ヤウきゅーぶ!   作:茅倉 遊

10 / 12
約≪半年≫振りの投稿となった訳ですが・・・・
 本当に申し訳ありませんっ!
 まったく次話投稿が出来ずにいたのに、気付けば評価値が増えていました。
 本当にありがとうございます。これからはもっと早く投稿できるように頑張って行きますっ!
 それでは、どうぞ!


再確認

 先攻はこちら側《女子野球部》になり、試合がスタートする。

 先頭打者は 真帆 。野球を本格的に始めたのは最近と言うが、とても良いセンスを持っていて呑み込みの早い選手だ。しかし、まだ≪上手い≫とは言えないので男子相手に何処まで通用するか・・・・

「よっしゃー! ドカーンとホームラン打ってやるぜっ!」

 気合十分でバッターボックスに入って行くが、どこか心配だ。

「智花。バッティング練習はやったんだよな? 真帆はどんな感じだった?」

「えっと、ヒットも何本かありましたが・・・・ほとんど 三振 です」

「やっぱりか」

 一応、隣に居た智花に聞いてみたが予想通りの回答が返ってくる。さっきの一言でも解ると思うが、恐らく真帆は 大振り になっているのだろう。

 最初から大きな当たりを望んでいては、バットに当たるはずがない。経験者ならともかく、まだ初心者と言っても過言ではない真帆がバットを振り回すだけでは駄目だ。とりあえず、最初は当てに行かせよう。

「真帆! 最初は内野ゴロでもいいから、ボールをよく見て当てに行くんだ!」

「分かってるって、はっきー!」

 笑顔でこっちに手を振っているが、たぶん分かってないだろう。

「そういえばハヤ姉。男子のピッチャーって誰だ? 球種とか分かってる?」

「え? いや、全然☆」

「ですよねー。 ・・・・・・ん?」

 マウンドに目を向けると、見知った少年が立っている。―――確か、竹中だったかな? 真帆が ナツヒ と呼んでいた少年だ。

 どうやら男子チームのピッチャー・・・・いや、背番号を見るに≪エース≫ってヤツか。

「智花は何か知ってるか? あの、竹中って投手のこと」

「確か、カーブとスライダーを持ってるってクラスで言ってました」

 智花が思い出すように告げる。

 なるほど。それにストレートとスローボールも合わせたら持ち球は 4つ 。制球力があれば申し分ないピッチャーだろう。さて、どう攻略するか。

 

「ストライク! バッターアウト!」

 さまざまなプランを考え込んでいると、真帆がベンチに帰って来る。

「おかえりなさい、真帆。早かったわね」

「う、うるさい!」

 ≪一番≫真帆は≪三振≫っと。一応、スコアは付けて置こう。

 隣で真帆と紗季が言い争ってるが、とりあえず今は無視。

(こっちは≪初心者だらけ≫で、≪試合経験≫もまったくない。皆には酷だけど、≪やって貰うしかない≫か・・・・)

「紗季・・・・いや、みんな。ちょっと聞いてくれ」

 ≪二番≫である紗季だけに伝えようとしたが、この場で全員に伝えて置いた方が早いと気付く。

「みんなの≪第一打席≫は、≪今後の布石≫のために使う。初回は捨てて≪中盤≫に仕掛けようと思う」

 さて、納得してくれるかな―――こんな≪捨て身の作戦≫に。

 しかしこれが現時点で執れる≪最も効果的な策≫なのだ。経験が不足している彼女たちには、たった≪一打席≫で試合に慣れて貰うしかない。

 少年野球、今の場合は≪少年少女野球≫だが・・・・イニング的に言えば【七回】しかないのだ。その間、単純計算で一人≪三打席≫程度しか回ってこない。点を取り続ければ話は別だが、≪初心者≫には厳しい要求だろう。つまり俺が言いたいのは、彼女たちの残り≪二打席≫で勝負すると言うこと―――

「で、でも、貴重な≪一打席≫をそんな簡単に捨てるなんてっ!」

 紗季の言葉に全員が頷く。もちろんハヤ姉だって同じだ。

 ・・・・でも、

「大丈夫。こっちにだって≪簡単に終わらない打者≫がいるから」

 具体的には迅理、智花、友香の三人。彼女たちはこのチーム唯一にして、絶対に不足している物を持っている選手。≪実力≫はもちろん、≪経験≫こそが最大の武器になるのだ。

「すいません、≪二番≫の子はまだですか?」

 ここで主審の人から打者の催促がくる。確か≪二番≫は、

「私です」

 目の前にいた紗季が、不安そうに見上げてくる。

「・・・・俺に任せてくれないか? この≪チーム≫を」

 まるで相手を安心させるように、ゆっくりと口を開く。

「・・・・分かりました。鷹野さんを信じます!」

 最後にその表情に笑顔を作って、紗季はバッターボックスに走って行った。

 

 紗季にはこの打席、≪バント≫の指示を出す。

 それが≪今後の布石≫。

「・・・・アウト!」

 何とかバットに当てたものの、結果はピッチャーゴロで終わる。

「すいません。もっと上手く転がせば・・・・」

「いや、当てただけでも充分だよ。本番は≪次の打席≫だから、気を落とさないでくれな?」

「は、はい!」

 ≪二番≫の紗季は、≪ピッチャーゴロ≫か・・・・

「・・・・・・≪迅理≫」

 ここで≪最初の切り札≫でも切ろうかな。

 ―――≪切り札≫ってのは≪最後に切るモノ≫って勘違いされてるが、本当は≪切りたい時に切る事が出来るモノ≫だ。それだけ≪信頼出来る札≫なんだからな。

「はぁ~い♪ お兄ちゃんが愛して止まない、可愛い≪妹≫ちゃんですよ~!」

「・・・・・・」

 とりあえず、無視を選択しよう。

「≪球種≫と≪球速≫。あと≪制球力≫を詳しく知りたい。―――頼めるか?」

「そんなのお安い御用だねっ!」

 その顔にとびっきりの笑顔を浮かべ、迅理はバッターボックスに向かっていく。

 さぁ、見せて貰おうか。≪天才≫の実力ってヤツを・・・・

 

 ―――キィィンッ!

 もう何回目だろうか。ボールとバットの接触音が、この広いグラウンドに響き渡る。

 何度もボールとバットは接触を繰り返すが、その全てがファール。

 この結果はもちろん≪意図的≫だ。

 相手のピッチャーに球数を投げさせ、獲れるだけの情報を獲る作戦である。迅理は四球《ファーボール》に為らない様、ボール球もバットに当てていた。迅理のカウントはボール2、ストライク2であり、もっと粘ることが出来るだろう。

「おー? 迅理、すっごく粘ってる。なんで?」

「もう10球目ね。夏陽《なつひ》も結構辛いんじゃない?」

 隣でひなたと紗季も感嘆の声を上げる。まぁ、実際凄いのだが。

(・・・・けど、もう充分だな)

 俺だってポジションは≪ピッチャー≫。ピッチャー相手の分析くらい簡単に出来る。

 とりあえず、迅理には≪四球≫を選択させて≪最初の勝負≫は―――

「頼んだぜ、智花」

 ≪四番≫の智花で仕掛けてみるか・・・・

「相手は小学生だし、制球力はあまり無いみたいだ。夏陽くんの場合も、最初はストレートを中心にカウントを取りに行ってる。決め球は変化球を使ってるみたいだけど、変化はあまり無し。それにキャッチャーの指示にもよく首を振ってる。たぶん≪ストレート≫が投げたいんだろうな。首振った後の球は、ほぼ全球≪ストレート≫。つまり狙い球は・・・・」

「竹中くんの≪ストレート≫ですか?」

「―――正解」

 智花へ指示を出そうとしたら、すでに分かっていたみたいだ。優秀な子で助かるな。

「じゃあ、行っておいで」

 迅理も四球になったようだし、次の打順が回って来る。

「はいっ!」

 力強い返事を残し、智花はバッターボックスへと歩いて行った。

 

 

 

「お願いしますっ!」

 大きな声で審判に挨拶してから、智花はバッターボックスに足を運ぶ。

 バッターボックスに入った智花は、ゆっくりとバットを構え始める。しかし、その視線は常に相手投手から外さない。

 バッターとピッチャーの準備が整った処で、審判が双方に合図を出す。

 ・・・・さて、どうなるか?

 

 ランナーが居るので投手は腕を振り上げず、小さく構えたフォームからすぐにボールを投げる。

 ≪セットポジション≫と呼ばれるそれは、相手投手≪自慢のストレート≫の威力を落とす事になる。だからこそ・・・・≪ストレート≫を狙うのだ。

 相手投手の夏陽くんも、そうやってスムーズに構え終えると、すぐにボールを投げてきた。

 それを見た智花の腕に、すっと力が入るのが見て取れた。つまり、

 

 ―――智花の狙いは、≪初球≫。

 

 なるほど、良い考えだと素直に思う。相手は小学生。≪変化球≫や≪コース指定≫云々よりも、まずはストライクを取りに来る事がほとんどだ。

 そういった場合、キャッチャーが投手に求めるのは≪ど真ん中のストレート≫と相場が決まってる。だから智花は、敢えてそこを狙った訳だ。

 智花の観ている者を魅了するような鮮やかなスイングは、簡単にボールをバットの真芯で捉え、そのままレフト方向へとボールを運んでいく。ボールは相手守備のレフトの頭上を大きく越え、そのまま長打コースへとなる地点に落ちる、

 ・・・・筈だった。

 

 パシッ! と乾いた音が、ベンチに居た迅輝の耳まで届いてくる。

 

 相手のレフトがまったくと言っていい程、追い付いてすらいないのに、智花の打席結果は≪アウト≫。

 ―――では、誰が捕ったのか?

 今現在、レフト方向へと飛んで行った智花の打球を持っているのは―――≪センター≫を守っていた少年だ。

 つまりこの少年は、レフトの頭上を越え、さらに深く飛んで行った筈のボールに追い付いたのである。先ほどまで、センターが守るべき≪定位置≫に居た筈なのに。

 『在り得ない』、普通はこう思う。

 だが俺は、この『スーパープレー』を―――≪何度も見た事がある≫。

「やっぱり・・・・≪アイツ≫の弟だったのか。―――≪後藤良次(ごとう りょうじ)≫」

 相手のセンターを守っている選手の名前を、迅輝は小さく呟いた。・・・・≪知り合いの弟≫の名前だったのだが。

 

 

 

 スリーアウトとなり、攻守の入れ替わりが始まる。

 一回の表の女子野球部の攻撃は≪無得点≫に終わってしまう。

 だが、こちらとしては当然の結果であり、計算の内である。こちらの予定では、試合を動かすのはもう少し先の予定なのだ。

「―――しますっ!」

 女子野球部が守備に着いた処で、男子野球部の先頭打者が打席に入って来る。

 その打者は、奇しくも先ほど好プレーを見せたセンターを守っていた選手だ。

 一番、センター。ホント、≪兄貴≫とまったく一緒だな・・・・

「プレイ!」

 審判の合図で男子野球部の攻撃が始まる。ちなみに、女子野球部の先発は智花だ。

 ≪一週間≫程度で覚えさせた付け焼刃な投手だが、いったい何処まで通用するか。

 

 智花は基本に忠実なオーバースローで、第一球目を投げる。初投球という事もアリ、狙いは少々甘めだが打者が見送ったためストライクだ。

 これでカウントが、ストライク1・ボール0。

 ・・・・恐らく、この打者は相当に≪巧い≫。

 ―――≪先頭打者≫ってのは、相手投手と初めて戦う、云わば≪チームの初陣を飾る≫選手だ。相手投手の持ち球・制球力・投球の癖など、何も知らない状態で勝負に挑む。だからこそ、チームのためにより≪多くの情報≫を持ち帰るため奮闘しなくてはならない。

 こっちの先頭打者であった真帆は≪初心者≫だったため望まなかったが、普通の監督なら真っ先に先頭打者に望むのが、相手投手の≪情報収集≫なのだ。

 初球を振らずに見送ったのは、ボールをじっくりと観察するため。その証拠に、バットを振る気など全然無かったのだ。この後藤《ごとう》という選手。

 

 つまり、この後の展開は大体≪予想出来る≫訳だ。

 俺が≪迅理≫に指示したような、≪粘り続けての情報集め≫の始まりである。

 ≪粘り続ける≫ことで、相手投手の球数も増やす事が出来るので効率も良い。やる分はいいが、やられると嫌なんだよな・・・・これ。

 

 俺の予想が悪い方向で的中してしまったため、その後≪12球ほど≫粘られてから≪四球≫を選択されてしまう。

 ボール球まで手を出してくる徹底振りには、さすがに舌を巻くよ。

 智花も先頭打者からあれだけやられると、相当堪える筈である。いきなりランナーを背負ってしまった訳だが―――

 ・・・・そういや、思い出したよ。

 

 相手にも―――≪天才プレーヤー≫が居るって話。

 

 今更だが、≪厳しい戦い≫に成りそうだぜ・・・・

 

 




どうでしたか?
 感想等、書いて戴けると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。