ヤウきゅーぶ!   作:茅倉 遊

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 ロウきゅーぶ!の2期・・・・ロウきゅーぶ!SS、放送開始おめでとうございます!
 自分も、毎週欠かさず視聴しています。
 いや~、やっぱり智花がすごく可愛いですね。ホントに、小学生は最高だぜっ!
 次話投稿が遅れてすいません。それでは、どうぞ!


もう一度

「・・・・俺と、『勝負』?」

「はい!」

 智花が真剣な眼差しで、俺を見つめる。

 『一対一の勝負』。何故そんな提案を智花が言い出したのか、俺には 一つだけ 心当たりがあった。

「私が勝ったら 一つだけ お願いを聞いてくれませんか?」

「・・・・『野球部のコーチをして欲しい』とか?」

「っ!?」

 問いを問いで返してしまったが、どうやらホントだったようだ。

 まぁ、予想通り・・・・。

「可愛い女の子からのお願いほど、断れないモノはないな。いいよ、その『勝負』受けよう」

「ふぇっ!? ---か、可愛い!?」

 俺のセリフで、智花の顔が真っ赤になった。

「そ、そんな事ないです!」

 智花は、否定するように両手を振っている。

(・・・・可愛いと思うけどな・・・・)

 もちろん、俺は素直にそう思っていた。

「けど、いいのか? 俺と『勝負』なんて。・・・・・・相手は プロ野球選手 だけど」

「迅輝さんが、とっても凄い選手だという事は知ってます! でも、『勝負』したいんですっ!」

「みんなのために?」

「はい!」

 ・・・・ホント、良い子だな。仲間想いで、明るく輝いている智花が正直・・・・羨ましい。俺が持っていなかったモノを、彼女はすでに持っているのだから。だからこそ、彼女のお願いを聞いてあげたいと思った。

「だったら、・・・・『ハンデ』を付けよう」

「っ!? ハンデなんて要りません!」

「いや、付けないと駄目だ。それにハンデは、お情けのために付けるんじゃない。勝負を成立させるために付けるんだ。だって、智花と俺じゃあ、元々の身体能力も大きく違うだろ。ハンデを付けるのは当然だ」

「・・・・は、はい。・・・・解りました」

「ありがとう。それじゃあ、ハンデは・・・・・・。そうだな、『俺がピッチャーで、智花がバッター。俺はストレートとスローボールしか使わない。それと 左 で投げる。・・・・俺から ヒット性の当たり を打てば、智花の勝ち』。これで、どうかな?」

「・・・・っ!? い、いくらなんでも、ハンデが重すぎますっ! それじゃあ、迅輝さんが不利ですよ!」

「あれ? 智花はもう 勝つ自信 があるのか?」

「で、でも! これで勝っても、納得できません!」

「・・・・まずは一本」

「え?」

「・・・・まずは、一本打ってみな。それで納得できなかったら、その時に聞いてあげるよ」

 ---俺と智花の『勝負』は、それからすぐに始まった。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、始めようか」

「よ、よろしくお願いしますっ!」

 バッターボックスには、智花が入って素振りをしていた。

 ・・・・・・ホント、凄く綺麗なスイングだな。全く無駄な動きがなく、美しく流れるようなそのスイングは、ずっと見ていても飽きることはないだろう。・・・・と言うより、ずっと見ていたい。

「あ、あの・・・・、迅輝《はやき》さん?」

「っ!?」

 危ない、危ない。そういえば、『勝負』だったっけ。・・・・完全に、智花のスイングに見惚れてたな。

「準備はいい?」

「もちろんです!」

 智花が、大きく声を上げた。そしてバットを構えて、真剣な眼差しで俺を見つめる。

 俺は両腕を大きく振りかぶり、投球モーションに入る。

 ---俺自身が考えたオリジナル投法である、『回転《レボリューション》投法。

 ・・・・名前は 親友 が、勝手に付けたモノだが・・・・。

 身体を大きくねじり、一気に腕を振り降ろした。

 そして、ボールは ネット に吸い込まれた。

「・・・・えっ!?」

 キャッチャーがいないから、ホームベースの後ろには ネット を置いていたのだ。

 智花はバットを振っていないので、見逃し。

 ちなみに、コースは ど真ん中 だった。だが、球速は『120㌔』は出ていただろう。小学生には、まだ速過ぎるボールだ。

「・・・・えっと・・・・。速過ぎた、かな?」

 俺の利き腕は、もちろん『右』だ。しかし、俺は『左』でも投球できる。右に比べ 球速 は落ちるが、それ以外なら『右』とほとんど変わらない。ホントなら『140㌔』程度までなら出せるのだが、それは小学生には速過ぎる。そこで『120㌔』程度にしたのだが・・・・。

(・・・・それでも、速かったな・・・・)

 普通に考えれば、簡単に分かることだ。

「ゴメンな、智花。もう少し、球速を落と・・・・」

「い、いえ! この速度でお願いします!」

「・・・・え?」

 俺の言葉を最後まで聞かず、智花が声を上げた。

「---私は、絶対に勝って見せますっ!」

 そう言うと智花は、もう一度バットを構え直した。

「・・・・なら、この速度で勝負しよう」

 俺は横に置いてある予備のボールが入ったかごから、もう一球 ボール を取り出す。

 そして、もう一度 投球モーション に入った。

 智花が本気なら、俺も本気を出さなければ怒られるだろう。

 だから今度は、少し コース を変えた。

 ---内角低めのストライクゾーンに、ギリギリ入るコースに投げる。

 ボールは狙った位置を、寸分違わず通過した。またも、智花の見逃し。

「・・・・そ、んな・・・・っ!?」

 二球連続のストライク。あと一つで、智花の三振だ。

「どうする、・・・・降参する?」

 俺が、そう尋ねると智花は、

「ま、まだ終わってません! それに 制限時間 決めてないもんっ・・・・ません! だから、諦めませんっ!」

 智花が、必死に声を上げる。

「・・・・だったら、まずはバットを振らないとな」

 智花は、まだ一度もバットを振っていない。だから俺は、まだ智花の フルスイング を見ていないのだ。

(・・・・見せてくれよ。その 最高のスイング を・・・・)

 俺はもう一度、ボールを持って振りかぶる。

 そして俺は、ボールを投げた。

 ---外角高めの、ストライクゾーンに・・・・。

「・・・・えっ!?」

 智花はバットを振ったが、あまりに 予想外のコース だったためスイングが乱れる。そのまま智花のバットは、ボールを捉えることなく空を切った。つまり、空振り。これで智花は、空振り三振だ。

「も、もう一度お願いします!」

 しかし智花は、まだ諦めていなかった。バットを構え直し、視線を俺に向けてくる。

「・・・・分かった。もう一回だ」

 そこから、俺と智花の勝負に 火 が付いた。

 

 

 

 

 

「・・・・はぁ~~」

 ベンチに腰掛け、両手でスポーツドリンクを持ったまま、智花が大きくため息を吐いた。

「ゴメンな、智花。手加減すると、智花に失礼だと思って・・・・。俺は 現役のプロ野球選手 のくせにな・・・・。ホント、ごめん」

 その智花の姿を見て、隣に座っていた俺は智花に声を掛けた。

「い、いえ! そもそも私が言い出した事ですし・・・・。それに、嬉しいです。・・・・迅輝さんが手加減せずに、私と 勝負 してくれる事が・・・・」

「けどな~。さすがに コース がキツ過ぎたかな・・・・」

 さっきまでの投球を思い出すと、さすがに自分でも引くレベルだ。小学生相手に、本気で コース を狙って攻める高校生(プロ野球選手)なんて・・・・。

「でも、迅輝さんの投げたボールは 全部ストライク でした」

 智花が、急に俺の方を向いた。

 その視線は、俺の目をしっかりと射抜いている。

「やっぱり、凄いですっ! ---迅輝さんの『絶対的なコントロール』っ!」

「あ、ありがとな」

 智花の興奮し切った瞳に、俺は少し体を仰け反らせた。

 ・・・・ど、どうしたんだ急に・・・・

 

 確かに俺は、さっきまでの 智花との勝負 で、すでに 50球以上 投げている。

 ---しかし、すべて ストライクゾーン に・・・・。

 

 普段俺が右で投げるストレートは、確かに他の投手に比べれば速い方だ。平均でも 150㌔以上 は出ているし、本気で投げれば 160㌔ だって投げられる。

 でも、俺の投手としての一番の武器は・・・・『コントロール』なのだ。

 狙った場所に投げる事ができる・・・・・・そんなの当たり前だ。

 

 解り易いエピソードで言えば・・・・。

 俺は高1まで、「野球のストラックアウトは、目を瞑ってやる物」だと思っていた。

 ・・・・・・目を開けてやるなんて 簡単 過ぎるから・・・・・・

 テレビ放送なんかでやってる時は、みんな目を瞑っていると思っていたくらいだ。

 そんな中、真実を知った時は驚愕した。今までの選手たちは、目を開けていても パーフェクトを達成できなかった と知ったのだから。

 だから俺は、ちゃんとしたルールでの「ストラックアウト」では、パーフェクト達成 を逃した事はない。

それも、使用するのは 九球 のみ。俺は、それで充分だから・・・・。

 

 

 

 

 

「私・・・・まだ、バットに当てるのが精いっぱいで・・・・」

「バットに当てるだけでも、大したもんだぞ。球速は120㌔も出てるんだから、普通は当てるのも難しいボールなのに」

 最初の方は空振りばかりだった智花も、だんだんとバットにボールを当てるようになってきた。

 だが、まだまだ 当てに行く バッティングだ。それでは、勝利条件である ヒット性の当たり は打てないだろう。やはり良い打球を打つには、バットを 思いっきり振る ことだろう。智花のスイングなら、充分に長打を狙えるはずだ。

 

「・・・・そういえば、どうして野球部を作ろうと思ったんだ?」

 少し気分転換するために、前々から気になっていた疑問を智花に尋ねる。

 たった五人、それも四人はほぼ初心者のはずなのに、どうして 野球部 を作ろうと考えたのか。ずっと気になっていたんだよな・・・・。

「・・・・え、っと。たぶん、私が 原因 です」

「智花が?」

「はい。・・・・・・私が、体育の時間で野球をした時に ホームラン を打ったんです」

 智花は、ゆっくりと話を続ける。

「その後、私に話しかけてくれたのが、真帆でした。私の打球を『凄く綺麗だった』って褒めてくれて、どうしたら打てるのかって、すっごく質問されました」

「はは・・・・。確かに真帆っぽいな」

 智花のホームランを見て、自分も打ちたくなったって訳か・・・・。

「 野球部を作ろう って言い出したのは、真帆です」

「もちろんって感じだな」

 まぁ・・・・真帆なら、それくらいすぐに実行するだろう。

「メンバーも真帆が集めてくれて、私も誘われました。・・・・・・でも私は、最初は断わったんです」

「・・・・どうして?」

 断る理由なんてないはずだ。 ---智花だって、野球が大好きなんだから。

「私は、前の学校で チームメイトのみんな に嫌われてましたから・・・・」

「え?」

 こんなに優しい智花が・・・・・・嫌われていた? 冗談だろ?

「 勝ち急ぐ 癖があったんです。チームワークよりも、勝つ事を意識していて・・・・その事に気づいた時はもう、私の居場所はどこにもありませんでした。・・・・だから、前の学校を転校して 慧舞学園 に来たんです。野球も、その時止めました」

「・・・・そんな事が・・・・」

 まさか智花に、こんな過去があったなんて・・・・。

「けど、真帆が誘ってくれた時は、本当に嬉しかったんです。最初はもちろん悩みました・・・・でもやっぱり、私は『野球が大好き』なんです。止めるなんて、出来ませんでした」

 そう言って、智花は小さく笑った。その笑顔には、強い意志があるようだった。

 そして、智花は決心したように立ち上がる。

「 私たち の野球を守るために、私は戦います。だから、迅輝《はやき》さん。・・・・私と 勝負 してくださいっ!」

 智花が、深々と頭を下げた。

 ---俺は、

 

「・・・・一球勝負だ」

 

「え?」

 俺の発言に、智花は首を傾げる。

「---俺が一球だけ、ストレートを『ど真ん中』に投げる。・・・・智花は、それを フルスイング で捉えるんだ。それで ヒット性の当たり が打てれば智花の勝ち」

「え、えっ?」

 智花は、まだ理解できていないようだが、話を続けるか。どうせ後、 一言 だけだしな。

 

「---見せてくれないか? 智花たちの、野球に対する思い。---その 強さ を・・・・」

 

 智花のその、美しいスイングと・・・・勝負での 勝利 という結果と共に・・・・。

 

 

 

 

 

 

 バッターボックスに立つ智花を、俺はマウンドから見ていた。

 これから始まる『一球勝負』で、すべてが決まるのだ。

「・・・・じゃあ、行くよ」

「---はいっ!」

 智花が、しっかりとバットを構える。その姿を見てから、俺はゆっくりと投球モーションに入った。

 両腕を大きく振り上げ、今度は身体を大きくねじる。

 ハンデとして、利き腕ではない左での投球だが・・・・・・そんな事は関係ない。

 そして俺は、最後の一球となるボールを投げた。

 ストライクゾーンのど真ん中に、渾身(少し抑えているが)のストレートを・・・・。

「---んっ!」

 智花のその、美しいフルスイングがボールを・・・・・・

 

 ---キィィイン!

 

 ・・・・捉えた。・・・・・・だが、

「・・・・っ!?」

 智花の打球は、ピッチャー正面に飛んで来た。

 物凄い速度の打球が、バウンドせずに俺の目の前に迫る。

 

 ---バシィィイ!

 

 ほぼ反射で、俺はそのボールをキャッチした。野球で言えばアウト。・・・・リアルで言えば、

「あ、危なかった・・・・」

 死ぬかと思ったよ。・・・・割とマジで。

「だ、大丈夫ですかっ!? 迅輝さん!?」

 智花が、すぐに駆け寄ってきた。

「大丈夫。心配しなくても、平気だよ」

 心配そうな智花に、笑顔を見せる。効果があったのか、智花は俺の顔を見ると、安心したように胸を撫で下ろした。

「ナイスバッティングだったぞ。智花」

「で、でも・・・・ヒットを打てなかったので、私の負け・・・・」

「いや、智花の 勝ち だ」

「・・・・え?」

「智花の勝利条件は、『ヒット性の当たり』を打つ事。ヒットを打つ事じゃない。それに、さっきの当たりはどう見てもヒット性の当たりだよ。俺も、運良く取ったようなモンだし・・・・」

「で、では・・・・」

「うん。約束は、約束だ。・・・・大丈夫、ちゃんと守るよ」

 もう一度、智花に笑顔を見せる。

 まぁ、またやってみようかな・・・・『指導者』ってヤツをな・・・・。

「は、迅輝さんっ!」

「・・・・ん?」

 

「---もう一度、私たちの『臨時コーチ』をしてくださいっ!!」

 

 智花が、また深々と一礼する。

「・・・・了解!」

 この瞬間---俺・・・・鷹野 迅輝《たかの はやき》は、もう一度・・・・

 

 

 

 ---智花たちの『臨時コーチ』を、することになった。

 

 

 

 

 

 




 どうでしたか?
 感想等書いてくれると、嬉しいです。
 次回も、お楽しみに!
『それじゃあ、智花。・・・・最後に、一言!     茅倉 遊 』 
『ふぇっ!?・・・・・・じ、次回もよろしくお願いしますっ!     湊 智花 』
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