十六日目 役縛り麻雀
朝起きたら家の前にリムジンが止まってた。
寝ぼけた頭で日付を見るとワシズさんの日だった筈、例のマンションはまぁ使わないわな、と一人納得した俺は歯磨きと洗顔を終わらせてリムジンに乗り込んだ。
なんだか隣の家からポンコツ姉妹の『京ちゃんがー!!』と言う悲鳴が聞こえた気がしたけど気のせいだな。
高級そうなサンドイッチと紅茶を車内で頂きながら鷲巣邸に到着、この間の鷲巣麻雀の続きでもやるのだろうかと思っていたんだけど、今回は又別の変則麻雀を行う事になった。
役縛り麻雀、指定された役でしか和了出来ない麻雀で、ローカル役を除く役の中から無作為に三つ選択して対局する麻雀だが、今回選べる役は役満のみで、先に三つの役満を和了した方の勝ち。
平和な麻雀だなと拍子抜けしてしまったが、負けたら負けたで罰ゲームが待っているらしい。
俺が勝てばまた五億、負ければ罰ゲーム、金は兎も角罰ゲーム付きの勝負は燃える、この人の事だから碌でもない罰ゲームなのだろう。
隼の持ってきた箱の中から籤を引く、先ず一枚目は四槓子、二枚目は純正九蓮宝燈、三枚目は緑一色。
三枚中二枚は和了した事があるが、アレは完璧に流れを掴んだ状態だったからだ、初っ端から狙えるような物じゃ無い。
続くワシズ、引いたのは天和、地和、大四喜和、実質的に勝ちに王手が掛かっている状態だ。
…………この試合は天運と地運を操る事が需要になってくるから出和了は狙えず、しかも使う牌はまさかの全透牌。
まともに打ち合ったら確実に負ける、そう考えてしまった俺は一度断ってから席を立ち、トイレで胃の中の物を全部吐き出し身体の中を空っぽにする。
メンタル的な部分で後退してしまったので、強引にその弱気を殺した後、対局を開始した。
東1局 親はワシズ、当然の様に天和、コレで後二回。
一本場、幸いな事に彼の配牌は国士無双13面待ち、鷲巣麻雀で使用している雀卓だから次のツモが分からず完全に運だけの勝負、何としてでも地運を掴み此方も動かなくてはならない。
この勝負は差し馬相手以外からの差し込み禁止の麻雀、鳴かせる事は出来るので油断は出来ないが取り敢えずはこの局の序盤は安全だ。
故にその隙を突き流れを確保し、ワシズの天運に対抗できるだけの土壌を作り上げる。
第一ツモは一索、第二ツモ、第三ツモも同じく一索、流れ的には順当に九蓮宝燈をツモ上がるだろう。
その証拠に俺は十三巡目に純正九蓮宝燈9面待ちを聴牌、今回は全透牌故にワシズにもそれは見えている。
––––––其処にワシズはツモって来た一索を切って来た。
だが俺はそれを無視し、次のツモを隼に促した。
ワシズの河、其処には東南西北が二枚づつ切られている、そしてそれは全てツモ切りだった、つまりワシズは大四喜和を捨てている。
此処でロン牌に喰い付いてしまったら地運も流れも全て奪われる、だから俺はこの局でこの純正九蓮宝燈を和了する気は無かった。
今の俺の好ツモ、好配牌は全て対面のワシズの持つ膨大な天運の余波を受けている物だ、この役満を和了してしまってはワシズに勢いを付ける事になる。
結局流局、次は隼の親だが、最悪この局で決着が付く可能性がある。
その証拠にワシズの配牌は風牌が暗刻で引き抜かれ、字一色も付いての聴牌、差し込みは出来ないのでツモ上がるしか方法は無いが、確実に一発で和了牌を引き抜く。
俺の配牌は前局の和了放棄によって九種九牌になっているが、この場合は有難い。
そのまま第一ツモで当たり前の様にワシズのロン牌を握らされた為そのまま九種九牌で流す。
隼の親一本場、相変わらずワシズの豪運は潰えず、配牌で清一色の五面待ち、だが俺の配牌にも暗刻が二つと槓子が一つ、俺の第一ツモでもう一つ暗刻が出来たから行くしかないと決めて暗槓、当然ツモは槓材な為連槓、考える必要は無い、感じるままに引き、そのまま四槓子をツモ和了った。
その流れのまま俺の親番、だがその配牌を見て俺は自分のミスを痛感する。
緑一色一向聴、東が切れればそのままツモる流れだった、しかし目の前の男の手は再び国士無双13面待ち、当然切れば放銃する。
勝ちを求めるあまり我慢が効かなかった事を悟り、俺はそのまま東を切り飛ばした、あの場面はチョンボでもなんでもしてもう一度流すべきだったのだ。
ワシズは俺の東を見逃して自分のツモで引き和了した、流れも地運も全てを奪われた俺は次局ワシズが第一ツモで大四喜和を引き和了するのを見ているしかなかった。
こんなにも負けが悔しいのは産まれて初めてだった。
今回の勝負は運勝負の面で既に勝率一割切ってましたが、ワシズの天運を曲げ切れば勝てていました。
ですので京ちゃんもそれを理解し、また我慢を続けて行けば勝てたと言う悔しさに打ちひしがれました。
ワシズ戦はパワーアップイベントか何かかな?
罰ゲームは又後日。