校なんだけど……風越は普通に気まずいんだよなぁ……。
そんな事を考えていると視界の端に特徴的なカチューシャが目に映った、うさ耳の様なソレを付けてるのは天江さんだから一発で誰かは分かった、身長差的に割と見つけ辛いんだよね。
彼女は俺が面子を探してる事に気が付いたのか、一直線に俺の前に来ると開口一番に『待ち侘びたぞ雀鬼よ、さぁ対局と行こうか、よもや移動疲れで打てぬなどと抜かすまい?』と何時も以上に自信満々に言ってきた。
夜まで待った方が強いんじゃ無かったっけ? とも思ったが、大会で見た彼女の腕前は以前対局した時よりも遥かに上だったのでその誘いに乗ったんだけど、残りの面子をどうするかと言う話で初手から躓く事になる。
単純な話、実力に差が開き過ぎてると劉さんの所の高レート卓見たく、俺と天江さんの虐殺レースになるので互いに真剣勝負が出来ない。
そう考えると、出るとこは出て引くべき時に引けるモモを面子として誘えないのは痛い、『ぁーぅー』と未だに喘いでる彼女を誘うのは忍びないしなぁ。
となると咲と和か? あの二人なら虐殺ショーにはならないけど、一対一の勝負は出来なくなるし、三人で天江さんを囲んでるようであまり乗り気になれない。
そんな風にもたもた考えてたら龍門渕さんが既に和と対局を始めてしまった、残ってるのは風越のキャプテンと咲くらいかな? 竹井部長は染谷先輩と一緒に明日以降の準備をしてるみたいだし、片岡は和の応援に行ってる。
仕方ないからサシ勝負は諦めて咲に頼むかと思い、片岡と一緒に和の対局を見てた咲を呼んだんだけど、ふとその時思った事を口にしちまった。
いや、だってさ、和に沢村さんに福路さんと並んでる中に咲だぜ? 何なら横になってるモモも入れると、何処の戦力差とは言わないけど、圧倒的なんだよ。
だからさ、思わず『咲……お前にも〜少しお餅があればなぁ……』って口にしちまったんだ。
そしたらさ、めっちゃ笑顔なのに目が全然笑ってねぇの、天江さんがビクつくほど全然笑顔じゃない、あれ? 笑顔ってこんなに怖かったっけ?
『京ちゃん、面子足りないんでしょ? 私座るね?』と言って咲はさりげなく俺の上家に座ったけどさ、完全にコレ俺に牌を鳴かせる気無いよな?
『衣ちゃん、二人で京ちゃんをボッコボコにしようね?』とサラッと恐ろしい事言ってるし、完全に失言だった。
んで、最後の面子は偶々近くに居た池田さんになった、面子待ちに焦れったくなったのか『池田とやら、座れ』と通り掛かった池田さんを天江さんが無理矢理着席させた形になる、俺も打ちたくて仕方なかったから同情はしない。
こうして合宿初日から対局が始まるのだった。
面子埋まらなかったという理由で凡人バイバイな卓に座らされた池田ェ……。
不運&不運、以前は京太郎にボコられ、過去にもころたんにボコられ、今年は咲&ころたんにボコられた彼女は絶対に遠い目してますね。
ある意味レジェンドの後継者(トラウマ人数的な意味で)