六十三日目 帰って来た雀鬼
長野に帰った俺は土産を持って部室へと向かった、久々にみんなと会えるなーと鹿児島帰りの時のようなノリで部室に入ったら部長に肩を掴まれた。
『……良く帰って来たね、須賀。お前には小鍛治プロの事で山程言いたい事が有るから君には後で説教だ』と据わった目で叱られた、流石にあの人呼んだのはアウトだったか、少し反省しながらも照さんを呼んでお説教を有耶無耶にした俺は張り出されたオーダー表を見る、まぁ想像通り俺は大将、部長は中堅に座っていた。
オーダー表を見つつ俺は『これ……俺まで回って来るのか?』と今更ながら疑問に思った。
顧問曰く『此処は或る意味キメラ研究所だからな、みんな明後日の方向に進化してるんだよ』だったか、三年の男子にも遠い目をしながら『和了れない……和了させて貰えない……そうだ!! 俺がノーテンの間全員ノーテンになれば良いんだ!!』とか言い出してそれを実現してよこしたり、『麻雀に理不尽なんで要らない、みんな平等であるべきなんだよ!! な? だからみんな向聴数が一緒になりゃ良いんだよ!!』とか『不ヅキの極み? だったら国士、国士を狙うしかねぇ!!』とか、色んなオカルトと迷言が産まれ、それに対してのデジタル・アナログの対応力もとんでもない事になっている。
………うん俺に丸投げ作戦だけどその前に終わりそうだ。
そんな事を考えていたら、何時の間にか顧問が到着したようで、非常に面倒くさそうな顔でミーティングを開始した。
『えー、今回の作戦だが……お前らの自主性に丸投げするわ、対戦校の情報はプリントしといたから各自好きな様に目通すよーに、じゃー解散』
そう言って顧問はプリントの山を置いて退室して行った、ざっと目を通したらめちゃくちゃ細かく分析されてて少し見直した。
…………と言うより県内の中学全て調べ上げられてて普通に引いた、明らかに無名の弱小まで調べ尽くしてるし、何なんだあの人。
俺の引きつった顔に気が付いたのか、部長が資料に目を通しつつ『あの人はあんな感じだけどとても優秀な人だからね、僕らの癖も全部把握してるし丸三日あったら県内の学校は調べ尽くせる人だよ』と事もなげに言ってきた、初耳なんだけどそれ……。
『そもそもさ、宮永さんや須賀の麻雀で退部希望者が出なかった理由があの人のフォローと指導の上手さだからね、彼が居なかったら今の麻雀部は無かったよ』
勿論僕もとっくに辞めてたと思う、と部長は付け加えながら他校の情報を頭に入れる為黙り込んでしまった。
てるてるは部長の肩に顎置いて部長の読んでる資料を一緒に読んでます。
雀鬼を受け入れ、更に退部希望者を思い留まらせる此処の顧問は凄まじく有能です。
普段からやる気の無い態度なのは『生徒のやりたいようにやらせ、迷ったり悩んだりした時にだけ後押ししてあげる』と言うスタンスな為だったりします、ちゃんと生徒のこと見てるしアドバイスも的確なので存外に信頼は厚かったり。