須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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今回からもんぶち編に入り、終わった直後に鹿児島になる為先生方の出番が暫く無くなり、咲勢のターンです。

時系列等は原作丸投げと書いてあるので有る程度丸投げしており、多少早いですがもんぶちは勢揃いしてます、雀鬼化した京太郎の影響が回りまわった感じで。

多分もんぶちは闘牌過多かと。


三十七頁目

三十七日目 雀鬼対魔物

 

 

部活帰り、ポンコツ二人と帰宅すると家の前に黒塗りの車が止まって居て、運転席側に燕尾服を来た男性が立っていた。

 

彼は俺を見るとそのまま一礼し、とある人物と一局打って貰えないでしょうか?と聞いてきた、いきなりだった事もあったが基本的にその手の誘いは本人が己の足で来た時にしか受けていないので丁重に断ったんだけど、そしたら後部座席から何時ぞやのお嬢様が出てきた。

 

 

裏絡みでは無い様だけど、そこそこ複雑そうな事情してそうだなと感じた俺は『如何するの?』とでも言いたそうな顔をしてるポンコツを帰らせた後、話を聞く事になった。

 

数年前、彼女の実家が従姉妹を引き取った、しかしその子は麻雀で他人に恐怖を与える事に孤独を感じ、麻雀の楽しさを感じられずに居ると言う。

 

別に俺は麻雀を楽しむ為にやってる訳じゃないからその辺りの気持ちは分からないけれど、卓上の孤独感と言う物は理解出来る。 俺にはまだまだ超えるべき高みがある訳だから兎も角、その子にはそう言う人物が居ない訳か。

 

と、此処までなら断るレベルの話だったのだけど、次に彼女が口にしたのはお願いではなく依頼だった。

 

 

『貴方の事はハギヨシに調べさせました、長野の雀鬼さん。 あまり深くは詮索しませんでしたが、代打ちとして貴方に依頼させて貰います。 報酬は私個人の全財産、それと引き換えに卓上で孤独になった少女一人を打ち倒して下さい、今の彼女に必要なのは好敵手。 貴方ならその役に十二分ですわ』

 

 

以前の様な目立ちたがりや高飛車なイメージの消えた真剣な眼差しに感じる物があった俺はその依頼を承諾し、そのまま彼女の屋敷に向かった。

 

案内された部屋には雀卓が置かれていて、その前に一人の子供が暇そうに足をぶらぶらしながら座っていた、話を聞くとその子が俺の対局者天江衣であり、この屋敷最強の少女らしい。

 

部屋の中を見ると案外見知った顔が多く、例の桃太郎やメガネさん、後はイカサマ娘もメイド服着て働いていた。

 

 

『待ち侘びたぞ、雀鬼とやら。 お前が衣を満足させると聞いて今朝からこの一時が待ち遠しく感じた、……ああ、勝負の前に無駄話は不要だった、さあ打とう。 その名、偽りの物でない事を願うぞ?』

 

覇気、と呼べば良いのだろうか、卓の上がこの娘に掌握された様な錯覚を感じ、水が首元までせり上がってきた様な圧迫感を感じたがサングラスを掛けて意識を切り替えながら着席した。

 

桃太郎とメガネさんは見学、俺と卓を囲んだのはタトゥーちゃんとお嬢様、それぞれ上家と下家。

 

お嬢様は着席しかけた瞬間例の冷たい感じになりかけていたけど、タトゥーちゃんの呼びかけでそうならなかった様だ、個人的にはあのモードの彼女ともう一度打ちたかった。 あの時はああ言ったけど一度で二度美味しそうだし。

 

天江がサイを回し、起家は天江、ドラは中。

 

自分が起家である事に無邪気に喜ぶ彼女の様子を眺めつつ配牌を開くが、中々に重い配牌になっている。

 

なるほど、あの感覚はこう言う事かと納得した俺は取り敢えず字牌の整理をしつつ見に周り、天江の動きを観察する。

 

子供らしくツモの度に顔が明るくなる様が見て取れるのでポーカーフェイスとは無縁、手が小さいので小手返しなども無理、しかし空切りや少考してからのツモ切り等の技術は持ち合わせているようだ。

 

ツモを伸ばして一向聴、結局断么三色ドラドラの満貫を狙える様にはなったがムダヅモが多過ぎる、ツモ山の流れが全て天江に流れていると判断するのにそう時間は掛からなかった。

 

そうする内に流局目前、そうなった瞬間天江はリーチ宣言と共に点棒を投げる、次巡は天江の海底。それで和了る自信があるのだろうと思い降り、そして当然だと言わんばかりに天江は盲牌すらせずその牌を卓に強打。

 

立直一発自摸中海底撈月ドラ3の親倍、幸先の良いスタートだなと言ってやりたいが正直すこやんの方が10倍強い。

 

黙って点棒を支払い、一本場。

 

ドラは五索、今回は鳴きを何度か入れて見たが、その度に驚かれ鳴き返されて海底牌をツモられた、456の三色と断么ドラと海底が重なって満貫。

 

『ほう、流石は鬼の子。 衣の支配下で動けるとは夢にも思わなかったぞ、だが今宵は満月空は快晴だ、衣の支配力は最も強まっている、何処まで足掻くのか見せて貰うぞ?』

 

 

そう言う彼女は黒棒を積んでサイを回す、気が付いていないだろうが彼女は今俺の鳴きに釣られて鳴き返して満貫を和了した、海底牌をツモる為とは言え手を崩してまで。

 

あの手、彼女は面前で張っていたものだった、つまり海底牌を必ず和了る彼女は立直一発の二翻若しくは自摸を入れた三翻を無駄にした訳だ、裏が乗れば倍満も狙えた手を態々満貫まで落として。

 

曲げさせられた流れは怖いぜ? 天江。




海底牌をツモる為に鳴くのは衣の基本、しかしその鳴きが誘導されて鳴かされた物だったら?

鳴かせた相手が人鬼の弟子だったら?

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