何故か毒怪竜になった件について   作:キョロ

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

と言うわけで投稿です。
またしても、と言いますか一万字ちょい越えです。
用事がある方は先にそちらを片付けることをお勧めいたします。

では、スタートです。


季節行事企画番外編 「ハッピーニューイヤー!」

『あけおめー!』

 

『今年もよろしくお願いします』

 

 一年が終わって、次が始まる乗って早いように感じるね。去年を振り返ってしんみりなサヤです。

 まあ一口に一年って言っても私はまだこっちの世界に着てから数ヶ月しか経ってないので正確な一年じゃないです。とりあえずこっちの世界と私が元いた世界の時間は連動しているのか、数えたら大体一緒くらいでした。もといた世界ももうお正月のはずです。

 ……そういえばここって、お節とか食べれないね。私、あの卵と海老が好きなんですよ。あとその後に食べれるお雑煮。お餅に汁が沁みてて美味しいんだよねー。

 それなのにここじゃ食べれないなんて。なんだか人生損してる気分だよ。

 

『さて、“オセチ”とやらを用意しないと』

 

『えっ、お節あるんですか!?』

 

『サヤがジョウに入れ知恵したんでしょ? 食べたいって言ってた』

 

『……なるほど、ウルさんとベリィさんがそれに飛びついたわけですね』

 

『おかげで巻き込まれちゃったよー』

 

 確かに去年の暮れにそんな話をジョーおじさんにした気がする。さっき呟いてた愚痴を言ってジョーおじさんに『俺も食べてみたいな』と言われた気がする。うん、確かにそんなことあったね。

 でもお母さんの言葉を聞いた感じだとお節を知らないみたい。いきなりグダグダになるのが目に見えてるね。これってどうすればいいんだろう。

 

『サヤがオセチについて詳しいって聞いたんだけど』

 

『はい、詳しくはないけど中身は分かりますよ』

 

『何を持っていけばいいか教えてくれない?』

 

『……料理を?』

 

『ううん。料理できないから素材だけ持ってく』

 

 このモンスター雑だな!

 でもよくよく考えたらモンスターが料理する必要ないね。基本生でお魚とかお肉食べてるね。人間にはちょっと無理な部分もあるんですよ……。

 ……うーん、教えていいのかな。祝い肴三種、煮しめ、酢の物、焼き物。これがお節の基本構成なんだけど……。とりあえず言ってみた。

 

『お魚三種類と煮? と酢? とお肉? なんかよく分かんないね』

 

 私はあなたの頭がよく分かりません。

 うわああああ、言ったって無駄だってことはよく分かってたけどまさかこれほどまでとは。いや、これってよくよく考えたら一番頭がよさそうなジョーおじさんに言っても分かってもらえないんじゃない?

 ……一番安直な方法は、中止、だよね。

 

『お母さん、先にジョーおじさんのところに行って中止と言ってもらえませんか?』

 

『え? どうして?』

 

『私には悲惨な光景が見えるんです。それを現実で起こしたら大変ですから』

 

『なんかよく分かんないけど分かったー』

 

 果てしなく不安である。大丈夫かな、お母さん。

 洞窟から出て行くお母さんの後ろ姿を眺めながら、とりあえず出かける準備をするために私は洞窟の奥へと入っていきました。何を持って行こうかな。

 

 

――――――――――

 

 

 場所は変わって現在、森の奥にある泉。はい、例の擬人化することができる泉です。

 この泉に私が知り合ってすべてのモンスターが集まっていた。つまり、私を拉致したメラルーさんも入ってる。私が食べれそうなものはメラルーさんしか持ってないだろうなって思ってたから助かった。

 前世人間である私とミキさんは本当だったら擬人化したかったけど、泉の効能を知らないモンスターもいるし混乱させるのもどうかと思うのでさすがに今回は自重。なかなかミキさんと一緒になって擬人化できるチャンスがないから残念だ。

 そして私、今結構普通に状況の説明をしているけど、実は既に酔ってる。例のお酒です。懐かしい。

 

『あ、あれ? サヤちゃんって未成年って言ってなかったっけ……』

 

『いいじゃないですかー、こういう機会ですしー』

 

『……いいのかなあ?』

 

『ミキさんも飲みますー?』

 

『あ、いや、僕は遠慮しとくよ』

 

 ミキさんは成人してるはずなのに何故か断られた。やっぱりあれかな、“血の”お酒っていうところが駄目なのかな。正月早々にそんなもの飲んでる私もどうかと思いますけどね。まあ特に言及はしません。私の主食が血であるということは揺るがない事実です。

 ミキさんはしばらく私から離れていたけど、少し経ったころにお肉を持ってリオと一緒にまたこっちへと来ました。あ、リオもやっぱりいたんだね。ここに来てからはまだ見てなかった。だって小さいから見にくい。

 

『よお、サヤ。今年もよろしく……ってなんだ、そのグロテスクな飲み物』

 

『血のお酒だよ。美味しいよ』

 

『そう思えるのはお前だけだよ。てかお前はお酒とかまだ無理だろ』

 

『やっぱり僕の考えはあってるよね?』

 

『大丈夫です、ミキさん。あいつの頭がズレてるだけです』

 

『どういう意味かなー?』

 

『そのままの意味だよ』

 

 私は今喧嘩を売られたと判断していいんだろうか。売られたんだろうね。よし、その喧嘩買った。その小さい身体に流れてる血液、半分以上は貰ってやる。貧血とか知ったことか。

 血のお酒を手放して無言でリオに近づいていく。殺気とかがあるかは分からないけど、気迫っぽいものを出してみようと少し努力してみたらリオが後退りした。成功?

 

『え、何、怒ってんの?』

 

『お酒が入ってるから今日の私は沸点低いよー?』

 

『け、喧嘩はよくないんじゃないかな』

 

『すみません、ミキさん。これは譲れません。……覚悟はできた?』

 

『サヤの目が限りなく本気だ……!』

 

『私に目なんてないから! 嫌味? 嫌味なわけ?』

 

 こいつ、地雷を踏み抜きおったな。ちくしょう、なんで私には目がないんだ。私だってゲーム画面で見てたような自然を目でいっぱい見たかったんだよ。それを我慢して生きてきてるんだよ。それを……、それを笑いの種とかにされても困るんだよ!

 私の発現を聞いてふと疑問そうにミキさんが首を傾げた。

 

『あれ、擬人化したら目はあったよね?』

 

『ありますけど、残念ながら熱視覚です』

 

『だから僕の容姿を前に聞いてきたんだね』

 

『納得していただけたようですね。では少し下がっていてください』

 

 余計な被害を出すわけにはいかない。私の今回の攻撃対象はリオって決まってるから無差別に攻撃をするわけじゃない。というか無差別ほど性質が悪いものってないと思う。

 態々泉に移動するのは面倒くさいので、こんなこともあろうかと思って持ってきた泉の水が入っているビンを引き寄せて一気に口に流し込んだ。さっきのお酒の後味が綺麗さっぱりなくなった。

 しばらくして身体に変化が訪れる。その変化が終わるまで黙って待つこと数秒後、私は擬人化した。何回も擬人化やってたら最近は変身するのが早くなった。変身が終わるのは早くなってないけどね。ありがたいことです。

 

「ぶちのめす」

 

『サヤ、なんて言ってるか全く分からないんだけど』

 

『あ、声帯間違えた。ぶちのめす』

 

『言い直したらちょっと締まらないよ、サヤちゃん……』

 

 ミキさんにツッコまれてしまった。でも言い直さないとリオに聞こえないし。……やっぱりリオには人間の言葉は分かってないんだ。

 喧嘩を聞きつけて私たちの周りにはティーおじさんとかがギャラリーになっていたけど、私が擬人化した途端ざわつき始めた。あ、そういえば知らないモンスターもいるんだった。もうこの際そういうモンスターはどうでもいいや。私を狩りにこなければなんだっていいよ。

 

『ふふふ、私の糧となれ』

 

『人の姿になるのは反則にならないのか? 審判!』

 

『……え、もしかして僕のこと? うーん、いいんじゃない?』

 

『適当だな、審判!』

 

 この喧嘩の理由を知っているミキさんがいつの間にか審判扱いになってるけど、どうやら公平な立場からジャッジしてくれるようだ。若干適当にやっている感じがしなくもないけどいいか。

 ギィギの姿だとなかなか伝わりにくい獰猛な笑み(目は笑ってない)を浮かべてやるとリオはびくりと縮み上がった。目があると表情のバリエーションって広がるよね。

 そういえば今の私って周りから見たらどう映ってるんだろう。子供のベリオロスに襲いかかろうとしている幼女? なにその構図シュール。

 

『てかそんな姿で血とか採れんのかよ、お前』

 

『残念、歯がとても発達しているのでノープロブレムだよ』

 

 にかっと歯を見せてやればリオは納得したようだ。外見は幼女な私ですが、歯を見るとギィギって分かる。一本一本がすごい尖ってるからね。別にフードだけが判断要素じゃないよ?

 脆弱な人間の姿とは言え、今回は血を採るだけだから歯が折れなければ私は問題ない。……折れないよね? 私の歯は丈夫だよね? 人間の姿になったから強度もそれに合わせて、とかだったら私の敗北が確定する。そうじゃないことを祈るよ。

 

『俺だって牙には自信あるし、少しはブレスできるようになったんだ!』

 

『人間同等の素早さをもつ今の私にそんなもの当たんないよ!』

 

『むっ、なら試してみるか?』

 

『いいよ、かかっておいで』

 

 挑発的な意味合いをこめて笑みを向けてやると明らかにイラッとしているリオ。あれ、リオもお母さんと同じで単純なモンスターだったりするの? これは意外な情報だ。

 ブレスを吐くための予備動作くらいなら待ってやろうと仁王立ちをする。それを見て完全にキレたリオは『怪我しても知らないからな!』と言い放った。それは私の台詞だ。

 

『ストップ! サヤに攻撃しちゃ駄目ー!』

 

『リオも攻撃しちゃ駄目よ。サヤちゃんもリオも止めなさい』

 

 リオがブレスを吐いた瞬間、その間に割り込む二体のモンスター。お母さんとベリィさんだった。この喧嘩に今気付いて止めに来たらしく声に焦りが見られる。

 リオが放ったブレスはベリィさんが加減をして粉砕してた。ベリィさんすげえ。しかもベリィさんはジョーおじさんに目がいかなければ常識あるモンスターみたいだし。その態度でいつもいてくれたらどんなにありがたいことか。

 対するリオは自分の母親であるベリィさんに攻撃を当てたことがバツが悪いのか、喧嘩を止めてしまったことに不満なのかうーと呻っていた。

 

『今日は喧嘩するために来たんじゃないんだから静かにしなさい!』

 

『母さんだってうるさいじゃないか』

 

『さすがに今日は自重してるわ。それにお友達とは仲良くするものよ』

 

『母さんだってウルさんと仲良くないじゃないか』

 

『何か言った?』

 

『……何でも、ありません……』

 

 ベリィさんがすげえ普通のモンスター。私とベリィさんの初対面がこれだったら最初の評価もすごい変わってたと思う。これだけみたら極々普通の母親にしか見えない。

 でもベリィさんの言葉の中に大分納得できないことがあった気がする。最初の発言はともかく、二つ目の発言はさすがに説得力がない。最後の発言、高圧的だし。

 そのベリィさんの態度のせいかしょんぼりとしているリオ。私の目がちゃんと見えてたら多分可愛すぎて悶えてたかもしれない。だって俯いて丸くなってるんだよ? 何あれすごく可愛い。

 

『可愛いとか言うなっ』

 

 私の心の声は途中から漏れていたようでリオが涙目(あくまで想像だけども)でこっちを睨んできた。ぜんぜん怖くない、むしろ可愛い。というかどこら辺から漏れてたんだろう。

 リオには謝らずににこにこと笑いかけ続けたら『もう、いいよ……』と完全に落ち込んだ。さっきまでの喧嘩の雰囲気なんかどこにもない。あるのはリオが不憫であるという証明である。

 

『サヤもだよー。リオはお友達なんだから、喧嘩は駄目ー!』

 

『喧嘩じゃないです。ただの戯れですよ』

 

『さすがに今回は騙されないよ、サヤ。ちゃんと謝りなさい』

 

『うー』

 

『可愛いけど呻いたって駄目!』

 

 私にもお母さんから言われてしまった。いつもならすんなり言い逃れできるのにさすがに今回はそういうわけにもいかなかった。やっぱりリオが絡んでるからだろうか。

 その後はお母さんは何も言わず、ただ無言でこっちを見つめてくる。不思議と威圧感があるのは私よりもお母さんが長い間生きてるからなのかな。目を逸らしてもずっとお母さんが見つめてくるので、さすがに折れた。

 お母さんって私が今まで生きてきた中で怒ったところ見たことないけど、きっと怒ったらすごい怖いんだろうね……。今回の件で学んだよ。

 

『ごめんね、リオ。ちょっとお酒のノリに任せすぎちゃった』

 

『いや、俺も悪かった。……ごめん』

 

 両者の和解ができたところでお母さんが頭を撫でてくれた。まだ子供っていうのはもちろん分かってるけど、前世で女子高生まで生きてたから子ども扱いしてほしくないんだけどなー……。でも撫でてほしい。すっごい矛盾してる。

 これにて一件落着、のはずだったんだけど。

 

『あれ、終わり? つまんねえなー』

 

『……ティーおじさん』

 

 一体だけとてもつまらなさそうにしているモンスターがいました。

 どうやら暇で暇で仕方なかったようだ。そういえばさっきのギャラリーの中でも一番生き生きとしていたような気がする。気のせいか。

 そしてそのティーおじさんの後ろに見える殺気を滲ませているジョーおじさんもきっと気のせいだ。怒り状態なのかな、いつもより温度が高いような……。いや、気のせいだ。そう信じよう。

 

『ほう、どうやら死にたいようだな』

 

『え? ……あれ、なんでジョウ本気モードになってんの?』

 

『なんで? そうだな、お前を本気で殺りたくなったからだろうな』

 

『ちょ、怖いんだけど』

 

 さすがにいつもと違うことに気付いたのかティーおじさんがじりじりと後退りした。

 私っていつも戦闘のときは危ないからって洞窟でお留守番させられてるんだよね。だからジョーおじさんとティーおじさんの戦闘って見るの初めて。不謹慎かもしれないけどわくわくしてます。

 

『さあ、覚悟はいいな?』

 

『俺なんかしたっけ!?』

 

『しいて言えば場の雰囲気を壊した、じゃないかな』

 

『ミキまで俺を見捨てた!!』

 

『いや、見捨ててないよ? ただ面白そうだから参戦はするけど』

 

 今まで傍観の立場に立っていたミキさんがゆっくりと前に進み出る。一応確認しておくけど、ミキさんって女性だよね? どうやったらあそこまで影響されるんだろう……。身体に精神が引っ張られてるとか、そんなオチだといいな。あれがミキさん自身だとかそういうのは信じたくない。

 って、ミキさんも殺気出てるんですけど!? あのモンスター、ガチだ。

 

『ジョウ様ぁ、あたしも助太刀するわぁ!』

 

『リオにあんなことを言った手前だから私はパス』

 

『私も参加してくるー!!』

 

『お母さんは参加するの!?』

 

 折角ベリィさんが辞退したのにその穴埋めみたいにお母さんが加わった。何これ。

 泉の周りであっという間に乱闘開始。参加モンスターはジョーおじさん、ティーおじさん、ミキさんん、ウルさん、お母さん。ただしティーおじさんは巻き込まれての参加だけど。

 ……あれだよね、これ絶対今回集まった理由忘れてるよね。新年早々暴れるってどういうこと。お母さんも私に言ったことが意味なくなっちゃうから止めてほしいんだけど。

 

『ベリィさん。あれ、止められそうですか?』

 

『無理よ。私に死ねって言ってるようなものよ、それ』

 

『そうですね、すみません』

 

『もうあそこのモンスター(馬鹿)たちは放っておいてこっちはこっちで盛り上がりましょ』

 

『母さんに一票。俺はもう騒ぐ元気ないや』

 

『あ、じゃあ血のお酒いる?』

 

『それは遠慮するよ』

 

 リオが苦笑しながら断った。美味しいんだけど、残念だなあ。

 立ったままは辛かったので胡坐をかいて座った。本当は椅子みたいな岩とかがあるとよかったんだけど、それっぽいものは周りになかったから仕方がない。

 ぐびぐびと血のお酒を飲む私を見てリオが一歩後ろに後退した気がした。傍目から見たら生き血を吸ってる女の子にか見えないんだろうね。引かれても仕方ないけど私は主食が血だからちょっと心外だ。

 

『いってえ!? ジョウ、本気の攻撃はなしだろ!』

 

『土に還れ』

 

『聞いてねえ!?』

 

『ジョウ様ぁ、補助しますぅ!』

 

『ババア、邪魔すんじゃねえよ! ただでさえ死にそうなのに!』

 

『火山で身につけたパワーを見せてあげるよ!』

 

『ふふん、私の毒液ビームだって負けないよー?』

 

 私たちやメラルーさんたちを放置して白熱していく戦闘。楽しそうで何より。

 一方の私とリオと言えば、冷や汗をだらだらと流している。だって、隣にいらっしゃるベリィさんの殺気が半端ないんですもの。怖いです、ベリィさん……。

 

『はあ、なんで戦闘であそこまで盛り上がれるのかしら』

 

『さ、最近ハンターが来ないから溜まってるんじゃないかな?』

 

『そもそもハンターが来ないように大人しくしようって言い出したのはあいつらでしょ』

 

『お正月だから、いいんじゃないですかね……』

 

『私は静かにしてほしいわ』

 

 ベリィさん、他のモンスターのことを散々言ってるけど普段のあなたもあれと変わらないことを自覚してください。洞窟の中だから反響しちゃってさらに煩くなってるんだよね。

 なんでいつもはあんなに煩くしてるのにハンターさんたち来ないんだろう。

 今日は森の奥だからまだいいのかもしれないけど、普段騒いでる洞窟は普通にハンターさんたち来ることが出来るからね。いざ逃げるときがきたら私は迷わずにここに来るね。

 

『私たちで静かなお正月を楽しみましょう』

 

『それしかないわね……。あ、お肉なくなちゃった』

 

『今そこで貰ってきたよ』

 

『あら、ありがとう。リオ』

 

『サヤさんもお酒のお代わりいかがですかニャ?』

 

『あ、ありがとうございます』

 

 メラルーさんにお代わりを注いでもらった。……あ、聞いたことがある声だと思ったらメラルーAさんじゃないですか! 他のメラルーは覚えてないけど、メラルーAさんだけはやけにはっきり覚えてる。なんでだろうね?

 試しにメラルーAさんにも血のお酒を勧めてみたら『それが飲めるのはあなたくらいですニャ』と返された。そうだろうね。分かっててやった私を許してください。

 

『……あ、言い忘れていました。メラルーAさん、今年もよろしくお願いします』

 

『こちらこそニャ。何かあったら言って下さいニャ』

 

『私も役に立ちそうにないですが何かあったら言って下さい!』

 

 元気よく言ったらメラルーAさんに苦笑されて『何か出来ることがあったら言いますニャ』と言われた。その言い方じゃ私に出来ることが一個もないみたいに聞こえるじゃないですか。確かにこの姿じゃ出来そうなことないけど。

 ぶー、と膨れっ面にしていることに気付いたのかメラルーAさんが少し慌てたようにまたお酒を注いでくれた。なんだか誤魔化された気がする。

 

『ベリィさんも、今年もよろしくお願いします』

 

『こっちこそ。リオのこと、よろしくね』

 

『頑張ってお守りします』

 

『まるで俺が餓鬼のように言ってくれるな、サヤ』

 

『キノセイデスヨー』

 

『ちょっとは隠せよ! 棒読みじゃないか!』

 

 リオの言葉を丸々無視して、そういえば今回はまだ酔ってないなと思った途端に思考がぼやけた。……もしかして、本当は少し前から酔ってた? 酔いよりすごい戦闘が目の前で起こってるから頭が認識してなかったのかも。

 ちょっと眠くなってきたけども、戦闘が終わるまで起きていようと心に誓った私でした。

 

 

 ……ちなみに戦闘の勝者はミキさんでした。怒らせないようにしよう。

 

 

――――――――――

 

 

 現在、俺の部屋。正月はどうにかクリスマスの時と違って家で過ごすことが出来た。まあ年を越したのは火山でだったが。泣きそうになった。どうも、スウだ。

 さて、今俺の部屋には先輩二人が来ている。俺は先輩に部屋には来るなと言われているのに、当たり前のように入ってくるこの二人は何なのだろうか。だが忍び込もうとは思わない。事前に忍び込んだらハンマーで潰すと脅されているからだ。

 ……ああ、ハンマーは女先輩が集めている。あの人は太刀とハンマーをやたらと作っている。

 

「なんでいるんですか……」

 

「「お節を食べにきた」」

 

「……」

 

 いや、女先輩が作ればいいじゃないですか。とは言わない。言ったら女先輩に殺される。

 決して女先輩は料理が出来ないというわけではない。ただ暗黒物体を生成してしまうだけであって出来ないわけではない、らしい。調合すらできないみたいなのに料理が出来るのだろうか。

 しかし、言わない。全部心の中で留める。まだ命が惜しい俺である。

 

「悪いな、俺も料理は苦手で」

 

「調合上手いんですから、同じ要領で頑張ればいいじゃないですか」

 

「汁物ならいけそうだな」

 

 女先輩の分の調合もしているのは男先輩である。前に面倒ではないのかと聞いてみたところ「頼られてる感じがしていい」と答えていた。この二人、付き合ったら上手くいきそうだ。

 俺はため息を吐きつつもせっせとお節の準備をする。何もしないで座っている男先輩とプーギーと戯れている女先輩を少し恨めしく思った。

 ちなみにプーギーは俺が飼っている。ここにきてからほとんど押し付けられるような形で飼い始めたのだが一向に懐いてくれない。なのに女先輩にはすぐ懐いた。泣きたい。

 

「プーギーちゃん可愛いねー。この着物がまたすごい似合ってる!」

 

「……そうですね」

 

「なんだ、相変わらず懐かれてないのか」

 

「俺的には引き取ってくれたほうがありがたいんですけど」

 

 しかしこのプーギー、何故か俺の家から出て行かない。俺はご飯でここにいるのではないかと予想している。ご飯のときだけは嬉しそうに近寄ってくるのだ。俺はカモかよ。

 女先輩が料理をすることが出来ないのは本能で察しているのかもしれない。食い意地のはった嫌なプーギーである。

 俺の周りに悩み事が多いのは何故だ……。

 

「できましたよ。あ、プーギーのはこっちね」

 

「わー、ご飯ご飯!!」

 

「いい歳してはしゃぐなよ。去年二十歳になったんだろ」

 

「ご飯は厳しいハンター生活では唯一の娯楽だよ?」

 

「いや、唯一ではないだろ……」

 

 お節を見て顔を輝かせた女先輩を見て少しだけ笑みを漏らす。女先輩は俺が作った料理をどれも美味しそうに食べてくれるからありがたい。ただその量が馬鹿にならないのだが。

 プーギーも自分の分の食事を見ると俺のほうを嬉しそうに見てきた。現金なやつだ。

 

「うまー」

 

「あ、コラ、まだいただきますも言ってないじゃないか」

 

「言ったもん。そっちが聞いてないだけだもん」

 

「あのなあ」

 

 何か言いたそうに口を開いた男先輩だったが諦めたように口を閉じ、代わりにため息を吐いた。先輩も案外苦労人だ。

 一心に料理を口の中にかきこんでいた女先輩は不意に動きを止め、口の中の物を飲み込んでしまうと俺たちのほうを見てにっこりと笑った。純粋な笑顔が眩しいです。

 

「言い忘れてた。今年もよろしくね!」

 

 明るい声でそう言った女先輩を見て、男先輩と顔を見合わせた。男先輩はきょとんとしていた。俺も多分、きっときょとんとしてたと思う。

 しかしすぐに男先輩は笑い出した。

 

「お前っ、火山でも言ったじゃないかよそれ!」

 

「え、そうだったっけ!?」

 

「覚えておいてくださいよ、それくらい」

 

「何その言い方。私に記憶力がないみたいじゃない」

 

「事実だろ?」

 

「事実じゃないんですか?」

 

「……」

 

 俺と男先輩の言葉を聞いて女先輩が黙り込んだ。……あ、言い過ぎたかもしれない。

 女先輩は何を思ったのか一度俺の部屋から出て行くと、ハンマー『パルセイトコア』を担いで戻ってきた。何故だろう、冷や汗が止まらない。

 男先輩は状況が理解できていないのか首を傾げていた。暢気すぎるでしょ。

 

「それでは、はりきって最期の言葉をどうぞ?」

 

「はりきって、って何をだ?」

 

「逝ってらっしゃい」

 

「ぶふぅ!?」

 

「せんぱーい!!」

 

 男先輩が見事に宙に舞った。室内だったため天井にぶつかってすぐに落ちてきたが。俺の部屋、壊さないでくださいね。あと俺の将来も壊さないでくださいお願いします。

 

「さあ、スウもどうぞ?」

 

「すみませんでしたああああ!」

 

「逝ってらっしゃい」

 

 今年初の悲鳴が俺の部屋に響き渡った。




こんな小説ではありますが、今年もどうかよろしくお願いいたします。
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