またまた間が空いてしまい申し訳ありません。
今回は予告していた別視点です。
本当は二つに分けようかと思いましたが短かったので合体しました。
では、スタートです。
……空が、綺麗だ。なんとなく洞窟の外の方に顔を向けて見えた空に柄でもないことを想ってみた。今日は雲一つない晴天のようだ。人間の言う“センタクモノ”がよく乾く日らしい。サヤが言ってた。
きっとサヤの前で空が綺麗だ、なんて言った暁には三時間の愚痴フルコースをお見舞いされるんだろうな、とため息を吐きながら俺は空を飛ぶために畳んでいた翼を広げた。
笑われるかもしれないが、俺は今、恋をしていた。
惚れた相手はティガレックス亜種。火山に住んでいるとっても逞しい雌だ。
俺が出会った場所は無論火山。ちょいと遠出を、と思って適当に飛んでたら火山まで飛んできてしまった時に偶然見かけ、一目惚れしてしまった。……そもそも、ここから火山は相当遠いんだけどな? なんであんなに飛んでたんだろうと今更疑問に思う。
初めて会った彼女は、ちょうどハンターと乱戦中だった。
最初は「あ、襲われてるなー。大丈夫かなー」程度だった。そう、最初は。でもそんな考えは時間の経過とともに吹き飛ばされてしまった。
理由は簡単。彼女が何年生きてきたかは分からないが、強かったのだ。雌であるにもかかわらず怖気ず果敢にハンターに向かっていく姿はとてもかっこよかった。
『すっげえ……!』
いつしかその乱闘ぶりを見るのが楽しくなって、ただ遠目でそれを眺めていた。
彼女の攻撃は無駄がなかった。どの向きにどの攻撃を繰り出せば一番効率よく
あんな戦い方をするのはジョウぐらいだろうと思っていた俺にとって、初めて雌でその戦法を使う彼女は新鮮に映ったのだ。
ちなみに俺は速攻戦法、ジョウは長期戦戦法、ウルは翻弄戦法、ベリィは甚振り戦法、ギギィは特に考えずに適当に攻撃を放つという感じだ。ギギィのは考えてないからこそそれはそれで性質が悪いと思う。
『おお、おお。倒れる、倒れる』
次々にバッタバッタと敵を倒していく彼女は、サヤが以前に何かの時に言っていた“ヒーロー”というものを彷彿とさせる。サヤ曰く、それは変身することで力を得る正義の味方で子供から絶大な人気を持っているのだとか。
俺は別に子供、というわけではない。よくジョウにガキと馬鹿にされるが、体格的に見たらもう大人だ。ハンターとの交戦歴もなかなかのほうだと思ってるし、その中で敵の武器の種類によっての攻撃方法も大体理解出来たつもりである。
それは彼女も同様なのか、尖った細長い棒とか棒の先端がでかいやつだとかそういう近距離で使うような武器を使う者には遠距離、棒を飛ばしてくるような武器とかには近距離で対応している。
どうやら彼女も相当な数の修羅場をくぐってきているようだ。
――俺、将来つえーヤツと結婚するんだー!――
――そうか、お前なんかと結婚してくれる優しい奴が現れるといいな――
――どーいう意味だよ、ジョウ――
昔、ジョウ相手に結婚するならどんなモンスターがいいかとくだらない話をしていたときのことを思い出した。
あの時は俺もジョウも子供で特に考えずに話していた。そういえば昔からジョウには貶されていた気がする。急に悲しくなった。
でもその昔の言葉がまるで具現化したかのように、目の前にとても強い奴がいた。俺はジョウみたいな知性派と戦うと弱いから、たぶん向こうの方が強い。
この気持ちはワクワクなんかじゃなく、ドキドキだ。恋なんてしたことがないから分からないけど、きっとこの気持ちは恋と言うものなんだと思う。
なんと煩わしいものであろうか。片時も彼女のことが頭が離れないのだ。これはもう、重傷としか言いようがない。きっと今ハンターが俺を討伐しに来たら俺はそのままなす術なく討伐されてしまうのだろう。
大人しく凍土に帰っても頭の中にあるのは彼女の姿。振り払おうとすればするほどその考えはむくむくと成長してしまうというとても厄介なことになっていた。
なるほど、これが恋煩いと言うものなのか。
『ティガー? 狩ってきたけど食べる?』
『……いや、いらないや』
『じゃあ私にください!』
『駄目ー。お母さんが全部食べるんだもん!』
『ずーるーいー!!』
この親子は今日も騒がしい。いつものことではあるけど、ここ最近やけに煩いと感じるのは俺が騒いでいないからなのだろうか。自分で改めて冷静に周りを見ると、案外分かることは多い。
……子供、子供かあ。うーん、そう言えばそんなことは考えたことがなかったような気がする。前の俺がそういうことに興味がなかったというのは確かではあるのだが。
『……なあ、子供っていいものか?』
『もうツッコむ気力すらないんですが、ティーおじさん』
『いいものだよー! 生きる気力が湧いてくるんだ! あと三千年は生きられるよ!』
『さすがに迷惑なんで寿命で死んでください』
『むー!? サヤひどーい! それがお母さんに対する口のきき方ー!?』
『フレンドリーと捉えてくださいよ』
『……む! そうか、そういうことか! サヤ大好き!』
『えへへー。……単純』
最後のサヤの独り言は聞こえないことにした。いや、聞こえていない。
なんだか二人の会話がよく分からなくなってきた。どうせ二人はもう俺のことは気にしていないだろうから火山にでも出かけるとしよう。最近はサヤに『食べないなら洞窟外出禁止!』と言われていたからろくに日の光を拝んでいない。俺を引き籠りにする気か。
今ならギギィとの会話でサヤも俺に対する警戒が減ってるだろうし、出かけるなら……。
『あ! ティーおじさんストップ! 外出禁止!』
作戦失敗。
どうやらサヤを甘く見てしまっていたようだ。
―――――――――――
ぐるる、と大きな音が鳴る。発生源は僕のお腹。うぅぅ、恥ずかしすぎるよ……。
『あー、甘いもの食べたあい!』
僕がそう叫んでも周りにはそう聞こえないらしい。特に目の前にいる武装したヘンテコ二人組は驚きふためく。というか、その武装はあれかな、ハロウィンか何かかな? カレンダーないから分からないけど、多分ハロウィンは過ぎたと思うよ。イタイから止めたほうが良いよ、そこのおっさんとか。
それにしても、甘いもの、ないかなあ。あんまり好き好んで食べてたわけじゃないけど、こうやって長期間食べてないと恋しくなっちゃうんだよね。
疲れたときは甘いものが一番! 女友達から口煩く言われてたけど、今なら断言できる。まさにその通り。
「くっ、バインドボイスはいつ聞いてもつれぇ……」
「問題ねえ! さっさと片付けんぞ!」
『あのさあ、煩いよ。僕はこれでも一応女子大生なんだよ?』
「さっきから何吠えてんだこいつ?」
「んなこたどうでもいい! こいつにハンターランクがかかってんだからよお!」
『……なんで向こうのは分かるのにこっちは分からないの? いじめ?』
こればっかりだ。本当に嫌になる。
あー、どうしてこんなとこに来ちゃったんだろう。もう五年はずっとここにいる気がするから帰れる見込みはないんだろうな。僕、悪いことしてないのに。
とりあえず鋭利そうな刃物を刺されたり、刺さったら痛そうな矢を射られる前に自分のものとは思えない大きなゴツめの腕で二人組を薙ぎ払う。すっごい痛そうに顔を歪めてる。うん、これで痛くないって言ったら僕が怖いよ。
というかなんで僕の周りには話が通じない人間しか来ないかなあ。僕の言葉もちゃんと伝わってないみたいだし。もうこうなればモンスターとかでもいいよ。誰か僕の話し相手になって。寂しい。
『食らえ! えーっと、バインドなんとか!』
「ぐぅっ、また、バインドボイス、かよ……!?」
『あ、それだ。おっさんナイス』
「でもよ、こいつ止めんの早くねえか?」
『ならこの増大した肺活量マックスで使ってあげるよ』
「うわああああ! またかよ!」
まあこうやってコスプレ集団を相手にしててもいいんだけど。リアクションが大きすぎて八つ当たりにはちょうどいいんだよね。
まず、やっぱり弓の奴から潰そう。巨大な体全身をバネのように使って大きく跳躍。そのまま弓のやつに向かってダイブ! む、避けられたか。じゃああれだ、大型トラックのように轢いてやろう。僕に攻撃してきたんだから、これくらいのことで反論は認めないよ。
散々弓のやつを蹂躙してから、えーっとあれは……太刀か。太刀の奴にターゲット変更。態と距離を取ってから地形が変わるくらい地面を抉って巨大な岩を作りだし投げつける。あ、当たった。痛そー。
『戦闘終了! ストレス発散最高ー!』
こうやってほぼ毎日、とは言わないけどちょっとした周期でストレス発散してるんだよね。しかも
しかも終わった後に可愛い猫が拝めるんだよねー。はあ、癒される。前よりすごい小さく見えるけど、それは気のせい……じゃないんだよね、これがまた。現実逃避したいけど、ああやってコスプレ集団と互角までに戦えてるのはこれが原因だよね、絶対。
今の僕は人じゃない。前に今僕がいる場所、火山の麓にあった水を覗き込んだら全く別の姿だったから分かる。あの時は失神しかけたなー。
僕の姿は所謂モンスターだ。そりゃあ人間も倒しに来るよねって思わず納得しそうなくらい厳つい。
でも、この姿、どこかで見たことある気がするんだよね……。男友達が持ってた、も、もんすたーはんと? もんすたーなんとか、にいた気がするんだよね。バインドなんとかって言ってたし。
『……あー、お腹減った。食事しに行こう、食事』
さっきお腹が鳴ってたの、すっかり忘れちゃってたよ。……思い出したら恥ずかしくなってきた。
不意に何か物音がした気がして、僕は辺りを見回す。もちろんそこに何かがあった、ということではなく、僕の聞き間違いだったわけだけど。
『もう、来ないのかな、あれ』
少し前に大きなモンスターに出会ったことがある。いや、出会ったっていう言い方には少し語弊があるんだけどね。正確に言えば向こうは上空からこっちを見てた。
私と同じ形の色違いだった。空中で一所に飛び続けていられるなんて相当飛んでるよ、あのモンスター。
それからしばらくはこっちを窺うように時々遠くから見てたみたい。隠れてるつもりだろうけどかくれんぼ上級者の僕にはバレバレだ。……よくよく考えたら大学生にもなってかくれんぼ上級者とか恥ずかしいね。
『かっこいいんだけどなー』
あんな風に優雅に空を飛べたらな。僕は未だに落下するのが怖くて伸び伸びと飛行することが出来ないんだよね。昔空を飛ぼうとか思った人たちって相当勇気あると思うよ。
でもここから食事するためには空を飛ばないとなー。今僕がいるのは火山の頂上に近い当たりで、食事ができるのは麓にある森林だし。さすがに徒歩での下山はこの巨体だと辛い。戦闘後って言うのもあるんだけど。
『いちいち言ってられないか。……飛ぼ』
畳んでいた翼をぴんと広げて足に力を入れれば準備完了。仕上げに大きく跳躍して翼で風の流れを調節。うーん、何度やっても跳ぶ瞬間は怖いね。そのまま墜ちちゃいそうだ。
墜ちないように気を遣いながらも目指すは麓の森林。んー、草食竜いるといいな。コスプレ集団が来ると無差別に狩っていくのがいるから困るんだよね。生態系崩すな、僕の食べ物奪うな! 僕の中で食事は戦闘の次に良い娯楽になってるのに。
それにしてもこの姿になってから生肉しか食べれないのは少し辛いんだよね。一回マグマで焼いたら焼肉が出来るかもって思ったら消し炭になったし。無駄にしてごめんなさい。
『……やっぱり、いないなあ』
今度、遠出でもしてみようかなあ。もしかしたら会えるかもしれないし。
……あれ? なんで僕はあんなにあのモンスターのこと気になってるんだろ?
恋愛、はさすがにないよね。だって僕、人間だったころ年齢=彼氏いない歴だったもん。あれは悲しい思い出だよねえ……。やっぱり話し相手がいなくて参ってるのかもしれない。
僕はふっと軽くため息を吐いて、ちょうど真下にいた草食竜の上に着地をするのだった。
?のモンスターは一応雌です。僕っ娘。
そういえば一度これを投稿した時に不具合が出たので削除させてもらいました。
また不具合が出ないといいのですが……。