何故か毒怪竜になった件について   作:キョロ

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お久しぶりです。長い間お待たせしてしまい申し訳ありません。
今回は番外編。バレンタインについて書いてみました。

では、スタートです。


季節行事企画番外編 「ハッピーバレンタイン!」

『数分で分かる、サヤのバレンタイン講座ー』

 

 どうも、サヤです。

 なんだかもう季節行事を粗方説明しているような気がしなくもない。今回はジョーおじさんに聞かれる前に先にこういった講座を開くことにした。

 ちなみに参加者はお母さん、ウルさん、ベリィさんの雌モンスター。……お母さんは、雌、なのかな。勝手に私が「お母さん」と呼んでいるから雌ということにします。ツッコミ禁止だから注意ですよ!

 

『わードンドンパフパフー!』

 

『いいからさっさと始めてほしいわぁ』

 

『黙りなさいよ、この毛むくじゃら』

 

『あぁ゛? さすがのあたしもキレるわよぉ?』

 

『何このカオス空間』

 

 既に温度差が違うとかどういうことですか。お母さんが元気に合いの手を入れてくれたのに、何故か浮いて見えてしまうよ……。あと、喧嘩なら外部でやってくださいお願いします。

 初めてウルさんのマジギレを見たような気がする。なんだろう、泣きたい。目はないけど泣きたい。

 悲しみのあまり引き篭もりになりそうだ。あ、もう引き篭もりだった。

 

『でー? でー? バレンタインって何なの、サヤー』

 

『あ……、はい。バレンタインとは、ウァレンティヌスさんが処刑されちゃった日です』

 

『……え』

 

『あ、あー! だ、男女の愛の誓いの日なんですよ! 私たちの場合、雌雄ですが』

 

 いきなりヘビーな内容にいきすぎた。一瞬とは言え、お母さんが固まっちゃったよ。

 慌てて現代で言われているバレンタインデーというものを説明するとお母さんは硬直を解いて『そうなんだー』と納得したように首を縦に振っていた。

 ……愛の誓いの日、というワードを聞いて、私に視線をよこしたモンスターがいましたが。

 

『へぇ、具体的にはどうするのぉ?』

 

『そうですね、私が他に知っているのはチョコの類の物を異性にプレゼントする日ですかね』

 

『ちょこ?』

 

『あー……。まあ要するに想いを伝える日ですよ』

 

 と言っても、チョコレートを男性にあげる文化は日本特有のものなんだけどね。ヨーロッパでもあることにはあるんだけど、チョコレートだけじゃなくて花とかカードをあげる習慣もある。それに男女問わず。

 とりあえず、私たちにはそういったことができないので今回のコンセプトは変えるよ。

 

『と、いうわけで今回は好きな相手にプレゼントを贈りましょう』

 

『プレゼントだったら何でもいいのー?』

 

『はい。ただし、相手が好きそうなものがいいですね』

 

『そうね、嫌いなものを渡されても困るし』

 

『そういうことです』

 

 つまりチョコがないなら別のもので代用しちゃえばいいじゃない、ということ。

 ここら辺だとあまり花とかは見ないからプレゼントするものは各々に任せることにするよ。……全員、お肉を贈るような気がするけどね。カブっても私は気にしない。

 方針が決まったことにより何をすればいいのか分かったウルさんとベリィさんはお互いにお互いを睨みながら別の場所から洞窟を出て行った。火花散ってたなー。

 

 さて、私はどうしようか。贈る相手ってお母さんくらいしかいないしなー。……え、リオとかティーおじさんはどうするのかって? あれは放っておいてもいいでしょ。どうせベリィさんかミキさんに貰うでしょ。ベリィさんはいくら必死でもこういうときは子供の存在を忘れないと思うんだ。

 うーん、お母さんが喜ぶものっていったらお肉くらいなんだよなー。でも私、まだ狩りとかしたことないし。「逆にやられちゃいましたーてへぺろ」なんてものは許されないよね。

 

『あ、サヤー』

 

『……ん、なんですかお母さん?』

 

『はい』

 

 お母さんから腕を差し出されました。

 ……えーっと、つまりどういうことなんだろうね? お母さんの行動は時々唐突過ぎて何をしたいのか分からないことがあるから困るんだよね。

 

『?』

 

『プレゼントだよー』

 

『え、何がですか?』

 

『血だよ、血。血液ー』

 

『……つまり、いつもの食事と一緒ですね』

 

『あは、そう言われればそうだねー』

 

 お母さん、お茶目だなあ。

 少し癒された。

 

 

――――――――――

 

 

 やってきました、洞窟の外へ。

 最近、泉に行く以外に洞窟の外に出ることがないから、こうやって別の用事で出るのは久しぶり。3rdをやっていたおかげでかろうじて地理は抜けてないけどね。ゲームに感謝。

 で、今いる場所が地図で言う二番のところ。確かバギィがいたと思うんだよね、ここに。

 そういえば途中でメラルーAさんに会いました。お肉を採りに行くことを伝えたら態々採ってこようかと言われたけど、丁重に断りました。その優しさはありがたいけど、自分で採る事に意味があると思うんだよね。

 

『……あー、見える。郡が見える』

 

 それっぽい影を発見。でもやっぱり群れてるなあ……。

 一体だけならまだ少しは勝機があるかもしれないけど、あんなに群れてると少し厳しいものがある。まだ翼が生えてきたばかりの弱いギィギだからね。

 ……今更ながらこれって相当難易度高いような。大丈夫かな。

 

『ニャァー、やっぱり一体じゃ無理ですニャよ』

 

『そうですね……。って、あれ!? メラルーAさん!?』

 

 いつの間にか隣にメラルーAさんがいました。うわお、いつからそこにいるんですか。

 話を聞いてみたら私が心配で後からついてきたんだって。本当に優しい。その優しさに泣きそうです。

 とりあえず作戦会議を始めます。目標はバギィ。目標討伐数は一体。本当はもっとたくさん狩りたいところだけどそれで死んじゃっても困るので一体を目安にします。

 問題はバギィの吐いてくる睡眠作用のある体液。あれを食らったらまず勝ち目はない。でも私は足が短いから避けられないと思う。

 つまり方向性的にはさっさとボコってさっさと逃げようぜ! っていうこと。逃げられるかどうかはいささか疑問ですがね……。

 

『なんだか無理そうに見えるニャ』

 

『大丈夫です、私も無理だと思いますから』

 

『それじゃ意味ないよねニャ!?』

 

 見事にツッコまれました。やっぱり無理かあ。

 でもほかに作戦がないから仕方ないといえば仕方ないんだよね。

 私だってもっといい作戦を思いついていたらそっちを採用するよ。そこまでの頭がないんだよ。

 

『……玉砕覚悟で頑張ってみません?』

 

『まだ玉砕はしたくないニャ……』

 

『私もそう思います』

 

『なら言わないでほしいニャ!』

 

 メラルーAさんが「ぷんぷん!」と擬音がつきそうな感じで怒ってる。あ、すごい可愛い。今怒られてるはずなのに癒しを感じてしまうよ。

 冗談はさておき、どうしようかね? いつまでもここにいるわけにもいかないし。

 

『……ぅぁぁぁぁぁ……』

 

『ん? 今、何か言いました?』

 

『何も?』

 

 二人揃ってこてん、と首を傾げる。くぅっ、なんで見えないの私の目! 喋る猫が首をこてん、とか! 生で見れたら感動するくらい可愛い瞬間だと思うのに、なんで見えないの!

 久しぶりに自分の熱視覚に怒りを感じる。

 って、今はそんなことはどうでもいいんだよ。今だって『来るなああああ……』って声がどこからか聞こえてきてるんだよ。……ん、来るな? それって私がよく聞く単語なんだけど。

 いやいやいや、まさか、ねえ? さすがにあのモンスターのわけがない、よねえ?

 

『『ジョウ様ああああ、私(あたし)の愛を受け取って!!』』

 

『悪いが受け取れん!』

 

『『そんなっ、どうして!』』

 

『この状況を見ても分からないのかお前たちは!』

 

 ……ああ、やっぱりか。何度見ても変わらない光景だなあ。私が熱視覚じゃなったらトラウマになってるかも。なんだかんだ言ってるけど、熱視覚には感謝しても良いことがあるのかな。

 バタバタと大きな音を立てて凍土を駆け巡る三体の姿は、もはやこの場所じゃ恒例行事だと思う。

 ちょっと微笑ましい目で見守っていたら、一体の避難し損ねたバギィがジョーおじさんに撥ねられた。なんだか私が死んだときのことを思いだすな。私もトラックに撥ねられて死んだし。

 三体の通過を待ったところで私たちは撥ね飛ばされたバギィの元へ向かいました。私は足が遅いのでメラルーAさんに担いでもらっている状態ですがね。

 

『……息、してないですね』

 

『ニャ~、可哀想なやつですニャ』

 

『人生なんてそんなもんですよ。弱肉強食です』

 

『それでももうちょっといい死に方があった気がするニャ』

 

 私もあの三体には気を付けないと、ね。折角記憶があるまま生まれてきたのに、二回目の生でも何かに撥ねられて死ぬとか本当に洒落にならないから。

 そのまま二体で一緒になってバギィを引き摺って行こうとしたら、『さすがに持っていくのは無理ですニャ』と言われたので簡単に解体してお肉を貰っていくことにした。お母さんの口は大きいから、私が持っていくものはかなり小さいく見えちゃうかもしれないけど……。

 あ、残りはメラルーAさんに引き取ってもらうつもりです。迷惑かけちゃったからね。

 

『……本当にもらってもいいのかニャ?』

 

『ええ、私は持てる量に限界がありますし』

 

『でもこんなにたくさん……、なんだか悪いニャ』

 

『いえいえ。その代わりまた今度遊びに行かせて下さいね!』

 

『分かったニャー』

 

 洞窟の近くまでメラルーAさんと歩き、入口のところで別れた。今日は本当にありがとうございました。あと怖い目に遭わせて申し訳ありません。

 まだ遠くのほうで『いい加減にしてくれーーー!!』『待ってください、ジョウ様あ!』『ええいっ、邪魔なのよモフモフババアが!』と修羅場の会話が聞こえてくる。三角関係って大変ですね。……あれ、でもこの場合、ジョーおじさんが二体のどっちにも好意を寄せてないから三角関係とは言わない?

 ……まあともかく、ジョーおじさんたち三体はいつも通りの様で安心しました。あそこがいきなり良好関係になりはじめたら世界が終わると思うんだ。

 

『ただいまですー』

 

『どこ行ってたのサヤアアアア!』

 

『あ、ちょ、潰れるから突進しないでください!』

 

 帰ってきた瞬間に身内から潰されそうになりました。何故。

 とりあえずなんとかお母さんを宥めて散歩に出かけていたと説明しました。お肉を採りに行ってたなんて言ったらサプライズの意味がないもん。折角やるなら秘密で物事を進めたいんだ。

 だというのに説明し終わってからお母さんの目が痛い。じろーっ、て感じで見てきてる。な、なんですか。

 

『もう騙されないんだからねっ』

 

『な、なんのことでしょう?』

 

『だってだって、ジョウが言ってたもん! 『お前はサヤに甘すぎる馬鹿親だ』って!』

 

『……』

 

『馬鹿じゃないもん! 心配なだけだもん!』

 

 ぷんすか、という擬音がつきそうな感じでお母さんは怒っていた。

 何入れ知恵してくれてんですかジョーおじさん。しかもなんか私が悪いみたいになってる。ちっ、今度あの二体に吹き込む内容は過激にしてやる。倍返しにしてやるっ。

 それにしても最近お母さんの過保護具合が更に加速しているのは気のせいなのかな。この前も涙ぐんでたくらいだし。ギギネブラは卵を産めばいくらでも子供が出来るのに、ちょっと異常過ぎない?

 

『サヤが心配なだけなんだもん……』

 

 はっ、思考してお母さん放っておいたらいじけちゃった!!

 どうしよう、こんなお母さん見たことないから宥め方が分からない。誰か私に知恵をください! 元気はいらないからとりあえず今は知恵が欲しいです!

 うぅー、やっぱりここは素直に白状するしかない? このままでいられても困るし……。

 

『じ、実は、お肉を採りに行ってたんです』

 

『一人でっ!?』

 

『え、ええ』

 

『そんなっ、危険すぎるよー!』

 

 グイッとお母さんが近付いてきた。わわっ、どアップ。

 だから言いたくなかったんだよー! まあお肉をプレゼントに選んだ時点で多少は覚悟してたけどね!

 

『今日は何の日だか覚えていますか?』

 

『今日? 今日はバレンタインデー、だよね?』

 

『はい。……お母さんにプレゼントです』

 

『……っ!!』

 

 担いでいたお肉をお母さんに差し出すと、お母さんの動きが止まったのが見えた。

 喜んでくれたかな? 喜んでくれたかな? ワクワクしながらお母さんの様子を見守っていると、

 

『あっ、ありがどう、ザヤーーー!!』

 

『うわっ、だから潰れちゃいますって……!』

 

 お母さんが号泣して迫ってきました。

 喜んでくれたのはとてもうれしいんだけどそろそろ体格差は自覚してほしいかな! 毎回毎回潰されそうになるなんてたまったもんじゃないんだよ。

 どうにか説得すると今回はおとなしく身を引いてくれた。ふう、良かった。

 

『う、嬉しいけど、ぐすっ、もう無理したら駄目だからね……?』

 

『分かりましたよ。だから、もう泣かないでください』

 

『本当だよ? 約束だよ?』

 

『約束ですよ』

 

 指切りげんまん、はできないので残念ながら口約束です。でもできる限り守るつもりだよ。第二のお母さんを困らせるなんて親不孝なことはしたくないからね。

 ……あ、でもできる限りって言っても滅多に危ないことはしないよ。私だって自分から危ない所に行きたくはないからね。お母さんと自分の身が一番大事です。

 

『ほら、食べてください』

 

『えぇー、勿体無いから凍らせて保存する!』

 

『確かに可能ですけど、食べる気は?』

 

『一切ないよ! 死ぬまで保存する!』

 

『それじゃ私が採ってきた意味が……』

 

『えへへー、ありがとうね、サヤっ!』

 

 ああ、もう。

 そんなに幸せそうに笑われたら何も言えないじゃないですか。

 結局私ってお母さんに弱いんだな、と痛感した瞬間だった。

 

 

――――――――――

 

 

 よう、スウである。ところで俺の名前、忘れてないよな? いや、なんだか妙に俺が忘れられているような気がしてならないんだ。勘だがな。

 で、今日は男にとって大事な大事なだいっじな、バレンタインデーだ。大切なことだから三回言ったぞ。

 バレンタインデーとは恐ろしいものでチョコを貰えた者にとってはその日は天国、貰えなかった者にとってはその日は地獄へと変わる、二択しか道がないとんでもない日なのだ。

 俺なんて全くモテなかったから、毎年母親のチョコだったなあ。母さん、感謝してます。

 

「ハッピー!」

 

「ば、バレンタイーン」

 

 と、いうわけで目の前に女子が二人います。言うまでもなくサヤ先輩とミキだ。恥ずかしがってるミキも可愛いな、ちくしょう。

 それで俺の隣には青褪めたリオ先輩。分かる……、その気持ち分かりますよ、リオ先輩。

 どうやらサヤ先輩とミキはこの日のために内緒でチョコを作る計画をしていたらしい。そしてサヤ先輩がリオ先輩に、ミキが俺にチョコを渡すらしいのだ。ミキからチョコを貰えるとか幸せだ。

 ……って、そういうことを言ってる場合じゃないんだよ。

 

「お、お前、本当に今年も作ったのか……?」

 

「今年はミキちゃんとチョコケーキにしたんだっ」

 

「ぼ、僕のは上手くできたんだけど……」

 

「……ご愁傷様です」

 

 皆さんはお忘れでないだろうか。サヤ先輩が料理下手だということを。

 ちなみに俺は去年、リオ先輩と一度悪夢を見ている。もう一つ言わせてもらうと、リオ先輩はサヤ先輩と幼馴染の為毎年悪夢を見ている。リオ先輩にとってサヤ先輩の手作り料理は一種のトラウマだそうだ。

 ミキが両手に収まるような大きさの箱を俺に差し出してきた。白い箱に薄い桃色のリボンで彩られたそれは清楚な雰囲気がある可愛らしいものだ。

 視線だけで開けていいか聞いてみると頷かれたので、リボンを解いて中を見てみると小さなチョコケーキが入っていた。ふわりと漂うチョコの匂いが食欲を誘っている。

 

「うわあ、美味しそう……。ありがとう、ミキ」

 

「い、いつもお世話になってるからこれくらい……」

 

「ははっ、照れるなって」

 

 ちょっと赤くなっているミキを見て、頭を撫でてやるとミキはパッと顔を伏せた。どうしよう、可愛すぎる。二人きりだったらとっくに俺の理性が死んでるよ。

 そんな感じで桃色の空間に浸っていると、隣からくるどんよりとした空気に気付いた。あれ、何この正反対の空気。誰からだろうと思ったらリオ先輩だった。めっちゃ凹んでる。

 リオ先輩もサヤ先輩から箱を受け取って、中を見たようだった。しかし、その姿勢のまま動作が停止している。何だろう、と思って覗き込み、「う゛っ」と呻り声を漏らしてしまった。

 

「ねえねえっ! どう? どう? 美味しそうでしょ?」

 

「……これはまた、なんとも言えない雰囲気を醸し出しているな」

 

「またまた照れちゃってー。素直に慣れないなあ、リオは!」

 

 どう見たらあの色褪せた顔を照れてるように認識できるんだろう。ある意味すごい。

 リオ先輩の箱に入っていたのは、真っ黒なケーキの形をした何かだった。

 え? ブラック? と思ってミキに聞いてみたら「材料は同じミルクチョコレートですよ」と言われた。どうやらサヤ先輩はケーキと言う名の消し炭を生成したらしい。

 いや……、もうあれ食い物じゃないだろ。

 

「たっ、食べてもいいかな!?」

 

「……あ、うん! た、食べていいよ」

 

 場を和まそうと思って態と大きな声でミキに尋ねる。ミキもその意図を感じ取ったらしく俺に合わせてくれた。なんか巻き込んで悪いな。だがこれは恒例行事なんだ。

 フォークで端っこの部分を少し切って口に運ぶ。パクつくとチョコの甘い味が口の中に広がった。甘いものは俺の大好物だ。疲れが取れるからな。

 

「美味しい。よくできてるな、さすがミキ」

 

「え、いや、そ、そんな」

 

「すごく美味しいよ」

 

「あうぅぅ……、ありがとう」

 

「それは俺の台詞だよ」

 

 ただ、リオ先輩は甘党だからな。この前、ハロウィンの時に分かったが苦いのは相当駄目みたいだからどうなるか……。下手したらまた三途の川が見えそうだ。

 そう思いながらチラッとリオ先輩の方を見てみると、サヤ先輩がケーキ(消し炭)を強引に口に押し込んでいた。何してんの、あの人。というかよく崩れないな、あのケーキ(消し炭)

 

「ふぐっ、むぐううううっ!!」

 

「遠慮しないで食べて食べて!」

 

「いや、遠慮しますから! 死んじゃいますから!!」

 

「死んじゃうくらい美味しいって事でしょ? スウったら言い回しが巧いなあ」

 

「サヤさん。多分、違うと思います……」

 

 リオ先輩も必死に抵抗しているけど、味のせいで思うように行動できていないようだ。

 しばらくするとリオ先輩は白目をむいて倒れた。……え、倒れたって……。

 

「……呼吸、心臓、共に停止……」

 

「うわああああ、戻ってきてくださいリオ先輩いいいい!!」

 

「やだ、リオったら過剰な反応しすぎ!」

 

「もうちょっと状況を正確に把握しましょうよ!」

 

 なんなのサヤ先輩。マイペース過ぎて状況把握してくれない。

 結局、今年も蘇生させる羽目になるのか……。さっき、俺も悪夢を見たと言ったが、何故かリオ先輩のほうだけ味が強烈過ぎて毎年こんな感じだ。俺はぎりぎり意識が保てる範囲内にいる。それはそれで苦しいんだが。

 

「ふふーん、来年はもっと美味しくなるように頑張ろうっと!」

 

「お願いですからもう料理しないでください……」

 

「僕も賛成かな……」

 

「機嫌がいいから今日の料理は私が造るねっ!」

 

 字が違うよ、どうしよう。

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