須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

45 / 138

大阪回ではありますが、深くは掘り下げません、お友達(犠牲者)ができるだけです。


十七頁目

十七日目 せめて痛みを知らず安らかにトブが良い

 

 

日曜日、兼ねてからの予定だった代打ち勝負は直ぐに決着が付いた。

 

正確には初っ端からサマを使われたので遠慮無くやり返し、予定以上に早くパンクさせてしまったのだ。

 

ガキだと思って舐めてたのか、元々サマ師だったのかは分からないけど取り敢えず俺は暇になってしまった。

 

後堂はパンクさせた連中相手に優位な立場で交渉を始めているので俺一人、ふらふらと街中に出たは良いけど昼を食ってなかったし、あちこちからソースの匂いが漂って来て腹が減った。

 

 

丁度目に付いた屋台のタコ焼きを買う事にした俺は6個入りの物を注文、店主は出来立ての物を俺に渡し『へい、三百万円になります!!』と言った。

 

三百円と書いてあるのに三百万、世界恐慌時のドイツ並のインフレだなぁと思いながらパーカーのポケットから三百万取り出して会計を済ませ、どっかのベンチで食べようと歩いてたら背後から誰かに『いやいや待たんかい!!』と肩を掴まれた。

 

振り向いたらショートヘアの少女が札束握りながら俺の肩を掴んで『あんな典型的なボケにこんなおもちゃで返したんは良かったけどな、ちゃんとお金払わなあかんよ』と注意された。

 

札束指差して『それ本物のお札ですよ』と教えてあげると『んなわけないやろ、よー見てみ? ちゃんと子供銀行って…………書いてへん?』

 

発行してるのは子供銀行じゃなくて日銀だから書いてあるのは日本銀行じゃね? とは思ったけど札数え始めたからそのまま退散しようとした。

 

 

『って!! ホンマモンやったら余計にあかんやろ!!』とツッコミが刺さる、恐らくどっかから盗って来たと勘違いしてるっぽいので弁明しようと思ったけど、説明して良い内容じゃないから取り敢えずはボカして『そのお金はさっき俺が(代打ち業で)作った金なんで、大丈夫ですよ』と答えた。

 

すると、『全然アウトやん!! 余裕でお巡りさんに捕まるで!!』と言われ、代打ち業ってアウトだよなぁとか思いながらたこ焼きを一つその子の口の中に放りこんだ。

 

熱ッ!!とかなんとか言って期待通りの反応してくれたその人だったが、驚いた拍子に三百万をばら撒き、更に突風によって万札が飛んで行った。

 

 

俺は真っ青になって膝から崩れ落ちたその人を見ながら、もう立ち食いで良いやと思ってもそもそとたこ焼き食ってた。

 

 

取り敢えず空箱を捨て、観光しようかと思った矢先如何にもその子の調子が悪そうな事に気が付いた、まあ三百万吹かしたんだ気を失っても仕方ないか。

 

案の定失神してたので背負って公園まで連れて行った、本来なら雀荘にでも行くつもりだったんだけど、見捨てられずについつい拾ってしまった。

 

 

硬いベンチに座らせるのも何だからと膝枕してあげて暫くしたらその子が気が付いたのは良いんだけど、フリーズしてしまっていたので『あの三百万は泡銭ですので全然気にして無いですよ、それでも負い目を感じるのでしたらあの三百万で貴女の今日を買わせて下さい』って答えといた。

 

そしたら熱が出てたのか顔が赤かったので額に手を当てようとしたら起き上がられた、彼女––園城寺 怜さんはそのまま俺の隣に座り咳払いをしてから自己紹介をしてくれた。

 

呼び名がきょーくん呼びなのが新鮮で、俺の中の年上女性はすこやんとお隣のポンコツ姉さんだからより新鮮だった、コレはポンコツリストから外しとかないとな。

 

 

それと病弱だと言う事も教えてくれたので、歩き回る必要の無い麻雀を打ちに雀荘に行く事になった、馴染みの店らしく恋人か?と揶揄われたので『今日だけの関係です』と返したら頭引っ叩かれた。

 

 

麻雀の勝負そのものは至って普通だった。

 

 

半荘二回、最初の一回は丸々見に周りつつ怜さんに流れが向く様に気付かれない様に放銃しつつ他家から稼いでオーラスで捲った。

 

常連客の話を聞くと彼女は一巡先が見える様な和了をするとの事、実際リーチは一発が必ず付いていた。

 

なら、その一巡先を読んだ上で狙い撃ちをして見たくなるのが人情、最初の一回はそのための見だった。

 

彼女は叩けば反応を返すタイプの女性な為、ついやってしまったのだ。

 

気が付いたら阿知賀の二の舞、リーチ牌を狙い撃ちにして立直を控えさせ、一巡先を見られ和了牌を喰われても良い様に多面待ちでツモ和了る。

 

三鳴きしてもド高目をツモられた瞬間の怜さんは笑顔が引きつってた、てか流石に年上だから泣かねーか。

 

ラストは怜さんが和了する筈だった牌で三倍満をツモ和了し、纏めてトバした。

 

常連二人が青い顔して離席した後、怜さんの『もう一回や!!』と言う一声で連戦する事になり、この人も勝つまでもう一回星人だった事も相俟って後堂からの連絡が入るまでずっと打っていた。

 

 

ps

 

狙い撃ちされたのに凹むどころかまだ一緒に打ってくれるとは正直思ってなかった、素直に嬉しい。





怜ちゃんが一番まともなヒロインの可能性(白目

何気に京太郎の御無礼擬きを食らって耐え切った数少ない人です、理由はまぁ、ね?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。