須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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うたたんのターン2


二十頁目

二十日目 打点を上げて直撃を取るゲーム

 

 

『それではこれで席を洗います、御無礼』と言ってあの後先生は雀荘を出て行った、あの後半荘五回打ってその全部でボコボコにされた俺はそのまま椅子に深く腰掛けて砂糖とミルクありありのコーヒーを注文し、溜息と共に勝負の熱を吐き出した。

 

久々に先生と打ったけど相変わらずあの人化け物だわ、ラス引かない事で精一杯だった、あの人捲る位ならハンギング0の方が百倍楽、絶対に。

 

時間的にまだまだ打てるし、親父に雀荘の場所だけ連絡してから席に人が座るのを待っていた。

 

 

すると着物さんが俺の対面に座り直し『君は何時もあんなのと打ってるのかい?』と聞いてきたのでそうだと答え、届いたコーヒーを啜った。

 

その瞬間『じゃあおねーさんと差し馬にぎろうぜぃ、おねーさんが勝ったらまたあの人と打たせて貰おうか、んで君が勝ったら……うんおねーさんがデートしてやろう』と言われ思わず咽せかけた。

 

俺にメリットが一切ないじゃないかと思って口にしたら扇子で頭叩かれた、デートをデメリットと言うのは失礼だと。

 

なら代わりの条件言ってみろと言われたので千点二十万のレートを提示しようとした所で席が埋まってしまった、仕方ないので彼女のレートで対局する事になった。

 

東1局俺は北家、配牌は御無礼後特有のクズ配牌、何シャンテンあるのか分からない位酷いものだった。

 

同じだけ御無礼喰らった着物さんもツモっては少考して切り出している、俺と先生からそれぞれ流れを奪われたんだから当然か?

 

そうする内に10巡目を越えた辺りで上家が立直、着物さんは現物切り、下家も筋牌を切って行った。

 

そして俺が引いたのは生牌のドラ五筒、当然切れる牌では無いので端の一筒を落とした瞬間だった。

 

『おっと御無礼だねぃ、門混一色中全帯一盃口、跳満だ』

 

不ヅキの極み、捨て牌を見れば今テンだと言うのが見て取れる、そう言えば俺の対面に座り直したんだったな、冷えた席を移動したから流れも違う、か。

 

今にして思えばツモ時の少考も俺を打ち取る為のブラフと見るのが正しいかな、悠長に見をしている場合じゃ無さそうだ。

 

 

東2局 俺から12000点を奪ったと同時に淀んだ流れを動かしたのか淀みのない動きで牌が切られて行く、捨て牌も三色満遍なくバラ打ちされていて読み辛い。

 

その勢いのまま9巡目に立直宣言、彼女のツモの勢いから一発が付く可能性は高いが一鳴きした程度では止められ無い。

 

なので下家の捨て牌を二度ポンしてツモをズラして和了牌をズラす、案の定生牌を引いたのか下家は手出しで現物を切った。

 

そして着物さんのツモ、彼女は少し考えた後そのままツモ切り、打三筒。

 

それを見た上家がチー、両面チーだったから恐らくチーテンに取ったのだろう、そして二度目の俺のツモ。

 

引いたのは六筒、この時点で俺は太い流れが彼女に流れている事を感じながらそのままツモ切りし、下家もそれに合わせて二枚目の六筒を吐き出した。

 

 

『二度目の御無礼だ、立直自摸断么平和一盃口三色、裏も一枚乗って親倍だねぇ』

 

 

3-6筒の両面待ちで安目を捨てて高目を上がられるとは、残りの点棒は5000点、この流れを変えるには下家でも上家でも和了させなきゃならない。

 

けど、連荘に入ってから彼女は加速した、早上がりを目指しつつ満貫手をそれぞれ上家下家から和了し、三本場に満貫自摸で彼女以外の点棒が1,000点を切った。

 

 

『いやー悪いねぇ、子供相手に大人気ないけど君は魔物通り越して鬼だからさ、これ位は大丈夫だろ?』

 

 

何たる屈辱、遂に人外扱いされるとは思わず、なりふり構わずに手を進める事に決めた。

 

ハンギング0をした時の事を思い出しながら四本番、一巡目から俺は上家の二萬をチー、一副露で萬子の234。

 

そのまま仕掛けず手の内を入れ替えながら6巡目、再び上家の二筒をチー、二副露で筒の234。

 

コレで聴牌、ドラ五萬が雀頭の六索暗刻、嵌三索待ち。

 

見え見えの鳴き三色、焦った仕掛けに見えるのだろう、着物さんはドヤ顔をしながら三索を暗槓し、一索を切って立直宣言。

 

 

槓ドラがモロ乗りしたのでツモられればトブ、そのスリルからか後ろで先生一号と江崎が俺を覗いている様な錯覚を感じてしまった。

 

ツモったのは四索、死んだ嵌張の片方がくっ付いたので頭として握っていたドラを切る。

 

『アレレ? この局面でドラ切りですか? 高目満貫なのに?』

 

想像の中の江崎が俺を煽る、このドラは配牌からあった物でこうも伸びないと望み薄、ツモらない流れだから要らないんだよ、黙って見てろ。

 

ドラ切りに着物さんが口笛を吹くなか下家が切った四索をポン、再びドラを切る。

 

そしてツモがズレて着物さんが切ったのは六索、ソレを槓して四副露、嶺上牌は四索だった為加槓して二枚目の嶺上牌を掴む、そしてその牌は当然二索、嶺上開花が成立する。

 

『断么嶺上開花、たった3900ですよ? 満貫蹴ってまでするアガリですかねぇ?』

 

良く見ろ江崎、槓ドラが残ってる。

 

 

そう内心で言い返しながら王牌を捲る、一枚目五索、二枚目五索、ドラ八で倍満だ。

 

珍妙な顔をした江崎の事は放って置いて、先生の反応を想像すると、フッと笑って退室して行く姿が思い浮かんだ、如何やら合格と言う事らしい。

 

 

東3局、鳴かずに手作りして行きムダヅモ無しで8巡目テンパイ混一色対々和三暗刻、中と五索のシャボ待ちを着物さんから溢れた中で和了る。 二度目の倍満、着物さんの顔から余裕が消えた。

 

オーラス、流れのままに身を任せ続けたお陰で3巡目にて純全帯三色一盃口ドラ2をテンパイ、黙聴のまま進めて着物さんに立直をさせ、追っかけ立直を叩きつける。

 

二度の放銃に流れを奪われた彼女は俺のロン牌を吐き出し、立直一発が付いての三倍満直撃。

 

二本場、開幕に発の暗槓でドラをモロ乗りさせてプレッシャーを与えると、着物さんはなりふり構わない速攻で二着を狙いに来た。

 

しかし高火力の手を好む癖があるのかつい彼女は染め気味に牌を残してしまい、三索を溢れさせた。

 

そして、俺はその三索を鳴く。

 

俺の配牌は鷲巣麻雀で緑一色を和了した時と同じ配牌だった。

 

この時俺以外の三人が俺の鳴いた牌に目を奪われていたが先生二号の様に『早く切りなよ』と言ってツモを急かす。

 

続く着物さんのツモで吐き出された四索を槓、配牌で暗刻っていた二索を嶺上牌からツモり、連槓。

 

二枚目の嶺上ツモは三索、加槓して三枚目の嶺上ツモを引き単騎に受けた八索を自摸和了する。

 

緑一色四槓子、親のW役満を責任払いさせた後、俺は場代を払って雀荘を後にした。

 

 

ps

 

家に帰ってからポンコツ姉妹に土産を買うのを忘れてた事を思いだした、めっちゃくちゃジト目で睨まれて久々に八連荘と四槓子責任払いでトバされた。

 

…………此奴ら拗ねてる時だけ俺限定で強くなるの辞めてくんないかなぁ。





高火力Vs高火力(白目

竜の哭きが無ければ負けてました。

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