須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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71日目のカットした対局部分。




番外:七十一日目

七十一日目 一年生対局

 

清澄高校麻雀部一年生達の東風一回勝負、場決めの結果起家優希、南家和、西家咲、北家京太郎と言う並びになった。

 

東1局 ドラは九索。

 

優希の配牌は好調、東場に強い彼女から見ても此処最近で一番の配牌だった。

 

789の三色が既に確定しており、七索・八索の塔子が一つと一萬二枚と一筒が一枚、ノータイムで一筒を切って立直を掛ける。

 

(配牌からダブリー・三色・平和・ドラ1親っ跳、しかも高目で三倍満、そっから一発か裏が一つでも乗れば数え役満、絶好調だじぇ!!)

 

 

宣言牌の一筒、和の配牌には二筒・三筒の塔子が一つある為、一発を消す為の鳴きを入れるかを考える。

 

(……まさか第一打から悩むとは思いませんでした)

 

一発消しの為とはいえ第一打からチー、字牌の西・北の対子が配牌にあるものの聴牌するまでに三副露は必要となる。

 

更に配牌には萬子の456で赤入りの一面子、一索と二萬が対子で固まっている為、鳴くなら萬子か字牌でなければ和了れない。

 

彼女の脳裏に思い出されるのは初対局時の京太郎の和了、自分の手中の牌全てがロン牌となって牌を切る前にロンされたあの対局。

 

(須賀君の第一打が分からない内からの速攻は見す見す狙い撃ちして下さいと言っている様な物ですから、動くのは得策では無い……ですか)

 

優希の和了と京太郎の和了、その二人の和了を両天秤にかけて後者を避ける為に鳴きを見送り、第一ツモ。

 

引いたのは一萬、鳴きを入れて混一色、ツモ次第では一通も見える配牌な為二筒を切った。

 

「……ポン」

 

 

その瞬間対面の京太郎が鳴きを入れて打南、ツモ番を飛ばされた咲は自分のツモ牌を優希に回されたと感じて牌を伏せた。

 

「ツモ!! ダブリー・自摸・純全帯・三色・平和・一盃口・ドラ2!! 裏も乗って数えだじぇ!!」

 

 

開幕から16000オール、背後から見ていた久とまこは不用意な鳴きが親に高目をツモらせてしまったと考えたが、咲と和は同時に『意図的に役満を和了らせた』と考えた。

 

実際咲の配牌には九索が二枚、六索が三枚入っていた、彼女が鳴きを入れられずに九索をツモって居れば実質地獄待ち、更に言うなら咲は王牌に六索が一枚眠っているのが感覚的に分かっているのでこのダブル立直は純カラになる筈だった。

 

普段から他家に和了らせる事はあるが今回は開幕からの数え役満、流れを与えると言うには少々大きすぎる出費、親満直撃でトビ終了だ。

 

 

三人の点棒が9000点となり、一本場 ドラは八索。

 

 

無表情の京太郎からは何を狙っての鳴きだったのかは分からない、しかし態々優希を和了せたと言う事は今回のターゲットは彼女と言う事になる。

 

(……点棒的に耐えれる和了は一度か二度、つまり後一局か二局で京ちゃんが動く、それまでに安く早く和了って局を消化しなきゃ御無礼が来る)

 

自分の点棒をみつつ、咲は真っ先に優希の親を蹴る事を考えて配牌から持ち持ちの発を第一打から切り出し、和へと喰わせる。

 

その発切りに咲の意図を察した和は打三索、咲がそれをチーして234の一面子を作り、打西。

 

再び和がポンして二副露、打八索で聴牌、発のみで待ちは一−四−七萬待ちの三面張。

 

それに咲が放銃して1300を支払った、中学時代に競い合った二人だからこそ出来た互いの手を完全に読み切った合わせ打ち、二人は真っ先に京太郎の様子を見たが気にも止めていない様子だった。

 

 

東二局 ドラは五萬 親は和。

 

親番が回って来た和だが、状況的には苦しい事に変わりが無い、咲による差し込みで10300まで点棒が回復したとは言えトップとの差は五万弱、長々とした対局は京太郎の情報収集を後押しし、それでなくても咲の鳴きがある。

 

(……理想としては咲さんに二鳴きさせた後に須賀君が大明槓からの責任払いで飛んでくれる事なんですが、何でしょうかこの違和感は)

 

么九牌を整理しながら和は京太郎の表情を盗み見る、以前の初対局時は小学生の頃だったが、今ほどは冷たくなかったと記憶している。

 

勝つ事に喜びを感じて真っ直ぐに打っていた、それ故に相手を全力で迎え撃ち実力差を実感しながら勝利の余韻に浸っていた様な、そんな感覚。

 

だが今の彼からはその熱が冷めていて、単純に勝つ為に麻雀を打っている、そう感じてしまった。

 

感情も何も無く唯々勝たなければならないと言う衝動、何故勝ちたいのかと言う理由が分からずにその思いのまま麻雀を打ち続けた今の京太郎は血の通わない機械の様に思えてしまった。

 

少なくとも、麻雀を楽しんでいる顔には見えなかった。

 

思考の半分がそちらに流れ始めた頃に赤五萬を引き入れての聴牌、断么・平和・三色・ドラ2の親っ跳、溢れた三索を吐き出して二・五萬の両面待ちをダマ聴。

 

しかし、和が切った三索を京太郎が哭く。

 

手元に閃光が走ったかの様な鳴き、卓外の事を考えていた所為で迂闊な一打をしてしまったと後悔したが後の祭り。

 

三索ポンから京太郎は打東、それを優希が鳴いて打三萬。

 

二度目の哭きを入れた京太郎は打白、待っていましたと言わんばかりに優希が白を鳴き、打三筒。

 

 

「––––槓」

 

この瞬間三色が確定、和と咲は見るまでも無いと言うように同時に牌を伏せた。

 

嶺上牌を引いた京太郎は嶺上牌三索を加槓、続く二枚目の三筒も加槓、三枚目の八索を更に暗槓、四枚目の嶺上牌六索で嶺上開花。

 

新ドラ表示牌が全て五索となりドラ6、一翻お釣りの役満を優希へと支払わせてからの東三局 ドラは東。

 

 

咲の親番だが、京太郎が哭き出した為それに合わせて彼女も速攻を仕掛けなければならない。

 

東・発・一索の対子がある為打点の有る速攻は可能だと判断し、咲は打九索。

 

直後京太郎はダブルリーチ、立直宣言牌は南。

京太郎の背後で対局を見ていた久とまこが、信じられないものを見る目で京太郎の牌を覗いていた事を咲は見逃さなかった。

 

しかし鳴ける牌では無い為歯噛みするしかなく、優希が打二索、和が打五索と鳴く事の出来ないまま2巡目に入り、八索をツモった咲は現物である五索を切った。

 

 

『––––御無礼』

 

 

そう言って京太郎が自摸ったのは二索、役はダブリー・一発・清一色・断么・一盃口、裏ドラが乗って数え役満。

 

二索一枚、三索が槓子、四索が対子、五索・六索・七索の順子、八索の暗刻、待ち牌は一−四−七−二−五−八−九索と言う索子の八面待ち。

 

 

数え役満のツモによって咲と和がトビとなったので対局が終了する、色々信じられない事を見た久はベッドに倒れ込み、まこは『良い天気じゃのぉ』と現実逃避をするのだった。





咲「京ちゃん、仕上がりが早かったね……」

和「普段ならもう一、二局見ですよね? 昼休みの時間にでも一局打ってたんですか?」

京太郎「いや、昨日の夜から朝の7時前まで大体12時間雀荘で打ってたんだけど……」

咲&和「あぁ、なるほど……」


現在の京太郎は割とkillマシーン化してるので淡々と打ってます。

時間の経過に連れて初期に持っていた情熱を失った訳ですね、その点から言えば小学生>中学生>高校生の順。

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