何故か毒怪竜になった件について   作:キョロ

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どうも、キョロです。
いやあ計算にすると二週間は放っておいたという。申し訳ありません。

今回は次回で別視点をやりたいがためのものを。
もう次が誰視点だとかモロバレ(笑)

では、スタートです。


15、ティーおじさんがおかしい件について

『……なんだか、心がとても落ち着いている』

 

『あなた誰ですか』

 

 どうも、サヤです。

 今目の前で訳の分からないことを呟いているモンスターがいます。多分独り言なんでしょうけど、独り言だからこそ尚更怖いです。誰かこの気持ち、分かってください。

 今日も洞窟の中で生活中。お母さんはお肉を採りに出かけている。今日は来訪者なしだろうと考えていたら突如やってきた客人。迷惑この上ないです、まったく。

 

『……はあ』

 

『あなた本当に誰ですか!?』

 

 いや、目の前が誰かなんてとうに分かっているんです。分かっているんだけど、いつもと行動が違いすぎて理解できない。

 私が知っているのはいつも明るくて馬鹿で、でもとても人に優しいリアクションのいいモンスター。それが今、覆されようとしている。なんと恐ろしいことか。

 らしくないため息までついちゃってるし。私の性格も壊れてきそうで怖いんだけど。というか現状、崩壊を起こしているモンスターがいるんですけどどう対応すればいいんでしょうね?

 

『ティーおじさん、いい加減煩いんで出てってください』

 

『……そうか』

 

『こんなのティーおじさんじゃない!!』

 

 本当にこのモンスターは本当に私が知っているティーおじさんで間違いないんでしょうかああああ。

 でも熱視覚で見たらいつも見ている大きさだし、いつも見ている体格だし。ついにこの見えづらい熱視覚が誤作動を起こしたのかっ!? うわああああ、使えねええええ。

 どうしようどうしよう。……あっ、そっくりさんとか! でも声まで同じなんだよね。そこまでそっくりさんって本当にいるんだろうか。

 それに私が知ってるティーおじさんは蔑ろにするような発言をされた間髪入れずにツッコミを入れてくれるようなモンスターだ。私はこんなに素直なモンスターは知らない。

 

『えーっと、あなた、ティーおじさんですよね?』

 

『……サヤはそう呼んでるな』

 

『そっくりさん、とかじゃ?』

 

『俺を忘れたのか』

 

『あー、いや、そういうわけじゃ……』

 

 やりづらい! いつもなら楽しくて気分が上がって「いじり甲斐がありそうだ」っていう会話になるはずなのになぜかやりづらい! そしてなんか重い! 主に空気が!

 私は前世で人に話しかけるのに勇気がいる人種だったんだよ。こんな状況に対応できるほど中身は出来てない。対処法とかまるで知らないんだけど、これって放置しても大丈夫だろうか。

 今すぐ発狂を装って奇声を上げて逃げ出したいけど、そんなことしたら後で本当に発狂したと思われかねないからさすがに他の方法を探すことにする。そもそも私逃げ出せるほど足長くないし速くないし。

 

『随分と静かだが誰も居ないのか?』

 

『救世主!』

 

『どうした、サヤ。ついに脳が逝かれたか』

 

『ちょっとどういう意味だか分かりませんね』

 

 なんか随分と酷い言われ様な気がするけど、この際そんなことはどうでもいい!

 今までの経緯をたった今やって来たばかりのモンスター、ジョーおじさんに説明する。とにかく今は猫の手も借りたい気分なんです。この場合はジョーおじさんの手も借りたい、ですね。大きい。

 

『なるほど、こっちの頭が逝かれたか』

 

『ジョーおじさんってとってもドSですよね』

 

『今頃か』

 

『自覚があるんですか……』

 

 そういうのってモテないと思いますよ、という言葉を飲み込んでそれよりも重症なモンスターに目を向ける。ああ、ティーおじさんは本当に逝ってしまったのでしょうか。再起不能とかだったら私にツッコみ役がまわってしまうから勘弁してほしいのが心情です。

 うーん、ここまでティーおじさんがおかしくなることなんてあるのかな。少なくとも私が見てきた中では一度もないんだけど。前例がないって一番怖いよね。

 とりあえず放心状態にも近いティーおじさんにジョーおじさんが聞き込みに行った。私は動くのが面倒だからその場で何もせずに待ちます。なんかもう疲れたんです。パシリとかじゃないよ?

 しばらくしてからジョーおじさんが戻ってきました。表情が分からないから感情もうまく分からないけど、唸ってるから結構ヤバイことなのかも。

 

『どうでした?』

 

『……好きなやつが出来たそうだ』

 

『……ああ、なんか以前にそんな会話ありましたね』

 

『そういうことに興味はないと思ってたんだがな』

 

『奇遇ですね、私もです』

 

 これは私たちにはどうしようもない問題になってきた。恋愛経験ゼロな私たちに解決しろとか無理な話だ。まだ恋愛経験があるモンスターならいいんだけど……。

 何かいい方法、いい方法。というか周りに恋愛経験を持っているモンスターって……、あ。

 

『ちょっとジョーおじさん、ベリィさんを釣って来てくれませんか?』

 

『あいつは魚か。そして俺は餌か何かか!?』

 

『嫌ですね。連れてきてくださいって意味ですよ』

 

『どちらにせよ俺は犠牲になるだろうが』

 

『ええ、犠牲になってください』

 

 即答してあげたらジョーおじさんが重々しげなため息をついた。ははは、楽しい。

 でも本当に今なんとか出来るモンスターと聞いたらベリィさんぐらいだと思うんだよ。お母さんはバツで、ウルさんもバツとしたら。残ってるのはベリィさんぐらい。

 ベリィさんは子持ちだから恋愛経験あるってことだと思うし。……そういえば、ベリィさんの殿方を見たことな、ってあのモンスター浮気してるってことですか。

 ジョーおじさんは迷ったように辺りをうろついた後、決心したように洞窟から出て行きました。そのまま逃げないことを願いますよ。

 

『ジョウ様ああああ!!』

 

『来るなと言えない自分が辛い!』

 

 約一分後。いつも通りの形で二体が洞窟にやってきました。早っ!

 ジョーおじさんはすかさずティーおじさんを盾にして隠れる。お構いなしにベリィさんはティーおじさんに突っ込む。ティーおじさんが無言で吹き飛び洞窟の壁にぶつかる。洞窟壊しにきたんですかあなた!!

 さすがにティーおじさんを吹っ飛ばしたところでいつもと何かが違うことに気付いたのかベリィさんがジョーおじさんの前でピタリと動きを止めました。

 

『……あら? なんでジョウ様は涙目なのかしら? 可愛いっ』

 

『お前のせいだとそろそろ気付け』

 

『きゃっ、私ったら怒られるなんて! 私のことを想ってくれてるのね!』

 

『なんでそんなにポジティブなんだ……』

 

『ヤダ、褒められたわ! うふふ、ありがとう、ジョウ様っ』

 

『勘弁してくれええええ!!』

 

 ジョーおじさんが可哀想に見える不思議。

 どこかの勘違い主人公みたいだなー。大体そういう小説ってモブから見たものが多いよね。

 とにかくいつもと大して変わらないベリィさんに今までの経緯と、ここまでジョーおじさんに連れてきてもらった理由を簡単に話した。

 良かった、これですべてが終わるよ……。

 

『嫌よ』

 

『ええええ!?』

 

『なんでむさ苦しいヤツ相手に話さなきゃいけないのよ。断固断るわ』

 

『俺の苦労はどこへ……』

 

 ジョーおじさんが遠目になってる気がする。まあその気持ちはすごく分かります。私だったらそのままふらふらどこかへ行っていつの間にか崖に向かってる感じだと思います。

 でもここで引き下がるわけにはいかない。今はベリィさんだけが頼りなんです。いつもよりかは正常になっている気がするから、今がチャンス。

 

『引き受けてくれたらジョーおじさんが良いコトしてくれるそうです』

 

『ほんとっ!? じゃあやるわ!』

 

『俺への了承がないんだが!?』

 

『拒否権が存在しないのに了承を取る必要なんてありません』

 

『ジョウ様! 私頑張るわ!』

 

 すっかり意気込んだベリィさんは早速ティーおじさんと話をしに行きました。なんだか厄介ごと押しつけちゃってすみませんね。

 隣で放心状態にも近いジョーおじさんに私は目を向ける。……やっぱりこの場合って元気づけてあげるべきなんでしょうか? こっちも負けないくらい面倒なんですけど。

 ……まあベリィさんが話をしている間くらいはいいか。

 

 

――――――――――

 

 

 それから大体二時間が経った。

 意外とベリィさんは面倒見がいい性格の様で、しっかりとティーおじさんの話を聞いて時には意見を出しながらも会話を進めて行ったようだ。

 そして二時間後に出したベリィさんの結論は、

 

『あれは放置しておくのが一番ね』

 

 なんとも斬新なものでした。

 

『というわけでジョウ様、今度食事をお願いします!』

 

『あ、ああ。普通の食事なら』

 

『夜のお食事で……』

 

『ふ・つ・う・の、食事ならな』

 

『そうやって押し切るところも素敵!』

 

『いやいやいや、そうじゃないでしょう!?』

 

 二時間も話をしておいて出てきた結論が放置とか一体どういうことですか。そんなに簡単なことなら最初から私だって出来ましたよ。

 私の声にベリィさんは『えー』と不満そうな声を出しながら反論してきた。

 

『ジョウ様は強引なところがいいのよ』

 

『そこをツッコんだじゃないです。どうしてそんな結論に……』

 

『ああ。あれは恋煩いってやつよ。そっとしておいたほうがいいの』

 

『俺はそんなことのためにすごい苦労したのか』

 

『良かったですね、まだ被害が小さい方で』

 

『そもそもお前が提案しなければ被害なんてなかったんだがな』

 

 ジョーおじさんの最もな意見をスルー。これ以上言い争いをするのは無駄です。私の体力が減るだけですし。

 とにかく今はティーおじさんも動きそうにないから、しばらくは泊める、って形になるのかな。それはそれでまた面倒だけど……仕方ないか。

 ベリィさんが要望した食事はこれからするらしく、二体は洞窟から出て行きました。あれ、今回のご褒美ってベリィさんが要望するものだったかな。あくまで“良いコト”としか私は言ってないんだけど。

 まあ向こうがいいならいいんです、私は。口出しをする気なんてさらさらないです。

 

『ティーおじさん、食事は出来そうですか?』

 

『……三日食べてない』

 

『もうそのまま餓死しそうですね……』

 

 これはお母さんの毒で永遠に眠らせてあげた方が幸せなんじゃないだろうかと一瞬思ってしまった私です。恋煩いとかしたことないですけど、かなり厄介なんですね。私はしたくないな。

 とりあえずお母さんが帰ってきたらティーおじさんに分けてもらおうと考える私なのでした。

 

 

 ちなみに、お母さんが外で食べてきてしまったのでもう一回行ってもらったのは別の話です。




次は二話連続で別視点の予定です。
また本来のにはない話なのでグダったらすみません。
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