何故か毒怪竜になった件について   作:キョロ

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さて、メイン小説がシリアス入って筆が進みづらくなったのでこっちを先に更新です。
コメディは楽しいよね。シリアスって難しいと改めて思います。

今回は前の話の?さん登場回です。
では、スタートです。


16、初のお仲間さんはユニークな件について

『……ど、ども』

 

『なっ、なっ? 可愛いだろ?』

 

『いや、私は熱視覚なんですが……』

 

 ある白い動物の言葉を借りるとしたら今の状況、正しく「訳が分からないよ」です。

 ティーおじさんを見張っていたはずなのにいつの間にか逃げられてしまったサヤです。どこにいったんだろうと思ったら違うモンスターを連れてきて今の状況に至ってます。

 多分、このモンスターがティーおじさんの惚れた相手なんだろうな、と言うのは分かるんだけど……。というかこの二体、ちゃんと話したのは初めてらしい。軽い拉致にしか見えない。

 

『ここ、随分寒いんだね? 僕、火山から出たの初めてだよ』

 

『煩い奴らもいるけどいいところだぜ!』

 

『ちょ、火山から来たのに大丈夫なんですか?』

 

『うん。寒いなー、くらいだから』

 

『へー』

 

 さっきから『僕』と使っているこのモンスター――熱視覚の私には分からないけど、ティガレックス亜種らしい――は雌なんだって。なかなか僕って使う女子、現実にはいないよね。俺、って使う子は見たことあるんだけど。……それもそれでどうなんだ。

 それにしても丁寧なモンスターだ。ここのモンスターたちは規格外だったりおかしかったりするだけにこういう常識を持ったモンスターを見ると感動して泣きたくなるよ。

 

『あ、そういえばそこの小っちゃい白の君はなんて名前なの?』

 

『……あ、私のことですか。私、サヤって言います! あなたは?』

 

『僕の名前は西郷(さいきょう) 美紀(みき)っていうんだ』

 

『……え?』

 

『まるでサヤと同じような名前だな、ミキって』

 

『え? サヤちゃんと?』

 

 きょとん、という効果音つきそうなようなリアクションでミキさんが私を見てきた。いや、私もきょとんとしたいところなんですけど。

 名前から見るに、もしかして、もしかしてミキさんって……。そこまで考えたところでミキさんは私を咥え、そのまま洞窟の外へと向かっていきました。……え?

 

『ちょ、え、ミキさああああ!?』

 

ほへ(ごめ)ん』

 

『何を言ってるんですか!』

 

 ああ、ティーおじさんの気持ちが分かったような気がするよ……。

 とにかく何故か私は今、ミキさんに拉致されているようです。これは冒頭で言っていたあの言葉をもう一度使いたいね。でもさすがに連呼するのもどうかと思うから止めとこう。

 

『えーと……、どちらに向かってるんですか?』

 

『どこか? ……あ』

 

『なんでいきなり放したんですかああああ!?』

 

 まさかの真っ逆さま。これ、ひょっとして私の死亡フラグ建ってます? ひょっとしなくても建ってる感じなの? えー、まだ生きたかったなあ。

 この地に生を受けて早数か月。……うん、数か月であってるはず。って、一年も経ってないのか。私の人生短いな! 前世も高校生しか生きてないって言うのに、その半分もいってないなんて。

 

『うふふ……、短い人生だったなあ……。ごぼっ!?』

 

 きっと固いとこに頭ぶつけるんだろうなー、痛いんだろうなーと思っていたら全く違う衝撃が私の身体にきた。え、え? 今度は一体何が起こったわけ?

 呼吸しようと口を開いたら口の中に一気に水が入ってきた。あ、水の中に落ちたのか。身体が流される感じがないからどこかの池かな。……まさかここ、あの泉じゃないよね?

 と、とにかく沈んだら死んじゃうからなんとか泳がないと。頑張って手をばたつかせてみてもなかなか身体が浮上しない。うわああああ、浮かばない。この前のリオってこんな気分だったのかな、ごめんよ!

 

『サヤちゃん!』

 

 ドッボーン!! と大きな音と共に何かが水に入ってきた。え、まさかミキさん飛び込んだ? あの泉ってそんな巨体が入るほど大きかったっけ……。私は熱視覚で見てたから正確な大きさまでは分からないんだけど。そもそもここがあの泉って証拠がどこにもないんだけど。

 ミキさんに体を掴まれた途端、私は安心感からか意識が薄らいでいきました。目が覚めたら天国、とかそんなオチじゃないといいな……。

 

 

――――――――――

 

 

 いたた……。全身がすごく痛い。でも痛覚があるってことは生きてるってことだよね。確認の仕方がちょっとおかしいけど、とりあえず生きてたからよしってことで。

 身体に違和感があるなー、とぼんやり思いながら頭を摩って、自分の身体がいつもと違うことに気付きました。……ああ、やっぱり落ちたのは例の泉だったようです。幼児体型に大変身してるよ。

 この格好、嫌なんだけどなー。なんかうまく動きづらいっているか、なんというか。

 

『うー、何? 何が起こったのさ……』

 

『ミキさん、大丈夫ですか?』

 

『僕は大丈夫。サヤちゃんは、って何これ』

 

 どうやらミキさんの身体も人間に変わっていたようで唖然とするミキさんの声が聞こえた。うん、最初は驚くよね。私も最初に人間の姿になったときは驚いたよ。

 そういえば私は初めてのとき立てなかったなー、とか思ったらミキさんは普通に立ってました。なんと。私とリオが貧弱すぎただけなのかな、あれは。

 

『……すごい、五年ぶりに人になってる』

 

『五年? ミキさんは五年前から火山にいるんですか』

 

『うん。……最後に着てた水着のままって嫌だなあ』

 

 ちょ、最後の服は水着だったんですか。いったいどうしてそうなったんだ。もしや、溺死? うわー、一番考えたくない死に方だー。

 どうやらミキさんは私やリオと違って西郷 美紀の最後の姿をしている様子。うーん、じゃあなんで私も最後の服装にならなかったんだろう? まあ本当に最後の服、って言うものだと私の場合は紺のブレザーとスカートに血が飛び散ってるわけですが。うん、まだこの姿のほうがマシ。

 でもそんな姿が出来る時期なんて限られてるよね。夏、ってことだけど。まあ決めつけるのもよくないしここはミキさんに聞くのが一番だよね。と言うわけで聞いてみた。

 

『僕、友達と海水浴に行ってたんだよね』

 

『はい』

 

『ちょっと沖のほうに友達と行ってみたら海に引きずりこまれちゃって』

 

『……はい』

 

『気がついたらモンスターになってた』

 

『ちなみに、卵からですか?』

 

『いや? 最初からモンスターだったよ』

 

 ミキさん……。多分、私の考えが正しければそれって憑依ですよ。輪廻の次は憑依とか、この世界はいったいどうなってるんだろうね! 神様がもしいるとしたら蹴り飛ばしてやりたいよ。

 『久々にこの姿になれたなあ』と感動しているミキさん。どうでもいいかもしれないけど、寒くないんでしょうか。この雪が年中降ってる場所で水着って無謀だよ。

 

『あっ、僕の姿が変わってく』

 

『え?』

 

 腰まである黒髪はティガレックス亜種の鱗と同じ黄土色へ。黒の丸い瞳は相手を怯ませる黄色の吊り目へ。服はフリルがふんだんにあしらわれた服の色と同じ黄土色のワンピースへと。私には色が見えないので本人談ですが。

 なんて、言ったらいいんだろうな。斬新、というか新しいというか。

 

『……なんで煤けた色が中心なの?』

 

『それを言ったらおしまいですよ』

 

 言っちゃった。ミキさん本人が言っちゃった。折角オブラートな言葉で包もうと思ってたのに。

 ミキさんが憑依したのがティガレックス亜種というのが影響しているのか、ミキさんの擬人化の中心的な色は黄土色だった。灰色の私が言うのもなんだけど、女子にそういう色を使うのはひどいよね。どこまでもこの世界は理不尽だよ。

 

『これなら、まだ水着のほうがよかったかな……』

 

『どっちもどっちだと思うんですが』

 

『そうかな? 水着でも寒くなかったし、それなら僕は前のほうが』

 

『人間に発見されたときのことを考えてくださいよ』

 

 凍土に水着の女性がいる。どう見ても自殺志願者だよ。いや、そもそも水着姿だったらこんな凍土の奥までたどり着けるはずがないんだけどね。

 どうやらミキさんも少しズレた考えの持ち主みたいです。“ジョウ様親衛隊”と本人の許可なしに設立したあのモンスターたちよりはいいんだけど。ズレていることに変わりはないね。

 

『半日で泉の効果は切れますからそれまで待ちましょう』

 

『え? この姿で帰らないの?』

 

『私は方向音痴ですし、ミキさんは道が分からないでしょう?』

 

『……そうだね、飛んでいったほうが早いし危なくないね』

 

 ミキさんの許可も取れたし、しばらくここでのんびりしようかな。

 ぽふりと音を立てて地面に腰を下ろしぼーっとする。私の今の得意技ってぼんやりすることだと思うんだよ。お母さんには負けるけど、いつか勝ってみせる。……何故だろう、虚しさが……。

 

『サヤちゃんはこっちに来てからどれくらい?』

 

『一年は経ってないですね。正確な日付は分かりませんが』

 

『ふーん。どうしてこっちに来ちゃったの?』

 

『トラックに撥ねられました。多分輪廻でこっちに来たんだと』

 

『……酷い死に方だね』

 

 ミキさんが哀れんでくれました。声にもすごい可哀想感が溢れてた。ミキさんがいないとこういう会話できなかったかもしれないけど、哀れまれるのはちょっと……。

 あれは私の不注意でもあるんだよね。きっと、周りの状況がちゃんと把握できていれば赤信号で走ってきたトラックも見えてたはずだし。なんでもかんでも他人のせいにするのはよくないよね。まあ死ぬ直後の記憶があるからこそできる話だけども。

 

『そういえば、僕の場合って憑依って言うのかな?』

 

『私はそう思ってます』

 

『じゃあ僕の人間の肉体はどうなっちゃったんだろうね』

 

『どうなったって、友達が介抱してるか植物状態……、あ』

 

『僕の人間の肉体、死んでない、よね?』

 

 忘れてた。ミキさんは海水浴の最中に海の中に引き込まれるような感じでこっちに来たんだ。憑依ってことはつまり精神だけこっちに来ちゃってるってことだから、肉体は向こうに置いてきたまま。ミキさんの最後の記憶だと、肉体は海の中……。

 

『誰かが、救助してるといいですね』

 

『まあ僕は今のところこっちが居心地いいから向こうはどうなってもいいんだけど』

 

『ええ!?』

 

『僕、女子大生だったんだけど将来のこととか考えてなかったしね』

 

『ええー……』

 

 こっちのほうが楽だって言うのか。私にとってこっちは毎日がいつ死ぬか分からない世界なんですけど。ミキさんは戦えるからいいかもしれないけど、私はまだハンターに二、三撃やられたら死んじゃうギギネブラ幼体、ギィギなんだよ。

 大人になっても戦いたくないって言うのが本音なんだけど。できればのほほんと暮らしていたい女子高生だよ、私は。

 

『結構人間相手に戦うとストレス発散になるんだよねー』

 

『命の取り合いがストレス発散に変換された……』

 

『命なんて取らないよ! 僕は人殺しの称号なんて欲しくないからね』

 

『向こうはミキさんを殺しにかかってるんですよ?』

 

『そんなの知ったこっちゃないって。撃退すればそれはストレス発散だよ』

 

 あっはっは! と豪快に笑うミキさんはとっても清清しい。もしかしたらティーおじさんと案外お似合いのカップルになるかもしれない。ティーおじさん、いいモンスターを見つけたようです。

 ……私って、結婚するんだろうか? いや、でも、ギギネブラって性別あるの? ……まさか、雌雄がない、なんてことはないよね? うん、ないはず。そう信じよう。

 

『もう日が暮れそうだ。早いなあ』

 

『本当ですね。まだ身体は戻りそうにないですが』

 

『いっそのこと野宿しちゃう? 起きたら戻ってたってオチで』

 

『私は主食が血なので構いませんけど、ミキさんはどうするんですか』

 

『……』

 

『ミキさん?』

 

『……どうしよっか?』

 

 えへへ、と苦笑いするミキさんに対して私は呆れのため息しか出ませんでした。

 やっぱりミキさんはティーおじさんとお似合いのカップルになりそうだ。




恐らく次の更新は二十五日になると思います。
正月の分もあるし、普通の更新はひょっとしたら今年で最後かな。
多分季節行事企画が連続になりますね。


〇ティガレックス亜種
サヤと同じく前世が人間だった。ミキ、ミキさんと呼ばれる。
ティガから恋されており、ミキ自身も少し気になっているようだ。
雌であるが自らのことを僕と言っている。
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