須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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まーだ続くシリアス対局、けどこれが終わったらマホちゃん登場だよ(白目


百九頁目

百九日目 理解者

 

 

俺の今までの人生で一番対局して来たのは先生一号だ、しかしその次に対局したのは俺の上家に座ってる咲だとハッキリ断言できる。

 

二号や社長は都合の付かない事も多く、そんな時は良く照さんと一緒に三人で麻雀を打っていた。

 

だから咲は俺の打ち筋を一番理解しているし、俺もまた咲の打ち筋を理解している、東2局のブラフで恐らく俺が不調なのだと気が付いた筈、なら恐らくフルスロットルで俺を潰しに来る。

 

その証拠に五巡目で中を暗槓して嶺上開花で自摸和了、役は中・嶺上開花・自摸に槓ドラが中に乗っての跳満、ここまで跳満しか出てない所為で点棒が目減りし始めたが、まだ振り込んではいないから大丈夫だ。

 

咲との対局で辛いところは自力で槓子を引かれる事だ、ポンからの加槓だと槍槓は出来るが暗槓だとそれも出来ないし、池田さんに和了して貰おうにも彼女が張るより先に和了られちゃどうしようもない。

 

東3局一本場、ドラは六索。

 

配牌には一・四萬、九・九索、三・六・八筒、東・西・西・北・白・發、九種九牌で流局狙いも行けない配牌なんだけど、まだ搭子はあるし開局時よりは何とか出来る。

 

俺の第一ツモが二萬、無駄ヅモでは無かった事から若干ツモ運が回復した様なので打北。

 

字牌からの切り出しはあんまり好きじゃ無いんだが、二度も役満ブラフは通用しないし、天江さんの風牌だから早い内に手の中から捨てたかった。

 

仮にコレを鳴かれたとしても俺のツモを押し付ける事が出来る、他の字牌を切らなかったのは中盤以降に池田さんに喰わせるポンネタの確保。

 

咲むち天江さんも俺が不調なのは分かっているし、それ故に池田さんを動かしてる事を見抜いてる筈だと思う。

 

でも多分俺がこんな回りくどい打ち方をしている事をしている理由は咲にしか分からない、()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()、多分付き合いの長いコイツにしか読めない筈だ。

 

先生一号の事だから多分俺を値踏みしてるんだろうと思う、今までの俺は力に取り憑かれてる様に他者を潰す様な勝ち方をし続けて来た。

 

負けたく無かった、挑む側から挑まれる側へと変わった事を理解出来る時期だった、だから対局者を再戦出来ない程に正面から潰す、だってそうすれば二度と対局する事は出来ないし、トラウマを植え付けてやれば俺に勝とうなんて気は誰も起こさない、先生達とは違って穴のある俺には万が一があったから。

 

そう考えた末の殺戮の様な麻雀、それのお陰で二年目以降は思い通りに事が運んだけど、その代わり俺の中から熱意が消え、いつの間にか目的と手段が入れ替わって一局一局に何の感情も湧かなくなった、機械的に流れを整えて最終的に全員潰す、あれだけ打ち込んでいたはずの麻雀が簡単なルーティーンと化していつしか不完全燃焼が積もっていったんだ。

 

俺の目指したあの人達はこんな存在だったか? 弱者を力の限り蹂躙するだけの薄い存在だったのか? 俺が勝ちたいのは何故なんだ? 敗北者の顔を嘲笑う為だけだったのか?

 

そんな自問自答をしている時にアカギと出会った、あの天才に。

 

アレは本物で偽物に過ぎない自分よりも高みに到達出来る男だと直感するだけの才能と運を持っていると理解し、打ちひしがれたあの日、自分が偽物の強さだと改めて思い知らされたあの雨の日だ、あの時に俺は咲を捨てる事が出来なかった。

 

それが答え、俺は本物になる事は出来ない、だからこそ俺は『雀鬼京太郎』では無く『須賀京太郎』に戻らなきゃいけない。

 

あの日が分岐点、あの時背中を押せなかった事が俺の全てなのだ、鹿児島で差し伸べられた救いの手を振り解き、多くの人間を潰して来た男が今更なんだと自分でも感じるが、今更だからこそだ。

 

そうでないと多分俺は近い内に自分の周り全てを巻き込んで破滅する、この業界じゃ中途半端な事が一番いけないのだから、退くか進むかの二つに一つ。

 

コレは俺が俺自身の本能に勝てるかの勝負なんだ、俺は今必死になって培われて来た自分の技術だけで強敵との対局に挑んでいる、その為の機会をあの人は与えてくれたのだろうと思いたい。

 

そんな思いを抱きながら池田さんの手の進み具合を読みながらの七巡目、河が二段目になったところで天江さんが東を切ってリーチ。

彼女の河は萬子に染まっていてほぼ絶一門状態になっている、しかし何枚かは手出しだったし、空切りの可能性だってあるから無条件で萬子を切り出せない。

 

リーチを受けた咲は現物切り、視線の動きから見て向聴数戻しだから回し打ちと言ったところだろう。

 

俺のツモは赤五萬、二萬八萬共切られてるので筋ではある、けれどリーチ一発目に赤五萬を引いたのが引っかかるので彼女のリーチ牌の東を切る。

 

これで俺の手は取り敢えずは一・二・四・赤五萬、九・九・九索、六・七・八筒、西・西・白の一向聴となった。

 

そして次巡のツモで三萬を引いての両嵌三・六萬待ち、とは言え張ったとしても役が無いのでリーチしなきゃ自摸しか無いし、池田さんの視線が若干役牌を見ているのでリーチはせずに白を喰わせたんだけど、それが結果的には失敗だった。

 

 

『ツモ、立直・自摸・中・混一色・三暗刻の倍満で4000・8000と黒棒だ、上手く放銃を回避しているようだがそろそろ首が寂しくなって来ただろう? 手を抜いているのか、はたまた単純に不調なのかは知らんがこのままでは貴様––––––負けるぞ?』

 




不調の京太郎相手にブロックワード的煽りを入れて本気出させようと企む衣様マジ天使(震え声

現在の点棒、池田20700、天江41900、宮永28700、須賀8700。

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