あったかも知れない会話。
和「先ほどから気になって居たんですが……その右手の傷跡、如何したんです?」
京太郎「ん? ああ、コレ? ちょっと前に剃刀でバッサリとやられたんだ」
和「それ普通に傷害事件じゃ無いですか!! 当然警察には行ったんですよね?」
京太郎「いや、行ってないけど……」
和「何故ですか!! 泣き寝入りは加害者が得をするだけなんですよ!!」
京太郎「あ゛ー、言い方が悪かったわ、行く必要が無かったんだ」
和「?」
京太郎「いや、犯人車に跳ねられてそのまま、ね?」
和「…………すみません、一瞬『遂にこの人人殺しをしたな』って思ってしまいました」
京太郎「あはは、まぁ結果だけ見ればそう思うよね」
六十二日目 旅打ちの終わり
イカサマ対策講座を終えた後、何気無くテレビを付けたらウチの学校が映っていた、インターミドルが近いしインタビューでもされてたんだろう、女子の三連覇掛かってるらしいし。
男子も確か部長が去年個人の部で全国制覇してた筈だったはず、ぼんやりとそんな事を思い出しながら俺の部屋に遊びに来た穏乃達に部員の説明と部長の話をしていると、練習風景が公開される事になった。
営業スマイル全開の照さんと所々で照さんのポンコツがバレない様にフォローを入れてる部長、この二人が卓に座って無いし咲やモモもカメラを気にして緊張しまくってる見たいなので、比較的平和に終わるだろうな。
お茶を啜りつつ、俺が居ない間どんな練習してんのかなーって楽しみにして居たら、まさかの硝子牌が出てきた。
この硝子牌は確か小学五年の夏休みだったかに、ワシズさんから鬼束氏の師匠である辻宝生の所に行って自作して来いと言われて作った奴だ、合格貰えるまでずっと山籠りする羽目になったし終始黄金で出来たワシズさんの像が気になって仕方なかった、盲牌のおかげで指が牌の模様を覚えていて本当に助かった。
苦い思い出を噛み締めながら、画面の中の硝子牌が三透牌と言う事に気がついた俺は、鷲巣麻雀をやるのかと納得し、部長の解説を聞き流していた。
横目で穏乃達を見ると、憧と和は真剣に、穏乃は『何でこれが特訓になるの?』と首を傾げて居た。
牌が見えると言う性質上、通常の麻雀とは勝手が異なるものの、相手の手を読む為に自然と河と切り出し方に注目が行くようになるし、自分の判断に自信を持たなくては放銃してしまう為、0か100かと言う判断で牌を打つようになるので丸っ切り無駄じゃ無い。
その事を穏乃の分かりやすい様に説明していると、対局面に移って行く。
今回は一年二年の対局だったので其処まで場が荒れはしなかったけど、非常に放銃の少ない対局だった。
レポーターの方が怖いくらいに危険牌を止める部員達を見て説明が出来ないで居たら、見兼ねた部長が東1局から順を追って一打一打解説を始め、四人全員の思考と切り出し方の理由を丸々晒してしまった。
…………半荘一回で打ってるのに脇から見ただけで全員の打牌とその時の思考まで全部記憶してるんだぜ? 人に鬼だの何だのと言ってるけど、あんたも大概じゃないか。 まぁ俺もやれるけどさ。
『記憶力良いんだね、部長さん』と素直に感心してる穏乃は兎も角、初めは素で驚いていた和と憧も次第にその解説に引き込まれて行き、自分の考えと照らし合わせてるようで、すっかり黙り込んでしまった。
この二人はデジタル打ちだし、面前主義者で且つデジタルな部長の読みは参考になるのだろう。
解説の途中でリタイアした穏乃とナインで遊びつつ、大会が間近だと言う事を思い出し、団体戦が待ち遠しくなるのだった。
トラウマ除去はいずれまた機会があれば(白目
因みに、てるてるは部長の解説の裏で営業スマイルのまま無い胸張ってドヤ顔してます、意訳すると『部長は凄いだろう(ドヤッ』てな感じ。