何故か毒怪竜になった件について   作:キョロ

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今回はハンターさん救済回。
あまりにも人間に酷い描写が多かったと少し反省してみた。
それにしてもちょっと贔屓しすぎたか……?

では、スタートです。


17、討伐者が意外な人物だった件について

 ズドォン! とかドッカーン! とか妙に物騒な音が遥か遠くから聞こえてくる。

 どうも、サヤです。ただいま洞窟の中で留守番中です。

 実は随分久しぶりに討伐隊が、つまりハンターさんたちがこの凍土に来ているみたい。

 いや、本当は普通にハンターさんたちが来ることもあったんだけど採取だったり偵察だったりで『討伐じゃないなら見逃しとこうぜ』という感じになっていたんだ。

 その反動なのか物騒な音の合間にティーおじさんの楽しそうな声が聞こえる。ストレス発散ってやつなのかなあ。とりあえずハンターさんたち、ご愁傷様です。

 

『……暇だなあ』

 

 私の精神も随分と図太くなったと思う。

 だってハンターさんたちの悲鳴を聞きながらこんなことが言えるんだもん。図太すぎる。

 でも本当にこの時間は暇なんだよ。大人たちは全員出払ってるから私に構ってくれるモンスターがいない。私はそもそも行動範囲も狭いし自分でできること自体が少ない。遊ぶにしても私だけは寂しいし。

 いつか私もあの戦闘に混じれば暇だって言わなくなるんだろうか。傷つくのはごめんだから空中から毒液吐きまくろうと思うけど。……あー、でもボウガンとかの遠距離だと無理かな。じゃあ身を潜めて陰から毒液を……。

 

「あれー? なんで私だけはぐれちゃってるのー? いじめだー、後でスウ殴ろっと」

 

『えっ』

 

 人の声……、ハンターさんかな? 声色から女の人みたいだけど……。

 ハンターさんに会ったのっていつぶりかな。実際に対峙したことは無いけど、多分、あのヘタレハンターさん以来かもしれない。

 って、確実に洞窟の奥(こっち)に歩いてきてるんだけど!? あれ、死亡フラグ?

 

『大丈夫大丈夫、私は死なない私は死なない』

 

 自分を落ち着けるために絶えず呟き続ける。

 ……呟いてから気付いたんだけど、これこそ死亡フラグじゃ……。なんで墓穴掘ってんの私。後はその穴にダイブすればすべてが終わるってやつですか。私はまだダイブしたくないよ。

 

『どうしよう……、お母さんいないし……』

 

「……声?」

 

『ふぁ!?』

 

「誰かいるのー? おーい」

 

 もしかして、いや、もしかしなくても、このハンターさんって私の声が聞こえてる? いやいやいや、さすがにそれはないでしょ。あるとしたら転生者……。いや、それこそないって。

 私とミキさんだって神様に会ってないのに、そういう意味での本当の転生者が来るとは思えない。うん、だからいないはず。……すごい説得力ないな。

 

『逃げ出したいけど逃げ出せない』

 

「どうしてー? 怪我でもしてるの?」

 

『いえ、単純に足が短いだけです。って、はうあ!?』

 

 何普通に会話を成立させちゃってんのー!?

 寂しすぎて話し相手が欲しかったのかな、私は……。

 私の視界にはまだハンターさんは映ってない。でも足音のおかげで段々と近付いてきていることは分かる。

 これ、どうすればいいのかなあ。あっちの視界に入っちゃった途端、バッサリ斬られちゃうとかそういう展開は勘弁してほしい。

 

『え、えーと……。私の声、分かるんですか?』

 

「何言ってんの? 分かるから話してるのに」

 

 すごいまともな答えが返ってきました。そうだね、分からなかったら会話は成立しないもんね。

 しばらく沈黙。どうすればいいのか分からなくてなかなか口を開けない。

 うううう、早く帰って来てよお母さーん! 私はどうすればいいのか分からないよー! というか下手すれば生まれて初めてのピンチを迎えてるよね、これ。

 

「ねね、遊ぼうよ!」

 

『あなた何しに来たんですか』

 

「え? えーと、イビルジョーの討伐」

 

『……ご愁傷様です』

 

「え、何、どういうこと?」

 

 ジョーおじさんの討伐だったらまず確実にいつもの三体は参加。プラスでベリィさんも入ってくるだろうから五体……。うわあ、大連続狩猟クエストだ。あ、でもいっぺんだから大狩猟クエスト? とにかくドンマイです。

 ここのモンスターたちは一筋縄じゃいかないからね……。互角に戦ってるハンターさんを見てみたいよ。頑張って、ハンターさん!

 

「まあ確かに助けてーって声聞こえるけど」

 

『ちょ、行ってあげてくださいよ』

 

「ヤダ。だってスウだもん」

 

『……スウさんが誰だか分かりませんけど、ご愁傷様です』

 

「あー、そうだ。あなたの名前は?」

 

 完全にスウさんって人は無視なんですね。今も遠くから「せんぱーい! 助けてー!」と悲痛な叫び声が聞こえてくる。……ん? あの声って前に聞いたことがある気がするんだけど。いつ聞いたっけ?

 で、名前、か……。言っても問題ないかな? 私としては人間とは交友を深めたいけど、モンスターとしてそれはどうなのというか異端と言うか。うーん、まあそういうのは異端って言われた時に考えるとしよう。

 

『サヤ、です。サヤっていいます』

 

「へー、奇遇だね! 私の名前もサヤって言うんだよ!」

 

『……え゛』

 

 わ、私とまったく同じ名前……?

 なにこれどういうこと!?

 

 

――――――――――

 

 

 洞窟の奥にて。

 私は今、サヤさんと向きなおってお話タイムです。

 姿を見せたときにはさすがに驚いてたみたいだったけど「さっちゃんって可愛いね」と言われた。ギィギって可愛いの部類に入るの? あとさっちゃんって。

 確かに二人(一人と一体?)ともサヤで分かりづらいからって、それはどうなんだろうか。

 

『サヤさんは、私の言葉しか分からないんですか?』

 

「うん、他のモンスターの言葉は分からないよ」

 

『やっぱり名前繋がりなんでしょうかね……』

 

「あー、ヤマツカミと喋りたいなー」

 

『……』

 

 ヤマツカミが好きな人ってなかなかいないと思うな……。「あの口がいいんだよ! 可愛いんだよ!」この人、感性がおかしいや。

 私はサヤさんの手前、名前繋がりって言ったけど実はもう一つ心当たりがある。

 サヤさんが装備しているのはバンギス装備、毒刀カンタレラだ。それは、私が3rdをプレイしていたときの装備。毒のエフェクトが出たときはすごく嬉しかったなあ。

 他にも太刀をたくさん収集している点や、趣味でハンマーを収集している点など共通点が多い。いや、私はヤマツカミ好きじゃないからね? そこは違うからね?

 ……このサヤさんって、やっぱり私のアバターなんだろうか。

 

『で、行かないんですか? 時間もあるでしょうし』

 

「んー、そうだね。そろそろ帰ろうかなー」

 

『お、お金、無駄になっちゃいませんか?』

 

「今回の依頼(クエスト)はリオが買ったから私のお財布は痛まないし」

 

『……リオ?』

 

「あ、私の幼馴染で火山大好きな男のことー。弄り甲斐あるよ!」

 

 リオ、かあ。こっちにいるリオとは違うかな? リオにとって火山は暑すぎる場所だと思うから。あくまでこれは名前が一緒って言うだけみたい。

 でも一回会ってみたいな。会っても私は容姿が分かりませんけどね!

 サヤさんの話だとリオという人はシルバーソル装備なんだって。すごいなあ……。

 

「おいコラ、依頼(クエスト)を放っておくとはどういう了見だ」

 

『うわあっ!?』

 

 男の人も来た!? ……もしかしてこの人がリオって人? 噂をすれば何とやらってやつか。

 そして私はサヤさんに掴まれると繭の残骸の一つに押し込まれました。え?

 

「んー? 休みたかった」

 

「お前なあ……。ちょっと不利な状況になってきた、一度引こう」

 

「そっか。さすがに六体はきついもんね」

 

「……おい、なんで知ってるんだよ? 前線にいなかっただろ?」

 

「洞窟に入った時にフルボッコされてるスウの声が聞こえた」

 

「そこは助けろよ! スウは一回ダウンしてるんだぞ」

 

 どうやらサヤさんは私を隠したかったみたい。私がいる繭の前に立ってリオさんからは見えないようにしてくれている。なんで助けてくれたんだろう。

 あ。あと、今サヤさん六体いるって言った? この凍土には私が知っている限り五体しかいないはずなんだけどな。

 

「とにかく、一度帰るんでしょ? 私お腹減ったんだよね!」

 

「肉でも食ってろよ。というか、お前今日何もしてないだろ」

 

「家で食べるからいいんだって! 帰ろうよ!」

 

「なんで俺が買った時だけ依頼放棄(リタイア)が多いんだよ……」

 

「運がいいんじゃない?」

 

「ああ、悪い意味でな」

 

 ぶつぶつとリオさんが愚痴を言っているのが聞こえる。どうやらサヤさんのマイペースぶりに振り回されているようだ。なんだかサヤさんって少しだけ私のお母さんに似てる気がする。

 「今日のご飯は何かなー?」と嬉しそうに言うサヤさんに対して「肉でいいだろ、肉で」と投げやり気味に返すリオさん。リオさんは疲れてるのかもしれないけど、こっちから見れば楽しそうにしか見えない。

 

「ぎゃああああ!! 先輩方、助けてええええ!」

 

「すみません! 助けてください!」

 

 一人加わったけどまだ静けさを保っていた洞窟内に男の人の悲鳴が響いた。うっ、いきなり来るものだから耳が痛い。……あれ、私に耳ってあるっけ? 無い気がする。じゃあ頭が痛い。

 あ、このハンターさん知ってる。この前のヘタレ弓使いさんだ。もう一人のハンターさんは……、あれ、聞いたことあるんだけど誰だっけ……。

 

「煩いよ、スウ。あと他のモンスター連れてくるってどういうことー?」

 

「逃げるのに必死で撒くのは無理だったんですよ! 俺の気持ち分かって!」

 

「なんで好き好んでスウの心中を察しなきゃいけないんだよ、気持ち悪い」

 

「そんなことを言っている場合ではありません! とにかく撤退しましょう!」

 

 どうやらこの四人で(パーティ)を組んでいるみたい。弓使いの人がスウさんだったのか。

 確かに外からティーおじさんの声が聞こえるしね。結構近くまで来ているみたい。

 ごそごそと何かの袋を漁るような音がハンターさんたちから聞こえてきた。もしかしてアイテムポーチを漁っているのかな。この状況だとモドリ玉を探しているのかも。

 

「お先に失礼ー」

 

「俺も先に離脱しているぞ」

 

 先にサヤさんとリオさんが洞窟の中から姿を消した。ボフンって音がしたから使ったのはモドリ玉で間違いなさそう。最後にサヤさんがこっそりと手を振ってくれたような気がした。

 しかし一方でまだアイテムポーチを漁る音が聞こえてくる。……ん? この展開、一回見たことあるような気がするのは気のせい?

 

「あ、あれ……。僕のモドリ玉がない……」

 

「ん? どうした、ミキ?」

 

「……僕、モドリ玉を忘れちゃったみたいなんだ」

 

「えぇ!? マジかよ!」

 

 あっ、思い出した。この前モドリ玉を奪われちゃった可哀想なハンターさんだ! 武器は何を使ってるんだろう。……駄目だ、よく分からない。

 確かこの前は奪われちゃった後、ティーおじさんたちに囲まれちゃって気絶したんだっけ。ここの(パーティ)にいるってことは前のところからは抜けたのかもしれない。

 でも、ミキっていうのかあの人。……あれ、ミキさんと同じ名前? じゃああの人も僕っ娘? この前来た時は男の人だと思ってた。

 

「仕方ないなあ。ほら、これ使えよ」

 

「で、でも、スウくんは?」

 

「俺? 俺は調合分があるから平気だよ」

 

「本当に?」

 

「本当に。さっさと行けって」

 

「……ごめん、ありがとう!」

 

 ボフンと音がしてミキさんが消えた。スウさんすごいいい人。

 スウさんはミキさんがいなくなったのを見届けて「よし」と満足げに頷いていた。

 

「さて、俺は頑張って徒歩で戻るか。……うわ、怠いなー」

 

 面倒そうにスウさんはそう呟いた。

 さっきミキさんに言ったのは嘘だったのか。そうやって好感度アップを狙ってるんですか? ……うん、変な考え方してごめんなさい。こっちの世界に来てからどうもいい人に会ってないから、どうしても考えが歪んじゃうなあ。

 スウさんはそのままダッシュで最初に来た入口とは別の穴を通って洞窟から出て行った。無事に帰れるといいですねー。

 

『……あれ? いねえぞ?』

 

『ほらー! やっぱりジョウの分かれようって意見が正解だったじゃん!』

 

『う、うるさいな』

 

『この単細胞ー』

 

『ギギィには言われたくねえよ!』

 

 しばらくして洞窟の中にお母さんとティーおじさんが入ってきた。

 どうやらティーおじさんのおかげでスウさんは無事に帰ることが出来たみたい。

 ……数体、ここにいないモンスターもいるみたいだけど。

 

『こっちも見なかったよ』

 

『悪いな、ミキ。折角遊びに来てくれたのに』

 

『大丈夫だよ。僕は戦いが好きだしね』

 

『あ、ところでジョウはー? ウルはー? ベリィはー?』

 

『三体なら帰ったよ? まあジョウさんを追ってるみたいだけど』

 

『終わった途端これかよ……』

 

 ミキさんも遊びに来ていたみたい。ああ、じゃあハンターさんたちは六体と戦ってたのか。三人VS六体ってかなり鬼畜だよね。無理ゲーにも程があるよ。

 不完全燃焼なのかミキさんはちょっとつまらなさそうだ。その分ティーおじさんが戦ってあげればいいと思うよ。スキンシップって大事だと思う。

 

『ただいま、サヤー。大丈夫だった?』

 

『おかえりなさい。私なら大丈夫ですよ』

 

『無事で何よりだよー。私、いつもサヤのことが気がかりで……』

 

『心配しすぎですって』

 

 もしお母さんに目があったら潤ませてるんじゃないかと思う。ちょっと涙声だ。

 お母さんの態度はすごい大げさのような気もするけど、愛されてるんだなあって思ってちょっと嬉しくなる。溺愛、って感じもするけどね。嬉しいことに変わりはない。

 

『よし、ティガさん覚悟!』

 

『えっ、この雰囲気で!?』

 

『ふっふっふ。不意打ちだああああ!』

 

『くそぅ。だが受けて立つ!』

 

『外でやってください』

 

 あなたたちが全力で戦ったらこの洞窟崩壊しちゃいますから。余所でやってください。

 この前、お正月でそれが嫌と言うほど分かったんだよ。相手の攻撃を避けたりするのもこの洞窟じゃ少し狭いし、全力の攻撃を繰り出そうとしたら明らかにここで放つのは無謀だ。

 二体とも興冷めだなんだの文句を言ってたけど渋々洞窟から出て行った。なんで文句を言われなきゃいけないんだろう。ここに住んでいるのは私とお母さんなのに。

 

『あの二体ってとっても仲良いよねー』

 

『早くくっついちゃえばいいんですよ』

 

『うんうん! ……あ、私お肉採ってくるねー』

 

『お気をつけてー』

 

 洞窟を出て行くお母さんに小さい手を振った。お母さんは洞窟から出て私の視界では見えなくなってしまった。やっぱり身体が大きいと一歩も大きいから移動が速いなあ。私も早く大きくなりたい。まあこのお腹だけはどんどん大きくなるんですがね!

 多分今の私の体型はゲームでギィギがハンターさんの血を吸った時の最大の大きさよりも大きいと思う。客観的に見ることは不可能だから正確なところは分からないけど。

 

 まあ、それはさておき。

 あのハンターさんたちはまた来るだろうか? 私としては暇な時間が出てるから来てほしくないけど……、また会いたいという気持ちはある。今まで人間の怖ーい部分を見てしまった私だから、あのハンターさんたちがとっても純粋な人たちに見えてしまう。

 なんだかやたらと美化してしまっているような気もするけど……。とにかく何かの機会があったらまた会いたい。特にサヤさん。もっといろんな話をしてみたい。

 

『また会いたいなあ』

 

 私はさっきまでサヤさんがいたばしょを見て、そんなことを思うのでした。




なんかもうスウのボッチ感が(笑)
これで更に空気になったね!


〇サヤ(人)
前世でサヤがやっていたモンハンのアバターそっくりの人。太刀使い。
似ているように見えて性格や趣味などが少し違うようだ。
少しSの気がある。


〇リオ(人)
名前はリオ(モンスター)と同じだが容姿や性格、口調はまるで違う。大剣使い。
サヤと幼馴染で自由奔放なサヤの行動にいつも手を焼いている。
時々突き放したような言い方をするが本心は正反対だったりする。


〇ミキ(人)
名前とミキ(モンスター)は同じだが少し内気な性格。狩猟笛使い。
初出は第五話。名前は出なかったけど僕口調の人がミキさん。
前の班から追い出されこの班に。前の班では臨時的に入っていた。
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