何故か毒怪竜になった件について   作:キョロ

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20、要するに心の問題だった件について

『暇だなあ……』

 

 どうも、サヤです。今日も洞窟の中でお留守番です。

 もうなんとなく分かったと思うけど、お母さんたちはハンターさんたちと対決に行った。

 今日の標的はお母さんなんだって。ティーおじさんとかは『久しぶりに暴れられるぜ!』って騒いでたなあ。

 まあ一番騒いでたのはお母さんなんだけどね。『最近鈍ってきたから勘を取り戻すんだー』だそう。

 そう言いながら洞窟の地面に毒液ビームを放って地面を抉ったお母さんは私にとってただのホラーだった。

 

『サヤちゃん、こんにちは』

 

『あっ、ミキさん! こんにちは!』

 

 ぼんやりと過ごしていたらミキさんがやってきた。三日前の事件ぶりかな?

 とてつもなく暇だった私は快くミキさんを洞窟内に招き入れた。

 残念ながらおもてなしできるものは何にもないんだけどねー。

 今度氷結イチゴとか採りに行ってみようかな? どこにあるかは知らないけど。

 

「やほーい、小童共ー。妾が遊びに来てやったぞー」

 

『『なんでいるの!?』』

 

 と、ここで人間モードのミラさんが登場した。もう一度言いましょう。なんでいるの!?

 私とミキさんは、つい三日前の事件でミラさんと初めて会った。頼れるけど寂しがり屋なモンスターです。

 そしてその時にミラさんは自由自在にいつどんなときでも人間に変身できると暴露したのです!

 ……条件として一週間、筋肉痛になって動けなくなるという事実と共に。

 

 ここでもう一度今日とこの前の事件の時間差を考えてみよう。

 事件が起こったのは三日前。そう、つまり事件からまだ三日しか経ってないのだ。

 一週間どころかその半分すらも過ぎていない。だから今ここに来れる筈がないのだ。

 

『ど、どうして……』

 

『例の小童を覚えておるか?』

 

『会ったことないから分かんないけど……。“時は金成”の子だね?』

 

『そうそう、そ奴じゃ。そいつがサロ〇パスを買ってきてくれたのじゃ!』

 

『『サロ〇パス!?』』

 

『ただの湿布剤らしいが、あ奴曰く『湿布剤と言えばサロ〇パスじゃろう』と』

 

『それ他の会社に失礼ですから』

 

 今すぐ謝ってほしいくらいですね。私的に湿布剤と言えばスミル〇ープなんだよ。

 というか結局何も状況が分かってないんだけど。小童くんの情報しか分かってないんだけど。

 サロ〇パスなんてどうでもいいんだよ! 作ってる人ごめんなさい冗談です。

 

『その湿布剤を全身に貼ってもらったら治ったのじゃ。……今までもやればよかったの』

 

『湿布剤凄いですね……』

 

『恐るべしサロ〇パス』

 

『ただ全身に貼りすぎて一回呼吸できなくなったがな』

 

『何やってんの!?』

 

 全身って、口とか鼻とかにもやったわけ!? そこは駄目って常識的に分かるでしょ。

 というか前々から思ってたんだけど、その小童くんって常識が欠落してるよね。まあここにいるモンスターたちって常識がないんだけど。

 でも、なんだろうな。その小童君の話を聞いていると、私はどうしても地球を思い出しちゃうんだよね。

 ……そういえばここって地球なのかな。モンスターハンターをやっていても世界観までは興味がなかった私です。

 朝早く起きて、学校行って、塾に行って、遅くに帰って寝る。随分と暇で変化がない日常だったけど、今から考えたら十分幸せだったんだろうなあ。最低でも最高でもない普通の生活。

 ま、今更考えたって無意味なことだけど。

 

『おーい、ミキ! 終わったからデート行こうぜ!』

 

『ティガっていつも唐突に話に加わってくるよね』

 

『駄目か?』

 

『構わないよ。行こっか』

 

 最近ミキさんが惚気て私とあんまりお話してくれなくなったことが悲しいです。

 そりゃあね、彼氏さんでもできたらそうなるだろうなとは思ってたけど。まさかね、こんなに早いとは。

 結論を言うと、ちょっぴり寂しいのですよ。

 

『そう言えば、』

 

 と、ミキさんが洞窟の出口の前で少し立ち止まって、私たちの方へ振り返った。

 

『最近、泉の水を飲んでも擬人化できなくなったんだ』

 

 なんでだろうね、とミキさんはどうでも良さそうに笑いながら言って、今度こそ洞窟から出て行った。

 ミキさんが擬人化できなくなった? この前はモンスターになれないって話になって、今度は人間になれない? またこれも随分突然な話だな。

 ミキさんが擬人化できないって、だとしたら、私は? 最近泉に行ってないんだよね。

 

『やはりか。そうなるであろうとは思っておったが』

 

 フッと、ため息にも似た吐息をミラさんは出した。

 やはり? やはり、って予想できてたってこと? 何それ。

 

『ああ、サヤ。お前は多分、まだ擬人化できるぞ』

 

 私の不安が顔にでも出ていたのか、ミラさんは優しく私にそう言った。

 あ、そうですか、それは良かった……。じゃなくてだね。

 どうしてミキさんが擬人化できなくなって、それをミラさんが予想できたのか。これが問題なんだよ。

 

『ちなみに、リオももう擬人化できないらしいぞ』

 

『え』

 

 な、なんでリオもできないの!?

 というかなんでリオが擬人化したって知って……。ああ、そういえば筒抜けなんだった。

 

『もう一つ言わせてもらうとすれば、大人組は全員、擬人化できんぞ』

 

『ど、どうしてみんなできないんですか!?』

 

『この凍土で擬人化できるのは、妾とお前と小童ぐらいか』

 

『話を聞いて下さい!』

 

 そんな唐突にそんな話をされても。

 あの泉、飲んだモンスターは誰でも擬人化できる便利な泉じゃなかったんだ……。

 でもそれがどうしてか分からない。なんで?

 

『妾はこの前、ミキになんと言ったか覚えているか?』

 

『?』

 

『もう忘れたのか……。おぬし自身の問題じゃろうと、悩んでいるのじゃろうと』

 

『あー、そんなこと言ってましたね』

 

『つまり、気持ちの問題であると妾は言っておるのじゃよ』

 

 分かるか? と一度話を切って私に問いかけてくるミラさん。

 なんか教師に質問している気分になってきた……。とりあえずその問いに肯定の意味での頷きを返す。

 

『リオは?』

 

『リオは好奇心が旺盛であった。人間という一つの生き物に興味を持ったんじゃろう』

 

『ふーん?』

 

『しかし近頃は戦闘を見学するようになり、嫌悪したのじゃろう。母親を傷付けられて平常でいられる子はいない』

 

『リオはベリィさんが大好きなマザコンですからね』

 

 ジョーおじさんに惚れているベリィさんにうんざりしつつも、やっぱり親子って事なのかもしれない。親子っていうのはそんなに簡単に切れる縁じゃないからね。

 それにリオは優しい所があるからなあ。

 

『そしてお前とミキは人の魂を持っておる』

 

『前世が人間とか、分かるんですか?』

 

『妾を舐めるでない』

 

 ニヤリと笑うミラさんは美しい。私が男だったら落ちてるレベルだよ。

 でもどうして分かるんだろう。『勘じゃ』さいですか。

 古龍って、勘だけでそういうのが分かるもんなのか。

 

『故に擬人化は簡単に行えた。未練と言うものがあったから、と妾は思っておる』

 

『未練、ですか』

 

『そうじゃ。しかし、ミキは完全にモンスターと言うものを受け入れそれを断ち切った』

 

『私に未練とかあるんですかねえ?』

 

『さあの。……まあ、まだ“ミキ”と名乗っている辺り、そこは貫くつもりじゃな』

 

『なんだか複雑な話ですね』

 

『それが人生じゃ。要するに、ミキは一生をモンスターとして生きる覚悟ができたということじゃ』

 

 故に人と戦い、悪役を演じ、一生を終わる。それは人として生きてきた私には辛いことだ。

 それをミキさんは受け入れたって事なの? ……うーん、難しい。

 首を傾げる私にミラさんは声を上げて笑った。

 

『理解できなくてもいいんじゃ。その内、サヤも擬人化できなくなったら分かる』

 

『その時にならないと分からないものなんですか?』

 

『そうじゃな。それはそれぞれじゃが、まあその内分かる』

 

『ただいまー! あれ、ミラちゃんだー!』

 

 そういうものなのかなあ、とやっぱり私が首を捻っているとお母さんが帰ってきた。

 その後ろからジョーおじさんも続いた。あれ、取り巻きの二体は……。逃げ切ってきたのかな?

 よくよく考えたら味方から逃げてくるジョーおじさんってシュールな気がする。

 

『どうしてここにいるんだ。今頃は筋肉痛で引き籠ってるはずじゃないのか?』

 

『引き籠っ……。ジョウ、口が悪いぞ! あのヨチヨチ歩きの可愛いジョウは何処へ消え失せたのじゃ……』

 

『ばっ! なんでいつもその話になるんだ! その話は出すなと……!』

 

『ミラちゃんミラちゃん! 遊ぼうよー!』

 

『お前はお前で何を暢気なことを……』

 

 ジョーおじさんさんがいきなりグロッキーです。

 というかジョーおじさんぬそんな可愛い時期があったのか。

 ……子供時代の、強面のジョーおじさんが笑顔で、ヨチヨチ歩き……。駄目だ、もう無理。

 あー、想像しなければよかった。ちょっと、気分が……。

 

『ふむ。まあ今回はただの散歩だし、妾はそろそろ戻るぞ』

 

『え、あ、はい』

 

『散歩程度でミラは来たのか……』

 

『妾を呼び捨てにするのはお前ぐらいじゃよ……』

 

『敬う必要がないと思ったんだ』

 

『辛辣じゃな。妾は“ぶろーくんはーと”じゃぞ』

 

 何故に英語……。それも小童くん知識ですか?

 『いつの間にかジョウが酷いのう』『それは前も言ってただろう』でもなんだろう、この会話……。

 いじいじといじけながらもミラさんは帰るために洞窟の外まで歩いて行った。

 

『送って行こうか?』

 

『そこだけ優しくされてもときめかんぞ、ジョウ』

 

『ときめかれても困る』

 

『つれない男じゃな。……ああ、そうだ、サヤ』

 

『ん? なんですか、ミラさん』

 

『今度来るときは小童も紹介しよう』

 

 あ、小童くんに会えるんですか。やったー。

 ……小童くんって、どんなモンスターなんだろう。今まで考えたことなかった。

 でもこの凍土のモンスターらしいけど……。

 

『そう言えば近頃あいつを見ないが……ミラのところか?』

 

『うむ。妾が筋肉痛じゃからな』

 

『にも拘らず出かけるお前は迷惑極まりないな』

 

『ミラちゃんは自由奔放なんだよー』

 

『それで迷惑をかけるのはどうかと思うがな……』

 

 ジョーおじさんが通常運転過ぎる……。私はそこにビックリですよ。

 ミラさんは『じゃあの!』と言うと洞窟から出て行った。ちょ、その挨拶なんか聞いたことある。

 ぼんやりとまた、小童くんについて考えていた私だったけど、お母さんにご飯を貰ったらすっかり忘れてしまいました。

 ごめんね、小童くん!




次話はちょっとした番外編を予定しています。
そこでですが、今まで何回か検討していたキャラ投票をしてみようと思います。
まだ短いですが、ちょうど二十話で切りがいいかな、と思ったので。

一位になったキャラは何か一つ話でも書こうと思っています。
そのリクエストも何かありましたら添えて書いて下さるとうれしいです。
皆さまの参加をお待ちしております。


~キャラ投票は終了しました、ご協力ありがとうございました~
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