ハンターサイドを書くと普段あまり使わないルビが多いなあ。
では、スタートです。
「あ、あの……、僕を
どうも、スウだ。天気が良すぎて日差しがちょっと眩しい。でもいい
今日は何の
なんだかとてもおどおどとした子だった。身なりからして俺たちと同じハンターということは分かったが、装備も俺と同じような初期装備に近い。
実は、俺はこの子を知っていた。いや、知っていたと言ってもここでちらっと見たことがある程度なんだが。
「……どうしたんだ? この前、別の
「あ、あはは。お恥ずかしいことに、追い出されてしまいまして」
「ふーん、それは実力不足のせい?」
「こら、サヤ。失礼なこと言うんじゃない。……悪いな、こいつ馬鹿なんだ」
「うっわ、リオのほうが失礼じゃん」
「あ、いえ、お気になさらず。実力不足だし、僕、馬鹿だからいけないんです」
シュンと項垂れる。あ、地雷踏み抜いた感じが凄いくる。
さすがに能天気なサヤ先輩も気付いたのか冷や汗を流してる。表情も若干引き攣っているように見える。
リオ先輩は不可解だ、と言う様に腕を組んでじっと項垂れたその子を見つめていたが、突然「名前は?」と問いかけた。
「……あっ、僕、ミキっていいます!」
それを聞いてビクッと身体を震わせてから、弾かれたように顔を上げ自己紹介をしたミキさん。……ミキ、って言うからにはやっぱり女性なんだろうか。
ミキさんが何歳かは分からないけれど、小柄な体格、短めの茶髪、……ぺったん。ごめんなさい、男の子にしか見えませんでした。
心の内だけで謝罪しておいた。口に出したらダメージを負わせてしまいそうだから絶対に口に出さないことにする。口は災いの元だ。これは俺の胸の中でとどめておくのが正解である。
ま、まあそれに、女性って胸だけが全てじゃないと思うしな! うん。あんまりでかくても引いちゃうと思うんだ。……あれ、俺は何を言っているんだろう。あー、やめやめ、この話終わり。
「俺の名前はリオだ」
「私、サヤだよ。よろしくねー」
「俺はスウって言うんだ。よろしく、ミキさん!」
「……えっ? い、いいんですか?」
俺たちの自己紹介を仲間に入れてくれたという意味だと正確に受け取ったミキさんは何度も念押しをしてきた。さっき言った「実力不足、馬鹿」という部分を自分が入ることにより生じるデメリットだと思ったのだろうか。
でも、それならなんで入れてほしいなんて言ってきたんだろう。ちょっと矛盾だ。
おどおどと何もしていないのに萎縮していったミキさんを見てリオ先輩は首を傾げた。
「では逆に聞くが、何故断らなければいけなんだ?」
「そうだよー。狩りはみんなと行くから楽しいんだし!」
「ちょうど一人分空いてたからちょうどいいよ。ね、先輩」
「うんうん、その通り!」
「まあ馬鹿二人いる
「「どういうこと」」
あれ? さり気なく今、俺もまとめて貶されたよ? おかしいな、リオ先輩はいつも俺には優しいはずなのに……。俺も一緒に貶されたのは初めてだ。……いや、初めてじゃないかも。なんか普段から貶されてる気がしてきた。
ちょっと悲しい雰囲気に浸っていると「ふふっ」と笑い声。落ちかけていた視線を上げると、笑いを抑えるように口元に手を当てているミキさんと目が合った。
「す、すみません。……面白い
「ああ、退屈しない」
「で、どーするの? 入る? それともグッバイ?」
「……入ります。入れさせてください!」
ぺこりとお辞儀をするミキさん。態々お辞儀しなくてもいいのに。
と言うか、お辞儀なんてしたら……。
「堅苦しいなあ。いらないよ、そーいうの」
「えっ」
「もっと気楽にいけ。こいつがいい例だ」
「私を指すの止めてもらえますー?」
「……俺が言うのもなんだけど、ここはすっごい気楽だからさ」
うん、普段敬語を使ってる俺が言うようなことじゃないけどね! でもここは周りがビックリするくらい抜けてるからな。特にサヤ先輩はすぐに死にそうだけど何故か死なないし。……ギャグ補正、とか?
「はあ」となんだかよく分からずに呆けるミキさん。ごめん、この
「あ、僕はミキ、と呼び捨てにしてもらって結構ですよ」
「そうなの? よろしくミキちゃん」
「言われなくてもそのつもりだったが……、よろしく頼む」
「リオ先輩ヒデェ……。よろしくね、ミキ」
俺たちの反応を見てミキは面白そうに笑った。
――――――――――
所変わって凍土。
久しぶりに凍土での討伐
……でも、
「なんで、イビルジョーなの……?」
「スウくんっ、手を休めちゃ駄目!」
対象が俺にとっては強大過ぎるんだけど。何この無理ゲー。
先輩たちが過保護すぎてまだアオアシラすら一人で討伐しに行かせてくれないのに、いきなりイビルジョーを相手にしなくちゃいけないとかどういうこと。
何これ、死んで来いって言われてるの?
しかもミキの扱う武器は『狩猟笛』だった。
俺は弓使いであるから、この場には遠距離の二人しかいない訳で。……いや、近接攻撃も出来るけどね? 主に後ろにいるべき人だと思うんだよ、俺は。
何度も言ってるけど、前線に立ってなきゃいけないはずの先輩はいないし。本当に死んで来いって言ってるよね。俺はまだ生きたいんだけど。
「ひいいい! 危ねえ……、ってぎゃあああ! 右腕熱っ!!」
「イビルジョーの唾液は酸性らしいよ、気を付けて!」
「言うの遅いって! あっつうううう!!」
何が面白くて融かされて死亡しなきゃいけないんだよ。
ああ、もう! 先輩助けてー! 早くしないと可愛い後輩が死にますよ、いや、可愛くないかもしれないけどね! でもすごく助けてほしい!
イビルジョーに集中してたらなんか他にもモンスター集まって来たし。ベリオロス、ウルクスス、ティガレックス、ティガレックス亜種、ギギネブラ……。おいおい、おかしいだろ。
先輩、違う
というか、流しかけたけど、ティガレックス亜種って凍土のモンスターじゃないよな? 何あれ、引っ越してきたの? 元居た場所にお帰り下さい。
「ちっくしょおおおお! なんだよこの逆フルボッコはああああ!」
「とっ、とにかく一度引こう! このままじゃ全滅しちゃう!」
「ああ、二人だけがな! 先輩たち本当にどこだよおおおお!」
弓を背負って逃亡開始。俺に倣ってミキも逃亡を開始した。
とりあえずあいつらを撒きたいところだよなあ。ぐるぐると色んなエリアを行ったり来たりして、最終的にに俺たちが辿り着いたのは以前に俺がギギネブラとティガレックスに襲われたあの洞窟だった。……あれ、そういえばあのギギネブラとティガレックスって、あの時のじゃないよな……?
「ぎゃああああ!! 先輩方、助けてええええ!」
「すみません! 助けてください!」
滑り込むように入って行った洞窟の中には、へらへらと笑う先輩たちがいた。なんでいるんですかああああ。しかも周りにモンスターの気配はなし。何ここ、すごく安全。
……こんなとこに二人は今までいたのか。
「煩いよ、スウ。あと他のモンスター連れてくるってどういうことー?」
「逃げるのに必死で撒くのは無理だったんですよ! 俺の気持ち分かって!」
「なんで好き好んでスウの心中を察しなきゃいけないんだよ、気持ち悪い」
「そんなことを言っている場合ではありません! とにかく撤退しましょう!」
なんで俺が集中砲火されなきゃいけないんだろう。この場合で攻められなきゃいけないのは先輩たちのはずなのに。……俺、何も悪いことしてないよね?
とにかくミキの一言でこの場は収まった。本当にミキがこの
「お先に失礼ー」
「俺も先に離脱しているぞ」
先輩たちはさっさとモドリ玉を取り出すとさっさと洞窟から消えてしまった。
……あの人たち、何もやってないのに逃げ足だけは速いなオイ。
ため息を吐きながら俺もアイテムポーチからモドリ玉を取り出した。置いて行ったりしたら可哀想だし、ミキが使用してから俺も使用することにするか。
そう思って待っていたのだけど、いつまで経ってもミキはアイテムポーチを漁り続けていた。
「あ、あれ……。僕のモドリ玉がない……」
「ん? どうした、ミキ?」
「……僕、モドリ玉を忘れちゃったみたいなんだ」
「えぇ!? マジかよ!」
うっそだー。こんな時に限ってなんてこった。
俺の方をウルウルと目を潤ませて上目遣いに見てくるミキ。うわ、可愛い……って今はこんなことしてる場合じゃなかったな。危ない危ない。
考えを振り払うようにフルフルと数回頭を振ってから考える。そうだな、どうしようか。
ハンター二人にモドリ玉一個。……こういう時にすることって言ったら、
「仕方ないなあ。ほら、これ使えよ」
さり気なく渡してあげる、だよな。
ほら、レディファーストとか言うじゃないか。ん、ちょっと違うか?
まあとにかくこういう時は譲ってあげるべきだろ。
「で、でも、スウくんは?」
「俺? 俺は調合分があるから平気だよ」
「本当に?」
「本当に。さっさと行けって」
「……ごめん、ありがとう!」
さらっと嘘をついて強引にミキの手にモドリ玉を握らせる。
ミキは「大丈夫? 大丈夫?」と俺の方を何回も見ていたけど、やがて緑の煙に包まれて消えた。
あー、久しぶりに良いことした気がする。
「さて、俺は頑張って徒歩で戻るか。……うわ、怠いなー」
なんだろう、ちょっと照れくさい。いや、誰も居ないけど。
またあの六体のモンスターと鉢合わせしなければいいんだけどなあ。頑張って全力で走り抜けるしか道はないんだろうけどさ。
俺は大きく深呼吸をしてから、最初に入った穴とは別の穴から出て行った。こっちだと遠回りになっちゃうけど、そのほうが案外見つからなかったりして、な。
――――――――――
想像以上にハードなマラソンだった。いやあ、俺の足がもう限界来てるわ。ちょっと油断したら攣るわ。
あの後、俺が走っていた先にはイビルジョーとウルクススとベリオロスがいた。一瞬「俺の命もここまでか……」とか思って走馬灯も見えてたけど、俺に気付いていないのか三体は何処ぞへと走り去っていった。
気のせいかな、俺にはイビルジョーが二体から逃げているように見えた。あの三体の中で一番強いのはイビルジョーのはずなんだけどな。……まあ、気のせいだろう。
「ぜえ、ぜえ……。た、ただいま、です」
「遅いよ、スウ。スウがいないから待ってたんだよ?」
「まあ連絡は入れておいたから、直に気球が来るだろう」
「ご、ごめんね、スウくん。僕のせいで……」
「い、いや、俺が言ったことだから……」
キャンプに戻ってきたら、実に様々な態度で迎えられた。うん、なんかもう個性が溢れすぎてる。
あー、今度から本当にモドリ玉の調合素材持ってこようかな……。いや、でも今のままでも十分ポーチいっぱいなんだよなあ。うーん。ま、後回しにしちゃっていいか。
「よいしょっと」
「のわあっ! さ、サヤ先輩!?」
「どうせ立ってるの限界なんでしょ? 運んであげる」
「良かったな。珍しくサヤが優しいぞ」
「……女に担がれてる、俺って……」
軽々とサヤ先輩に荷物担ぎされた。あれ、俺ってそんなに体重軽かったかな。それともサヤ先輩が異常なほどの筋肉の持ち主……考えるの止めよう。
でも女性に担がれるのって何だか居た堪れない。なんだろうな、こう、敗北感があるんだ。せめてリオ先輩に担がれたかったけど、あの人の性格からしてそんな面倒なことはしないんだろうな。
どうでもいいけど、早く帰りたい。そして降ろしてほしい。サヤ先輩は時々悪戯を仕掛けてきたりとか、リオ先輩にや俺に酷かったりするけど一応は優しい人だ。……俺、フォローできてるよね?
つまりは多分、俺が家に戻るまでサヤ先輩は俺を降ろす気はないだろうなってこと。現在進行形で俺の精神体力がガンガン削られてる。帰るころには0になってそうだな。
「なんだろうな、カカア天下ってこういう感じなんだろうな」
「ちょ、ちょっと違うと思いますけど……」
「というかお前らデキてるのか?」
「デキてませんよっ!!」
「何その大袈裟な否定。私じゃ不満なわけー?」
「ええ、不満で、ぐふぅっ!?」
思い切り頭叩かれた。うおおお、脳が揺れた気がする……。
……あ、なんか目の前が霞んできてる。強く叩かれ過ぎたわー。
「おい、なんか半目になってるぞ」
「疲れてるんでしょ? 寝かせてあげようよ」
「いえ、恐らく先程の一撃が原因だと思いますが」
「ほっ!」
うごっ!? また頭に衝撃がっ。
しかも心なしか、さっきのよりも力が込められていたような……。
あれ、俺って嫌われてるの?
「さっ、サヤさん! 追撃なんて……」
「いいのいいの。寝かしてあげよう、ね?」
「…………はい」
ミキにまで見放された。
と、いうか……、もう、無理だわ。
少し抵抗しようと手を動かしたところで俺は三度目の攻撃を食らい、完全に意識を手放した。