須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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十四頁目

十四日目 玄人対玄人

 

 

大会決勝、何時も打っている隣のポンコツ姉妹には参加を辞退して貰ったので客席で応援して貰っている。

 

この大会に出た理由は平で打てる相手(友達)を探す事が目的だったので彼女達には遠慮して貰ったのだが、決勝までの試合は殆どピンと来なかった、やはり初戦のお嬢様位だ。

 

そんな期待はずれの様な気分に浸りながら卓上の牌を捲り、北家の席に座る。

 

待ち時間の間、ふと自分の中の麻雀の印象が最近変わり始めている悲しさに思わず涙を流したのを思い出した。

 

普段打ってる麻雀はノミ手並に跳満倍満が飛び出るからなぁ、切る牌の選択は勿論相手の手の内もしっかり読まねぇと即ミンチだ。

 

最早幻聴が聞こえるレベルでくらいまくった御無礼の一言が脳内再生され始めた頃に他家が全員揃い、サイが振られた。

 

闘牌が始まればどんな相手でも全力、意識を切り替えて周りを確認していたら対面の頬にタトゥーシールを貼った娘と目が合った。

 

その瞬間、彼女が僅かに動揺……と言うより驚きの表情を浮かべていたのに気が付いた、多分代打ちとしての俺を知っているのだろう、何となくだけどそう感じた。

 

かと言って態々サマを使う必要は無い、俺の手もなんの淀みも無く伸びて行ってすんなり自摸和了。

 

自摸平和一盃口赤1の満貫、初っ端から幸先の良いスタートを切れた、この流れなら俺の親番までに誰か一人は飛ばせるだろう。

 

が、予想に反して配牌もツモも悪い、今までの流れならば此処でも満貫ないし跳満の手が入ってもおかしく無いのに、俺の配牌はオタ風の対子と辺塔子、嵌塔子ばかりのクズ配牌、王牌に目をやると割れ目がズレているのが分かった。

 

流れを丸ごと持って行かれた訳だ、そりゃあ和了れんわ。

 

 

案の定、オリ打ちしていた所を狙い撃ちにされた、放銃先は対面のタトゥー少女、振り込んだのは断么対々三色三暗刻ドラ3の倍満、リーチ掛けてりゃありゃ裏も乗ってたな。

 

点棒を支払いながらどうした物かと考える、腕と身体でカメラの死角を作ってサマをやってるようだから有難い事にそれが発覚して決着ってのは無い。

 

他二人もオカルト地味た和了する人も居るからとサマに対する警戒心が薄いから気付いちゃいない。

 

つまり対面と俺のサシ勝負、河拾い見たいな分かりやすいサマは無いとして、すり替えや多牌あたりはやって来ると俺は読んだ。

 

 

だから俺は対面に向かって『俺とあんたでサシ勝負をしようぜ、負けた方が勝った方の言う事を何でも聞くっての』こう言った。

 

 

何と無く、この娘は俺に用があると思ったのだ、そしてそれは正解だったらしく彼女は頷いた。

 

相手の事情は知らないし詮索するつもりも無い、けどね?

 

彼女は俺相手にサマを使った、つまりはサマにサマで返されても文句は言えない訳だ。

 

 

先程の割れ目ずらしで喰われた流れは戻らず、相変わらず配牌は悪かった。

 

俺は他家がツモる際にカメラの死角を付いて牌を3牌ほど覗き見し、欲しいツモをすり替えて回収、その際に対面に俺の不要牌をツモらせる。

 

さっきの和了と現在のツモの補充位置で牌の並びを割り出し、覗き見た牌から対面の手は筒子の清一色、しかも6巡目にして何時ぞや先生にブチ込まれた筒子の3-4-5-6-7待ちで張っていて、赤ドラ二枚にドラが暗刻で乗っていると感じた。

 

この感が正しければ親の三倍満、俺は残り9000、ツモでも死ぬ。

 

元が俺の配牌とツモ、流れ的に当然ドラは乗る、そしてそうなると先生の影響の受けている俺の麻雀は一気に加速して行く。

 

ツモを単にずらすだけじゃダメだ、その証拠に盗み見た牌の3枚がそれぞれ三筒、四筒、五筒だった、三鳴きさせたとしてもこの流れじゃ必ずツモられる、少々強引だけど三鳴きさせてから山を直す振りをしながらツモ山ごとすり替えてツモを潰す事にした。

 

合計6枚迄はすり替える事が出来るのは大きい、他家のツモを完全に支配しているのと同義だからね。

 

しかしそれでも三鳴きさせて三枚、まだ和了牌は残って居る、コレが先生なら六枚全て和了牌だったろうけど、俺じゃ五枚が限度、残りの二枚は山から手を離す際にそのままぶっこぬき、代わりに他家に対する有効牌を挟み込んだ。

 

対面のタトゥーちゃんは俺がすり替えた事を見抜き、更にそれを先読みしてすり替えを行った様だけど、俺と君じゃあ体格の違いがモロに出てる、すり替えれる範囲もその差だ。

 

悔しそうに危険牌を切った対面は下家に振り込み、5,200を支払った。

 

取り敢えずは急場を凌げたが、配牌は微妙だ、ツキが分散した様なそんな気分だった。

 

この大会は半荘一回勝負、流れが暴れているせいかあまり長引かせたくは無い、その証拠にツモにもバラツキがで始めた、山を前に出す振りをしながらツモを盗み見てすり替えを行いツモのみで早上がる、東4局漸く俺の親番だ。

配牌を開けて見ると字牌が多く面子が一つもないと言う悲惨さだ、唯一の救いは風牌がドラで二丁ある所か? 対面の顔色を伺って見るがポーカーフェイスが上手く、余り形が良くないだろうと言う漠然とした物しか感じられなかった。

 

九種九牌で流す事は出来るけど、多分そうなると完全に流れを手放す形になる、ならこのまま続行するしかない。

 

幸い、ツモにバラツキがあるものの混老七対ドラドラまでは狙える、問題は待ちを読まれないようにするにはどうするか。

 

俺はそのまま理牌せずに牌を伏せ、そこから中張牌を切り出して国士を装いながら么九牌を集めて行く。

 

必要牌を握らせず、欲しい牌だけを抜き取って見せる、ゆっくりと確実に役満の形を周りに幻視させる捨て牌を意識しながらバラ打ち。

 

13巡目にブラフに見せかけた本手が形になる、そうしたらある程度集まった字牌を切り出して行き他家も降ろしにかかる、すり替えの技術じゃ俺に負けているのが分かったのか対面はツモ上がりを目指し始めたが、俺はソレを狙い撃った。

 

 

対面が切ったのは三索、俺の和了は対々三暗刻ドラドラの跳満、三索と風牌のシャボ待ちだった。

 

対面は俺の河を見て理解不能な何かを見る目で俺を見つめていた、河だけ見れば既に一度国士の形で一度和了がっている、そうでなくても混老七対でもツモっていた。

 

しかし俺が欲しいのは点棒では無く、対面と俺とで分散してしまったツキと流れ、極論するなら直撃出来るのならばノミ手でもなんでも良かったのだ。

 

ともかく、これで漸く歯車が噛みあった様な、そんな感覚と確かな流れを感じる事が出来た、さぁ此処からは無礼講だ。

 

一本場、開幕からW東白中の三暗刻確定の一向聴、先生の御無礼モードの様に流れに乗った様なイメージでツモ、3巡目で絶好の嵌張引きでそのままリーチ、混一色が付いた状態で一発ツモ、親の三倍満一本場で12100All。

 

二本場、断么平和のみだがダブリーが掛けられる上に索子の2-5-8待ち、下家がロン牌を吐き出したけどそれをスルーして自摸。

 

ダブリー一発自摸断么平和、表も裏も乗って親倍の二本場で8200オール。

 

三本場、配牌14牌中11牌が萬子、しかも九蓮宝燈が狙える配牌。

 

4巡目でテンパイ即リーし、その後純正九蓮宝燈をツモ和了し全員トビで終了となった。

 

 

蓋をされて滞っていた流れとツキが一気に噴き出した様な連続和了、拍手も歓声も無かったのが少し悲しかった。

 

取り敢えず放心状態の対面を連れ、なんでも言うことを聞く権利を使って事情を吐かせた。

 

 

そうしたら、要は家庭の資金繰りがキツイからちょっとカモれそうなマンション麻雀に連れて行って欲しい、と言うお願いをされた。

 

 

面倒くさいので何時ぞやの時みたいに通帳ごと渡そうとしたら必死で拒否されたけど、以前貰った五億を五千万づつに分割した物だから別にいいんだと言って無理やり押し付けて帰って来た、使い道に困ってた金だし良かった良かった。

 

 




決勝は長野の痴jy……みんなのアイドル一ちゃんでした!!

…………何故サマ合戦になったのか(白目

家計が苦しいから麻雀で生計立てようとする一ちゃんも一ちゃんだけどさ、出会ったばかりの娘にホイホイお金渡す京ちゃんも京ちゃん(白目

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