須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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阿知賀編はもうちょい続きます。

今回はアコチャーのターン。


三十五頁目

三十五日目 逆満貫縛り

 

 

二倍役満の責任払いに放心している小走さんを置いてそのまま卓を去ろうとしたのだけど、憧に呼び止められた。

 

『京太郎、今度は私と一局打ちましょう、ちょっと考えがあるの』

 

珍しい、素直に俺はそう思って浮かせた腰を席に沈め、彼女の話に耳を傾ける。

 

『あんたが哭けば必ずドラが乗る、立直を掛ければ裏ドラも、だったらそれを禁止して麻雀を打ってみない? あんた限定の逆満貫縛り』

 

『ルールは単純、満貫以上の和了をあんたはしちゃダメ、もし満貫以上を和了したら逆に点棒を払うの』

 

 

どう? 受け付けるの? それとも怖気付いた? そう言って俺を見た憧には勝算がある様な顔が張り付いていた。

 

その自信が気になり勝負を受ける事を了承する、憧は小走さんと入れ替わり、俺の対面に座り直すとサイを回す、出目は小走さん、ルールは大会規定の親の連荘8回まで、赤ありダブルあり、そして誰かがトブまで西入北入のサドンデス。

 

 

既に仕上がった状態の俺配牌は筒子の清一色断么平和一盃口ドラ2、配牌から三倍満確定の手だったが和了出来る物じゃない、成る程これは中々。

 

幸いな事に他家は手の進みが遅いらしい、流れは俺にあるのだから当然だけれど、俺のツモも好調で清一色が消せない程一色ばかりを引いてしまう。

好ツモ続きで逆にムダヅモしかない、若干の苛立ちからかツモったドラ五筒を切り出した瞬間、憧からロンの声が飛び出した。

 

役は嵌五筒待ちの456の三色、更に断么と一盃口も付いての満貫、仕上がった状態での放銃は先生達との対局時以外初めて、思わず点棒の支払いが若干遅れてしまった。

 

東2局、憧の親番。

 

仕上がった状態で切り出された牌を狙撃された、それはまだ良い、問題はその仕上がった状態が放銃したにも関わらず続いている事だ。

 

手を開くと字一色、ツモも全て字牌のみと言う状態だ、普段なら何も考えずに流れに身を任せて和了してれば良いのに……こんな感覚初めてだ。

 

 

二度目の放銃、字一色を潰す為に三枚目の北を切った際に憧の混老頭七対子に振り込みトータル-17600。

 

続く一本場。 配牌は清老頭、無理矢理全帯に引き落とし聴牌を取った、待ちは辺七索、自摸ると満貫になるので出上がりしか使えない。

 

俺が有る程度配牌を整理したのを確認してから憧が中を槓をする、新ドラが暗刻に乗って跳ねた、コレでこの手は死んだ。

 

全帯に受け直すか? しかし字牌はほぼ全て場に見えている、残った役牌は憧が槓した時点で消えた。

 

立直のみに受け直しても多分裏が乗る、そして配牌のドラ三が重い、落とせば恐らく放銃だ。

 

そのまま俺は降りを選択、安牌を切りつつ回しては見たが、如何しても打点が満貫以上になってしまう。

 

結局和了出来ずに流局、聴牌は憧と俺のみ。

 

二本場、地和。当然ツモ切りし、流局まで回すも小走や憧の友人が槓を重ねてドラを乗せるので和了出来ず流局、聴牌は俺と憧。

 

三本場、人和。見逃して牌整理、槓を重ねられて流局、聴牌は俺と憧。

 

四本場、三色対々和三暗刻。跳満確定の高目四暗刻、4巡までは全て高目ツモ、再び流局。聴牌は俺と憧。

 

五本場、緑一色。索子を落として行ったら国士無双13面待ち、結局自分自身の流れを殺せず流局、聴牌は俺と憧。

 

六本場、鳴きの速攻を仕掛けるも小走による差し込みで憧が断么を和了。

 

七本場、諦めずに速攻を仕掛けるが憧の友人による差し込みで再び憧が和了。

 

八本場、八連荘確定。九種九牌で流局させる、此処では親も流れるのでそのまま憧の友人の親になる。

 

場数が清算され、東3局。 親の連荘が八連荘までと言う取り決めが無ければどうしようもなくなる所だった、今回ばっかりはお隣のポンコツ姉さんに感謝しよう、あの人の八連荘連打の所為で大会ルールが変更されてるし、この対局のルールも大会の物だから取り敢えず黒棒は消えた。

 

俺は和了を諦め、代わりに脇二人を沈める方針に切り替えた、これ以上和了に拘れば俺がトブと予感した為だ。

 

今の俺ではどう足掻いても満貫未満の手を作れない、なので俺の連荘だけで脇二人を飛ばす、その為には先ず憧に差し込ませなければならない。

 

鳴きの速攻、それに見せかけてツモ順をヅラして憧を含めた全員のツモの流れを曲げ、ムダヅモを増やしてノーテンを誘発させる、特に憧は俺を抑えきった気になっているから積極的に槓を重ねるから手が読みやすい。

 

俺が鳴きで手作りすればするほど憧は他家に差し込み点棒を平たくする、それによって上家と下家の点棒を憧に均させた。

 

 

東4局の俺の親、三鳴きして役なし聴牌、他家はノーテン。続く一本場は他家に鳴かせて役なし聴牌、二本場は断么平和三色ドラドラ聴牌。

 

ひたすら聴牌し続け、鳴きと鳴かせで相手をノーテンにする、1000点づつ確実に彼女らはそれを吐き出して行き、漸く憧も其れに気が付いたけれど、この流れも既に俺の手中、最初の数局で彼女が攻め際を見落としたのが決定打だろう。

 

そのまま最後まで聴牌を続け、他家をノーテンにさせ続けたお陰で最終的に三人まとめてノーテン罰符でトビになった。

 

最早誰も何も言わなかった、二倍役満を責任払いさせられた小走さんもこの逆満貫縛りを提案した憧も、憧以外の人達の一度も和了らずに三人をトバした俺を見る目は酷く怯えた物だった。

 

『御無礼、一人聴牌で皆さんはノーテン罰符でトビ終了ですね』

 

なんとか勝てたからか、勝ち誇った様にそう口走った俺は今度こそ阿太峯中から旅館に帰った。

 

鳴きだけでツモ運を動かす勉強になった、今回の逆満貫縛り、今度先生一号とやってみよう。

 

 

ps

 

普通にトバされた、あんだけ俺が苦労した事平然とやりやがったよこの人(´・ω・)

 




遂に鳴きでツモ運操作まで出来るようになった京太郎、お前は何処まで行くのか(震え声

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