須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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二十一頁目

二十一日目 長野の雀鬼

 

 

以前のハンギング0を役満で締めた事でワシズさんから役満祝儀3億が振り込まれていたので、今日はその金を全額積んで先生二号に挑んでいた。

 

 

支払いレートは千点10万、以前のルール+俺が放銃した場合1,000点20万と言う追加レートで対局しているとギャラリーが集まり、賑わいが出て来てしまった。

 

レンガのように積まれた札束が目に見えて減って行く様は普通の生活をしていては見れない物、学校をサボって朝から延々打っているので既に一億程溶けてしまっていた。

 

時刻は午後四時頃だったと思う、ざわざわとしていた人混みを掻き分けボーイッシュな少女が現れたのは。

 

何か俺に言う気だったのだろうが親っ跳を出和了し、放銃者に罰符180万を投げ渡す様を見て絶句してしまっている、警察が来たら一発でアウトだけどその辺りは劉大人が手を回して居るらしいので問題は無い。

 

次局に移ろうとした矢先、下家に座っていた人がそろそろ時間だと震え声で言いながら札束抱えてそのまま席を立ってしまった。

 

空いた席に誰か座らないのかと聴いては見たけど、怪しい金に触りたいと思う人は少ないのか中々席が埋まらない。

 

仕方ないので此方から適当に指名するか、江崎か後堂辺りを呼ぼうかと考え始めた時に固まっていた少女が緊張しまくりながら空いた席に座った。

 

俺より頭一つ分位飛び抜けた身長の彼女は俺の事を『長野の雀鬼』と呼び、『オレは鬼退治に来た』と上ずった声で宣言した。

 

 

鬼って……、俺は先生一号みたいに人を破滅させてないだけマシだろうに……。

 

てかなんだよ長野の雀鬼って、しょっちゅうバスや電車で雀荘ハシゴしてたから変なあだ名でもついたのか? そー言えば先生も人鬼って呼ばれてるし、俺もその内本名じゃなくて雀鬼って通称になるのか? それはそれでヤダな……。

 

そもそも挑む側ってのじゃ無くて挑まれる側ってのが新鮮だ、普段は格上かカモ相手にしか打って無かったからどんな打ち方をして来るのか気になるし、挑まれる側の心理も知りたい。

 

…………だけどまぁ、日が悪かったね。

 

サイコロを回して親決め、親はソロで来た桃太郎井上さん、山は先生2号の山。

 

静かに始まった対局、金を掛けた勝負でないのに人が不思議と離れない、寧ろ鬼退治を見ようと店員まで見に来てる始末だ。

 

…………そんなに有名なのか、長野の雀鬼ってアダ名。

 

 

東1局は見、哭きの研鑽なら速攻を仕掛ける所だけれど退治される側ががっつくのは控えたい。

 

勝負の質が変わって平たくなった流れ、その動きが何処を向いているのかを調べる為に手成りに打っていった矢先に桃太郎からポンが入る。

 

鳴いた牌は西、役にならない牌を鳴いたのでギャラリーは首を傾げていたけれど、コレは流れを作る為の鳴き、本命はその結果によって集中する牌だ。

 

先生二号はツモ切り、上家は一筒落とし、そして俺のツモは先ほど彼女が鳴いた西、それと入れ替えるようにして八筒を落とす。

 

そしてこの八筒を彼女はチー、そして打五萬。

 

全帯、混一色が匂い始めた為次のツモで引いた一筒を引き込み打五筒。

 

『ロン!! 一気通貫 混一色 赤1、満貫!!』

 

俺の放銃に周りのギャラリーは騒めき、雀鬼が振ったぞとか何とか言っている。

 

点棒を支払いながら牌を伏せ、卓の中央に押し込んで居ると俺の横に一人の老人が椅子を持ってきて座っていた、『拝見しても良いかの? 雀鬼どの』と言われたので無言で頷き一本場に入った。

 

初っ端から親満を和了して調子に乗れている桃太郎、第一打は北、チラチラと他者のツモを見ている事から鳴く気満々な様子だ。

 

そこで俺がツモったのは東、それをノータイムで切り飛ばしてW東を鳴かせる。

 

そして再び彼女が北を切った時、今度は俺がポンして打赤五索。

 

今度はチーが入り彼女は打西、それを俺がポン。

 

牌の並びとツモの入れ替えからロン牌であろう五筒を吐き出し再び放銃する。

 

先ほども今回も嵌張待ちに放銃し続け一万点を割った点棒、ざわざわと期待と疑問の入り混じった歓声の中で老人は酷く楽しげに笑っていた。

 

二本場、俺は役牌ドラ一の手に振り込みコレで点棒が3400。

 

三本場、ノーテン立直を出してドラ無しのノミ手に放銃して残り点棒が0となる。

 

 

ギャラリーの歓声が桃太郎さんに向くが彼女の顔色は悪い、流れを食った筈で手も入るが打点が伸びず寧ろ下回っているのだから。

 

隣で見物していた老人は四本場が始まった瞬間笑い出し『確かにお主は雀鬼だのぅ』と言ってツモを急かし始めた。

 

焦りの表情が見える桃太郎に対して俺は手出しの一索を切る、それを彼女はチーして打六索、俺はその牌をポン。

 

二巡後に俺は再び打一索、それを彼女は再びチーして打六筒、その牌をポン。

 

次巡、打一索、桃太郎は震える声でチー宣言、怯える様に打六萬、その牌を槓、新ドラは一索。

 

更に次巡、打一索、彼女は動かなかった。

 

『四枚目の一索ですが、流れが来ているのに鳴かないのですか?』と聞いてやると『鳴いてやろうじゃねぇか!!』と言ってチー宣言、打西。

 

その西を槓して嶺上ツモ六索を加槓、新ドラは六筒と二索、そして三枚目の嶺上ツモで和了。

 

対々和 三槓子 三色同刻 嶺上開花 ドラ4、四本場の三倍満を責任払い、持って行かれた点棒を全て取り返して東2局。

 

先生二号の親、配牌に三索が孤立している為降りつつ打北、流れを奪い返そうとして桃太郎はポン、打三索。

 

それを先生二号がポンして打東、桃太郎がそれをポンして打八索。

 

『––––––槓』

 

この瞬間勝負は決し、俺は牌を伏せたのだった。

 

 

 

ps

 

対局が終わった後先生二号が帰ったので俺も帰ろうとしたら横から覗いていた老人、及川さんに気に入られたっぽい。

 

なんでも最近噂になっていた雀鬼が名前負けしていなかったからだとか、人鬼の様な表情だったとか、雀鬼呼ばわりはやめてくれ、人外呼ばわりも辞めてくれ。




遂に通り名が付きました、この場合は発覚?(白目
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