須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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ステルスモモのターンですが、この作品の彼女は悩み多き少女です。

なので彼女の好意=恋愛とは必ずしも限らない事を御理解願います。


雀鬼の友霊:東横 桃子

??日目 自分の進路

 

 

––––––私の机の上には二枚の入学願書が置かれてる。

 

 

一枚は咲ちゃんときょーさんの行く清澄高校で、そしてもう一枚が近所の鶴賀高校の物っす。

 

昔の私なら迷わずに清澄高校を受験してたっす、理由なんてきょーさんが居るってだけでじゅーぶんだったっす、…………此処の麻雀部に入るまでは。

 

 

きょーさんを追いかけて同じ中学校に入って、少しでも長く一緒に居る為だけに入った筈の部活、誰にも気付かれないけどきょーさんが入るから入っただけの筈だったんすよ、少なくとも入部した時の私の認識はそうだったっす。

『ん? おおー、お前が噂の雀鬼か〜、可愛い娘二人も連れて羨ましいぞコンチクショー!! 部長もッ!! お前もッ!! モテる男は全員爆発すれば良いッ!!』

 

 

先輩の一人がそう言って『うがー!! なんでモテねーんだぁぁぁあ!!』と叫んでたっすけど、私は私をさらっと見つけられる人がきょーさん以外に居ることに驚いたっす。

 

さっきの先輩以外にも上級生はみんな私が見えてたんすよ、当たり前のように接してくれてたっすけど当時の私がどれほど嬉しかったか……言葉に表せないっすね。

 

今まではきょーさん以外に友達が居なかったのに、ここの麻雀部に入ってから自分の世界が広がった様に感じて、本当に本当に言葉に出来ない位の幸せでした。

 

同級生の子もきょーさんや上級生の人と打ってるうちに段々私の事を見てくれる様になってて、何時の間にか此処の麻雀部が大好きになっていたっす。

 

 

『新歓で花見するぞー!! 部長は料理と宮永担当なー!! 俺たち場所取りして来るから!!』

 

『みんなお疲れ様、合宿も今日で最後だしリフレッシュする為に海に行こう!! 部長の僕が許す!!』

 

『僕らも今日で引退だけど、これからも顔は出すからさようならは僕らが卒業するまでお預けって事で、代わりにBBQして打ち上げだ!!』

 

『モモちゃーん、途中まで帰り道一緒だし私達と帰ろうよ!!』

 

『お前ら明日暇か? 折角の十五夜だから月見するぞ、引退した連中も来るからお菓子もってこい、団子は天宮元部長に任せたから持って来なくても良いぞ』

 

『受験生対在校生の雪合戦をするぞ、勿論顧問権限で全員参加だ、終わったら須賀が何か奢ってくれるそうだ』

 

 

『バレンタインデーが近いよみんな!! モモちゃんも張り切って張り切って!! 色恋に友情などなぁぁぁい!! 好きな男が居るならとことん攻めるのみでしょ!! 咲ちゃんは強敵だよ?』

 

『……僕らも今日で卒業だ。此処の麻雀部はとっても楽しかった、須賀の無茶苦茶に振り回されっぱなしだったし、みんな僕に無茶振りばっかりしてたけど、どれも良い思い出でした、在校生のみんな!! 今日でお別れだ!!』

 

 

 

…………本当に、一年生のあの頃は濃い時間だったっす。

 

きょーさん以外のアドレスの無かった携帯には部員のみんなの番号とアドレスが入ってるし、画像フォルダも思い出で一杯っす。

 

 

この上なく幸せで、本当に今がずっと続けば良いのにと本気で思うほどで、だからこそ私は進学を悩んでるっす。

 

私はきょーさんが好きだとはっきり言えるっす、それは多分本人にもストレート伝えられるほど当たり前の感情っす。

 

けどその好きって感情が『Love』の方の好きなのか『Like』の方の好きなのか、最近分からなくなったっす。

 

 

私が好きになったのは初めての友達として? それとも一人ぼっちだった私を見つけてくれた王子様として? どっちにしても今の私は友達も居るし、孤独感も感じていない。

 

だから分からなくなった、一人ぼっちの孤独を埋めてくれるなら誰でも良かったんじゃ無いの? そんなどっち付かずの心のままきょーさんの側にいても良いんだろうか? それは本気で京太郎が好きな咲ちゃんに失礼じゃないんだろうか?

 

そんな自問自答が重なって私は二校の間で揺れていた。

 

 

『部長〜!! 東横部長〜!! 部活始まってますよ〜!!』

 

 

教室の外から後輩の呼ぶ声にハッとして顔を上げる、周りにはもう人が居なくて時計の針も大分進んでしまってる。

 

慌てて支度した私は悩み事を一時保留にして部室に向かって走るのだった。





時系列は中3、此処の部員には普通に認識されてるし男女問わず友達が出来てるので、京太郎が自分を見てくれる唯一の人では無くなってます。

なので、もしかしたら自分は『須賀京太郎と言う個人』ではなく『自分を見つけてくれる人』なら誰でも良かったんじゃ無いか? と言う悩みを抱えるようになりました。


後彼女が部長になった理由はポンコツ咲ちゃんと雀鬼京太郎に比べるとあまりにまともだったからと言う理由です、部員全員と友達になってるから人望もありますしね。

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