はい、というわけで時間が出来たので投稿ですよ!
次がいつになるかははたしてわかりませんが……。
後の事は置いておいて。
では、スタートです。
えー、どうも、人間改めギィギです。あの日から一週間経ってます。
……いやー、慣れませんよね! 正直。私も慣れてません。というかきついです。逃げたい。
だって私は前まで人間だったのですから!
勝手が違うと色々と不便すぎます。
まず、ギギネブラ種は暗いところを好んでいるから当たり前だけど目が退化してます。私が最初に目を開けられなかったのはそのせいです。
外行けよ、外。この引き籠りが。ゲーム好きの私も人(モンスター?)のこと言えなかったけどね!
その代わりギギネブラ種は周りの把握のために温度を使います。つまりでいうサーモグラフィーです。
現在、これに慣れようと必死になっている最中です。
でもそれで周りを確かめようとするとくらくらしてくるんだよね、頭が。なんかもう容量いっぱいになっちゃって……。視覚が変わるってかなり辛い。
『さて、母はどこにいるでしょう』
家である洞窟の中にて。
日の光が届かないっていいなあ、と最近思い始めている自分が嫌です。
ぼんやりしている私の近くから聞こえてくるお母さんの声。ぼんやりしたまま辺りを見回して、私は答えました。
『私の真上です』
『あれ、分かった?』
『お母さんは異様に温度が高いですから』
実はこうした会話はほとんど毎日しています。私の熱視覚の特訓です。
ここ数日でお母さんがどこにいるかを知るのは簡単になりました。だって、周りよりもずっと温度が高いんだもの。
見なくても感じ取れます。他の生物もそうなんだろうか。
お母さんはイレギュラーな私を何かと気にかけてくれます。
てっきり私は自立してほしいがためにティガレックスとかの前に放り出されるかと思ったんだけど……。
そんなことがなくて心底ほっとしています。
なんでそんなふうに思ったかって? 虎が我が子を崖に突き落とすみたいなことを前に聞いたことがあったもので……。
『では問題です。母が仕留めてきたポポの死骸はどこにあるでしょう』
『死骸!? 死んでから大分経ってたら温度同じになっちゃってるよ!?』
『時間切れ。正解は母の胃の中でしたー』
おい。それじゃあ問題のしようがないじゃないか。
答えが異常すぎて周りがちゃんと見えてもどうしようもない。
お母さんは案外お茶目です。
普通のギギネブラは獲物を氷漬けにしてシャーベット感覚で食事をするらしいけど、お母さんは大抵その場でか、あるいはここに持ち帰って食事をしています。なんだかこの人もイレギュラーな気が……。
あ、人じゃないね。モンスターだね。
そして私の食事は血です。血液です。
ゲームであるハンターへの飛びつき行為=食事万歳ってこと。
でも私はハンターに飛びつく勇気はありません。
そもそもハンターを見つけた瞬間=私の人生終了のお知らせです。それなのにハンターに飛びつくとか自分で死にに向かってるようなものです。兄妹はそのせいで既に五匹死んでます。
だから、私の食事方法は特別なのです!
『……お腹空いた』
『え、早っ。手がかかるなあ、私の愛しい子供は』
そう言いながらお母さんは天井から降りてきた。その際に私は風圧で何メートルか飛ばされたけども。もうちょっと周りに気を遣ってくれませんかね?
すぐに這いずり回るように動いてお母さんのもとに移動。そのままバクッとお母さんの足元に齧り付きました。
そう、これが私の食事法。
定期的に食事がきちんとできるうえにリスクなど全くない。なんていい方法! イレギュラー万歳!
そんなお母さんのおかげで私もここ数日でだいぶ太ってきました。
通常、未熟な体で生まれてくるギィギは最初はウザさ満開の毒液は吐かない。未熟だから。
血を吸って丸々太ったあの姿の者のみ毒を吐くことができる。
……と、前にどこかで聞いた。あるいは見た。どこだっけ。
今では毒も吐けるようになりましたよ、私。
ただ私の姿があれだとしたら、居た堪れない……!
い、いや想像するのは止めろ!! 前世ではお洒落は気にしないけど体型だけは気にしていたのに……。
と・い・う・か!!
せめて生まれ変わるのなら目が欲しかった! 周りの大自然を目に焼き付けたかったんだよ……。
なのに、なんでよりにもよって……!
うわあああん、一応頑張って生きてたぞ私はー! 前世で何にも悪いことしてないぞー!
くっ、こんな身体でも頑張るしかないというのか……。
お母さんの特訓の成果のおかげか、周りの物が本当にサーモグラフィーのように見ることができるようになったものの、まだ距離感覚がうまくつかめない。
お母さんがちょっと離れてるー、と思ったら10メートルくらい離れてたり。
壁がもう少し先にあるなー、と思った瞬間壁に激突したり。
……失敗から学べることだってあるさ! そう信じようじゃないか!
『よし、じゃあ散歩行こうか』
『はーい』
お母さんの体をよじ登り、私は改めて背中に齧り付きました。
お母さんは私がくっついたことを痛覚で感じたのか、そのまま洞窟から出て跳躍しました。うっ、光が眩しい!
こっちに来てからの日課はお母さんの背中にくっついて外出することです。
今の状態で私が一人で歩いたら絶対遭難するかモンスターに襲われるか溝に落ちるとかハンターに剥ぎ取られるとかとんでもないことになる気がするんで。……デンジャラスなことしか思いつかないのは前世のネガティブを引っ張ってるな。
空からの景色はまた圧巻だよ! もちろん温度でしか見れないけどね。
その代わり脳内での熱視覚の処理が大変ったらない。だってすぐに景色が動いちゃうんだもの。
あ、実をいうとこっそり血も貰ってます。栄養補給って大事だよね。
『お、今日は月が綺麗だよ』
『うん、綺麗ー』
たぶんだけどね! 熱があまり空と違わないから探すのだけで精いっぱいだけどたぶんきれいなんだと思う。
私が見たことがあるのはゲームディスプレイでの月だけなんだけど。
それにしてもお母さんは人生の先輩なだけはある。
私がいまだに見分けが難しい月とか、お母さんが仕留めてきた獲物の死骸とか、私にはまだ見分けられない。
前にいつの間にか死骸の上に立っていて絶叫した覚えがある。
あれはマジでホラーだった。そんなところに置くなよ! ってツッコんだら『それはティガレックスさんのお昼の残りだね』って当たり前のように言ってた。え、友達? 私の記憶違いじゃなかったら大型モンスターだよね? 友達になれるの?
『よし、歩いて帰ろう!』
『はあ?!』
いったい突然何を言い出すのだ、この母は。
殺す気か馬鹿野郎と思わずそう毒づいたのは仕方ないと思ってくれ。
地面に降り立ったお母さんは私を振り払ってから歩き出す。ふっ、振り払うなあああああ!! 下手したら雪に埋もれて動けなくなるかもしれないんだぞー!
……おいおい、足の長さとか歩き方が違うからもうかなり距離離れたぞ。しかもあの人気づいてねえ!?
ちょ、置いてかれる! 待って!一人にしないでえええええ!!
ずるずると引き摺るようにして私はお母さんの消えていった方向に進む。
全然距離が伸びない不便な体に、早く成体になりたいとわりと切実に思った。
ギギネブラ、可愛いですよね。同様にギィギも。
フルフルも好きでした! 狩れませんでしたけど!
一話目のヘタレ歴。あれは私の実話です。
本気で狩れなかったから泣きました。